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Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulインプリメンテーション・ガイド
リリース12.2
B72357-01
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Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulの概要

この章では、次のトピックについて説明します。

概要

規制の対象となる複雑な構成可能機器システムを管理する保守、修理、精密検査組織は、Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaul(CMRO)を使用することで、保守工程の様々な局面(構成管理、エンジニアリング、保守、計画、実行など)を定義、計画および実行できます。このコンポーネントには、資産回転率の向上、応答時間の短縮およびサービス・レベルの向上に必要な保守組織向けのツールが含まれています。Oracle CMROは、オラクル社のeBusiness suiteに完全統合されるコンポーネントです。

この章では、次のトピックについて説明します。

Oracle Complex Maintenance Repair and Overhaulの概要

Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulは、規制の対象となる複雑な構成可能機器システムの保守にかかる一連のビジネス・プロセス(定義、計画および実行)を管理することを目的に開発されました。長期間にわたる円滑な保守、修理、精密検査(MRO)工程の維持には、応答時間の短縮、サービス・レベルの向上、資産回収期間の短縮が不可欠です。Oracle CMROには、保守ベースの在庫管理、信頼性を重視した保守、完全Webベースのアーキテクチャ、修理文書へのオンライン・アクセスなどの機能があり、これらの機能を使用することで保守組織は効率性を最大限に高め、コスト削減を実現できます。保守、修理および精密検査工程の各コンポーネントの統合により、Oracle CMROで工程全体を包括的にリアルタイムで把握できるようになります。

Oracle CMROを使用して、組織は次のことを実行できます。

複雑な構成の保守

複雑な構成の製品を製造または保守する組織では、構成の履歴を長期的に管理する必要があります。Oracle CMROではマスター構成を作成できます。要件はマスターに基づいて自動的にすべてのユニットに流れ、構成が変更されるたび履歴は更新されます。要件と実際の修理および使用結果を組み合せることで、ユニット固有の保守および構成履歴を提供できます。この構成管理により、部品の履歴をそのライフサイクルにわたって簡単に追跡できます。共通する属性に基づいて、ユニットをさらに細かいグループに分類することもできます。

企業全体にわたる工程の効率的な計画

使用状況や新しい規制要件および工程で明らかになった問題によって、保守の頻度と範囲は常に変化します。資産の信頼性と安全性を高めるため、保守計画は定期的に更新する必要があります。Oracle CMROでは、車両およびユニットベースで包括的に保守を計画およびスケジュールできます。車両保守プログラムを構築して、保守要件を作成し、保守活動をスケジュールできます。すべての事業所にわたって作業を計画し、短期間と長期間の両方の要件に対応できます。長期計画を使用することで、キャパシティとリソースの使用を最適化できます。それと同時に直近の活動に応じて、日々の調整で変更に対応することも可能です。

保守実行の最適化

Oracle CMROの使用により実行のプロセスを合理化し、作業指示の作成、リソース配置、保守履歴と構成の更新などのプロセスを簡素化できます。ジョブ作成およびジョブ完了に関連付けた基本的な保守タスクは自動化され、作業員の生産性は向上し、機体の不稼働期間を最小限に抑えることができます。結果を取得することで、規制遵守とトレーサビリティの確保を徹底できます。保守履歴は作業の完了時に更新されます。予定保守活動で指摘された内容に基づいて、新しいサービス要求および作業指示を入力できます。Oracle CMROでは、サードパーティの保守業者を相手にした部品の入出荷を実行できます。また、保守活動にかかる費用を修理サイクルにわたって請求できます。

すべてのエンジニアリング・データの一元管理

Oracle CMROを使用して、データを一元的に作成、保存および管理できます。Oracle CMROでは、電子的なストレージの利用と技術文書の配信により、企業が正しい情報にリアルタイムでアクセスし、規制遵守を徹底することが可能になります。たとえば、あらゆるソース(供給元、相手先商標製造会社、オペレータ、サードパーティの保守業者)から品質情報を入手し、この場所にまとめて保存することで、トレーサビリティを確保できます。Oracle CMROのルート管理には、個々の工程指示や一連の工程、および文書索引統合に使用できる、再利用可能なテンプレートが用意されています。これらのテンプレートでは関連するすべての工程が自動的に更新されるため、ルート情報に変更があった場合でもシステムへの問合せを実行する必要がありません。これらのプロセスを自動化することで手作業にかかるコストを削減できるため、生産性と品質の向上を図ることができます。

Oracle CMROモジュールの概要

Oracle CMROの使用により、組織は保守工程を合理化し、輸送とサービスに対する要求に対応しながら採算性を高めることができます。Oracle CMROには次のモジュールが含まれています。

ルート管理

ルート管理を使用すると、ワークカードを電子的な形式で保持できるため、ワークカードへのアクセスが容易になります。ワークカードは、タスク指示や、ジョブの実行に必要な作業見積、スキル要件、ツール、部品および資材に関する情報を技術者に提供する際に使用します。各タスク・カードを一度データベースに保存してから複数の工程で再利用することで、重複するタスクやプロセスを除外することもできます。

文書索引

文書索引モジュールを使用して、紙の文書への参照を保持しながら、技術者がデータベース内またはWeb上の電子文書にアクセスできるようにするためのリンクを含めることができます。バージョン管理のもと、すべての文書参照を保持し、規制遵守の活動を簡素化できます。また、文書参照を部品タイプや各シリアル管理部品にリンクすると、検索の手間を省けるだけでなく、供給元リストの保守が可能になり、新しい文書や改訂が使用可能になった際には配布リストに記載されているすべてのユーザーに自動的に警告を送信できます。

Enigma統合

オラクル社のCMROとEnigmaの3Cを統合することで、保守サービス事業者特有のソリューションが実現します。保守技術者はこの統合でもたらされる各種のツールを使用して、構成管理、エンジニアリング、保守計画および実行に使用するOracle CMROの広範なバック・オフィス機能を、ワイヤレス環境にあるEnigmaの文書主体の保守実行システムに接続できます。この2つの製品を組み合せることで、保守技術者はすべての保守タスクを効率的に実行できるようになり、正しい情報を使いやすい状態で適所、適時に入手できるため、高いレベルの品質を確保できます。

車両保守プログラム

車両保守プログラム・モジュールを使用して、計画済と未計画を含むすべての保守の保守要件を作成できます。ワークカードと保守文書を保守要件に関連付け、その保守要件をマスター構成、ユニット構成または製品分類に関連付ける方法で効率的に定義します。保守の期日を予測する場合は、保守要件で間隔と基準値を指定します。「影響を受ける品目のリスト」では、保守要件の影響を受けるユニットを一覧表示できます。

マスター構成

マスター構成を使用して、保守対象機器の設計上の構成を記録できます。これにより、階層内をナビゲートして組立品で使用を許可する部品を指定し、各事業所の技術者が許容部品の中から部品を選択できるようにすることができます。技術者が必要な情報に簡単にアクセスできるようにするには、文書を部品ポジションとワークカードにリンクします。マスター構成は、ユニット構成を作成するときのテンプレートとして使用できます。

ユニット構成

ユニット構成モジュールを使用すると、サービス・ライフの測定に影響する特殊な条件を考慮しつつ、機器の現行の運用上の構成を継続的に記録し、システムおよびすべてのコンポーネント部品のライフ・サイクル・サービス履歴を残すことができます。情報へのアクセスを容易にするには、シリアル管理部品の組立品内のポジションを記録し、文書を関連付けます。

航空事故の発生時には、ユニット構成を隔離(凍結)することで、対象ユニットの現在の状態に影響を与えるような構成変更を阻止できます。CMROのスーパーユーザーのみがユニット構成の隔離を要求できます。

関連トピック

『Oracle Complex Maintenance, Repair, and Overhaulユーザー・ガイド』の構成アクセス制御管理とユニット構成の操作

製品分類

製品分類モジュールを使用して、ユニットを保守活動用の様々なグループに分類し、これらの製品分類に文書や保守要件を関連付けることができます。ユニットがあるグループから別のグループに移動すると、保守計画は自動的に更新されます。

ユニット保守計画

ユニット保守計画モジュールを使用すると、稼働率の継続的な予測、ユニットのサービス残存時間の決定、および保守要件の期日の計算が可能です。予測保守要件に関連付けられた資材所要量は、Oracle Demand Planningアプリケーションを通して計画されます。

最小機器リスト(MEL)と構成標準外リスト(CDL)機能では、稼働させなくてもまたは機体に積まなくても運航の安全性に支障を来さない、構造部品以外の機器を確認できます。MEL/CDL指示はCMROの計画プロセスに追加されるため、非定例要件を延期できます。

訪問作業パッケージ

訪問作業パッケージ・モジュールを使用して、機器ベースの保守訪問定義を作成し、タスク、事業所、日付のブロックに機器を接続できます。保守要件を管理し、訪問タスク作業分解構造を使用して訪問にかかる費用を計算し、訪問の全タスクのジョブ階層を定義できます。

長期計画

長期計画モジュールを使用して、すべての施設の保守作業キャパシティを評価し、保守訪問のリソース要件を定義できます。リソースと施設の可用性に基づいて保守訪問を組織全体でスケジュールし、予測される作業で必要になるリソースとリソースのキャパシティを比較できます。訪問の保守要件に関連付けられた資材所要量は、OracleのAdvanced Supply Chain Planningアプリケーションを通してスケジュールされます。

シリアル番号予約機能を使用して、保守計画担当者や資材計画担当者は、スケジュールした保守用として特定の品目を予約できます。定義された資材所要量と、品目の状態および稼働率履歴に基づいて、品目を選択できます。

作業

作業モジュールでは、ジョブ割当および部品と資材の可用性の表示や、保守活動、ジョブ完了、資材と部品の消費の記録、および保守の遵守詳細の更新が可能です。規制要件に対応するため、品質検査結果を発行できます。計画保守訪問で指摘された未計画保守について、新規のサービス要求を開始できます。

作業モジュールを使用すると、Oracle Costingとインタフェースして、ジョブに関連付けられている時間および資材をすべて修理サイクル全体で追跡できるため、保守組織は実際のサービス費用を把握できます。

作業計画

作業計画モジュールは、保守組織のための機能豊富なサイトレベルの計画ツールです。製造現場の活動を管理する作業計画者は、人員と機器をジョブに割り当て、作業スケジュールを細かく調整し、計画外保守の調達管理と資材所要量の作成を行います。作業計画を使用すると、保守訪問に対して送付された修理用の部品を追跡できます。計画者と製造現場の管理者が計画時に作業条件を検討できるため、安全な作業環境を確保できます。

作業指示の外部処理

外部処理(OSP)を使用して、シリアル管理部品をサービス用として独立サービス組織に出荷できます。作業計画者は、サードパーティの事業者にジョブを割り当て、外部サービスとしてマークされたジョブをOSP作業指示にグループ化します。作業指示には、要求されたサービスを実行するために必要な情報がすべて記載されます。OSP作業指示の完成時に発注と出荷指示が作成されます。作業が完了すると、そのジョブが品質チェックと部品受入を担当する社内担当者に再割当てされます。

在庫サービス・オーダーの外部処理

在庫サービス・オーダーに外部処理を使用すると、訪問および実行の作業指示を作成しなくても、在庫事業所から直接サービス・オーダーを作成できます。サービス・オーダーの作成時間を短縮し、入力ミスを防ぐため、作業指示にはあらゆる情報が記載されます。この機能の使用により、サービス・オーダー担当者の生産性が高まり、サービス・オーダー・データの品質と精度が向上します。