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Oracle Financialsインプリメンテーション・ガイド
リリース12
E05604-01
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会社間および会社内貸借一致

この章の内容は、次のとおりです。

概要

会社間組織の2つの関連する法的エンティティ間で取引が発生した場合、または同じ法的エンティティ内の2つのグループ間で取引が発生した場合は、組織の連結財務諸表を準備する際にそれらの取引による残高を消去するか、適切に修正する必要があります。会社間の取引を適切に消去しないと、関連するパーティ間の活動が含まれるなど、誇張されて誤った財務結果となり、違法になる可能性があります。

会計期間のクローズ時に会社間取引を効率的に識別して消去するために、多くの組織では、特定の勘定科目を使用してそれらの取引を記帳します。これによって、すべての会社間会計が特定の勘定科目に分離されるため、連結プロセスの実行が容易になります。会社間勘定は、勘定体系設定プロセスの一部として定義する必要があります。それらの勘定科目を識別することで、組織では、会社間取引として識別された取引を特別な勘定科目に記帳できます。実装時に、会社内貸借一致に使用する勘定科目も定義する必要があります。

会社間および会社内会計のニーズに対応するソリューションには、次の2種類があります。

会社間設定情報

会社間勘定および会社内貸借一致ルールを設定する前に、次の設定ステップを完了する必要があります。

参照: 『Oracle Financialsインプリメンテーション・ガイド』の「会計設定の作成」

会社間設定には、次のステップが含まれます。

注意: 使用している勘定体系について、同じセグメントを指定しないでください。指定すると、貸借一致APIで会社間セグメント値を正しく生成できなくなります。

会社間貸借一致

会社間仕訳には、異なる法的エンティティにマップされている貸借一致セグメント値が含まれています。会社間仕訳は、会社間勘定を使用して法的エンティティごとに貸借一致させます。貸借一致APIでは、関連する有効日範囲で定義された会社間勘定を使用します。複数の勘定科目が同じ日付範囲で定義されるため、貸借一致APIでは、「貸借一致に使用」インジケータでフラグ設定された勘定科目を選択します。相殺する法的エンティティの借方は、会社間売掛/未収金勘定に入ります。相殺する貸方は、法的エンティティの会社間買掛/未払金勘定に入ります。

会社間勘定は、法的エンティティ・レベルで定義される場合があります。つまり、仕訳で使用される法的エンティティの指定貸借一致セグメント値に関係なく、取引法的エンティティごとに、異なる取引先法的エンティティに対して異なる会社間勘定が定義されます。この場合、取引貸借一致セグメント値および取引先貸借一致セグメント値は、その定義には明示的に指定されず、「すべて」に設定されます。

会社間勘定は、法的エンティティの貸借一致セグメント・レベルで定義される場合があります。つまり、取引法的エンティティでは、取引先法的エンティティおよび取引先貸借一致セグメント値に応じて、取引貸借一致セグメント値ごとに異なる勘定科目を使用できます。この場合は、取引貸借一致セグメント値または取引先貸借一致セグメント値が会社間勘定定義に明示的に指定されます。

会社間仕訳には様々なタイプがあります。貸借一致APIは、最初に、法的エンティティに関して会社間仕訳のタイプ(1対1、1対多、多対1または多対多)を判断します。会社間貸借一致の場合は、精算会社を使用せずにすべての法的エンティティを相互に要約ネットで貸借一致させます。

次の例では、1対1仕訳とその貸借一致方法について考えてみます。

会社間貸借一致の例

貸借一致セグメント値10は、法的エンティティ1(LE 1)にマップされています。貸借一致セグメント値20は、法的エンティティ2(LE 2)にマップされています。この例の勘定体系には、貸借一致、勘定科目および会社間の3つのセグメントがあります。

法的エンティティ1は、社内元帳および社内勘定体系を使用します。

取引先法的エンティティ 勘定科目 タイプ
LE 2 10-2000-20 会社間買掛/未払金

法的エンティティ2は、社内元帳および社内勘定体系を使用します。

取引先法的エンティティ 勘定科目 タイプ
LE 1 20-4000-10 会社間売掛/未収金

貸借一致APIは、次の仕訳を貸借一致させる必要があります。

仕訳明細 勘定科目 借方 貸方
1 10-5200-00 1800.00  
2 20-5000-00   1800.00

APIは、10と20が異なる法的エンティティに属していると判断します。この仕訳には1つの借方法的エンティティ(10)と1つの貸方法的エンティティ(20)があるため、1対1の仕訳になります。APIは借方法的エンティティから開始します。貸借一致した仕訳を次に示します。

仕訳明細 勘定科目 借方 貸方 注釈
1 10-5200-00 1800.00   当初明細
2 20-5000-00   1800.00 当初明細
3 10-2000-20   1800.00 法的エンティティ2(貸借一致セグメント値20)への会社間買掛/未払金
4 20-4000-10 1800.00   法的エンティティ1(貸借一致セグメント値10)からの会社間売掛/未収金

会社間勘定は、同じ会社内の法的エンティティ間での自動会計を提供するために定義されます。

重要: 会社間機能を使用する前に、会社間売掛/未収金勘定および会社間買掛/未払金勘定を定義する必要があります。

会社間勘定を定義する前に、取引法的エンティティ(開始法的エンティティ)および取引先法的エンティティ(終了法的エンティティ)を選択する必要があります。

会社内貸借一致ルール

同じ法的エンティティ内の貸借一致セグメント値間、または法的エンティティ・コンテキストが存在しない貸借一致セグメント値間の仕訳に貸借一致明細を作成するには、会社内貸借一致ルールを使用します。

元帳に対して「会社内貸借一致使用可」オプションが選択されている場合は、複数の貸借一致セグメント値が取引または仕訳に存在するときに会社内貸借一致ルールが使用されます。各貸借一致セグメント値の貸方と借方の金額が差引ゼロにならない場合は、General Ledgerに仕訳を転記できません。貸借一致ルールを設定し、エンティティ全体の仕訳を貸借一致させるこのオプションを使用可能にすると、それらの仕訳を自動的に貸借一致させることができます。

仕訳を自動的に貸借一致させる場合は、会社内貸借一致ルールを定義する必要があります。必要な数の貸借一致ルールを定義し、各貸借一致ルールに1つ以上の会計ルールを設定できます。貸借一致は自動化されたプロセスであるため、処理を進めるには、1つ以上の貸借一致ルールと1つ以上の会計ルールが必要です。貸借一致させる元帳と法的エンティティ用のデフォルトの貸借一致ルールは、仕訳ソース「その他」と仕訳カテゴリ「その他」で定義する必要があります。各貸借一致ルールのデフォルトの会計ルールは、借方貸借一致セグメント値「その他全て」と貸方貸借一致セグメント値「その他全て」で定義します。

会社内会計では、借方貸借一致セグメントと貸方貸借一致セグメントの両方を定義できます。これによって、各貸借一致関係を正確に制御できます。指定貸借一致セグメント値で表される異なる会社内取引先ごとに、異なる借方勘定科目と貸方勘定科目を指定できます。

明示的に定義されていない会社内取引関係すべての貸借一致セグメント値で同じ貸方勘定/借方勘定を使用する場合は、貸借一致セグメント値として「その他全て」を使用することもできます。

特定の借方貸借一致セグメント値と貸方貸借一致セグメント値を設定する場合は、割り当てられた借方勘定と貸方勘定の組合せが使用されます。「その他全て」を使用する場合は、適切な取引先貸借一致セグメント値によって勘定科目組合せの貸借一致セグメント値が置換されます。

「要約ネット」または「詳細」の選択時に、貸借一致APIで使用するレベルを決定することもできます。

多対多の仕訳を貸借一致させる場合は、取引に純借方および純貸方のある複数の貸借一致セグメント値が存在するため、貸借一致セグメント値間の取引関係を判断するのは不可能です。この場合は、精算貸借一致セグメント値またはデフォルト・ルールを使用するかどうかを決定して、これらの取引を処理できます。

会社内貸借一致の例

この例の勘定体系には、貸借一致、勘定科目および会社間の3つのセグメントがあります。

会社内貸借一致ルール

借方貸借一致セグメント値 貸方貸借一致セグメント値 借方勘定 貸方勘定
01 02 01-4102-02 02-2201-01
02 01 02-4201-01 01-2102-02
01 その他全て 01-4100-99 99-2200-01
その他全て 01 99-4200-01 01-2100-99
その他全て その他全て 99-4000-99 99-2000-99

仕訳1:

貸借一致セグメント値 借方 貸方 明細
13 100.00   当初明細
03   100.00 当初明細

貸借一致セグメント値13と03に対して特定のルールが定義されています。APIでは、「その他全て」-「その他全て」ルールを使用して次の貸借一致明細を作成します。貸借一致の結果は、次のとおりです。

勘定科目 借方 貸方 明細
03-4000-13 100.00   借方貸借一致明細
13-2000-03   100.00 貸方貸借一致明細

仕訳2:

貸借一致セグメント値 借方 貸方 明細
01 100.00   借方貸借一致明細
02   100.00 貸方貸借一致明細

借方の位置にある貸借一致セグメント値02と貸方の位置にある貸借一致セグメント値01に対する特定のルールが定義されていないため、APIでは、02-01ルールを使用して次の明細を作成します。貸借一致の結果は、次のとおりです。

勘定科目 借方 貸方 明細
02-4201-01 100.00   借方貸借一致明細
01-2102-02   100.00 貸方貸借一致明細

参照: 『Oracle Advanced Global Intercompany System User's Guide』の「会社間貸借一致ルールの作成」ページに関する項

会社間貸借一致エンジン

貸借一致APIは、Oracle General LedgerおよびOracle Subledger Accountingで使用され、特定の貸借一致セグメント値の組合せに必要な貸借一致明細を提供します。このAPIは、「会社内貸借一致ルール」ページと「会社間勘定」ページに定義されている設定に従って、会社内明細(同じ法的エンティティ内の貸借一致セグメント値間)と会社間明細(異なる法的エンティティに属する貸借一致セグメント値間)の両方を処理します。同じ取引に会社間明細と会社内明細の両方がある場合、貸借一致APIは法的エンティティ間の会社間貸借一致を実行し、次に、各法的エンティティ内の貸借一致セグメント値間の会社内貸借一致を実行します。これまで、貸借一致明細はGeneral Ledgerに転記されるまで決定されませんでした。

貸借一致APIは、General LedgerおよびOracle Subledger Accountingで使用され、「会社内貸借一致ルール」ページに定義されている貸借一致ルールに基づいて仕訳明細を自動的に作成します。貸借一致APIは、転記前にGeneral Ledgerによって呼び出され、補助元帳仕訳の作成時にSubledger Accountingによって呼び出されます。

次の表に、様々なタイプの会計設定を示します。

エンティティ 会計設定A 会計設定B 会計設定C 会計設定D
法的エンティティ1 貸借一致セグメント値01、11 貸借一致セグメント値の割当なし 貸借一致セグメント値01、11 貸借一致セグメント値の割当なし
法的エンティティ2 貸借一致セグメント値02、22 貸借一致セグメント値の割当なし 貸借一致セグメント値02、22 貸借一致セグメント値の割当なし
元帳 貸借一致セグメント値03、33 貸借一致セグメント値01、02、03 貸借一致セグメント値の割当なし 貸借一致セグメント値の割当なし

次の表では、貸借一致セグメント値の様々な組合せが会社間または会社内貸借一致に使用されている様子を示します。

設定タイプ エンティティ間の取引 貸借一致
会計設定A 貸借一致セグメント値01と11 会社内
  貸借一致セグメント値02と22 会社内
  貸借一致セグメント値01と22、貸借一致セグメント値01と02、貸借一致セグメント値02と11または貸借一致セグメント値22と11 会社間
  貸借一致セグメント値01と03または貸借一致セグメント値02と33 貸借一致セグメント値01が法的エンティティに割り当てられ、03が元帳に割り当てられているため、貸借一致は失敗します。
会計設定B 貸借一致セグメント値01と03または貸借一致セグメント値01と02 会社内
会計設定C 貸借一致セグメント値01と11 会社内
  貸借一致セグメント値02と22 会社内
  貸借一致セグメント値01と22、貸借一致セグメント値01と02、貸借一致セグメント値02と11または貸借一致セグメント値22と11 会社間
会計設定D 任意の貸借一致セグメント値間での取引 会社内

デフォルト・ルール

貸借一致は自動化されたプロセスであるため、処理を進めるには、1つ以上の会計ルールが含まれた有効なルールが必要です。デフォルト・ルールは、ソース「その他」とカテゴリ「その他」(「その他」-「その他」)で定義されたルールです。このルールは必須ではありませんが、未定義の仕訳ソースまたはカテゴリ(あるいはその両方)を処理するために「その他」-「その他」のルールを定義することをお薦めします。

参照: 「会社内貸借一致ルール」

会社内貸借一致の評価順序

会社内貸借一致では、会社のビジネス・ニーズに応じてルールを定義できます。複数の貸借一致ルールが定義されている場合、貸借一致APIは、評価順序を使用して適切なルールを選択します。選択された貸借一致ルールには、評価を必要とする複数の会計ルールが存在する場合があります。貸借一致APIは会計ルールの評価でも同じ順序を使用します。この評価順序を理解すると、貸借一致ルールと会計ルールを定義する際に役立ちます。

  1. 最初に、明示的に定義されているルールがチェックされ、それらのルールが他のすべてのルールよりも優先されます。たとえば、ソースが「資産管理」でカテゴリが「修正」の仕訳があり、会社01の借方貸借一致と会社02の貸方貸借一致が必要であるとします。

  2. 明示的な一致を検出できない場合、貸借一致APIは、次に、明示的に定義された値とデフォルト値が組み合されたルールを検索します。

  3. 一致が検出されない場合、貸借一致APIは、デフォルト値と明示的に定義された値が組み合されたルールを検索します。

  4. 最後に、貸借一致APIが前述の3つのステップすべてをチェックした後に一致を検出できない場合は、デフォルト値が使用されます。

    参照: 拡張グローバル会社間システムの使用方法の詳細は、『Oracle Advanced Global Intercompany System User's Guide』の概要に関する項を参照してください。