Oracle Shop Floor Management ユーザー・ガイド リリース12.2 B72358-01 | ![]() 目次 | ![]() 前へ | ![]() 次へ |
この章のトピックは、次のとおりです。
Oracle Shop Floor Managementは、Oracleの製造アプリケーションの機能を拡張して、製造現場の複雑な情報を管理し、Oracle Manufacturingと製造現場との間のギャップをつなぎます。統合された製造現場/MES情報をエンタープライズ・レベルで提供し、製造業の卓越性と顧客対応性を融合してコア製品の機能が強化されます。Oracle Shop Floor Managementは、製造業務の遂行で情報の一貫性を保証するために、単一のデータ・リポジトリを使用します。同じ製造組織で、ショップ型製造オーダーとロット基準製造オーダーの作成とリリースが可能です。主な機能は次のとおりです。
MES/ERP (エンタープライズ・リソース・プランニング)の統合
ネットワーク工順
複雑なロット取引
ロット系統
工程歩留の原価計算
連産品の定義
拡張製造現場の実行
詳細スケジュール
プロセス・フローは、ロット基準製造オーダーの主構成部品が作成される時点で始まります。作成してリリースされたロットは、一連の工程を経て在庫位置まで進み、そこで在庫ロットになります。在庫ロットは次の部品構成表レベルに進み、新しいWIPロットになります。WIPロットは一連の工程を経て、次のセクターの在庫位置で完了します。このプロセスが、最終セクターの完了まで各セクターで繰り返されます。
この製造現場管理フローを示したのが、次の図です。
拡張製造現場の実行は、いくつもの取引ウィンドウ間を移動せずに複数の製造現場機能を実行できるインタフェースです。各種取引の実行と表示や、工場の製造現場における商品の製造の追跡に役立ちます。表示、セキュリティおよび取引など任意の役割の処理にワークステーションを構成できる他に、特定のワーク・センターに割り当てられた製造オーダーや要件を表示し、製造オーダーの実行に必要な手順を示すことができます。
詳細スケジュールは、粒度の高い組織または部門レベルで、リアルタイムのスケジュールが可能なツールです。次のタスクを実行するときに便利です。
製造オーダーのうち、計画開始日より前に完了した部分を計算し、完了していない部分のみをスケジュールします。
生産しようとしている完了品の量に対する比例基準ではなく、ロット基準で、BOMの構成部品を消費するように計画します。
順序依存設定をサポートし、1回の生産で同じ設定タイプのアクティビティをグループ化することによって、設定タイプ間での段取替えの数を最小化します。これは生産資源インスタンス・レベルでスケジュールされます。
製造現場管理のアクティビティを詳細に計画できるように、拡張ガント・チャートとプランナ・ワークベンチで使用できる情報を的確に表示します。
半導体業界でロットの一部がテストされる、ホットな(優先度の高い)テスト・ロットをサポートします。
複数のロットがまとめて処理され、マルチレベルのバッチ生産資源サポートを必要とする、バーンイン工程をサポートします。
制約付きエンジンに基づく生産資源中心のワークベンチで、次のような機能を実行します。
製造オーダーの棒グラフを、ある期間から別の期間へドラッグ・アンド・ドロップ
製造オーダーの優先度の変更
資材所要量または生産資源所要量の変更
注意: 詳細スケジュールが機能するためには、Shop Floor ManagementをOracle Advanced Planningと統合する必要があります。
ロットが取る複数のフォームを表す品目どうしの関係は、マルチレベル部品構成表として格納されます。このような品目を、そのレベルの表の主要組立品目と呼びます。主要組立品目は、それぞれ独自の工順があります。
ロット・セクターは、在庫ロット構成部品をロット基準製造オーダーに変換します。完了した製造オーダーは、次のロット・セクターの在庫ロットになります。
ロット基準製造オーダーは、「工程プル」、「プッシュ」および「擬似」供給タイプをサポートします。その他の供給タイプは現在、サポートされていません。Oracle Shop Floor Managementは現在、「組立プル」の供給タイプをサポートしていません。
擬似の組立は、資材のグループ化に使用される非在庫組立です。ショップ型製造オーダーの場合、すべての工順工程が既知です。ロット基準製造オーダーの場合、最初の工程しか既知ではありません。ロット基準製造オーダーで「擬似」供給タイプを使用すると、次のような相違があります。
「疑似工順を使用」フラグを「Yes」に設定している場合、ロット基準製造オーダーでは、工順のプライマリ・パスにある構成部品と生産資源のみが考慮されます。それ以外の場合、プライマリ・パスと代替パスにある擬似の構成部品がすべて考慮されます。
資材所要量は、最初の工程の製造オーダー作成時と、それ以降の移動またはジャンプ工程で展開されます。
キュー工程内ステップで更新工順または更新組立の取引を実行すると、現在の工程で構成部品が擬似展開されます。この賦課は手動で戻す必要があります。
擬似組立を使用する前に、Oracle Bills of Materialで次のパラメータを設定する必要があります。
疑似工順を使用: 構成部品に関連付けられた生産資源と間接費(擬似の工順工程に割り当てられる外注加工生産資源も含む)を無視するか、製造オーダーの組立に賦課するかを指定します。また、プライマリ・パスにある構成部品のみを展開するか、プライマリと代替にあるすべての構成部品を展開するかも決定します。
擬似工程連番の継承: このパラメータは、ショップ型とロット基準の製造オーダーで使用されます。擬似の工順工程連番は常に、親のネットワーク工程連番から継承されます。
次の表で、擬似に設定されたBOMパラメータに基づく擬似組立の動作を説明します。
シナリオ | パラメータの名前 | 設定 | 動作 |
---|---|---|---|
シナリオ1 | BOM: 擬似工順の使用 | Yes | プライマリ・パスの資材が展開されます。 |
シナリオ1 | BOM: 擬似工程連番の継承 | Yes | ロット基準製造オーダーは擬似工程連番を擬似ネットワークから継承しませんが、工程連番は常に親ネットワークの工程連番から継承されます。 |
シナリオ2 | BOM: 擬似工順の使用 | No | プライマリ・パスと代替パスの資材が展開されます。生産資源所要量は作成されません。 |
シナリオ2 | BOM: 擬似工程連番の継承 | No | ロット基準製造オーダーは擬似工程連番を擬似ネットワークから継承しませんが、工程連番は常に親ネットワークの工程連番から継承されます。 |
シナリオ3 | BOM: 擬似工順の使用 | Yes | 適用外 |
シナリオ3 | BOM: 擬似工程連番の継承 | No | 適用外 |
注意: Oracle Shop Floor Managementには、「擬似」供給タイプの資材を使用するときに制限があります。
最初の工程で組立の部品構成表が「擬似」供給タイプの資材を要求する場合、「ロット作成」ウィンドウでは製造オーダーを作成できず、警告メッセージが表示されます。
擬似資材は常に非在庫品目です。
「資材取引」ウィンドウを使用して、「擬似」供給タイプの資材を更新することはできません。
半導体製造会社のダイ・バンクでは、部品構成表の構成部品数量フィールドで、少なくとも小数点以下38桁の計算と入力が必要です。逆数の使用を取得するには、「部品構成表」ウィンドウの「逆数の使用」フィールドで、構成部品の逆数使用をモデル化します。組立ごとに得られる数量は、製造オーダーについて構成部品の合計所有数量を正確に決定できるように、丸められません。組立ごとに正確な端数を格納すると、望ましくない構成部品の使用による差異が回避されます。これは、製造数量が多いロット基準製造オーダーで発生する可能性があります。これにより、連産品と部品構成表の定義や更新が簡単になります。
逆数の使用を取得する手順
「部品構成表」ウィンドウに移動します。
「品目」フィールドに品目番号を入力します。
「構成部品」フィールドに構成部品名を入力します。
「逆数の使用」フィールドに、構成部品の逆数値を入力します。
これで、必要な構成部品数量が「数量」フィールドに正確に表示されます。
既存の部品構成表またはBOMレポートを問い合せるとき、逆数の使用値は構成部品数量の逆数として表示されます。
逆数の使用は「ロット作成」、「ロット基準製造オーダー」、WIP資材所要量および構成部品代替の各ウィンドウにも表示されます。
Oracle Shop Floor Managementの「計画詳細」には、プライマリ構成部品と代替構成部品の両方について逆数の使用が表示されます。
Oracle Shop Floor Managementには、ロット基準で構成部品を定義し、製造オーダー数量とは関係なく固定数量を出庫する機能があります。製造数量にかかわらず合計所要数量が一定に維持されるように、部品構成表の構成部品について、固定数量の使用を定義できます。この情報は、特定の製造オーダーで使用するためにコピーを作成するとき、品目部品構成表にコピーされます。
「部品構成表」ウィンドウを使用すると、資材所要量を計算する「基準」のリスト・ボックスで、基準タイプとして「品目」または「ロット」を設定できます。
基準を「品目」に設定した場合、資材所要量は「製造オーダー数量」によって決まります。
基準を「ロット」に設定した場合、資材所要量はBOMで指定したとおりの固定数量となり、製造オーダー数量には依存しません。
ロット基準構成部品は、品目基準構成部品と類似した任意の供給タイプを取ることができます。親品目の製造数量とは関係なく、構成部品品目の固定数量の使用を定義する必要があります。
「組立当り数量」の値は、Oracle Work in Progressにおける構成部品の歩留ファクタとは関係なく、製造オーダー・レベルで保持できます。このパラメータを使用すると、計画目的の部品構成表で、構成部品の歩留ファクタと所要数量を別々に使用できるようになります。あるいは、製造現場の実行に適切でなければ、歩留と減損を除外し、構成部品関連の取引が膨大になる可能性がある小数数量を排除します。この機能は、ショップ型製造オーダー、ライン型製造オーダー、フロー・スケジュールおよびロット基準製造オーダーに適用されます。
デフォルトでは、「材料」タブにあるWIPの各パラメータで、「構成部品歩留を含む」チェック・ボックスが選択されています。つまり、バックフラッシュ数量を導出して既存のシステム動作を維持する際、歩留が考慮されるということです。構成部品の歩留は、計算に含めることも除外することもできます。除外すると、バックフラッシュ数量が不正に大きくなって、実際の使用より大きくなるのを防ぐことができます。
参照: Oracle Work in Process User's Guide、構成部品の歩留と減損に関する項。
Oracle Shop Floor Managementには、ロット基準製造オーダーのために柔軟な工順の機能が用意されています。このような工順を使用するのは、半導体業界などのビジネスにおいて、製造オーダーの作成時にその製造オーダーのパスが常に既知または認識されるとは限らない場合です。初期工程に従って、後続の工程パスが決まります。
柔軟性に富むネットワーク工順を使用すると、製造オーダーが取ると想定される工程パスをすべて定義できます。パスはネットワーク化して事前定義されるため、動的で柔軟な工程に対応します。多くの候補が工順ネットワークの一部として定義されるので、実行された製造オーダー内で直前の工程の結果に基づいて、任意の候補を選択できます。
工順ネットワークは、開始工程と終了工程がそれぞれ1つである必要があります。生産サイクルで製造オーダーが進むにつれて、WIPロットが実際に移動した工程の履歴が構築され、ネットワークに定義されている候補から選択できるようになります。
工程のネットワークは、製造現場のモデル化、想定される再処理ポイントの定義、またはリニア・パスの定義に使用できます。これは、工順ネットワークを構成する一連のノードとパスで構成され、「ロット基準製造オーダーの移動」ウィンドウで、製造オーダーが横断できる工程を決定する際に参照されます。
ネットワーク工順は、サード・パーティの工順ビルダーからOracle Shop Floor Managementにインポートすることもできます。ネットワーク工順のインポートと変更が可能な、完全なインタフェース・サポートを使用できます。
WIPロット移動取引は、ネットワーク工順と工程内ステップを参照します。ネットワーク工順に定義されていない他の工程にジャンプできる他に、任意の工程で製造オーダーを保留にすることもできます。
ロットのフローは、最初のセクターの主構成部品に対してWIPロットが作成され、リリースされた時点で始まります。完了すると在庫ロットになり、次のセクターに主構成部品として出庫できるようになります。Oracle Shop Floor Managementには、次のようなロット取引があります。
ネットワーク工順の移動
工程のジャンプ
ロットの分割
ロットのマージ
ロットの名前変更
ボーナス・ロット
換算ロット
転送ロット
工程保留
ロット基準資材のサポートを使用すると、製造オーダー製造数量にかかわらず合計所要数量が一定に維持されるように、部品構成表(品目部品構成表)の構成部品について、固定数量の使用を定義できます。品目部品構成表で定義したこの情報は、特定の製造オーダーまたは計画で使用するために構成表のコピーを作成するときにコピーされます。つまり、ロット基準資材の使用数量は、ロット数量や製造オーダー数量にかかわらず固定ということです。
ロット系統を使用すると、系統、つまりロットの履歴生産情報を表示できます。これには、ロットが移動していったセクター、および関連するロット取引について詳細なロット情報が示されます。また、系統は前方向と後方向のどちらにも表示できます。「ロット系統」ウィンドウで履歴情報を表示する「系統の表示」の詳細は、「系統と「使用箇所」ビューの表示」を参照してください。
ロットの欠陥をトレースし、外注加工レベルでロットが予定から変更された可能性を追跡することもできます。系統は、製品のライフ・サイクルをすべて追跡します。
ロット属性は、ロット番号で追跡できる重要な情報要素です。Shop Floor Managementでは、多くの属性を追跡できます。ロット属性は説明的なフレックス・フィールドとして入力され、品目別に属性を追跡したり、検証要件の属性を定義できます。
ロットの開始から完了まで、実行中のロット基準製造オーダーについて属性を取得し追跡できます。属性は、ロットの作成中に在庫ロットからロット基準製造オーダーに転送でき、それがさらに実行を通じて追跡されます。完了した製造オーダーは、結果としての在庫ロットに転送されます。
製造オーダーの実行中に、仕掛(WIP)ロットの属性を取得できます。完了した製造オーダーは、結果としての在庫ロットに転送されます。
分割やマージなどのWIPロット取引を実行しているとき、親または代表製造オーダーからのロット属性が新しいロットに転送されます。その後、必要に応じて結果製造オーダーでロット属性を更新できます。移動取引中にロット属性を取得または更新することもできます。「ロット系統」には、製造オーダーに関連付けられているロット属性の詳細が表示されます。製造現場取引にOSFM組織が設定されている場合は、資材ワークベンチからの詳細も表示できます。
Oracle Shop Floor Managementでは現在、次の属性機能はサポートされていません。
Oracle Advanced Planning and Schedulingを使用した属性基準の計画
カンバン補充を使用した属性の取得
Oracle Shop Floor Managementの連産品は、Oracle Bills of Materialの標準定義を拡張します。「連産品の定義」ウィンドウを使用すると、品目を複数の最終品目の主構成部品(たとえば、複数のダイ等級を生産する無等級のダイなど)として定義できます。主最終品目と、すべての最終品目の予定配分を定義します。「連産品の定義」ウィンドウでこの情報を入力すると、最終品目の部品構成表が自動的に作成されます。異なる期間にわたる連産品の分割率も定義できます。
工程歩留の原価計算では、組立の原価積上に工程歩留の原価を含めることができます。また、ロット基準製造オーダーの工程別に、工程歩留に関連する差異を追跡することもできます。Oracle Shop Floor Managementの原価計算には、次の機能があります。
歩留の定義: 歩留を工程レベルで定義し、工程ごとに累積歩留や累積歩留戻しを計算できます。
原価計算のサポート—: 減損ではなく工程における固定歩留を使用して、原価積上で資材、間接費、生産資源の原価を計上します。
注意: Oracle Shop Floor Managementで使用されるのは、標準の原価計算方法のみです。
Oracle Shop Floor Managementは、統合された製造現場情報をエンタープライズ・レベルで提供し、製造業の機能と顧客対応性を融合して、Oracleの製造アプリケーションの機能を拡張します。この統合情報によって、製造現場の製造オーダー・リリースでスケジュールと実行構成部品が連携されます。
Oracle Shop Floor Managementは、次のOracle Applications製品と統合されます。
Inventory
Bills of Material
Work in Process
Cost Management
Quality
Warehouse Management
Advanced Supply Chain Planning
注意: Oracle Shop Floor Managementは、Oracle Master Scheduling/MRPとは統合されません。
Oracle Warehouse Managementでルール・ベース・システムを使用すると、ロット基準製造オーダーについて構成部品ピッキング取引を実行できます。「構成部品ピック・リリース」ウィンドウは、所要量を選択し、移動オーダーを作成するために使用します。これはグラフィカルなワークベンチで、アクセスしている製造オーダーや計画のタイプに該当するフィールドが表示されます。ロット基準製造オーダーの構成部品ピッキングには、次のような特徴があります。
資材ソースは、Oracle Inventoryの配賦ルール、またはOracle Warehouse Managementのルール推奨に基づきます
ピックされるロット基準製造オーダーのステータスは、「リリース済」か「完了 - チャージ可」です
構成部品は、ネットワーク工順に基づいてピックされます
移動オーダー数量は、工程ごとの組立に構成部品の数を掛けて計算します。または、
工程内ステップ(「キュー」、「実行」、「移動待」、「拒否」および「廃棄」)のそれぞれで数量すべての合計に組立ごとの構成部品の数量を掛けて計算します
関連トピック
Oracle Work In Process User's Guide、構成部品ピッキングの概要に関する項
Oracle Work In Process User's Guide、「構成部品ピック・リリース」ウィンドウでの移動に関する項
Oracle Work In Process User's Guide、「構成部品ピック・リリース」ウィンドウの使用方法に関する項
Oracle Warehouse Managementがインストールされている場合は、完了を追跡するライセンス・プレート・ナンバーの機能を使用できます。ライセンス・プレート・ナンバーは、受入、仕掛、在庫、出荷および移動の際にコンテナの内容を追跡する一意の識別子です。ライセンス・プレート・ナンバーに対して組立完了を実行できます。コンテナの系統には、各ライセンス・プレートの内容と取引履歴が示されます。
関連トピック
Oracle Warehouse Managementユーザー・ガイド、LPNとクロスドック棚入の説明に関する項
Oracle Warehouse Managementユーザー・ガイド、ライセンス・プレート管理の説明に関する項
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