ヘッダーをスキップ

Oracle Financial Consolidation Hubユーザーズ・ガイド
リリース11i
B25734-01
目次へ
目次
前ページへ
前へ
次ページへ
次へ

変換の設定

概要

様々なエンティティを異なる通貨で運用できますが、連結のためには共通通貨に標準化することが重要です。財務連結ハブでは、エンティティと親の基準通貨が異なる場合、連結処理中にエンティティの残高が自動的に基準通貨から親の基準通貨に変換されます。

変換は、変換方法で指定したルールに従って実行されます。産業、国または所有関係に応じて様々な変換設定があるため、必要な数の変換方法を定義できます。

注意: 財務連結ハブの変換方法は、FAS 52およびIAS 21に従って変換と再測定の両方に対処します。

変換方法

変換方法は、連結中に親子関係に適用される通貨処理を決定する設定の集合です。

変換方法には、次の設定が含まれます。

変換方法の割当て

変換方法は、2つのエンティティ間の関連レベルで割り当てます。連結階層の作成または更新時には、親とは異なる基準通貨を持つ子エンティティについて変換方法を指定する必要があります。

連結階層の作成の詳細は、「連結階層構造の作成」を参照してください。

注意: 関連が連結処理の一部になった後は、変換方法を更新できなくなります。

変換方法の設定用に選択済のユーザー・インタフェース要素

この項では、選択済のユーザー・インタフェース要素について説明します。

終了レート・タイプと平均レート・タイプ

通常、終了レートは貸借対照表勘定の変換に使用し、平均レートは損益計算書勘定の変換に使用します。Oracle Applicationsには特定の通貨ペアについて複数の換算レートを入力する機能が用意されているため、終了レートに使用する換算レート・タイプと平均レートに使用する換算レート・タイプを指定する必要があります。レート・タイプの一般例は「社内」と「直物」ですが、必要に応じて追加のレート・タイプを定義できます。変換に必要な終了レートと平均レートを表すレート・タイプが必要です。

通貨レートの詳細は、『Oracle General Ledgerユーザーズ・ガイド』の通貨レート・マネージャに関する項を参照してください。

資本モード

財務連結ハブで、留保利益や他の資本勘定の変換に年累計(YTD)残高と期間発生額(PTD)のどちらを使用するかを指定できます。

YTDを指定すると、終了残高は終了レートを使用して変換されます。その後、期間発生額が当期の終了残高と前期の終了残高の差異から計算されます。

PTDを指定すると、当期発生額は平均レートを使用して変換されます。次に、変換済の期間発生額と前期末の変換済残高を合計して、終了残高が計算されます。

FAS 52およびIAS 21に準拠する最も一般的なオプションは、資本勘定にYTDオプションを使用することです。

注意: 選択した資本モードに関係なく、特定の資本勘定について取得時レートまたは金額を入力すると、財務連結ハブでは、その勘定が取得時レートまたは金額を使用して変換されます。そのため、取得時レートまたは金額により終了レートと平均レートがオーバーライドされます。

損益計算書モード

財務連結ハブで損益計算書勘定残高の変換にYTDとPTDのどちらを使用するかを指定できます。

YTDを指定すると、終了残高は終了レートを使用して変換されます。その後、期間発生額が当期の終了残高と前期の終了残高の差異から計算されます。

PTDを指定すると、当期発生額は平均レートを使用して変換されます。次に、変換済の期間発生額と前期の変換済終了残高を合計して、終了残高が計算されます。

FAS 52およびIAS 21に準拠する最も一般的なオプションは、損益計算書勘定にPTDオプションを使用することです。

注意: 選択した損益計算書モードに関係なく、特定の損益計算書勘定について取得時レートまたは金額を入力すると、財務連結ハブでは、その勘定が取得時レートまたは金額を使用して変換されます。そのため、取得時レートまたは金額により終了レートと平均レートがオーバーライドされます。

デフォルトとして使用

「変換方法の作成」ページの「デフォルトとして使用」ドロップダウン・リストからオプションを選択すると、変換方法をデフォルトとして指定できます。

連結階層の作成時に、連結エンティティと子営業エンティティの間の関連属性に、デフォルトの変換方法が自動的に割り当てられます。デフォルトの変換方法は変更できます。

変換方法の使用可能

「変換方法の作成」ページの変換方法の使用可能ドロップダウン・リストで「Yes」を選択すると、定義した変換方法がアクティブになり、連結階層の作成または更新時に連結関連に割当可能になります。

「変換方法の作成」ページの変換方法の使用可能ドロップダウン・リストで「No」を選択すると、定義した変更方法は連結階層の作成時に使用できなくなります。変換方法が無効化されている場合、新規連結階層の作成時には使用できません。

注意: 無効化された変換方法は、すでにそれが含まれている既存の連結階層で引き続き使用され、連結処理中に引き続き処理されます。

終了レートと平均レートの入力

終了レートと平均レートは、残高の通貨間変換に使用される10進書式の換算レートです。通常、終了レートは貸借対照表勘定に適用され、平均レートは収入勘定と経費勘定に適用されます。

注意: 通貨レート・マネージャでは、日次レートが格納されます。連結を実行すると、財務連結ハブでは処理対象期間の末日に割り当てたレートが使用されます。

終了レートと平均レートの入力には通貨レート・マネージャを使用します。通貨レート・マネージャにアクセスするには、「一般会計責任者」職責を選択するか、システム管理者にこの機能を他の職責に追加するように依頼します。「設定」>「通貨」>「通貨レート・マネージャ」の順にナビゲートします。

レート・タイプを定義するには、メニューから「レート・タイプ」を選択して「レート・タイプ」ページを開きます。終了レートまたは平均レートを定義するには、メニューから「日次レート」を選択して「日次レート」ページを開きます。

通貨レートの詳細は、『Oracle General Ledgerユーザーズ・ガイド』の通貨レート・マネージャに関する項を参照してください。

関連項目

取得時レート

取得時レート

取得時レートまたは取得時金額は特定の勘定に適用され、存在する場合は財務連結ハブにより自動的に終了レートまたは平均レートのかわりに使用されます。取得時レートまたは金額の割当ては、連結階層に割り当てられているエンティティに関連した勘定に固有です。取得時レートおよび金額は、通常は次の勘定に関するユーザー定義レートまたは金額です。

非金融資産には、土地などの有形品目と権利などの無形品目の両方が含まれます。これらは、売上原価や減価償却など、非金融基準の損益計算書勘定に関連付けることもできます。非金融品目は実際には現金に換算できないため、その価値は取得時の価額に関連付けられています。

取得時レートの定義

取得時レートを使用する連結処理を実行する前に、該当する場合は取得時レートを定義する必要があります。ディメンション値の特定の組合せについて取得時レートまたは金額を入力します。たとえば、各組織またはエンティティ(あるいはその両方)について土地への投資を追跡するために使用する「土地」という明細項目があるとします。土地の取得時金額は、土地の価額や取得時期などによって組織ごとに異なる場合があります。したがって、関連組織ごとに土地について特定の取得時レートを入力します。取得時レートまたは金額が定義されていれば、変換時に財務連結ハブで使用されます。そのため、取得時レートまたは金額により終了レートおよび平均レートがオーバーライドされます。

取得時レートを定義するために選択済のユーザー・インタフェース要素

財務連結ハブには、取得時レートの計算および入力用のスプレッドシート・インタフェースが用意されています。このインタフェースにアクセスするには、「換算レート」ページ(「設定」>「レート」)で「取得時レートの作成」ボタンをクリックします。

ディメンション・メンバーの組合せごとに、取得時レートまたは金額のどちらか一方を入力する必要があります。取得時レートは基準通貨残高で乗算されて、換算後残高が計算されます。取得時金額は乗算されず、そのまま使用されます。「レート タイプ」のデフォルトは「取得時」で、この設定は取得時レートの入力時に変更できません。

1期間の資産または負債勘定の取得時レートを入力すると、自動的に「前」レート・タイプを使用して翌期間に先送りされます。「資本モード」でYTDを指定している場合は、資本勘定の取得時レートも先送りされます。したがって、年間を通じて同じ取得時レートを使用する場合は、1回入力するだけですみます。

資本勘定にYTDを使用する場合は、各新年度の第1期間に留保利益勘定の取得時レートが前年度の収益性に基づいて財務連結ハブにより自動的に計算されます。これらのレートは、「計算」レート・タイプを使用して作成されます。

取得時レートは、いつでもスプレッドシート・ローダーを使用して更新できます。

換算例

Vision: カナダは機能通貨としてカナダ・ドル(CAD)を使用していますが、基準通貨USDを使用するVision: 北アメリカ・グループに連結されます。そのため、財務連結ハブでは、連結処理中にCADからUSDに換算されます。

Vision: カナダには「換算」通貨タイプが割り当てられており、「終了」終了レート・タイプ、「平均」平均レート・タイプを使用し、損益計算書にはPTDモード、資本にはYTDモードが使用されます。換算調整は累積換算調整明細項目に転記されます。Vision: カナダの2005年1月の残高試算表が次のとおりであるとします。

Vision: カナダの2005年1月の残高試算表
エンティティ 明細項目 借方(CAD) 貸方(CAD)
Vision: カナダ 現金 1000 400
Vision: カナダ 売掛/未収金 1200 500
Vision: カナダ 買掛/未払金 500 700
Vision: カナダ 払込資本 0 400
Vision: カナダ 留保利益 0 300
Vision: カナダ 収益 0 2000
Vision: カナダ 売上原価 1100 0
Vision: カナダ 給与 400 0

1月の終了レートは0.8で、平均レートは0.7です。変換方法では資本勘定にYTDモード、損益計算書勘定にPTDモードが使用されるため、財務連結ハブでは貸借対照表に終了レート、損益計算書に平均レートが使用されます。ただし、留保利益と払込資本の取得時レートは0.84で、このレートでこの2つの勘定の終了レートがオーバーライドされます。

Vision: カナダの換算に使用されるレート
エンティティ 明細項目 借方(CAD) 貸方(CAD) レート
Vision: カナダ 現金 1000 400 0.8
Vision: カナダ 売掛/未収金 1200 500 0.8
Vision: カナダ 買掛/未払金 500 700 0.8
Vision: カナダ 払込資本 0 400 0.84
Vision: カナダ 留保利益 0 300 0.84
Vision: カナダ 収益 0 2000 0.7
Vision: カナダ 売上原価 1100 0 0.7
Vision: カナダ 給与 400 0 0.7

貸借対照表は終了レートで乗算され、損益計算書は平均レートで(資本は取得時レートで)乗算されたため、終了時のUSD残高では貸借を正しく一致させるために累積換算調整に貸方26を転記する必要があります。

Vision: カナダの換算結果
エンティティ 明細項目 借方(CAD) 貸方(CAD) レート 借方(USD) 貸方(USD)
Vision: カナダ 現金 1000 400 0.8 800 320
Vision: カナダ 売掛/未収金 1200 500 0.8 960 400
Vision: カナダ 買掛/未払金 500 700 0.8 400 560
Vision: カナダ 払込資本 0 400 0.8 0 336
Vision: カナダ 留保利益 0 300 0.84 0 252
Vision: カナダ 収益 0 2000 0.7 0 1400
Vision: カナダ 売上原価 1100 0 0.7 770 0
Vision: カナダ 給与 400 0 0.7 280 0
Vision: カナダ 累積換算調整 0 0 該当なし 0 26

2月にはなんらかの活動があるため、PTD残高とYTD残高の両方を調べます。

Vision: カナダの2月の残高試算表
エンティティ 明細項目 PTD借方(CAD) PTD貸方(CAD) YTD借方(CAD) YTD貸方(CAD)
Vision: カナダ 現金 0 0 1000 400
Vision: カナダ 売掛/未収金 200 0 1400 500
Vision: カナダ 買掛/未払金 0 0 500 700
Vision: カナダ 払込資本 0 0 0 400
Vision: カナダ 留保利益 0 0 0 300
Vision: カナダ 収益 50 400 50 2400
Vision: カナダ 売上原価 100 0 1200 0
Vision: カナダ 給与 50 0 450 0

1月の残高と2月のPTD残高の合計が、2月のYTD残高と一致します。これで、2月の残高を2月に該当するレートで換算できます。資本の取得時レートは変更されていませんが、終了レートと平均レートは変更されていることに注意してください。

2月の換算レート
エンティティ 明細項目 PTD借方(CAD) PTD貸方(CAD) YTD借方(CAD) YTD貸方(CAD) レート
Vision: カナダ 現金 0 0 1000 400 0.81
Vision: カナダ 売掛/未収金 200 0 1400 500 0.81
Vision: カナダ 買掛/未払金 0 0 500 700 0.81
Vision: カナダ 払込資本 0 0 0 400 0.84
Vision: カナダ 留保利益 0 0 0 300 0.84
Vision: カナダ 収益 50 400 50 2400 0.72
Vision: カナダ 売上原価 100 0 1200 0 0.72
Vision: カナダ 給与 50 0 450 0 0.72

変換方法では貸借対照表勘定にYTDモード、損益計算書勘定にPTDモードが使用されているため、YTD残高を貸借対照表勘定の終了レートで乗算し、PTD残高を損益計算書勘定の平均レートで乗算します。

2月の中間変換結果
エンティティ 明細項目 PTD借方(CAD) PTD貸方(CAD) YTD借方(CAD) YTD貸方(CAD) レート PTD借方(USD) PTD貸方(USD) YTD借方(USD) YTD貸方(USD)
Vision: カナダ 現金 0 0 1000 400 0.81     810 324
Vision: カナダ 売掛/未収金 200 0 1400 500 0.81     1134 405
Vision: カナダ 買掛/未払金 0 0 500 700 0.81     405 567
Vision: カナダ 払込資本 0 0 0 400 0.84     0 336
Vision: カナダ 留保利益 0 0 0 300 0.84     0 252
Vision: カナダ 収益 50 400 50 2400 0.72 36 288    
Vision: カナダ 売上原価 100 0 1200 0 0.72 72 0    
Vision: カナダ 給与 50 0 450 0 0.72 36 0    

次に、財務連結ハブでは、前期のYTD借方および貸方が当期のYTD借方および貸方から減算されて、貸借対照表勘定のPTD借方および貸方が計算されます。

損益計算書勘定のYTD借方および貸方は、前期のYTD借方および貸方に当期のPTD借方および貸方を加算することで計算されます。

2月の最終変換結果
エンティティ 明細項目 PTD借方(CAD) PTD貸方(CAD) YTD借方(CAD) YTD貸方(CAD) レート PTD借方(USD) PTD貸方(USD) YTD借方(USD) YTD貸方(USD)
Vision: カナダ 現金 0 0 1000 400 0.81 10 4 810 324
Vision: カナダ 売掛/未収金 200 0 1400 500 0.81 174 5 1134 405
Vision: カナダ 買掛/未払金 0 0 500 700 0.81 5 7 405 567
Vision: カナダ 払込資本 0 0 0 400 0.84 0 0 0 336
Vision: カナダ 留保利益 0 0 0 300 0.84 0 0 0 252
Vision: カナダ 収益 50 400 50 2400 0.72 36 288 36 1688
Vision: カナダ 売上原価 100 0 1200 0 0.72 72 0 842 0
Vision: カナダ 給与 50 0 450 0 0.72 36 0 316 0

勘定ごとに異なるレートが使用されているため、累積換算調整として転記する必要のある残余があります。

2月の最終変換結果
エンティティ 明細項目 PTD借方(CAD) PTD貸方(CAD) YTD借方(CAD) YTD貸方(CAD) レート PTD借方(USD) PTD貸方(USD) YTD借方(USD) YTD貸方(USD)
Vision: カナダ 現金 0 0 1000 400 0.81 10 4 810 324
Vision: カナダ 売掛/未収金 200 0 1400 500 0.81 174 5 1134 405
Vision: カナダ 買掛/未払金 0 0 500 700 0.81 5 7 405 567
Vision: カナダ 払込資本 0 0 0 400 0.84 0 0 0 336
Vision: カナダ 留保利益 0 0 0 300 0.84 0 0 0 252
Vision: カナダ 収益 50 400 50 2400 0.72 36 288 36 1688
Vision: カナダ 売上原価 100 0 1200 0 0.72 72 0 842 0
Vision: カナダ 給与 50 0 450 0 0.72 36 0 316 0
Vision: カナダ 累積換算調整         該当なし 0 29 29 0