1.2. Oracle VDIプラグインについて

Oracle Virtual Desktop Infrastructure (VDI)は、サーバーがホストするデスクトップ・オペレーティング・システムをデプロイして管理するための仮想化テクノロジであり、ユーザーは様々なクライアント・デバイスからアクセスできます。Oracle VDIには、一元化されたシステム管理、デスクトップ・オペレーティング・システムと仮想化プラットフォームの柔軟な選択機能、およびデスクトップ・システムの高可用性が備えられています。Enterprise Manager Plug-in for Oracle VDIを使用すると、中央管理コンソールからインストール全体を監視できます。

1.2.1. 概要

Enterprise Manager Plug-in for Oracle VDIではOracle VDIリソースの監視がサポートされており、この監視対象にはOracle VDI Centerとそのホスト、会社、デスクトップ・プール、デスクトップ・プロバイダ、ハイパーバイザ・ホストおよびストレージも含まれます。これらのリソースは、Oracle Enterprise Managerではターゲットと呼ばれます。プラグインを通して複数のOracle VDI Centerを追加して、監視できます。Oracle Enterprise Managerの監視エージェントは、メトリックと構成データを定期的に取得し、各ターゲットの監視ページに表示します。定期的に取得される情報の他に、ターゲット・ページには履歴データのグラフもいくつか表示されており、特定のメトリックの経時変化を示しています。

最も詳細な情報として、監視ターゲット・ページのメニューでは、監視エージェントが収集したRawメトリック・データにアクセスできます。組込みOracle Enterprise Managerの「すべてのメトリック」ページでは、ターゲットごとに収集されたすべてのメトリック値およびリアルタイム値にアクセスできます。

Enterprise Manager Plug-in for Oracle VDIで追加されたのは、監視機能のみです。Oracle VDIリソースをOracle Enterprise Managerから直接は管理できません。

1.2.2. プラグインのアーキテクチャ

Enterprise Manager Plug-in for Oracle VDIがインストールされてデプロイされると、管理エージェントがOracle VDI Centerエージェントに対してセキュアな通信チャネルを確立します。さらに、Oracle VDI Centerエージェントを通してメトリックおよび構成データを取得します。

このアーキテクチャにより、Oracle Enterprise Managerの設定が簡単化されます。Oracle VDIホストで構成を変更する必要はありません。管理エージェントは、Oracle VDI環境に含まれていないホストで実行される場合があります。たとえば、Oracle Enterprise Managerホスト自身で実行される場合があります。Oracle VDIのインストール全体を監視するには、単一の管理エージェントで十分です。

Oracle VDI Centerターゲットを構成するには、Oracle VDI Centerホストの完全修飾ドメイン名とOracle VDI管理者アカウントのログイン資格証明を指定します。管理エージェントは、この情報を使用してOracle VDI Centerエージェントに接続します。また、Oracle VDI Center全体の構成を読み取って、コンポーネントごとにOracle Enterprise Manager内に監視ターゲットを自動的に作成します。

監視情報の大部分はOracle VDIデータベースに格納されるため、すべてのOracle VDIホストが使用することが可能で、管理エージェントは最初に接続したOracle VDI Centerエージェントにほぼ限定して通信を行います。このエージェントを実行しているOracle VDIホストは優先ホストと呼ばれます。該当するエージェントが使用できなくなった場合、管理エージェントは次に使用可能なOracle VDIホストに自動的にフォールバックします。通常の環境では、管理エージェントは他のOracle VDI Centerエージェントのみと通信して、共有データベース内に格納されていない情報を取得します。たとえば、Oracle VDIホストでローカルに実行されているサービスのステータスをチェックする目的などです。

図1.1. Enterprise Manager Plug-in for Oracle VDIのアーキテクチャの概要

この図は、Oracle VDIコンポーネントとOracle Enterprise Managerコンポーネント、およびアーキテクチャの観点から見た両者の関係を示します。

1.2.3. メトリック収集

Enterprise Manager Plug-in for Oracle VDIは、Oracle Management Server (OMS)にもデプロイされます。管理エージェントは、収集したデータを定期的にOMSにアップロードし、OMSはそのデータを管理リポジトリに格納します。データは、Oracle Enterprise Manager ConsoleのOracle VDIターゲット・ページで視覚化されます。各Oracle VDIコンポーネントには対応するターゲット・ページがあり、このページには最後にアップロードされたデータ、および特定のメトリックの経時変化を示す履歴データのグラフが表示されます。たとえば、過去24時間のデスクトップ・プロバイダのCPUおよびメモリー消費量などです。

ターゲット・ページに表示される情報は常に、管理リポジトリから取得されます。監視データがロードされる際、管理エージェントとは通信しません。リアルタイム値の場合は、ターゲットのメニューを使用して「すべてのメトリック」ページを表示します。また、管理エージェントが収集したRawメトリック・データ、およびデータが最後にOMSにアップロードされた時刻も表示されます。メトリックを選択すると、その値がリアルタイムに管理エージェントから収集されます(特に断りがないかぎり、そのページにおいて)。

Oracle VDIメトリックのデフォルトの収集間隔は15分です。サービスのステータス(稼働中または停止)などのクリティカルなメトリックは5分ごとに収集されます。構成データや頻繁には変更されないその他の値は24時間ごとに収集されます。Oracle Enterprise Manager Consoleを使用して、ユーザーは各ターゲット・メトリックの収集間隔を個別に変更できます。収集スケジュールのカスタマイズ手順の詳細は、4.3項「メトリック収集」の収集間隔に関する説明を参照してください。

1.2.4. イベントとインシデント

長期にわたってメトリックを監視することにより、潜在的なボトルネックを特定して、予防アクションまたは修正アクションを実行できます。ただちに注意を払う必要がある重大な障害が発生することもあります。Oracle Enterprise Managerは、イベントの概念をサポートしています。イベントとは、管理対象ターゲットで通常の動作条件の範囲を超えて発生するクリティカルな状態変化のことです。たとえば、単一のホスト・サービスまたは基本的なサービスなどのOracle VDIコンポーネントが停止していることが検出された際に、自動的にイベントが生成されます。

すべてのメトリックにしきい値を定義できます。しきい値をまたぐと、対応するイベントが生成されます。各イベントは、「致命的」、「クリティカル」、「警告」または「クリア」のうちのいずれかの重大度レベルに関連付けられています。イベントの例として、特定のホストでCPU使用率が非常に高い、あるプールで多数のデスクトップが応答していない、などがあります。Enterprise Manager Plug-in for Oracle VDIでは、収集されるメトリックの多くに、しきい値が事前定義されています。これらのデフォルト値は、メトリックごとに必要に応じて変更できます。