この章の内容は次のとおりです。
Oracle Database Express Edition (Oracle Database XE)開発者は、Oracleテクノロジ・スタックを使用するアプリケーションのデータベース・コンポーネントの作成またはメンテナンスを担当します。Oracle Database XE開発者は、アプリケーションを開発するか、または既存のアプリケーションを転用し、Oracle Database XE環境で実行します。
参照: Oracle Database開発者の職務の詳細は、『Oracle Database概要』を参照してください。 |
このマニュアルは、アプリケーション開発者向けのOracle Database XEドキュメント・セットの入門編にあたるマニュアルです。このガイドには、次のような役割があります。
Oracle Database XEでの開発の基本概念について説明します。
SQLとPL/SQLの基本機能の使用方法を示します。
説明事項の詳細についての参照情報を提供します。
チュートリアルと例を使用して、サンプル・アプリケーションを開発しデプロイする方法を示します。
第1章「概要」では、このマニュアルの対象読者およびこのマニュアルの構成の概要を示します。また、Oracle Database XEの重要な概念、およびこのマニュアルのチュートリアルと例の中で使用するサンプル・スキーマについて説明します。
第2章「Oracle Database Express Editionへの接続」では、Oracle Database XEに接続する方法について説明します。
第3章「SQL DeveloperによるOracle Database Express Editionの参照」では、スキーマ・オブジェクト、およびOracle Database XE表のプロパティとデータを表示する方法について説明します。
第4章「表データの選択」では、問合せを使用してOracle Database XE表からデータを取得する方法について説明します。
第5章「DML文とトランザクションについて」では、データ操作言語(DML)文とトランザクションについて説明します。DML文により、Oracle Database XEの表データの追加、変更および削除を行います。トランザクションとは、Oracle Database XEが1つの単位として扱う1つ以上のSQL文で、すべての文が実行される場合と1つも実行されない場合があります。
第6章「スキーマ・オブジェクトの作成および管理」では、スキーマ・オブジェクトを作成、変更および削除するデータ定義言語(DDL)文について説明します。チュートリアルと例を使用して、サンプル・アプリケーション用のオブジェクトを作成する方法を示します。
第7章「ストアド・サブプログラムとパッケージの開発」では、多くの異なるデータベース・アプリケーションでビルディング・ブロックとして使用できるストアド・サブプログラムとパッケージについて紹介します。チュートリアルと例では、サンプル・アプリケーション用のサブプログラムのパッケージの作成方法を説明します。
第8章「トリガーの使用」では、指定されたイベントに対応して自動的に実行するストアドPL/SQLユニットであるトリガーについて紹介します。チュートリアルと例では、サンプル・アプリケーションのトリガーの作成方法について示します。
第9章「グローバル環境での作業」では、グローバリゼーション・サポート(各国語サポート(NLS)・パラメータおよびSQLとPL/SQLのUnicode関連機能)について説明します。
第10章「Oracle Database Express Editionアプリケーションのデプロイ」では、サンプル・アプリケーションを例として使用し、データベース・アプリケーションのデプロイ方法(他のユーザーが実行できる1つ以上の環境へのインストール方法)について説明します。
Oracle Database XEは、関連情報をスキーマと呼ばれる論理構造にグループ化します。この論理構造はスキーマ・オブジェクトと呼ばれます。ユーザー名とパスワードを使用してデータベースに接続する際に、ユーザーはスキーマを指定して、自分がその所有者であることを示します。Oracle Database XEでは、ユーザー名とユーザーが接続するスキーマ名は同じです。
トピック:
Oracle Database XEのすべてのオブジェクトは、1つのスキーマのみに属し、そのスキーマを使用した一意の名前が付けられています。
スキーマは、次のようなオブジェクトを持つことができます。
表
表は、Oracle Database XEのデータ記憶領域の基本単位です。表は、ユーザーがアクセス可能なすべてのデータを保持します。各表には、それぞれのデータのレコードを表す行が含まれています。行は、レコードのフィールドを表す列で構成されています。詳細は、「表の作成および管理」を参照してください。
索引はオプションのオブジェクトであり、これを使用すると、表からデータを取得するパフォーマンスが改善されます。索引は、表の1つ以上の列に作成され、データベース内で自動的にメンテナンスされます。詳細は、「索引の管理」を参照してください。
ビュー
複数の表の情報を組み合せて一元的に表示するビューを作成できます。ビューは、表と他のビューの両方の情報に依存する可能性があります。詳細は、「ビューの作成および管理」を参照してください。
順序
表のすべてのレコードが一意である必要がある場合、順序を使用することによって、各レコードのIDを表す数値列に対する一意の整数番号のシリアル・リストを生成できます。詳細は、「順序の作成および管理」を参照してください。
シノニム
シノニムは、スキーマ・オブジェクトの別名です。これは、オブジェクトの所有者をわからなくしたり、SQL文を単純化するなど、セキュリティや利便性の向上に使用されます。詳細は、「シノニムの作成および管理」を参照してください。
ストアド・サブプログラム
ストアド・サブプログラム(または、スキーマ・レベル・サブプログラム)は、データベースに格納されたプロシージャやファンクションです。これらは、データベースにアクセスするクライアント・アプリケーションから起動されます。詳細は、「ストアド・サブプログラムおよびパッケージの開発」を参照してください。
トリガーは、特定の表またはビューで指定したイベントが発生した際にデータベースによって自動的に実行されるストアド・サブプログラムです。トリガーは、特定のデータへのアクセスを制限し、ロギングを実行できます。詳細は、「トリガーの使用」を参照してください。
パッケージ
パッケージは、ユニットとして継続的に使用するためにデータベースに格納された明示カーソルおよび変数とともに、それらを使用する関連サブプログラムをグループ化したものです。ストアド・サブプログラムと同じように、パッケージ・サブプログラムは、データベースにアクセスするクライアント・アプリケーションから起動されます。詳細は、「ストアド・サブプログラムおよびパッケージの開発」を参照してください。
通常、アプリケーションが使用するオブジェクトは、どれも同じスキーマに属しています。
参照: スキーマ・オブジェクトの詳細は、『Oracle Database概要』を参照してください。 |
Oracle Database XEには、SQL*PlusやSQL Developerなどのクライアント・プログラムを介してのみアクセスできます。Oracle Database XEに対するクライアント・プログラム・インタフェースは、構造化問合せ言語(SQL)です。Oracleには、Procedural Language/SQL(PL/SQL)というSQLに対する拡張機能が用意されています。
トピック:
SQL*Plusは、対話型のバッチ問合せツールです。Oracle Database XEをインストールすると、一緒にインストールされます。このツールには、データベースへの接続時にクライアントとして機能する、コマンドライン・ユーザー・インタフェースがあります。
SQL*Plusは独自のコマンドと環境を持っています。SQL*Plusの環境では、SQL*Plusコマンド、SQL文、PL/SQL文およびオペレーティング・システムのコマンドを入力して実行し、次のような作業を行えます。
問合せ結果の整形、計算実行、格納および印刷
表およびオブジェクト定義の検証
バッチ・スクリプトの開発および実行
データベース管理の実行
SQL*Plusを使用して、対話的なレポート生成、バッチ処理としてのレポート生成、およびテキスト・ファイル、スクリーンまたはインターネットでの閲覧用のHTMLファイルへの結果の出力が可能です。HTML出力機能を使用するとレポートを動的に生成できます。
SQL DeveloperでSQL*Plusを使用できます。詳細は、『Oracle Database SQL Developerユーザーズ・ガイド』を参照してください。
SQL Developer (sequel developerと発音する)は、SQL*Plusのグラフィック・バージョンで、Javaで記述されており、Oracle Database XEのデフォルトのインストールや無料ダウンロードで入手可能です。
SQL Developerのユーザー・インタフェースには、ナビゲーション・フレーム、ツール(メニュー付き)およびSQLワークシートが含まれています。SQLワークシートから、SQL文、PL/SQL文およびSQL*Plusコマンドを入力して実行できます。SQLワークシート、またはナビゲーション・フレームとツールを使用すると、表の作成などの作業が可能です。
任意のSQL Developerアイコンの名称と対応するキーボード操作を確認するには、カーソルをアイコンの上に移動します。
参照:
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構造化問合せ言語(SQL)(sequelと発音する)は、セット・ベースの高度なコンピュータ言語であり、Oracle Database XEのデータにアクセスする際に、すべてのプログラムおよびユーザーによって使用されます。
SQLは宣言型、または非手続き型の言語です。つまり、SQLは方法ではなく、何をするかについて記述します。結果を取得する方法ではなく、必要な結果セットを指定します(たとえば現在の従業員の名前)。
参照:
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Procedural Language/SQL (PL/SQL)は、Oracle Database XEが独自にSQLに行った拡張です。条件付き制御やループのような手続き型の要素を追加することで、宣言型プログラム制御と命令型プログラム制御のギャップが埋められています。
PL/SQLでは、定数と変数、プロシージャとファンクション、型とその型の変数、およびトリガーを宣言できます。例外(ランタイム・エラー)を処理できます。また、Oracle Database XEプログラム・インタフェースを使用するアプリケーションで再利用することを目的としてデータベースに格納できるPL/SQLユニット(プロシージャ、ファンクション、パッケージ、型およびトリガー)を作成できます。
PL/SQLソース・プログラムの基本単位は、関連する宣言および文をグループ化したブロックです。ブロックは、オプションの宣言部分、必須の実行可能部分およびオプションの例外処理部分を持っています。
参照:
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アプリケーションの開発に使用されるその他のデータベース・アクセス・クライアント、言語およびツールとして、次のようなものがあります。
注意: 前述のリストの一部の製品はOracle Database XEに付属していないため、別個にダウンロードする必要があります。 |
参照:
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Oracle Application Expressは、プログラミングの経験が浅い開発者でも、短期間でセキュアかつスケーラブルなWebアプリケーションを開発およびデプロイできるツールです。埋め込まれているApplication Builderによって、表やストアド・プロシージャなどのスキーマ・オブジェクトを使用する完全なアプリケーションまたはHTMLインタフェースが、タブ、ボタン、ハイパーテキスト・リンクを介してリンクされたページの集まりに組み立てられます。
参照: Oracle Application Expressの詳細は、『Oracle Database Express Edition 2日でApplication Express開発者ガイド』を参照してください。 |
Oracle Java Database Connectivity (JDBC)は、JavaでSQL文をOracle Database XEなどのオブジェクト・リレーショナル・データベースに送ることができるようにするAPIです。Oracle Database XEのJDBCは、JDBC 3.0およびJDBC RowSet (JSR-114)規格、XAおよび非XA接続に対応した先進の接続キャッシュ、SQLおよびPL/SQLデータ型のJavaへの公開、SQLデータへの迅速なアクセスを完全にサポートします。
参照: JDBCの詳細は、次を参照してください。
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Hypertext Preprocessor(PHP)は、ウェブ・アプリケーションを迅速に開発するための、強力なインタプリタ型のサーバー側スクリプト言語です。PHPはオープン・ソース言語であり、BSD型ライセンスで配布されています。PHPはデータベースのアクセス要求を直接HTMLページに組み込めるよう設計されています。
参照: PHPの詳細は、『Oracle Database Express Edition 2日でPHP開発者ガイド』を参照してください。 |
Oracle Call Interface (OCI)は、C言語のアプリケーションからOracle Database XEに直接アクセスするための、独自のC言語APIです。
OCIソフトウェア開発キットは、Oracle Instant Clientの一部としてインストールでき、標準のOracleクライアントをインストールしたりORACLE_HOME
を持つことなくアプリケーションを実行できます。アプリケーションは変更せずに使用でき、ディスク領域の使用を大幅に抑えることができます。
参照:
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Oracle C++ Call Interface (OCCI)は、C++アプリケーションからOracle Database XEに直接アクセスするための、独自のC++言語のAPIです。OCIと非常に似ており、リレーショナルおよびオブジェクト指向型のプログラミング・パラダイムをサポートしています。
OCCIソフトウェア開発キットは、Oracle Instant Clientの一部としてインストールでき、標準のOracleクライアントをインストールしたりORACLE_HOME
を持つことなくアプリケーションを実行できます。アプリケーションは変更せずに使用でき、ディスク領域の使用を大幅に抑えることができます。
参照:
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Open Database Connectivity(ODBC)は、データベースにアクセスするためのAPIのセットで、データベース上でSQL文を実行します。ODBCドライバを使用するアプリケーションは、スプレッドシートやカンマ区切りファイルなど、不均一なデータ・ソースにアクセスできます。
Oracle ODBC DriverはODBC 3.51仕様に準拠します。すべてのコアAPIやLevel 1およびLevel 2のファンクションのサブセットをサポートしています。Microsoft社はWindowsプラットフォーム用のドライバ・マネージャ・コンポーネントを提供しています。
OCI、OCCIおよびJDBCと同様に、ODBCはOracle Instant Client Installationの一部です。
参照:
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Pro*C/C++プリコンパイラを使用すると、CまたはC++ソース・ファイルにSQL文を埋め込むことができます。プリコンパイラは、ソース・プログラムを入力として受け取り、埋め込まれたSQL文を標準Oracleランタイム・ライブラリ・コールに変換し、コンパイル、リンクおよび実行が可能な修正ソース・プログラムを生成します。
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Pro*COBOLプリコンパイラを使用すると、COBOLソース・ファイルにSQL文を埋め込むことができます。プリコンパイラは、ソース・プログラムを入力として受け取り、埋め込まれたSQL文を標準Oracleランタイム・ライブラリ・コールに変換し、コンパイル、リンクおよび実行が可能な修正ソース・プログラムを生成します。
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Microsoft .NET Frameworkは、アプリケーションおよびXML Webサービスを構築、デプロイおよび実行するための多言語環境です。主なコンポーネントとして、次のものがあります。
共通言語ランタイム(CLR)は、言語に依存しない開発およびランタイム環境であり、実行中のアプリケーションの実行の管理を支援するサービスを提供します。
Frameworkクラス・ライブラリ(FCL)は、パッケージ済機能の、一貫性のあるオブジェクト指向型ライブラリを提供します。
Oracle Data Provider for .NET (ODP.NET)
Oracle Data Provider for .NET (ODP.NET)は、.NETアプリケーションからOracle Database XEへの高速かつ効率的なADO.NETデータ・アクセスを提供します。ODP.NETによって、開発者は、SecureFiles、XML DBおよびアドバンスト・キューイングといった、Oracle Database XEに存在するOracle Databaseの拡張機能を利用できます。
Visual Studio対応Oracle Developer Tools(ODT)
Visual Studio対応Oracle Developer Tools(ODT)は、Visual Studio環境と統合されるアプリケーション・ツールのセットです。これらのツールは、Oracleの機能にアクセスするためのグラフィカル・ユーザー・インタフェースを提供し、広範なアプリケーション開発作業を可能にし、開発上の生産性および使い易さを向上させます。Oracle Developer Toolsは、Visual Basic、C#および他の.NET言語を使用した.NETストアド・プロシージャのプログラミングと実装をサポートしています。
.NETストアド・プロシージャ
Oracle Database Extensions for .NETは、WindowsでのOracle Database XEのデータベース・オプションです。このオプションによって、Microsoft Windows用のOracle Databaseを使用する.NETストアド・プロシージャまたはファンクションを、Visual Basic .NETまたはVisual C#を使用して作成および実行できるようになります。
.NETアセンブリに.NETプロシージャおよびファンクションを構築した後、Visual Studio対応Oracle Developer Toolsのコンポーネントの1つであるOracle Deployment Wizard for .NETを使用して、Oracle Databaseにそれらをデプロイできます。
Oracle Providers for ASP.NETは、Oracle Database XE内のWebアプリケーションに共通する状態を格納するための簡単な方法をASP.NET開発者に提供します。これらのプロバイダは、既存のMicrosoft ASP.NETプロバイダにモデル化され、類似するスキーマおよびプログラミング・インタフェースを共有して.NET開発者に使い慣れたインタフェースを提供します。Oracleでは、メンバーシップ、プロファイル、ロールなどのプロバイダがサポートされます。
参照:
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Oracle Provider for OLE DB(OraOLEDB)は、オープンかつ標準的なデータ・アクセス方法であり、様々な型のデータに対するアクセスおよび操作において、一連のComponent Object Model(COM)インタフェースを使用します。このインタフェースは様々なデータベース開発元から提供されています。
参照: OraOLEDBの詳細は、『Oracle Provider for OLE DB開発者ガイド』を参照してください。 |
Oracle Objects for OLE (OO4O)を使用すると、Microsoft COMオートメーションおよびActiveXテクノロジをサポートするプログラミング言語またはスクリプト言語によって、Oracle Database XEに格納されたデータに簡単にアクセスできます。これには、Visual Basic、Visual C++、Visual Basic for Applications (VBA)、IIS Active Server Pages (VBScriptおよびJavaScript)などが含まれます。
参照:
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HR
スキーマは、Oracle Database XEの一部としてインストール可能なサンプル・スキーマです。このスキーマには従業員に関する情報、つまり、部門、事業所、職歴に関する情報および他の関連情報が含まれています。すべてのスキーマと同様、HR
スキーマにも、表、ビュー、索引、プロシージャ、ファンクションおよびその他すべてのデータベース・スキーマの属性があります。
このマニュアルの例とチュートリアルでは、HR
スキーマを使用します。
参照:
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