13.3. Oracle Virtual Desktop Client

13.3.1. Oracle Virtual Desktop Client の概要
13.3.2. クライアントコンピュータでの外部デバイスの使用
13.3.3. Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを有効にする方法
13.3.4. Oracle Virtual Desktop Client のクリップボードサービスを有効にする方法
13.3.5. Oracle Virtual Desktop Client のトラブルシューティング

この章では、Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを有効にする方法、Sun Ray クライアントとのクライアント ID の違い、およびトラブルシューティング情報について説明します。

13.3.1. Oracle Virtual Desktop Client の概要

Oracle Virtual Desktop Client は Sun Ray クライアントのソフトウェアバージョンです。Oracle Virtual Desktop Client アプリケーションは通常の PC またはタブレット上で実行され、デスクトップウィンドウで Sun Ray セッションを提供します。Windows、Linux、Mac OS X、iPad、および Android 上でサポートされ、インストールできます。Oracle Virtual Desktop Client は、標準的な Sun Ray クライアント機能のほとんどをサポートします。

ユーザーは、セッションにアクセスする場合に Sun Ray クライアントのみに依存するのではなく、ノートパソコンやデスクトップに Oracle Virtual Desktop Client アプリケーションをインストールして実行できます。これは、たとえばユーザーが会社で Sun Ray クライアントを使用し、自宅でノートパソコンまたはデスクトップから同じ Sun Ray セッションにアクセスする場合に便利です。

注記

このドキュメントで Sun Ray クライアントに言及しているほとんどの箇所は、特に指定しない限り Oracle Virtual Desktop Client にも当てはまります。

Oracle Virtual Desktop Client 製品は、Sun Ray Software メディアイメージに付属していません。別途ダウンロードする必要があり、Sun Ray 製品のダウンロードページ (http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/sunrayproducts/downloads/index.html) から入手できます。

Oracle Virtual Desktop Client アプリケーションについて詳しくは、Oracle Virtual Desktop Client のドキュメント (http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/sunrayproducts/docs/index.html) を参照してください。

13.3.2. クライアントコンピュータでの外部デバイスの使用

Oracle Virtual Desktop Client を使用している場合、クライアントコンピュータに接続されている外部デバイスの多くにアクセスできます。ほとんどの場合、デバイスへのアクセスは自動であり、構成可能です。Oracle Virtual Desktop Client 3.x 以降の場合、「設定」タブからデバイスアクセスを構成できます。Oracle Virtual Desktop Client からアクセスできるデバイスの一覧を、Sun Ray サーバーで必要な構成手順も含めて次に示します。

  • キーボードとポインティングデバイス - クライアントコンピュータに接続されている使用可能なキーボードおよびポインティングデバイスにアクセスできます。キーボードは「設定」タブから構成できます。

  • オーディオデバイス - クライアントコンピュータに接続されている 1 つの入力オーディオデバイスおよび 1 つの出力オーディオデバイスにアクセスできます。どのオーディオデバイスを使用するかは「設定」タブから選択できます。

  • スマートカードリーダー - クライアントコンピュータに接続されている 1 つのスマートカードリーダーにアクセスできます。どのスマートカードリーダーを使用するかは「設定」タブから選択できます。

  • シリアルデバイス - Windows オペレーティングシステムを実行しているクライアントコンピュータに接続されているシリアルデバイスにアクセスできます。Mac OS X コンピュータおよび Linux コンピュータのシリアルデバイスにはアクセスできません。シリアルデバイスは自動的にマウントされ、Oracle Solaris セッションおよび Oracle Linux セッションで使用可能になります。また、Windows Connector を使用している場合は、シリアルデバイスへの論理マッピングを構成する必要があります。詳細については、「シリアルデバイスと USB プリンタへのアクセス」および「シリアルデバイスへのアクセス」を参照してください。

  • USB デバイス - Windows Connector および Oracle Virtual Desktop Client 3.2 以降を使用している場合に、クライアントコンピュータに接続されている任意の USB デバイスにアクセスできます。どの USB デバイスを使用するかは「設定」タブから選択できます。使用する USB デバイスを選択すると、そのデバイスはローカル環境から切り離され、Oracle Virtual Desktop Client で使用できるようになります。そのデバイスはローカルシステムでは使用できなくなります。Sun Ray クライアントと同様に、アイソクロナスインタフェースを使用する USB デバイスは機能しません。

クライアントコンピュータ上のデバイスにアクセスする方法の詳細については、Oracle Virtual Desktop Client ユーザーガイドを参照してください。

13.3.3. Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを有効にする方法

この手順では、utpolicy コマンドまたは管理 GUI を使用して Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを有効にする方法について説明します。デフォルトでは、Sun Ray サーバー上で Oracle Virtual Desktop Client にアクセスすることは無効になっています。ユーザーが Oracle Virtual Desktop Client を使用しようとしたときに、アクセスが現在無効になっている場合、オンスクリーンディスプレイ (OSD) 47 アイコンが表示されます。詳細については、「Oracle Virtual Desktop Client のトラブルシューティング」を参照してください。

次のようにファイアウォール設定を構成する必要がある場合もあります。

  • クライアントコンピュータ。クライアントコンピュータのファイアウォール設定で Oracle Virtual Desktop Client がインターネットにアクセスすることが許可されていることを確認します。

  • Sun Ray サーバー。Oracle Virtual Desktop Client で使用されるポートについては、「ポートおよびプロトコル」を参照してください。

Oracle Virtual Desktop Client は、スマートカードセッションと非スマートカードセッションの両方へのアクセスに使用できます。セッションモビリティー (ホットデスク) はスマートカードの有無に関係なくサポートされます。

注記

次の手順では、Sun Ray サービスのウォームリスタートを使用します。Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを無効にする場合は、コールドリスタートを使用してください。

管理 GUI での手順
  1. 「詳細」タブをクリックします。

  2. 「セキュリティー」サブタブをクリックします。

  3. 「カードユーザー」および「非カードユーザー」セクションで、「Oracle Virtual Desktop Client」オプションを選択します。

    これにより、スマートカードセッションと非スマートカードセッションの両方が有効になります。

  4. 「ウォームリスタート」ボタンを使用して、サーバーグループ内のすべてのサーバーを再起動します。

コマンド行での手順
  1. 現在のポリシーを表示します。

    次のように utpolicy コマンドを使用します。

    # /opt/SUNWut/sbin/utpolicy
    Current Policy:
    -a -g -z both -M
    注記

    -M オプションは、非スマートカードモバイル (NSCM) セッションを有効にします。

  2. 現在のポリシーを編集して、Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを有効にします。

    次のいずれかの操作を実行します。

    1. スマートカードセッションと非スマートカードセッションの両方を有効にするには、-u both オプションをポリシーオプションに追加します。

      # /opt/SUNWut/sbin/utpolicy -a -g -z both -M -u both
    2. 非スマートカードセッションのみを有効にするには、-u pseudo オプションをポリシーオプションに追加します。

      # /opt/SUNWut/sbin/utpolicy -a -g -z both -M -u pseudo
    3. スマートカードセッションのみを有効にするには、-u card オプションをポリシーオプションに追加します。

      # /opt/SUNWut/sbin/utpolicy -a -g -z both -M -u card
  3. Sun Ray サービスを再起動します。

    # /opt/SUNWut/sbin/utstart

    Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを有効または無効にしたあとは、サーバーグループで Sun Ray サービスの再起動が必要です。

13.3.4. Oracle Virtual Desktop Client のクリップボードサービスを有効にする方法

この手順では、Oracle Virtual Desktop Client セッションで実行しているアプリケーションとローカルデスクトップで実行しているアプリケーションとの間でコピー&ペーストを有効にする方法について説明します。有効にすると、Oracle Virtual Desktop Client ユーザーは、Oracle Virtual Desktop Client セッションで実行しているアプリケーションとローカルデスクトップで実行しているアプリケーションとの間でコピー&ペーストできます。Unicode 文字のコピー&ペーストがサポートされています。

コピー&ペースト機能が動作するには、Sun Ray サーバーでクリップボードサービスが有効で、クライアントコンピュータ上で実行されている Oracle Virtual Desktop Client でクリップボード共有が有効である必要があります。utdevadm コマンドまたは管理 GUI の「詳細」>「セキュリティー」ページを使用して、クリップボードサービスが有効であるかどうかをチェックできます。

注記

この機能は、Oracle Solaris Trusted Extensions を実行している Sun Ray サーバーでは使用できません。

次の手順に従って、Sun Ray サーバーでクリップボードサービスを有効にします。

管理 GUI での手順
  1. 「詳細」タブをクリックします。

  2. 「セキュリティー」サブタブをクリックします。

  3. 「デバイス」セクションで、「Oracle Virtual Desktop Client クリップボード」オプションを選択します。

  4. 「サーバー」ページの「ウォームリスタート」ボタンを使用して、Sun Ray サービスを再起動します。

コマンド行での手順
  1. Sun Ray サーバーのスーパーユーザーになります。

  2. Oracle Virtual Desktop Client でクリップボードサービスを有効にします。

    # /opt/SUNWut/sbin/utdevadm -e -s clipboard
  3. Sun Ray サービスを再起動します。

    # /opt/SUNWut/sbin/utstart

13.3.5. Oracle Virtual Desktop Client のトラブルシューティング

このセクションでは、Oracle Virtual Desktop Client のトラブルシューティング情報について説明します。コマンド行を使用するトラブルシューティング情報は、Oracle Virtual Desktop Client を実行しているタブレットには適用されません。

13.3.5.1. VPN または WAN を使用しているときの接続の問題

最大伝送単位 (MTU) は、接続の最大パケットサイズです。デフォルトで MTU は 1500 バイトに設定されています。

仮想プライベートネットワーク (VPN) または広域ネットワーク (WAN) を使用していて問題が発生した場合は、ネットワークの MTU 設定が高すぎる可能性があります。

ネットワークに適切な MTU 設定を診断するには、ping コマンドを使用して、正常に伝送できる最大パケットサイズを見つけてください。

Windows プラットフォームの場合:

ping server-name -l bytes -f

ここで、server-name は Sun Ray サーバーの名前、bytes はパケットサイズです。

Mac OS X プラットフォームの場合:

ping -s bytes -D server-name  

ここで、server-name は Sun Ray サーバーの名前、bytes はパケットサイズです。

Linux プラットフォームの場合:

ping server-name -s bytes

ここで、server-name は Sun Ray サーバーの名前、bytes はパケットサイズです。

MTU 設定を計算するには、8 バイトをパケットサイズに加えます。

MTU を設定するには、「ネットワーク」タブで設定を変更するか、次のコマンドを実行します。

ovdc --mtu bytes server-name

ここで、bytes は MTU のバイト数、server-name は Sun Ray サーバーの名前です。

13.3.5.2. 画面描画の問題

ネットワークに対して最大伝送単位 (MTU) 設定が高すぎる場合は、画面再描画の低下や黒いピクセルのブロックなど、画面描画の問題が発生することがあります。

MTU は、接続の最大パケットサイズです。デフォルトで MTU は 1500 バイトに設定されています。

ネットワークに適切な MTU 設定を診断する方法について詳しくは、「VPN または WAN を使用しているときの接続の問題」を参照してください。

13.3.5.3. ログレベルを設定する方法

Oracle Virtual Desktop Client の問題を診断しやすいように、ログレベルを増やすことができます。

表13.8「Oracle Virtual Desktop Client のログレベル」に、使用可能なログレベルを示します。

表13.8 Oracle Virtual Desktop Client のログレベル

レベル

説明

0

ロギングなし

1

重大メッセージ

2

警告

3

情報メッセージ


デフォルトではログレベルは 0 で、ログがオフに設定されます。--logging-domains オプションを使用してログドメイン (ログを記録するカテゴリ) を設定できますが、デフォルトではすべてのログドメインが記録されます。

ログレベルは累積的です。たとえば、最大ログレベル 3 には、情報メッセージ、警告、および重大メッセージが含まれます。

ログレベルを設定するには、次のコマンドを実行します。

ovdc --logging-level num server-name

ここで、num はログレベル、server-name は Sun Ray サーバーの名前です。

たとえば、sr-1.example.com Sun Ray サーバーに対する接続の警告および重大メッセージを記録するには、次のコマンドを実行します。

ovdc --logging-level 2 sr-1.example.com

13.3.5.4. ログファイルの場所を変更する方法

デフォルトでは、ログメッセージはクライアントコンピュータの .log テキストファイルに書き込まれます。.log ファイルには、使用されたプロファイルに基づいて名前が付けられます。たとえば、デフォルトプロファイルのログファイルは、default.log という名前になります。

ログファイルのデフォルトの場所は、インストールプラットフォームによって次のように異なります。

  • Microsoft Windows XP プラットフォームC:\Documents and Settings\username\Application Data\OVDC\profilename.log

  • Microsoft Windows 7 および Microsoft Windows 8 プラットフォームC:\Users\username\AppData\Roaming\OVDC\profilename.log

  • Mac OS X プラットフォーム$HOME/.OVDC/profilename.log

  • Linux プラットフォーム$HOME/.OVDC/profilename.log

--profile コマンドオプションを使用してプロファイルへのパスを指定する場合は、ログファイルがプロファイルと同じディレクトリに自動的に作成されます。次の例では、ログメッセージが C:\temp\fullscreen.log ファイルに書き込まれます。

ovdc --profile C:\temp\fullscreen 
13.3.5.4.1. --logfile コマンドオプションを使用する

--logfile コマンドオプションを使用して、ログファイルの名前や場所を変更できます。ログファイルへのパスに空白が含まれる場合は、パスを引用符 (") で囲みます。

次の例では、デフォルトプロファイルを使用し、ログメッセージをデフォルトの場所にある mylog.txt ファイルに書き込みます。

ovdc --logfile mylog.txt

次の例では、デフォルトプロファイルを使用し、ログメッセージを C:\temp\logfile.txt ファイルに書き込みます。

ovdc --logfile C:\temp\logfile.txt

次の例では、C:\profiles\fullscreen プロファイルを使用し、ログメッセージを C:\temp\logfile.txt ファイルに書き込みます。

ovdc --profile C:\profiles\fullscreen --logfile C:\temp\logfile.txt

次の例では、C:\profiles\fullscreen プロファイルを使用し、ログメッセージをデフォルトの場所にある mylog.txt ファイルに書き込みます。

ovdc --profile C:\profiles\fullscreen --logfile mylog.txt

13.3.5.5. 接続の問題を診断する方法

Sun Ray Software では、オンスクリーンディスプレイ (OSD) アイコンとローカライズされたエラーメッセージの組み合わせを使用して、接続のステータスを表示します。OSD アイコンを使用して、Oracle Virtual Desktop Client の接続の問題を診断できます。

ユーザーが Oracle Virtual Desktop Client を使用しようとしたときに、アクセスが現在無効になっている場合、次の OSD アイコンが表示されます。

図13.2 アクセス無効 OSD アイコン

アクセス無効を表すオンスクリーンディスプレイアイコンのスクリーンショット

この問題を修正するには、「Oracle Virtual Desktop Client へのアクセスを有効にする方法」を参照してください。

使用可能なすべての OSD アイコンについて詳しくは、16章トラブルシューティングアイコンを参照してください。