用途
restore
コマンドは、ファイルシステムのリストア・リクエストを作成する場合に使用します。ファイルシステムのリストア操作は、Recovery Manager(RMAN)によって開始されるデータベースのリストア操作とは異なります。
restore
コマンドを使用すると、カタログ・ベースのリストア操作またはRAWリストア操作を実行できます。カタログ・ベースのリストアでは、リストアするオブジェクトのカタログを参照します。オブジェクト名を特定してインスタンスを選択すると、オブジェクトをリストアできます。RAWリストアでは、バックアップの2次ストレージの場所(ボリュームIDおよびバックアップ・イメージ・ファイル番号)についての情報が別に必要になります。バックアップのすべてのデータのリストア、または個々のファイルまたはディレクトリの指定ができます。
リストア・リクエストは、restore
コマンドを--go
、--gocatalog
または--goraw
オプション付きで実行するまでは、obtoolでローカルに保持されます。これらのオプション付きでコマンドを実行すると、すべてのリストア・リクエストがジョブに変換され、Oracle Secure Backupスケジューラに送信されます。
前提条件
リストアを特権モードで実行するように指定している場合、またはネットワーク・データ管理プロトコル(NDMP)でアクセスされるホストにファイルをリストアする場合、restore
コマンドを使用するには、特権ユーザーとしてのファイルシステムのリストア実行(perform file system restores as privileged user)権を備えている必要があります。それ以外の場合は、自分によるファイルシステムのリストア実行(perform restores as self)権を備えている必要があります。
使用方法
obtoolは、host変数を使用して、バックアップをリストアするホストの名前を決定します。host
のデフォルト値は、obtoolが実行されているホストの名前です。host
変数はsetまたはcdコマンドで設定できます。
Oracle Secure Backupボリューム・カタログ内の複数のボリュームに一致するボリュームIDを指定した場合、どのボリューム(1つまたは複数)をリコールしたいのかを尋ねられます。1つまたは複数のボリュームまたはそのすべてを選択するか、あるいはいずれも選択しないことも可能です。デフォルトの選択肢はすべてのボリュームです。
ボリュームIDを指定して、そのボリュームがボリューム・セットに属している場合、そのボリューム・セット内のすべてのボリュームがリストされます。そのすべてを選択することもできれば、すべてを選択しないことも可能ですが、ボリューム・セットの個々のメンバーを選択することはできません。デフォルトの選択肢は「quit」(終了)です。
構文1
次の構文は、Oracle Secure Backupのカタログを参照してデータをリストアする場合に使用します。
restore::=
restore [ --tohost/-h hostname ] [ --device/-d drivename ] [ --privileged/-g | --unprivileged/-G ] [ --replaceexisting/-e | --keepexisting/-E ] [ --replaceinuse/-u | --keepinuse/-U ] [ --incremental/-i ] [ --noposition/-X ] [ --priority/-p schedule-priority ] [ --select/-s data-selector[,data-selector]... ] [ --passphrase/-P string | --querypassphrase/-Q ] [ --algorithm/-l ] [ --ignoremismatch/-w] [ --obtaropt/-o obtar-option ]... [ --preview/-y [ --recall/-r ] | --go | --gocatalog | --goraw ] { pathname [ --aspath/-a pathname ] }...
意味1
データのリストア先となるホスト・コンピュータの名前を指定します。
リストア操作の実行に使用するテープ・ドライブを指定します。テープ・ドライブ名は有効なデバイス名である必要があります。デバイス名の命名規則については、「devicename」を参照してください。
リストア操作を特権モードで実行することを指定します。
UNIXシステム上では、権限付きのリストア・ジョブはユーザー・アイデンティティroot
によって実行できます。Windowsシステムでは、このジョブは、Windowsクライアント上のOracle Secure Backupサービスと同じアカウント・アイデンティティで実行されます。
リストア操作を非特権モードで実行することを指定します(デフォルト)。
非特権リストア・ジョブは、mkuserコマンドで指定したUNIXユーザーまたはWindowsアカウント・アイデンティティで実行できます。ファイルシステム・データへのアクセスは、このアイデンティティを持つUNIXユーザーまたはWindowsアカウントの権限によって制限されます。
既存のファイルを上書きします(デフォルト)
既存のファイルを上書きしません。
使用中のファイルをバックアップ・イメージからのファイルで置き換えます。Windowsは、使用中の各ファイルを、最後に使用していたユーザーがクローズした時点で削除します。このオプションはWindowsでのみ使用可能です。
使用中のファイルを変更せずに残します(デフォルト)。このオプションはWindowsでのみ使用可能です。
増分リストア・ルールを適用するようにネットワーク接続ストレージ(NAS)データ・サーバーに指示します。このオプションは、この機能を実装しているNASデータ・サーバーにのみ適用されます。このオプションは、obtarを使用して作成されたファイルシステム・バックアップには適用されません。
通常、リストア操作は追加的に実行されます。すなわち、全体バックアップまたは増分バックアップからリストアされる各ファイルおよびディレクトリは、リストア先のディレクトリに追加されていきます。ファイルがOracle Secure Backupによる最新のバックアップ以降にディレクトリに追加されている場合は、リストア操作ではこの新しく追加されたファイルは削除されません。
--incremental
を指定すると、NASデータ・サーバーは各ディレクトリを最後の増分バックアップ時の状態にリストアします。最後の増分バックアップ前に削除されたファイルは、この増分バックアップのリストア時にはNASデータ・サービスによって削除されます。
たとえば、file1
およびfile2
を含む、/home
の増分バックアップを作成したと仮定します。次に、file1
を削除し、/home
の増分バックアップをもう1つ作成します。/home
の通常リストアを実行すると、ディレクトリにはfile1
およびfile2
が含まれます。/home
のNDMP増分リストアを実行すると、ディレクトリにはfile2
のみが含まれます。
リストア操作の速度向上のため、Oracle Secure Backupが使用可能な位置データを使用しないことを指定します。このオプションは位置データが破損している場合に使用します。たとえば、obcopyでテープのコピーを作成したが、必要なファイルのテープ上における物理的な位置が変わってしまった場合などに使用します。
リストアに割り当てるスケジュールの優先度を指定します。
schedule-priority
プレースホルダの詳細は、「schedule-priority」を参照してください。
指定されたdata-selector
に基づいて、データをフィルタ処理します。
data-selector
プレースホルダの詳細は、「data-selector」を参照してください。
バックアップ・ボリューム・セット全体をリストアするための、パスフレーズから生成された復号化キーを指定します。
バックアップ・ボリューム・セット全体をリストアするための復号化キーを生成する際に使用するパスフレーズをオペレータに問い合せます。
リストア時の復号化に使用するバックアップ・アルゴリズムを指定します。--passphrase
を使用する場合は、必須です。
--algorithm
または--passphrase
オプションによって供給される暗号化のアルゴリズムやパスフレーズの不一致を、失敗ではなく警告として取り扱うようにします。このオプションは、テープ上のヘッダーが破損しているが、できるだけ多くの暗号化データをリカバリしたい場合を想定したものです。
不一致の暗号化パラメータは、リストアのタイプに応じて、いろいろな時刻で処理されます。RAWリストアの場合、ジョブが作成された後、テープがロードされた後、およびテープからヘッダーが読み取られた後に、不一致が取り出されて処理されます。RAWリストアのジョブ記録に暗号化パラメータの不一致が反映されます。しかし、カタログベースのリストアの場合、ただちに不一致が取り出され、ジョブは作成されません。
obtarオプションを指定します。たとえば、-J
を指定すると、デバッグ・モードが有効になり、リストア記録に詳細が記述されます。
obtarオプションの詳細は、「obtarのオプション」を参照してください。
リストアに必要なボリュームをリストし、各ボリュームのステータス(onsite
またはoffsite
)を取得します。onsite
のステータスは、ボリュームがライブラリまたはドライブにあることを示します。offsite
のステータスは、ボリュームが保管場所にあってリコールが必要であることを示します。
このオプションはカタログ・リストア操作でのみ利用可能です。RAWリストア操作では使用できません。
ボリュームがoffsite
の場合、リストアで必要なあらゆるボリュームについてリコールを開始します。
このオプションはカタログ・リストア操作でのみ利用可能です。RAWリストア操作では使用できません。
キュー内のすべてのリストア・リクエストをOracle Secure Backupスケジューラにリリースします。
バックアップ・カタログのキュー内のリストア・リクエストをOracle Secure Backupスケジューラにリリースします。
キュー内のRAWリストア・リクエストをOracle Secure Backupスケジューラにリリースします。RAWリストア・リクエストはバックアップ・カタログ・データを使用しません。
バックアップしたファイルのバックアップ・カタログを参照して取得したパス名を指定します。--aspath
を指定しない場合、Oracle Secure Backupはバックアップを同じパスにリストアします。pathname
がリストア先のホスト上に見つからない場合は、そのパスがOracle Secure Backupによって作成されます。
たとえば、brhost2
のバックアップ・カタログを参照し、/home
ディレクトリをリストア元として特定したと仮定します。restore /home
コマンドを実行すると、バックアップはbrhost2
の/home
ディレクトリにリストアされます。
Oracle Secure Backupがファイルをリストア可能な代替パス名を指定します。たとえば、/home
のバックアップを/tmp/home
にリストアする場合は、restore
/home
--aspath /tmp/home
と指定します。
pathname
がリストア先のホスト上に存在しない場合、そのパスはOracle Secure Backupによって作成されます。
構文2
次の構文は、RAWリストア操作を実行する場合に使用します。
restore::=
restore --raw/-R [ --tohost/-h hostname ] [ --device/-d drivename ] [ --privileged/-g | --unprivileged/-G ] [ --passphrase/-P string ] [ --querypassphrase/-Q ] [ --algorithm/-l ] { --filenumber/-F filenumber } { --vid/-v vid[,vid ]... } [ --tag/-t tag[,tag]... ] [ --replaceexisting/-e | --keepexisting/-E ] [ --replaceinuse/-u | --keepinuse/-U ] [ --incremental/-i ] [ --priority/-p schedule-priority ] [ --obtaropt/-o obtar-option ]... [ --go | --gocatalog | --goraw ] { --all/-A | { pathname [ --aspath/-a pathname ] [ --position/-x position ] }... }
意味2
この項では、構文2で使用された他のオプションについて説明します。構文1でも使用されたオプションはこの項では説明しません。
Oracle Secure Backupカタログを使用しないリストア操作であるRAWリストア操作を指定します。ファイルシステム・オブジェクトがバックアップされているテープ・ボリュームのアイデンティティ(ボリュームIDまたはバーコード)と、保存先のバックアップ・イメージ・ファイル番号を指定する必要があります。
バックアップが配置されているテープ上のファイル番号を指定します。filenumber
プレースホルダの詳細は、「filenumber」を参照してください。
ボリュームIDを使用してバックアップを選択します。vid
プレースホルダの詳細は、「vid」を参照してください。
ボリューム・タグ(バーコード)に基づいてバックアップを選択します。
バックアップのすべてのデータをリストアします。
バックアップしたファイルまたはディレクトリの絶対パス名を指定します。バックアップされたファイルの絶対パス名が不明の場合は、obtar -tvf
を使用して検索するか、またはバックアップ・イメージ全体をリストアします。--aspath
を指定しない場合、Oracle Secure Backupはバックアップを同じパスにリストアします。
Oracle Secure Backupでは、リストアのパス名にワイルドカード文字を使用できません。バックアップのインクルード・パスには、次のワイルドカード文字を使用できます。すなわち、*
、?
、[
、および]
。これらのワイルド文字のいずれかがリストアするパス名に含まれていても、restore
コマンドで特殊文字のエスケープは不要です。
pathname
がリストア先のホスト上に存在しない場合、そのパスはOracle Secure Backupによって作成されます。
Oracle Secure Backupがファイルをリストア可能な代替パス名を指定します。たとえば、/private/bkpadmin
のバックアップを/tmp/private/bkpadmin
にリストアする場合は、次のように指定します。
restore /private/bkpadmin --aspath /tmp/private/bkpadmin
pathname
がリストア先のホスト上に存在しない場合、そのパスはOracle Secure Backupによって作成されます。
テープにおけるデータの位置を指定します。
例
例2-117 Oracle Secure Backupカタログを使用した、RAWリストア操作の実行
この例では、Oracle Secure Backupカタログに保存された、/home/data
ディレクトリの最新のバックアップ・イメージを表示します。restore
コマンドは、リクエストを優先度1でスケジューラに提出します。Oracle Secure Backupはジョブを実行し、データをリストアします。
ob> set host brhost2 ob> cd /home/data ob> ls bin/ c_files/ tree/ ob> lsbackup latest Backup Backup Volume Volume File Sect Backup Date and Time ID ID Tag # # Level 2008/03/28.11:17:02 2 VOL000003 ADE201 1 1 0 ob> restore --select latest --priority 1 --go /home/data Info: raw restore request 1 submitted; job id is admin/6. ob> lsjob admin/6 Job ID Sched time Contents State ---------------- ----------- ------------------------------ --------------------------------------- admin/6 none restore 1 item to brhost2 completed successfully at 2008/03/29.16:34
例2-118 RAWリストア操作の実行
この例では、RAWリストア・リクエストをスケジューラに提出します。このリクエストでは、/home/data
ディレクトリをボリュームVOL000003
からリストアするよう指定しています。Oracle Secure Backupはジョブを実行し、データをリストアします。
ob> restore --raw --filenumber 1 --vid VOL000003 /home/data ob> restore --go Info: raw restore request 1 submitted; job id is admin/76. ob> lsjob admin/7 Job ID Sched time Contents State ---------------- ----------- ------------------------------ --------------------------------------- admin/7 none restore 1 item to brhost2 completed successfully at 2008/03/29.17:00