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Oracle Solaris Studio 12.2: C++ ユーザーズガイド
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ドキュメントの情報

はじめに

パート I C++ コンパイラ

1.  C++ コンパイラの紹介

2.  C++ コンパイラの使用方法

3.  C++ コンパイラオプションの使い方

パート II C++ プログラムの作成

4.  言語拡張

5.  プログラムの編成

6.  テンプレートの作成と使用

7.  テンプレートのコンパイル

8.  例外処理

9.  プログラムパフォーマンスの改善

10.  マルチスレッドプログラムの構築

パート III ライブラリ

11.  ライブラリの使用

12.  C++ 標準ライブラリの使用

13.  従来の iostream ライブラリの使用

13.1 定義済みの iostream

13.2 iostream 操作の基本構造

13.3 従来の iostream ライブラリの使用

13.3.1 iostream を使用した出力

13.3.1.1 ユーザー定義の挿入演算子

13.3.1.2 出力エラーの処理

13.3.1.3 出力のフラッシュ

13.3.1.4 バイナリ出力

13.3.2 iostream を使用した入力

13.3.3 ユーザー定義の抽出演算子

13.3.4 char* の抽出子

13.3.5 1 文字の読み込み

13.3.6 バイナリ入力

13.3.7 入力データの先読み

13.3.8 空白の抽出

13.3.9 入力エラーの処理

13.3.10 iostreamstdio の併用

13.4 iostream の作成

13.4.1 クラス fstream を使用したファイル操作

13.4.1.1 オープンモード

13.4.1.2 ファイルを指定しない fstream の宣言

13.4.1.3 ファイルのオープンとクローズ

13.4.1.4 ファイル記述子を使用したファイルのオープン

13.4.1.5 ファイル内の位置の再設定

13.5 iostream の代入

13.6 フォーマットの制御

13.7 マニピュレータ

13.7.1 引数なしのマニピュレータの使用法

13.7.2 引数付きのマニピュレータの使用法

13.8 ストリーム: 配列用の iostream

13.9 stdiobuf: 標準入出力ファイル用の iostream

13.10 streambuf

13.10.1 streambuf の機能

13.10.1.1 ポインタの位置

13.10.2 streambuf の使用

13.11 iostream に関するマニュアルページ

13.12 iostream の用語

14.  複素数演算ライブラリの使用

15.  ライブラリの構築

パート IV 付録

A.  C++ コンパイラオプション

B.  プラグマ

用語集

索引

13.3 従来の iostream ライブラリの使用

従来型の iostream ライブラリからルーチンを使用するには、必要なライブラリ部分のヘッダーファイルをインクルードする必要があります。 次の表で各ヘッダーファイルについて説明します。

表 13-1 iostream ルーチンのヘッダーファイル

ヘッダーファイル
内容の説明
iostream.h
iostream ライブラリの基本機能の宣言。
fstream.h
ファイルに固有の iostreamstreambuf の宣言。この中で iostream.h をインクルードします。
strstream.h
文字型配列に固有の iostreamstreambuf の宣言。この中で iostream.h をインクルードします。
iomanip.h
マニピュレータ値の宣言。マニピュレータ値とはiostream に挿入または iostream から抽出する値で、特別の効果を引き起こします。この中で iostream.h をインクルードします。
stdiostream.h
(廃止) stdio FILE の使用に固有の iostreamstreambuf の宣言。この中で iostream.h. をインクルードします。
stream.h
(旧形式) この中で iostream.hfstream.hiomanip.hstdiostream.h をインクルードします。C++ Version 1.2 の旧形式ストリームと互換性を保つための宣言。

これらのヘッダーファイルすべてをプログラムにインクルードする必要はありません。自分のプログラムで必要な宣言の入ったものだけをインクルードします。互換モード (-compat[=4]) では、従来型の iostream ライブラリは libC の一部であり、CC ドライバによって自動的にリンクされます。標準モード (デフォルトのモード) では、従来型の libiostream ライブラリは iostream に含まれています。

13.3.1 iostream を使用した出力

iostream を使用した出力は、通常、左シフト演算子 (<<) を多重定義したもの (iostream の文脈では挿入演算子といいます) を使用します。ある値を標準出力に出力するには、その値を定義済みの出力ストリーム cout に挿入します。たとえば someValue を出力するには、次の文を標準出力に挿入します。

cout << someValue;

挿入演算子は、すべての組み込み型について多重定義されており、someValue の値は適当な出力形式に変換されます。たとえば someValuefloat 型の場合<< 演算子はその値を数字と小数点の組み合わせに変換します。float 型の値を出力ストリームに挿入するときは、<< を float 型挿入子といいます。一般に X 型の値を出力ストリームに挿入するときは、<<X 型挿入子といいます。出力形式とその制御方法については、ios(3CC4) のマニュアルページを参照してください。

iostream ライブラリは、ユーザー定義の型をサポートしていません。独自の方法で出力しようとする型を定義する場合は、それらを正しく処理する挿入子を定義する (つまり、<<operator を多重定義する) 必要があります。

<< 演算子は反復使用できます。2 つの値を cout に挿入するには、次の例のような文を使用できます。

cout << someValue << anotherValue;

前述の例では、2 つの値の間に空白が入りません。空白を入れる場合は、次のようにします。

cout << someValue << " " << anotherValue;

<< 演算子は、組み込みの左シフト演算子と同じ優先順位を持ちます。ほかの演算子と同様に、括弧を使用して実行順序を指定できます。 実行順序をはっきりさせるためにも、括弧を使用するとよい場合がよくあります。次の 4 つの文のうち、最初の 2 つは同じ結果になりますが、あとの 2 つは異なります。

cout << a+b;              // + has higher precedence than <<
cout << (a+b);
cout << (a&y);            // << has precedence higher than &
cout << a&y;            // probably an error: (cout << a) & y
13.3.1.1 ユーザー定義の挿入演算子

次のコーディング例では string クラスを定義しています。

#include <stdlib.h>
#include <iostream.h>


class string {
private:
    char* data;
    size_t size;

public:
    // (functions not relevant here)

    friend ostream& operator<<(ostream&, const string&);
    friend istream& operator>>(istream&, string&);
};

この例では、string クラスのデータ部が private であるため、挿入演算子と抽出演算子をフレンド定義しておく必要があります。

ostream& operator<< (ostream& ostr, const string& output)
{    return ostr << output.data;}

前述の定義は、string クラスに対して多重定義された演算子関数 operator<< の定義です。

cout << string1 << string2;

operator<< は、最初の引数として ostream& (ostream への参照) を受け取り、同じ ostream を返します。このため、次のように 1 つの文で挿入演算子を続けて使用できます。

13.3.1.2 出力エラーの処理

operator<< を多重定義するときは、iostream ライブラリからエラーが通知されることになるため、特にエラー検査を行う必要はありません。

エラーが起こると、エラーの起こった iostreamエラー状態になります。その iostream の状態の各ビットが、エラーの大きな分類に従ってセットされます。iostream で定義された挿入子がストリームにデータを挿入しようとしても、そのストリームがエラー状態の場合はデータが挿入されず、iostream の状態も変わりません。

一般的なエラー処理方法は、メインのどこかで定期的に出力ストリームの状態を検査する方法です。そこで、エラーが起こっていることがわかれば、何らかの処理を行います。この章では、文字列を出力してプログラムを中止させる関数 error をユーザーが定義しているものとして説明します。error は事前定義された関数ではありません。error 関数の例は、「13.3.9 入力エラーの処理」を参照してください。iostream の状態を調べるには、演算子 ! を使用 します。iostream がエラー状態の場合はゼロ以外の値を返します。次に例を示します。

if (!cout) error("output error");

エラーを調べるにはもう 1 つの方法があります。ios クラスでは、operator void *() が定義されており、エラーが起こった場合は NULL ポインタを返します。したがって、次の文でエラーを検査できます。

if (cout << x) return; // return if successful

また、次のように ios クラスのメンバー関数 good を使用することもできます。

if (cout.good()) return; // return if successful

エラービットは次のような列挙型で宣言されています。

enum io_state {goodbit=0, eofbit=1, failbit=2,
badbit=4, hardfail=0x80};

エラー関数の詳細については、iostream のマニュアルページを参照してください。

13.3.1.3 出力のフラッシュ

多くの入出力ライブラリと同様、iostream も出力データを蓄積し、より大きなブロックにまとめて効率よく出力します。出力バッファーをフラッシュする場合、次のように特殊な値 flush を挿入するだけでフラッシュできます。次に例を示します。

cout << "This needs to get out immediately." << flush;
 

flush は、マニピュレータと呼ばれるタイプのオブジェクトの 1 つです。マニピュレータを iostream に挿入すると、その値が出力されるのではなく、何らかの効果が引き起こされます。マニピュレータは実際には関数で、ostream& または istream& を引数として受け取り、そのストリームに対する何らかの動作を実行したあとにその引数を返します。「13.7 マニピュレータ」を参照してください。

13.3.1.4 バイナリ出力

ある値をバイナリ形式のままで出力するには、次の例のようにメンバー関数 write を使用します。次の例では、x の値がバイナリ形式のまま出力されます。

cout.write((char*)&x, sizeof(x));

この例では、&xchar* に変換しており、型変換の規則に反します。通常このようにしても問題はありませんが、x の型が、ポインタ、仮想メンバー関数、またはコンストラクタの重要な動作を要求するものを持つクラスの場合、前述の例で出力した値を正しく読み込むことができません。

13.3.2 iostream を使用した入力

iostream を使用した入力は、出力と同じです。入力には、抽出演算子 >> を使用します。挿入演算子と同様に繰り返し指定できます。次に例を示します。

cin >> a >> b;

この例では、標準入力から 2 つの値が取り出されます。ほかの多重定義演算子と同様に、使用される抽出子の機能は ab (ab の型が異なれば、別の抽出子が使用されます) の型によって決まります。入力データのフォーマットとその制御方法についての詳細は、ios(3CC4) のマニュアルページを参照してください。通常は、先頭の空白文字 (スペース、改行、タブ、フォームフィードなど) は無視されます。

13.3.3 ユーザー定義の抽出演算子

ユーザーが新たに定義した型のデータを入力するには、出力のために挿入演算子を多重定義したのと同様に、その型に対する抽出演算子を多重定義します。

クラス string の抽出演算子は次のコーディング例のように定義します。

例 13-1 string の抽出演算子

istream& operator>> (istream& istr, string& input)
{
    const int maxline = 256;
    char holder[maxline];
    istr.get(holder, maxline, ”\n’);
    input = holder;
    return istr;
}

get 関数は、入力ストリーム istr から文字列を読み取ります。読み取られた文字列は、maxline-1 バイトの文字が読み込まれる、新しい行に達する、EOF に達する、のうちのいずれかが発生するまで、holder に格納されます。データ holder は NULL で終わります。最後に、holder 内の文字列がターゲットの文字列にコピーされます。

規則に従って、抽出子は第 1 引数 (前述の例では istream& istr) から取り出した文字列を変換し、常に参照引数である第 2 引数に格納し、第 1 引数を返します。抽出子とは、入力値を第 2 引数に格納するためのものなので、第 2 引数は必ず参照引数である必要があります。

13.3.4 char* の抽出子

この定義済み抽出子は問題が起こる可能性があるため、ここで説明しておきます。この抽出子は次のように使用します。

char x[50];
cin >> x;

前述の例で、抽出子は先頭の空白を読み飛ばし、次の空白文字までの文字列を抽出して x にコピーします。次に、文字列の最後を示す NULL 文字 (0) を入れて文字列を完成します。ここで、入力文字列が指定した配列からあふれる可能性があることに注意してください。

さらに、ポインタが、割り当てられた記憶領域を指していることを確認する必要があります。次に示すのは、よく発生するエラーの例です。

char * p; // not initialized
cin >> p;

入力データが格納される場所が特定されていません。これによって、プログラムが異常終了することがあります。

13.3.5 1 文字の読み込み

char 型の抽出子を使用することに加えて、次に示すいずれかの形式でメンバー関数 get を使用することによって、1 文字を読み取ることができます。次に例を示します。

char c;
cin.get(c); // leaves c unchanged if input fails

int b;
b = cin.get(); // sets b to EOF if input fails

注 - ほかの抽出子とは異なり、char 型の抽出子は行頭の空白を読み飛ばしません


空白だけを読み飛ばして、タブや改行などそのほかの文字を取り出すようにするには、次のようにします。

int a;
do {
    a = cin.get();
   }
while(a ==’ ’);

13.3.6 バイナリ入力

メンバー関数 write で出力したようなバイナリの値を読み込むには、メンバー関数 read を使用します。次の例では、メンバー関数 read を使用して x のバイナリ形式の値をそのまま入力します。次の例は、先に示した関数 write を使用した例と反対のことを行います。

cin.read((char*)&x, sizeof(x));

13.3.7 入力データの先読み

メンバー関数 peek を使用するとストリームから次の文字を抽出することなく、その文字を知ることができます。次に例を示します。

if (cin.peek()!= c) return 0;

13.3.8 空白の抽出

デフォルトでは、iostream の抽出子は先頭の空白を読み飛ばします。 skip フラグをオフにすれば、先頭の空白を読み飛ばさないようにできます。次の例では、 cin の先頭の空白の読み飛ばしをいったんオフにし、のちにオンに戻しています。

cin.unsetf(ios::skipws); // turn off whitespace skipping
...
cin.setf(ios::skipws); // turn it on again

iostream のマニピュレータ ws を使用すると、空白の読み飛ばしが現在オンかオフかに関係なく、iostream から先頭の空白を取り除くことができます。次の例では、iostream istr から先頭の空白が取り除かれます。

istr >> ws;

13.3.9 入力エラーの処理

通常は、第 1 引数が非ゼロのエラー状態にある場合、抽出子は入力ストリームからのデータの抽出とエラービットのクリアを行わないでください。データの抽出に失敗した場合、抽出子は最低 1 つのエラービットを設定します。

出力エラーの場合と同様、エラー状態を定期的に検査し、非ゼロの状態の場合は処理の中止など何らかの動作を起こす必要があります。! は、iostream のエラー状態を検査します。たとえば次のコーディング例では、英字を入力すると入力エラーが発生します。

#include <stdlib.h>
#include <iostream.h>
void error (const char* message) {
     cerr << message << "\n";
     exit(1);
}
int main() {
     cout << "Enter some characters: ";
     int bad;
     cin >> bad;
     if (!cin) error("aborted due to input error");
     cout << "If you see this, not an error." << "\n";
     return 0;
}

クラス ios には、エラー処理に使用できるメンバー関数があります。詳細はマニュアルページを参照してください。

13.3.10 iostreamstdio の併用

C++ プログラムでも stdio を使用できますが、プログラムで iostreamstdio とを標準ストリームとして併用すると、問題が起こる場合があります。たとえば stdoutcout の両方に書き込んだ場合、個別にバッファリングされるため出力結果が設計したとおりにならないことがあります。stdincin の両方から入力した場合、問題はさらに深刻です。個別にバッファリングされるため、入力データが使用できなくなってしまいます。

標準入力、標準出力、標準エラーに関するこのような問題を解決するためには、入出力に先立って次の命令を実行します。次の命令で、すべての定義済み iostream が、それぞれ対応する定義済み stdio FILE に結合されます。

ios::sync_with_stdio();

このような結合を行うと、定義済みストリームが結合されたものの一部となってバッファリングされなくなってかなり効率が悪くなるため、デフォルトでは結合されていません。同じプログラムでも、stdioiostream を別のファイルに対して使用することはできます。すなわち、stdio ルーチンを使用して stdout に書き込み、iostream に結合した別のファイルに書き込むことは可能です。また stdio FILE を入力用にオープンしても、stdin から入力しないかぎりは cin からも読み込むことができます。