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Oracle Advanced Pricingインプリメンテーション・マニュアル
リリース12
E05612-01
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複数通貨価格表および基本契約

この章では次のトピックについて説明します。

複数通貨価格表および基本契約の概要

Oracle Advanced Pricingでは、単一通貨価格表と複数通貨価格表の両方がサポートされています。単一通貨価格表の場合は、価格表ごとに1つの通貨が定義されます。複数通貨価格表の場合は、1つの基準通貨の価格表に、価格を変換するための換算係数とルールを定義した通貨換算リストが添付されています。

組織でサポートする価格表計画を決定する必要があります。Oracle Advanced Pricingには、既存の価格表を単一通貨価格表から複数通貨価格表に変換するためのプロファイル・オプションとコンカレント・プログラムがあります。ただし、このプロファイルを有効にして価格表を変換した後は、複数通貨価格表ではない価格表には戻さないでください。プロファイルを「No」に戻すと、換算基準が使用された場合に予期しない結果となります。Oracleでは、設定を「No」に戻した場合についてはサポートしていません。

単一通貨価格表

単一通貨価格表は、Oracle Advanced Pricingのデフォルト設定です。この価格表は、ビジネスにおいて価格を通貨別に保守し、定義される価格の間に関連がない場合に使用します。

複数通貨価格表

複数通貨価格表を使用した価格設定方法では、品目に基準となる単一の価格を基準通貨で設定し、換算レートまたは算式を使用して、その価格を受注通貨での価格に変換することができます。価格設定エンジンの実行時に、価格設定エンジンにより受注から通貨が取得され、この通貨と照合する基準通貨または換算通貨の価格表が検索されます。設定されている換算ルールに基づいて、価格が基準通貨から変換され、受注通貨が計算されます。

複数通貨価格表では指定した基準通貨が使用され、基準通貨の価格表の値に対し、他の通貨への換算が適用されます。さらに、複数通貨価格表を使用すると、基準価格表の値に価格表明細の値を変更せずに適用できるマークアップ換算などの重要な機能をいくつか使用できます。これによって、保守する必要がある価格表の数やデータ記憶域を大幅に削減できます。

「通貨換算」ウィンドウは、換算基準の定義に使用されます。シード済の換算タイプは、固定、算式、ユーザー定義、直物、EMU固定、取引および法人です。

注意: これらのシード済換算タイプの中には、Oracle General Ledgerのインストールを必要とするものがあります。さらに、算式機能を使用すると、Oracle以外に格納されている他の換算レート情報へもリンクできます。

属性

同じ基準通貨に対して、特定の属性に基づいて複数の換算基準を定義できます。属性の詳細は、このマニュアルの「属性の管理」の章および『Oracle Advanced Pricingユーザーズ・ガイド』を参照してください。

マークアップ値およびマークアップ算式

マークアップ基準は、基準通貨も含め、通貨の定義ごとに定義できます。このマークアップは、金額またはパーセントの固定値で設定することも、あるいは算式に基づいて設定することもできます。算式の詳細は、『Oracle Advanced Pricingユーザーズ・ガイド』の「算式」を参照してください。

端数処理

複数通貨価格表の使用例

次の例は、カナダ・ドル(CAD)で受注した品目が、複数通貨換算リストでどのように米ドルに換算されるかを示したものです。この例では、次の複数通貨換算リストと基準価格表の設定が使用されます。

複数通貨換算リストの設定
ヘッダー・レベルのフィールド名
複数通貨換算リスト名 Test Multicurrency Conversion List
通貨(基準通貨) USD
基準丸め処理先 - 2
基準マークアップ値 %
基準マークアップ値 10
基準マークアップ算式 「My Base Markup Formula」で、式は1/2(ステップ1をステップ2で除算)。各ステップは次のとおりです。
  • ステップ1は、定価タイプです。



  • ステップ2は、モディファイア値タイプです。


明細レベルのフィールド名
換算先通貨 CAD
換算タイプ FORMULA
算式(換算) 「My Conversion Formula」で、式は1*2。各ステップは次のとおりです。
  • ステップ1は、定数タイプで値は25です。



  • ステップ2は、定価タイプです。

マークアップ演算子 AMT
マークアップ値 50.12345
端数処理ファクタの換算 -3
丸め処理先 -2

次の表に、この例で使用される基準価格表の設定を示します。

基準価格表の設定
フィールド名
名前 Base PL
通貨 USD
品目 品目A
定価 20
動的算式 「My Base Price List Line Formula」で、式は1*2。各ステップは次のとおりです。
  • ステップ1は、定価タイプです。



  • ステップ2は、定数タイプで値は30です。

使用例1

品目Aを1単位、カナダ・ドル(CAD)で受注したとすると、価格は次のように決定されます。

  1. 基準価格表Base PLの品目Aの価格は、動的算式1 * 2を使用して計算されます。ステップ1は定価で、ステップ2は定数です。品目Aの基準価格表明細上の定価は20で、定数が30であるため、定価は20 * 30 = 600になります。

  2. 品目Aは、基準通貨のUSDではなくCADで注文されているため、基準マークアップ値、基準マークアップ演算子、基準マークアップ算式および基準丸め処理先は、この計算では使用されません。かわりに、換算明細レベルの情報が使用されます。

    使用される定価は、ステップ1の結果である600です。

    したがって、新しい定価は、25 * 600 = 15,000になります。

  3. マークアップ算式「My Conversion Markup Formula」で、式1/2 + 3が使用されます。各ステップは次のとおりです。

    マークアップは次のように計算されます。

    15,000/5,000 + 50.12345

    = 3 + 50.12345

    = 53.12345

    定価はステップ2から取得され、モディファイア値は換算明細のマークアップ値であることに注意してください。最終的なマークアップ値は53.12345で、マークアップ演算子はAMTです。

    したがって、新しい定価は15,000 + 53.12345 = 15053.12345になります。

  4. 品目Aがサービス品目でない場合、ステップ2の換算後定価に対して(該当する場合に)マークアップが適用された後、ステップ3の結果に対して端数処理ファクタの換算の値-3が適用されます。

    注意: サービス品目の場合は、このステップは省略されます。そのため、新しい定価は15053.123になります。

    したがって、新しい定価は15053.123になります。

  5. 換算明細の「丸め処理先」がステップ4の結果に適用されます。この丸め処理先は、定価およびネット価格に適用可能ですが、どのように適用されるかはプロファイル・オプション「QP: 販売価格端数処理オプション」の値によって決まります。

    その結果、新しい定価は、15053.123が端数処理されて15053.12となります。

注釈

使用例2

品目Aを1単位、基準価格である米ドル(USD)で受注したとすると、価格は次のように決定されます。

  1. 基準価格表の品目Aの価格は、動的算式1 * 2を使用して計算されます。ステップ1は定価タイプで、ステップ2は定数タイプです。基準価格表に設定されている品目Aの定価は20で、定数は30です。

    したがって、計算後の定価は20 * 30 = 600になります。

  2. 品目Aは基準通貨のUSDで注文されているため、基準マークアップ値、基準マークアップ演算子、基準マークアップ算式および基準丸め処理先のみがこの計算で使用されます。換算明細レベルの設定値は使用されません。

    式1/2(ステップ1をステップ2で除算)を持つ基準マークアップ算式「My Base Markup Formula」が定義されているため(ステップ1は定価タイプで、ステップ2はモディファイア値タイプ)、基準マークアップは、600 / 10 = 60として計算されます。定価はステップ1から取得され、ステップ2は基準マークアップ値になります。基準マークアップ演算子は%であるため、新しい定価は600 + 600の60% = 600 + 360 = 960になります。

  3. ステップ2の結果に、基準丸め処理先の値-2が適用されます。この基準丸め処理先は、定価およびネット価格に適用可能ですが、どのように適用されるかは、プロファイル・オプション「QP: 販売価格端数処理オプション」によって決まります。

複数通貨価格表を使用した新規インストール

プロファイル・オプション「QP: 複数通貨インストール済」を設定して、使用する価格表のタイプを管理できます。

次に、複数通貨価格表を設定するためのステップを示します。

  1. システム管理者職責で、「プロファイル」>「システム」>「QP: 複数通貨インストール済」にナビゲートし、「Yes」を選択します。

  2. Oracle Pricingマネージャ職責で、「価格表の設定」にナビゲートし、基準通貨のマスター価格表を作成します。

    注意: 「QP: 複数通貨インストール済」が「Yes」に変更される前に単一通貨価格表が作成されていた場合は、コンカレント・プログラム「複数通貨換算基準で価格表の更新」を実行する必要があります。このプログラムの実行によって、既存のすべての価格表および基本契約のフォームが複数通貨用に変換され、「複数通貨換算の設定」フォームが有効になります。

単一通貨価格表から複数通貨価格表へのアップグレード

単一通貨価格表をすでに使用していて、複数通貨価格表および基本契約にアップグレードする場合は、次の手順を実行する必要があります。

ステップ1: プロファイル・オプション「QP: 複数通貨インストール済」の設定

プロファイル「QP: 複数通貨インストール済」によって、使用する価格表のタイプが管理されます。このプロファイルを「Yes」に設定します。この結果、既存のすべての価格表と基本契約を、複数通貨のフォームおよび機能に更新するコンカレント要求プログラムを実行できます。

ステップ2: コンカレント要求「複数通貨換算基準で価格表の更新」の実行

複数通貨機能の使用を開始するには、コンカレント・プログラム「複数通貨換算基準で価格表の更新」を1回のみ実行する必要があります。このプログラムでは、次のことが実行されます。

このプログラムを実行しないと、価格設定エンジンは現在の価格表を複数通貨価格表として使用できないため、これは必須の手順です。

5つの価格表が設定された例を次の表に示します。

通貨 丸め処理先
USD -2
USD -2
USD -3
FRF -1
CAD NULL

コンカレント・プログラムによって、次の4つの通貨換算リストが作成されます。

通貨 基準丸め処理先
USD -2
USD -3
FRF -1
CAD NULL

コンカレント・プログラムの実行後、すべての価格表と基本契約で複数通貨が使用可能になります。これで、追加の換算先通貨とその換算を追加できます。

複数通貨換算リストを作成する場合の実装に関する決定事項

複数通貨価格表を使用する前に、次のガイドラインを考慮する必要があります。

価格表の結合

価格表とその通貨換算リストを作成またはマージする前に、単一の価格表を1つ使用するか、または複数作成する必要があるかを決定する必要があります。

次の同一属性が設定されている場合は、単一の基準通貨価格表を使用して、換算対象の他の様々な通貨で定義されている価格表を置換できます。

単一通貨で定義されている価格表の価格表明細の値の基準は、換算リストの添付先である単一の複数通貨価格表の基準通貨と同じである必要があります。同じでない場合は、同じ換算先通貨に対する属性に基づいて、複数の換算基準を定義する必要があります。

単一通貨価格表の結合の例:

選択した単一通貨価格表で、クオリファイアおよび品目は同一です。すべての単一通貨価格表には、USD価格表に基づいて換算された値である価格表明細値が設定されています。CADで定義されている価格表以外のすべての価格表では、それぞれの換算タイプが全品目に対して等しく適用されています。次の表に示すように、CAD価格表の明細値である「固定」換算レートは2ですが、品目Cに対してのみ、換算レート1.5の値が設定されています。

価格表 = USD 価格 価格表 = CAD 価格 =
全品目 -- 全品目 -- 2
品目A 100 品目A 200 2
品目B 200 品目B 400 2
品目C 200 品目C 300 1.5

次の表で、換算タイプに相当する価格表の値で事前に設定されていたMXN、JPYおよびEuroの各価格表は、設定によって移行されます。しかし、CADで定義されている価格表の場合は、換算タイプが同じ「固定」であっても、同じ固定値で変換されていなかった品目について、換算明細を設定するための追加手順が必要になります。

通貨換算は、添付先の基準通貨価格表の価格表値に適用されます。

基準通貨(USD) 換算タイプ 固定値 属性コード 属性値 開始日 終了日 優先
換算先
通貨(CAD)
固定 2 -- -- 01/01/02 112/31/02 2
換算先
通貨(CAD)
固定 1.5 品目番号 品目C 01/01/02 12/31/02 1
換算先
通貨(MXN)
法人 -- -- -- 01/01/02 12/31/02 --
換算先
通貨(JPY)
法人 -- -- -- 01/01/02 12/31/02 --
換算先
通貨(Euro)
直物 -- -- -- 01/01/02 12/31/02 --

価格表の無効化

複数通貨換算リストとのマージが正常に完了した後は、その価格表を無効化する必要があります。

端数処理

複数通貨価格表の端数処理に影響を与える端数処理プロファイルが3つあります。これらのプロファイルについては、このマニュアルの「プロファイル・オプション」で説明されています。

通貨

Oracle General Ledgerで次のことを定義する必要があります。

マークアップおよび換算の算式

マークアップおよび換算タイプ「算式」に対して、算式を作成し、使用できます。設定の詳細は、『Oracle Advanced Pricingユーザーズ・ガイド』を参照してください。

複数通貨価格表で算式を使用する場合、いくつか制限事項があります。

属性

属性タイプ「製品」、「価格設定」および「クオリファイア」に対して異なる属性値を使用すると、同じ換算先通貨、開始日および終了日に対して複数の換算を指定できます。

優先

この優先は、属性の優先とは異なります。

ユーザーが設定するこの優先は、「通貨換算基準」ウィンドウにのみ適用されます。換算先通貨、開始日、終了日が同じで、属性値が異なる場合に複数の換算を設定するときは、このフィールドに優先値を入力する必要があります。複数の属性が呼出し側アプリケーションから渡された場合、換算のために価格設定エンジンによって最小の優先値の属性が選択されます。

換算先通貨 換算タイプ 属性コード 属性値 開始日 終了日 優先
JPY 固定 品目番号 AS54888 3/1/01 3/31/01 1
JPY 日次 全品目 全て 3/1/01 3/31/01 2

この例では、品目AS5488が呼出し側アプリケーションから渡されると、品目番号=「AS54888」に対して定義された換算が価格設定エンジンによって使用されます。これは、この換算の優先値が1であり、全品目=「全て」の優先値2と比較して小さいためです。

関連トピック

『Oracle Advanced Pricingユーザーズ・ガイド』の「複数通貨換算リスト」の章

「価格設定」ウィンドウでのコンテキストと属性の作成

優先と最善価格

複数通貨価格表を他のOracle製品と連携して使用する方法

複数通貨価格表機能は、Oracle Order Managementと完全に統合されています。この機能を使用する前に、Oracle Advanced Pricingと統合されている他のOracle製品を確認して、その製品がこの機能をサポートする時期を確認する必要があります。現時点では、これらの製品には、Oracle iStore、Oracle Order Capture、Oracle QuotingおよびOracle Contractsがあります。

Oracle Advanced Pricingで複数通貨を使用可能にしていて、複数通貨価格表をまだサポートしていない他のOracle製品を使用している場合は、呼出し側アプリケーションが価格表を渡したときに、価格設定エンジンは価格表の基準通貨を受注通貨と照合します。価格表が渡されない場合、価格設定エンジンは、基準通貨が受注通貨と一致する価格表を探します。複数通貨価格表の換算通貨は検索しません。つまり、この場合は使用される単一基準通貨ごとに価格表を定義および保守する必要があります。