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Oracle Solaris 11.1 ネットワークの構成と管理     Oracle Solaris 11.1 Information Library (日本語)
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ドキュメントの情報

はじめに

1.  ネットワーク配備の計画

2.  IPv6 アドレス使用時の考慮点

3.  IPv4 ネットワークの構成

ネットワーク構成 (タスクマップ)

ネットワーク構成を開始する前に

ネットワーク上のコンポーネントシステムの構成

IPv4 自律システムのトポロジ

システム構成モードの設定

システムをローカルファイルモード用に構成する方法

システムをネットワーククライアントモード用に構成する方法

ネットワーク構成サーバーの設定方法

IPv4 ルーターの構成

IPv4 ルーターの構成方法

ルーティングテーブルとルーティングの種類

ルーティングテーブルに静的ルートを追加する方法

マルチホームホストの構成

マルチホームホストの作成方法

単一インタフェースシステムのルーティングの構成

単一インタフェースホストで静的ルーティングを有効にする方法

単一インタフェースシステムで動的ルーティングを有効にする方法

ネットワークへのサブネットの追加

IPv4 アドレスおよびその他のネットワーク構成パラメータを変更する方法

トランスポート層サービスの監視と変更

すべての着信 TCP 接続の IP アドレスを記録する方法

SCTP プロトコルを使用するサービスを追加する方法

TCP ラッパーを使って TCP サービスのアクセスを制御する方法

4.  ネットワークでの IPv6 の有効化

5.  TCP/IP ネットワークの管理

6.  IP トンネルの構成

7.  IPv4 リファレンス

8.  IPv6 リファレンス

索引

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ネットワーク上のコンポーネントシステムの構成

ネットワークシステムを構成するときは、次の構成情報が必要です。


注 - Oracle Solaris のインストール中にネットワークを構成できます。手順については、『Oracle Solaris 11.1 システムのインストール』を参照してください。

このドキュメントの手順では、OS をインストールしたあとにネットワークを構成することを想定しています。


以降のセクションの図 3-1 を、ネットワークのコンポーネントシステムを構成するための参照情報として使用してください。

IPv4 自律システムのトポロジ

複数のルーターとネットワークを持つサイトでは、通常そのネットワークトポロジは単一のルーティングドメイン、つまり「自律システム (AS: Autonomous System)」として管理されます。

図 3-1 複数の IPv4 ルーターを備えた自律システム

image:この自律システムのトポロジ図については、次の本文中で説明しています。

図 3-1 は、3 つのローカルネットワーク 10.0.5.0172.16.1.0、および 192.168.5.0 に分割された AS を示しています。ネットワークは次の種類のシステムで構成されています。

システム構成モードの設定

このセクションでは、ローカルファイルモードまたはネットワーククライアントモードのいずれかで動作するシステムを設定する手順について説明します。ローカルファイルモードで動作するときは、システムはローカルディレクトリにあるファイルからすべての TCP/IP 構成情報を取得します。ネットワーククライアントモードでは、構成情報はリモートネットワーク構成サーバーによって、ネットワーク内のすべてのシステムに提供されます。

一般的に、ネットワーク内の次のようなサーバーはローカルファイルモードで動作します。

クライアントはいずれのモードでも動作できます。したがって、ネットワーク内では次の図に示すように、これらのモードを組み合わせて、さまざまなシステムを構成できます。

図 3-2 IPv4 ネットワークトポロジに属するシステムのシナリオ

image:図は、1 台のネットワークサーバーが 4 つのシステムにサービスを提供する、サンプルネットワークを示しています。

図 3-2 は、192.9.200 ネットワーク内のシステムを示しています。

システムをローカルファイルモード用に構成する方法

システムをローカルファイルモードで動作するように構成するには、この手順を使用します。

  1. システムの IP インタフェースに、割り当て済み IP アドレスを構成します。

    手順については、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。

  2. /etc/nodename ファイルに正しいホスト名が設定されていることを確認します。
  3. /etc/inet/hosts ファイルのエントリが最新であることを確認します。

    Oracle Solaris インストールプログラムは、プライマリネットワークインタフェース、ループバックアドレス、およびインストール時に構成された追加インタフェース (該当する場合) に対する各エントリを作成します。

    このファイルは、デフォルトルーターの名前とルーターの IP アドレスも含む必要があります。

    1. (オプション) インストール後にシステムに追加されたネットワークインタフェースの IP アドレスとそれに対応する名前を追加します。
    2. (オプション) /usr ファイルシステムが NFS マウントされている場合、ファイルサーバーの IP アドレス (1 つまたは複数) を追加します。
  4. システムの完全修飾ドメインを nis/domain SMF サービスのプロパティーとして指定します。

    たとえば、次のように nis/domain SMF サービスの domainname プロパティーの値として deserts.worldwide.com を指定します。

    # domainname domainname

    このステップは永続的な変更をもたらします。

  5. ルーターの名前を /etc/defaultrouter ファイルに入力します。
  6. 該当する場合は、ネットマスクの情報を追加します。

    注 - DHCP サービスを使用中の場合、このステップをスキップします。


    1. ネットワーク番号とネットマスクを /etc/inet/netmasks ファイルに入力します。

      エントリを作成するには、network-number netmask の形式を使用します。たとえば、Class C ネットワーク番号 192.168.83 の場合は、次のように入力します。

      192.168.83.0    255.255.255.0

      CIDR アドレスの場合は、ネットワークの接頭辞をそれと同等の 10 進ドット表記に変換します。ネットワーク接頭辞とその 10 進ドット表記は、表 1-1 を参照してください。たとえば、192.168.3.0/22 という CIDR ネットワーク接頭辞を表現するには、次のような表記を使用します。

      192.168.3.0     255.255.252.0
    2. ローカルファイルが最初に検索されるようにスイッチの SMF プロパティー内のネットマスクの検索順序を変更したあとに、インスタンスをリフレッシュします。
      # svccfg -s name-service/switch setprop config/host = astring: '"files nis"'
      # svccfg -s name-service/switch:default refresh
  7. システムをリブートします。

システムをネットワーククライアントモード用に構成する方法

ネットワーククライアントモードに構成する各ホスト上で、次の手順を実行します。

始める前に

ネットワーククライアントは、各自の構成情報をネットワーク構成サーバーから受け取ります。したがって、あるシステムをネットワーククライアントとして構成するときは、このネットワーク用にネットワーク構成サーバーが少なくとも 1 つは設定されていることを確認してください。

  1. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  2. システムの IP インタフェースに、割り当て済み IP アドレスを構成します。

    手順については、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。

  3. /etc/inet/hosts ファイルに localhost という名前とループバックネットワークインタフェースの IP アドレスのみが含まれていることを確認します。
    # cat /etc/inet/hosts
    # Internet host table
    #
    127.0.0.1       localhost
  4. nis/domain SMF サービスの domainname プロパティーに割り当て済みの値があれば削除します。
    # domainname "

    このステップは永続的な変更をもたらします。

  5. クライアントの name-service/switch サービスの検索パスが、ネットワークに対する同じサービス要件を反映していることを確認します。

ネットワーク構成サーバーの設定方法

インストールサーバーおよびブートサーバーの設定の情報については、『Oracle Solaris 11.1 システムのインストール』を参照してください。

  1. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  2. 次のようにして in.tftpd デーモンをオンに設定します。
    1. 指定されたネットワーク構成サーバーのルート (/) ディレクトリに移動します。
    2. /tftpboot ディレクトリを作成します。
      # mkdir /tftpboot

      このコマンドにより、システムは、TFTP、bootparams、RARP のサーバーに構成されます。

    3. 手順 2 で作成したディレクトリに対するシンボリックリンクを作成します。
      # ln -s /tftpboot/. /tftpboot/tftpboot
  3. /etc/inetd.conf ファイルに tftp 行を追加します。

    行は次のようになるはずです。

    tftp dgram udp6 wait root /usr/sbin/in.tftpd in.tftpd -s /tftpboot

    これによって、in.tftpd は、/tftpboot にあるファイルだけから読み取られます。

  4. /etc/hosts データベースに、ネットワーク上のすべてのクライアントのホスト名および IP アドレスを追加します。
  5. /etc/ethers データベースに、ネットワーククライアントモードで動作するネットワーク上の各システムのエントリを作成します。

    このデータベース内のエントリは、次の形式を使用します。

    MAC Address     host name      #comment

    詳細は、ethers(4) のマニュアルページを参照してください。

  6. /etc/bootparams データベースに、ネットワーククライアントモードで動作するネットワーク上の各システムのエントリを作成します。

    このデータベースの編集については、bootparams(4) のマニュアルページを参照してください。

  7. /etc/inetd.conf エントリをサービス管理機能 (SMF) のサービスマニフェストに変換し、結果となるサービスを使用可能にします。
    # /usr/sbin/inetconv
  8. in.tftpd が正しく動作しているか確認します。
    # svcs network/tftp/udp6

    次のような出力が表示されます。

    STATE          STIME    FMRI
    online         18:22:21 svc:/network/tftp/udp6:default
in.tftpdデーモンの管理

in.tftpd デーモンはサービス管理機能によって管理されます。in.tftpd に対する管理アクション (有効化、無効化、再起動など) を実行するには、svcadm コマンドを使用します。このサービスを起動したり、再起動したりする責任は inetd に委譲されています。in.tftpd の構成を変更したり、構成情報を表示したりするには、inetadm コマンドを使用します。このサービスのステータスを照会するには、svcs コマンドを使用します。サービス管理機能の概要については、『Oracle Solaris 11.1 でのサービスと障害の管理』の第 1 章「サービスの管理 (概要)」を参照してください。

IPv4 ルーターの構成

ルーターは 2 つ以上のネットワーク間のインタフェースを提供します。したがって、ルーターの物理ネットワークインタフェースに、固有の名前と IP アドレスを割り当てる必要があります。これで、各ルーターは、そのプライマリネットワークインタフェースのホスト名と IP アドレスに加えて、増設した各ネットワークインタフェースについて少なくとも 1 つずつ、一意な名前と IP アドレスを持つことになります。

次の手順を使えば、物理インタフェースが 1 つだけのシステム (デフォルトではホスト) をルーターとして構成することもできます。『Oracle Solaris 11.1 での UUCP および PPP を使用したシリアルネットワークの管理』の「ダイアルアップ PPP リンクの計画」で説明しているように、システムを PPP リンクの 1 つのエンドポイントとして使用するような場合、単一インタフェースのシステムをルーターとして構成する場合があります。

IPv4 ルーターの構成方法

次の手順では、システムのインストール後にルーターのインタフェースを構成していることを想定しています。

始める前に

ルーターを物理的にネットワークに取り付けあとに、「システムをローカルファイルモード用に構成する方法」の説明に従って、ルーターがローカルファイルモードで動作するように構成します。これで、ネットワーク構成サーバーがダウンしても、ルーターが確実にブートされるようになります。

  1. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  2. システム上の NIC に対して IP インタフェースを構成します。

    IP インタフェースを構成する詳しいステップについては、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。

    システムがパケットを経路指定するネットワークの IP アドレスを、各 IP インタフェースに構成するようにします。したがって、システムで 192.168.5.0 および 10.0.5.0 のネットワークに対応する場合、ネットワークごとに 1 つの NIC を構成する必要があります。


    注意

    注意 - IPv4 ルーターで DHCP を使用するように構成する場合、DHCP 管理について十分な知識を持っておく必要があります。


  3. 各インタフェースのホスト名および IP アドレスを /etc/inet/hosts ファイルに追加します。

    たとえば、ルーター 1 の 2 つのインタフェースに割り当てた名前を、それぞれ krakatoa および krakatoa-1 とします。/etc/inet/hosts ファイルのエントリは次のようになります。

    192.168.5.1      krakatoa        #interface for network 192.168.5.0
    10.0.5.1         krakatoa-1      #interface for network 10.0.5.0
  4. このルーターがローカルファイルモードで動作するように構成するための残りのステップを実行します。

    「システムをローカルファイルモード用に構成する方法」を参照してください。

  5. サブネットに分割されたネットワークにルーターが接続されている場合、ネットワーク番号とネットマスクを /etc/inet/netmasks ファイルに追加します。

    たとえば、192.168.5.0 などの従来の IPv4 アドレス表記法の場合は、次のように入力します。

    192.168.5.0    255.255.255.0
  6. ルーターで IPv4 パケット転送を使用可能にします。
    # ipadm set-prop -p forwarding=on ipv4
  7. (任意) ルーティングプロトコルを起動する。

    次のいずれかのコマンド構文を使用します。

    • # routeadm -e ipv4-routing -u

    • # svcadm enable route:default

      in.routed デーモンに関連付けられている SMF FMRI は svc:/network/routing/route です。

    ルーティングプロトコルを開始するときに、ルーティングデーモン /usr/sbin/in.routed は自動的にルーティングテーブルを更新します。このプロセスのことを動的ルーティングと呼びます。ルーティングの種類の詳細は、「ルーティングテーブルとルーティングの種類」を参照してください。routeadm コマンドの詳細については、routeadm(1M) のマニュアルページを参照してください。

例 3-1 ネットワークのデフォルトルーターを構成する

この例は、図 3-1 に基づきます。ルーター 2 には有線ネットワーク接続が 2 つあり、1 つはネットワーク 172.16.1.0、もう 1 つはネットワーク 10.0.5.0 に接続されています。この例では、ルーター 2 が 172.16.1.0 ネットワークのデフォルトルーターになるように構成する方法を示します。またこの例では、「システムをローカルファイルモード用に構成する方法」に説明されているように、ルーター 2 がローカルファイルモードで動作するように構成されていることを想定しています。

スーパーユーザーになるか、同等の役割になったあと、システムのインタフェースのステータスを調べます。

# dladm show-link
LINK     CLASS     MTU     STATE   BRIDGE   OVER
net0     phys      1500    up      --       --
net1     phys      1500    up      --       --
net2     phys      1500    up      --       --
# ipadm show-addr
ADDROBJ           TYPE     STATE        ADDR
lo0/v4            static   ok           127.0.0.1/8
net0/v4           static   ok           172.16.1.10/24

net0 だけが IP アドレスで構成されています。ルーター 2 をデフォルトルーターにするには、net1 インタフェースを 10.0.5.0 ネットワークに物理的に接続します。

# ipadm create-ip net1
# ipadm create-addr -a 10.0.5.10/24 net1
# ipadm show-addr
ADDROBJ           TYPE     STATE        ADDR
lo0/v4            static   ok           127.0.0.1/8
net0/v4           static   ok           172.16.1.10/24
net1/v4           static   ok           10.0.5.10/24

次に、新たに構成したインタフェースとその接続先ネットワークの情報を使用して、次のネットワークデータベースを更新します。

# vi /etc/inet/hosts
127.0.0.1       localhost
172.16.1.10        router2        #interface for network 172.16.1
10.0.5.10          router2-out    #interface for network 10.0.5
# vi /etc/inet/netmasks
172.16.1.0    255.255.255.0 
10.0.5.0      255.255.255.0

最後に、パケット転送と in.routed ルーティングデーモンを有効にします。

# ipadm set-prop -p forwarding=on ipv4
# svcadm enable route:default

これで、IPv4 パケット転送と RIP による動的ルーティングがルーター 2 で有効になりました。ただし、ネットワーク 172.16.1.0 のデフォルトルーターの構成はまだ完了していません。次の作業を行う必要があります。

ルーティングテーブルとルーティングの種類

ルーターとホストの両方がルーティングテーブルを管理します。ルーティングテーブルには、システムのデフォルトのローカルネットワークも含め、システムで知られているネットワークの IP アドレスがリストされています。このテーブルには、既知の各ネットワークに対するゲートウェイシステムの IP アドレスもリストされています。ゲートウェイとは、発信パケットを受け取り、それらをローカルネットワークの 1 ホップ外側に転送するシステムです。

次は、IPv4 のみのネットワーク上のシステムについての単純なルーティングテーブルです。

Routing Table: IPv4
  Destination           Gateway           Flags  Ref   Use   Interface
-------------------- -------------------- ----- ----- ------ ---------
default              172.16.1.10          UG       1    532   net0
224.0.0.0            10.0.5.100           U        1      0   net1
10.0.0.0             10.0.5.100           U        1      0   net1
127.0.0.1            127.0.0.1            UH       1     57   lo0

Oracle Solaris システムでは、静的および動的という 2 種類のルーティングを構成できます。1 つのシステムに、これらのルーティングのどちらか一方を構成することも、両方を構成することもできます。動的ルーティングを実装するシステムは、IPv4 ネットワークの場合は RIP、IPv6 ネットワークの場合は RIPng などのルーティングプロトコルを利用して、ネットワークトラフィックをルーティングし、テーブル内のルーティング情報を更新します。静的ルーティングの場合、ルーティング情報は route コマンドを使用して手動で維持されます。詳細は、route(1M) のマニュアルページを参照してください。

ローカルネットワークまたは自律システムのルーティングを構成するときは、特定のルーターやホストでどの種類のルーティングをサポートするかを検討してください。

次の表に、ルーティングの種類と、それぞれの種類のルーティングを適用するのに最も適したネットワークの条件を示します。

ルーティングの種類
最適な使用対象
静的
小規模なネットワーク、デフォルトルーターから経路を取得するホスト、および、隣接する数ホップの範囲にある 1 つか 2 つのルーターに関する情報のみを必要とするデフォルトルーター。
動的
より規模の大きいインターネットワーク、多数のホストを含むローカルネットワーク上のルーター、および、大規模な自律システム上のホスト。動的ルーティングは、ほとんどのネットワークのシステムに最適です。
静的経路制御と動的経路制御の組み合わせ
静的に経路制御されるネットワークと動的に経路制御されるネットワークを接続するルーター、および、内部の自律システムと外部のネットワークを接続するボーダールーター。1 つのシステムで静的ルーティングと動的ルーティングの両方を組み合わせることは、一般的に行われています。

図 3-1 に示された AS は、静的ルーティングと動的ルーティングの両方を組み合わせて使用しています。


注 - 同じ宛先へのルートが 2 つあっても、システムで負荷分散やフェイルオーバーが自動的に行われるわけではありません。これらの機能が必要な場合は、『Oracle Solaris 11.1 ネットワークパフォーマンスの管理』の第 5 章「IPMP の概要」の説明に従って IPMP を使用します。


ルーティングテーブルに静的ルートを追加する方法

  1. ルーティングテーブルの現在の状態を表示します。

    通常のユーザーアカウントを使用して、次の形式の netstat コマンドを実行します。

    % netstat -rn

    次のような出力が表示されます。

    Routing Table: IPv4
      Destination           Gateway           Flags  Ref   Use   Interface
    -------------------- -------------------- ----- ----- ------ ---------
    192.168.5.125        192.168.5.10          U      1   5879   net0
    224.0.0.0            198.168.5.10          U      1  0       net0
    default              192.168.5.10          UG     1  91908
    127.0.0.1            127.0.0.1             UH     1  811302   lo0
  2. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  3. (オプション) ルーティングテーブル内の既存のエントリを消去します。
    # route flush
  4. リブート後も保持されるルートを追加します。
    # route -p add -net network-address -gateway gateway-address
    -p

    リブート後も保持される必要のあるルートを作成します。現在のセッションだけに有効なルートを作成する場合は、-p オプションを使用しないでください。

    -net network-address

    network-address で指定されたアドレスを持つネットワークへのルートであることを示します。

    -gateway gateway-address

    指定されたルートのゲートウェイシステムの IP アドレスが gateway-address であることを示します。

例 3-2 ルーティングテーブルに静的ルートを追加する

次の例は、図 3-1 のルーター 2 に静的ルートを追加する方法を示しています。静的ルートは AS のボーダールーター 10.0.5.150 で必要です。

ルーター 2 のルーティングテーブルを表示するために、次の手順を実行します。

# netstat -rn
Routing Table: IPv4
  Destination           Gateway           Flags  Ref   Use   Interface
-------------------- -------------------- ----- ----- ------ ---------
default              172.16.1.10          UG        1    249 ce0
224.0.0.0            172.16.1.10          U         1      0 ce0
10.0.5.0             10.0.5.20            U         1     78 bge0
127.0.0.1            127.0.0.1            UH        1     57 lo0

このルーティングテーブルは、ルーター 2 に既知のルートが 2 つあることを示しています。デフォルトのルートは、ルーター 2 の 172.16.1.10 インタフェースをゲートウェイとして使用します。2 番目のルート 10.0.5.0 は、ルーター 2 で実行中の in.routed デーモンによって検出されました。このルートのゲートウェイはルーター 1 で、その IP アドレスは 10.0.5.20 です。

ネットワーク 10.0.5.0 にはボーダールーターとして機能するゲートウェイがあります。このネットワークへのルートをもう 1 つ追加するには、次の手順を実行します。

# route -p add -net 10.0.5.0/24 -gateway 10.0.5.150
add net 10.0.5.0: gateway 10.0.5.150

これで、IP アドレス 10.0.5.150/24 を持つボーダールーターへのルートが、ルーティングテーブルに追加されました。

# netstat -rn
Routing Table: IPv4
  Destination           Gateway           Flags  Ref   Use   Interface
-------------------- -------------------- ----- ----- ------ ---------
default              172.16.1.10          UG        1    249 ce0
224.0.0.0            172.16.1.10          U         1      0 ce0
10.0.5.0             10.0.5.20            U         1     78 bge0
10.0.5.0             10.0.5.150           U         1    375 bge0
127.0.0.1            127.0.0.1            UH        1     57 lo0

マルチホームホストの構成

Oracle Solaris では、複数のインタフェースを持つシステムはマルチホームホストと見なされます。マルチホームホストのインタフェースは、異なる物理ネットワーク上または同じ物理ネットワーク上のさまざまなサブネットに接続します。

複数のインタフェースが同じサブネットに接続しているシステムでは、最初にそれらのインタフェースを IPMP グループ内に構成する必要があります。そうしない場合、システムはマルチホームホストになることができません。IPMP の詳細は、『Oracle Solaris 11.1 ネットワークパフォーマンスの管理』の第 5 章「IPMP の概要」を参照してください。

マルチホームホストは IP パケットを転送しませんが、ルーティングプロトコルを実行するように構成できます。一般に、次のような種類のシステムをマルチホームホストとして構成します。

マルチホームホストの作成方法

  1. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  2. Oracle Solaris インストールの一部として構成されなかった追加の各ネットワークインタフェースを構成します。

    『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。

  3. パケット転送が有効な場合、このサービスを無効にします。
    # ipadm show-prop -p forwarding ipv4
    PROTO PROPERTY     PERM CURRENT      PERSISTENT   DEFAULT      POSSIBLE
    ipv4  forwarding   rw   on           --           off          on,off
    
    ipadm set-prop -p forwarding=off ipv4
  4. (オプション) マルチホームホストの動的ルーティングをオンに設定します。

    次のいずれかのコマンド構文を使用します。

    • # routeadm -e ipv4-routing -u

    • # svcadm enable route:default

      in.routed デーモンに関連付けられている SMF FMRI は svc:/network/routing/route です。

例 3-3 マルチホームホストの構成

次の例は、図 3-1 に示すマルチホームホストを構成する方法を示しています。この例で、システムのホスト名は hostc です。このホストには 2 つのインタフェースがあり、両方ともネットワーク 192.168.5.0 に接続されています。

まず、システムのインタフェースのステータスを表示します。

# dladm show-link
LINK     CLASS     MTU     STATE   BRIDGE   OVER
net0     phys      1500    up      --       --
net1     phys      1500    up      --       --

# ipadm show-addr
ADDROBJ        TYPE     STATE        ADDR
lo0/v4         static   ok           127.0.0.1/8
net0/v4        static   ok           192.168.5.82/24
 

dladm show-link コマンドの報告は、hostc に 2 つのデータリンクがあることを示しています。ただし、net0 だけに IP アドレスが構成されています。hostc をマルチホームホストとして構成するには、net1 に、同じ 192.168.5.0 ネットワーク内の IP アドレスを構成します。net1 のベースとなる物理 NIC がネットワークに物理的に接続されていることを確認してください。

# ipadm create-ip net1
# ipadm create-addr static -a 192.168.5.85/24 net1
# ipadm show-addr
ADDROBJ        TYPE     STATE        ADDR
lo0/v4         static   ok           127.0.0.1/8
net0/v4        static   ok           192.168.5.82/24
net1/v4        static   ok           192.168.5.85/24

次に、net1 インタフェースを /etc/hosts データベースに追加します。

# vi /etc/inet/hosts
127.0.0.1           localhost
192.168.5.82        hostc    #primary network interface for host3
192.168.5.85        hostc-2  #second interface

次に、パケット転送が hostc 上で実行中の場合、このサービスをオフにします。

# ipadm show-prop -p forwarding ipv4
PROTO PROPERTY     PERM CURRENT   PERSISTENT   DEFAULT      POSSIBLE
ipv4  forwarding   rw   on        --           off          on,off

# ipadm set-prop -p forwarding=off ipv4

# routeadm
              Configuration   Current              Current
                     Option   Configuration        System State
---------------------------------------------------------------
               IPv4 routing   enabled              enabled
               IPv6 routing   disabled             disabled

           Routing services   "route:default ripng:default"

routeadm コマンドの報告は、in.routed デーモンによる動的ルーティングが現在有効になっていることを示しています。

単一インタフェースシステムのルーティングの構成

単一インタフェースシステムは、静的ルーティングまたは動的ルーティングのいずれかで構成できます。静的ルーティングでは、ホストはデフォルトルーターのサービスを利用してルーティング情報を取得する必要があります。次の手順では、両方の種類のルーティングを有効にする方法を示します。

単一インタフェースホストで静的ルーティングを有効にする方法

次の手順を使用して、マルチホームホストで静的ルーティングを構成することもできます。

  1. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  2. システムが属するネットワークの IP アドレスを使用して、システムの IP インタフェースを構成します。

    手順については、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。

  3. テキストエディタを使用して、/etc/defaultrouter ファイルを作成または変更し、システムが使用するルーターの IP アドレスを追加します。
  4. デフォルトルーターのエントリをローカルの /etc/inet/hosts ファイルに追加します。
  5. ルーティングがオフになっていることを確認します。
    # routeadm
       Configuration   Current              Current
                         Option   Configuration        System State
    ---------------------------------------------------------------
                   IPv4 routing   enabled             disabled
                   IPv6 routing   disabled             disabled
    
               Routing services   "route:default ripng:default"
    
    # svcadm disable route:default
  6. パケット転送がオフになっていることを確認します。
    # # ipadm show-prop -p forwarding ipv4
    PROTO PROPERTY     PERM CURRENT   PERSISTENT   DEFAULT      POSSIBLE
    ipv4  forwarding   rw   on        --           off          on,off
    
    # ipadm set-prop -p forwarding=off ipv4

例 3-4 単一インタフェースシステムの静的ルーティングを構成する

次の例は、図 3-1 に示す 172.16.1.0 ネットワーク上にある単一インタフェースシステム hostb に静的ルーティングを構成する方法を示しています。hostb はそのデフォルトルーターとしてルーター 2 を使用する必要があります。この例は、システムの IP インタフェースがすでに構成されていることを想定しています。

まず、管理者権限で hostb にログインします。次に、システムに /etc/defaultrouter ファイルが存在するかどうかを調べます。

# cd /etc
# ls | grep defaultrouter

# vi /etc/defaultrouter
172.16.1.10

IP アドレス 172.16.1.10 はルーター 2 に属しています。

# vi /etc/inet/hosts
127.0.0.1           localhost
172.16.1.18         host2    #primary network interface for host2
172.16.1.10         router2  #default router for host2

# ipadm show-prop -p forwarding ipv4
PROTO PROPERTY     PERM CURRENT   PERSISTENT   DEFAULT      POSSIBLE
ipv4  forwarding   rw   on         --           off          on,off

# ipadm set-prop -p forwarding=off ipv4

# routeadm
   Configuration   Current              Current
                     Option   Configuration        System State
---------------------------------------------------------------
               IPv4 routing   enabled             disabled
               IPv6 routing   disabled             disabled

           Routing services   "route:default ripng:default"

# svcadm disable route:default

単一インタフェースシステムで動的ルーティングを有効にする方法

ルーティングプロトコルを使用した動的ルーティングは、システム上でルーティングを管理するもっとも簡単な方法です。

  1. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  2. システムが属するネットワークの IP アドレスを使用して、システムの IP インタフェースを構成します。

    手順については、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。

  3. /etc/defaultrouter ファイル内にエントリがあれば削除します。

    /etc/defaultrouter ファイルが空の場合、システムは強制的に動的ルーティングを使用します。

  4. パケット転送が無効になっていることを確認します。
    # ipadm set-prop -p forwarding=off ipv4
  5. システムのルーティングプロトコルを有効にします。

    次のコマンドのいずれかを使用します。

    • # routeadm -e ipv4-routing -u

    • # svcadm enable route:default

例 3-5 単一インタフェースシステムで動的ルーティングを実行する

次の例は、図 3-1 に示すネットワーク 192.168.5.0 上にある単一インタフェースシステム hosta に動的ルーティングを構成する方法を示しています。システムはルーター 1 をデフォルトルーターとして使用します。この例は、システムの IP インタフェースがすでに構成されていることを想定しています。

まず、管理者権限で hosta にログインします。次に、/etc/defaultrouter ファイルがシステムに存在する場合はそれを削除します。

# cd /etc
# ls | grep defaultrouter
defaultrouter

# rm defaultrouter
# routeadm   Configuration   Current              Current
                     Option   Configuration        System State
---------------------------------------------------------------
               IPv4 routing   disabled             disabled
               IPv6 routing   disabled             disabled

           Routing services   "route:default ripng:default"

# svcadm enable route:default

# ipadm show-prop -p forwarding ipv4
PROTO PROPERTY     PERM CURRENT   PERSISTENT   DEFAULT      POSSIBLE
ipv4  forwarding   rw   on         --           off          on,off

# ipadm set-prop -p forwarding=off ipv4

ネットワークへのサブネットの追加

サブネットを使用しないネットワークからサブネットを使用するネットワークに変更する場合、次の一覧に含まれるタスクを実行します。この一覧では、サブネットスキーマをすでに準備していることを想定しています。

次の手順はサブネットと密接に関係しています。当初はサブネットを用いずにネットワークを構成し、ずっとあとでサブネットを実装する場合、次の手順を実行して変更を実装します。

IPv4 アドレスおよびその他のネットワーク構成パラメータを変更する方法

この手順では、すでにインストールされているシステムの IPv4 アドレス、ホスト名、およびその他のネットワークパラメータを変更する方法について説明します。サーバーまたはネットワーク接続されたスタンドアロンシステムの IP アドレスを変更する場合は、この手順を使用します。この手順は、ネットワーククライアントやネットワーク機器には適用されません。この手順で作成する構成は、リブート後も保持されます。


注 - ここで説明する手順は、プライマリネットワークインタフェースの IPv4 アドレスを変更する場合にのみ適用されます。別のインタフェースをシステムに追加する場合は、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。


次の手順では、IPv4 アドレスとサブネットマスクを指定するときに、ほとんどの場合は IPv4 で一般的な 10 進ドット表記を使用しています。この手順で使用されるすべてのファイルでは、CIDR 表記を使用して IPv4 アドレスを指定することもできます。

  1. 管理者になります。

    詳細は、『Oracle Solaris 11.1 の管理: セキュリティーサービス』の「割り当てられている管理権限を使用する方法」を参照してください。

  2. IP アドレスipadm コマンドを使って変更します。

    ipadm コマンドでは、IP アドレスを直接変更することはできません。最初に、修正対象の IP アドレスを表すアドレスオブジェクトを削除します。次に、同じアドレスのオブジェクト名を使って、新しいアドレスを割り当てます。

    # ipadm delete-addr addrobj
    # ipadm create-addr -a IP-address interface
  3. 該当する場合、system/identity: node SMF サービス内のホスト名エントリを変更します。
    # hostname newhostname

    このステップは永続的な変更をもたらします。

  4. サブネットマスクが変更されている場合は、/etc/netmasks ファイルにあるサブネットエントリを変更します。
  5. サブネットアドレスが変更されている場合は、/etc/defaultrouter ファイルに指定されているデフォルトルーターの IP アドレスを新しいサブネットのデフォルトルーターの IP アドレスに変更します。
  6. システムをリブートします。
    # reboot -- -r

例 3-6 IP アドレスおよびホスト名を変更する

この例では、ホストの名前、プライマリネットワークインタフェースの IP アドレス、およびサブネットマスクを変更する方法を示しています。プライマリネットワークインタフェース net0 の IP アドレスが 10.0.0.14 から 192.168.34.100 に変わります。

# ipadm show-addr
ADDROBJ      TYPE     STATE   ADDR
lo0/v4       static   ok      127.0.0.1/8
net0/v4      static   ok      10.0.0.14/24

# ipadm delete-addr net0/v4
# ipadm create-addr -a 192.168.34.100/24 net0
# hostname mynewhostname

# ipadm show-addr
ADDROBJ         TYPE     STATE   ADDR
lo0/v4          static   ok      127.0.0.1/8
net0/v4         static   ok      192.168.34.100/24

# hostname
mynewhostname

参照

プライマリネットワークインタフェース以外のインタフェースの IP アドレスを変更する場合は、『Oracle Solaris 11.1 での固定ネットワーク構成を使用したシステムの接続』の「IP インタフェースを構成する方法」を参照してください。