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プログラミングインタフェースガイド     Oracle Solaris 10 1/13 Information Library (日本語)
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ドキュメントの情報

はじめに

1.  メモリーと CPU の管理

2.  リモート共有メモリー API (Solaris クラスタ用)

3.  セッション記述プロトコル API

4.  プロセススケジューラ

5.  近傍性グループ API

6.  入出力インタフェース

7.  プロセス間通信

プロセス間のパイプ

名前付きパイプ

ソケットの概要

POSIX プロセス間通信

POSIX メッセージ

POSIX セマフォー

POSIX 共有メモリー

System V IPC

メッセージ、セマフォー、および共有メモリーのアクセス権

IPC インタフェース、キー引数、および作成フラグ

System V メッセージ

メッセージ待ち行列の初期化

メッセージ待ち行列の制御

メッセージの送受信

System V セマフォー

セマフォーのセットの初期化

セマフォーの制御

セマフォーの操作

System V 共有メモリー

共有メモリーセグメントのアクセス

共有メモリーセグメントの制御

共有メモリーセグメントの接続と切り離し

8.  ソケットインタフェース

9.  XTI と TLI を使用したプログラミング

10.  パケットフィルタリングフック

11.  トランスポート選択と名前からアドレスへのマッピング

12.  リアルタイムプログラミングと管理

13.  Solaris ABI と ABI ツール

A.  UNIX ドメインソケット

索引

System V IPC

SunOS 5.10 およびその互換オペレーティングシステムは、System V のプロセス間通信 (IPC) パッケージも提供します。System V IPC は事実上 POSIX IPC に置き換えられましたが、以前のアプリケーションをサポートするために現在も提供されています。

System V IPC の詳細は、ipcrm(1), ipcs(1), Intro(2), msgctl(2), msgget(2), msgrcv(2), msgsnd(2), semget(2), semctl(2), semop(2), shmget(2), shmctl(2), shmop(2), および ftok(3C) のマニュアルページを参照してください。

メッセージ、セマフォー、および共有メモリーのアクセス権

メッセージ、セマフォー、および共有メモリーには、通常のファイルと同じように、ほかのユーザーに対する読み取り権と書き込み権 (ただし、実行権はない)、および所有者、グループがあります。ファイルと同じ点は、作成元プロセスがデフォルトの所有者を識別することです。ファイルとは異なる点は、作成者は機能の所有権を別のユーザーに割り当てたり、所有権割り当てを取り消したりすることができる点です。

IPC インタフェース、キー引数、および作成フラグ

IPC 機能へのアクセスを要求するプロセスは、その機能を識別する必要があります。アクセス権を要求する IPC 機能をプロセスが識別できるようにするために、IPC 機能へのアクセスを初期化または提供するインタフェースは key_t というキー引数を使用します。キーは、任意の値または実行時に共通の元になる値から導き出すことができる値です。このようなキーは、ftok(3C) を使用して、ファイル名をシステム内で一意のキー値に変換することで導くこともできます。

メッセージ、セマフォー、または共有メモリーへのアクセスを初期化または取得するインタフェースは int 型の ID 番号を返します。IPC インタフェースの読み取り、書き込み、および制御操作を行う関数は、この ID を使用します。

キー引数に IPC_PRIVATE を指定して関数を呼び出すと、作成プロセス専用の IPC 機能のインスタンスが新しく初期化されます。

呼び出しに適切なフラグ引数として IPC_CREAT フラグを指定した場合、IPC 機能が存在していなければ、インタフェースはその IPC 機能を新たに作成しようとします。

IPC_CREATIPC_EXCL の両方のフラグを指定してインタフェースを呼び出した場合、IPC がすでに存在していれば、インタフェースは失敗します。この動作は複数のプロセスが IPC 機能を初期化する可能性がある場合に便利です。たとえば、複数のサーバプロセスが同じ IPC 機能にアクセスしようとする場合です。サーバープロセスがすべて IPC_EXCL を指定して IPC 機能を作成しようとすると、最初のプロセスだけが成功します。

これらのフラグをどちらも指定しない場合、IPC 機能がすでに存在していれば、インタフェースはその機能の ID を返して、アクセスを取得できるようにします。IPC_CREAT を指定しなし場合、該当する機能がまだ初期化されていなければ、呼び出しは失敗します。

論理 (ビット単位) OR を使用すると、IPC_CREATIPC_EXCL を 8 進数のアクセス権モードと組み合わせることによってフラグ引数を作成できます。たとえば、次の例では、メッセージ待ち行列が存在していない場合は新しい待ち行列を初期化します。

msqid = msgget(ftok("/tmp", 'A'), (IPC_CREAT | IPC_EXCL | 0400)); 

最初の引数は、文字列「"/tmp"」に基づいてキー「'A'」と評価されます。2 番目の引数は、アクセス権と制御フラグが組み合わされたものと評価されます。

System V メッセージ

プロセスがメッセージを送受信できるようにするには、msgget(2) を使用して待ち行列を初期化する必要があります。待ち行列の所有者または作成者は msgctl(2) を使用して、所有権またはアクセス権を変更できます。アクセス権を持つプロセスは msgctl(2) を使用して、操作を制御できます。

IPC メッセージを使用すると、プロセスはメッセージを送受信し、メッセージを任意の順序で処理待ち行列に入れることができます。パイプで使用されるファイルバイトストリームのモデルによるデータフローとは異なり、IPC メッセージでは長さが明示されます。

メッセージには特定のタイプを割り当てることができます。このため、サーバープロセスはクライアントプロセス ID をメッセージタイプとして使用することによって、その待ち行列上のクライアント間にメッセージトラフィックを振り向けることができます。単一メッセージトランザクションでは、複数のサーバープロセスは、共有メッセージ待ち行列に送られるトランザクション群に対して、並行して働くことができます。

メッセージを送受信する操作は、それぞれ msgsnd(2)msgrcv(2) によって実行されます。メッセージが送信されると、そのテキストがメッセージ待ち行列にコピーされます。msgsnd(2)msgrcv(2) は、ブロック操作としても非ブロック操作としても実行できます。ブロックされたメッセージ操作は、次の条件のどれかが生じるまで中断されます。

メッセージ待ち行列の初期化

msgget(2) は、新しいメッセージ待ち行列を初期化します。また、キー引数に対応する待ち行列のメッセージ待ち行列 ID (msqid) を返すこともできます。msgflg 引数として渡される値は、待ち行列アクセス権と制御フラグを設定する 8 進数の整数である必要があります。

MSGMNI カーネル構成オプションは、カーネルがサポートする固有のメッセージ待ち行列の最大数を指定します。この制限を超えると、msgget(2) 関数は失敗します。

次のコードに、msgget(2) の使用例を示します。

#include <sys/ipc.h>
#include <sys/msg.h>
...
        key_t    key;         /* key to be passed to msgget() */
        int      msgflg,      /* msgflg to be passed to msgget() */
                 msqid;       /* return value from msgget() */
        ...
        key = ...
        msgflg = ...
        if ((msqid = msgget(key, msgflg)) == -1)
        {
               perror("msgget: msgget failed");
               exit(1);
        } else
               (void) fprintf(stderr, "msgget succeeded");
...

メッセージ待ち行列の制御

msgctl(2) は、メッセージ待ち行列のアクセス権やその他の特性を変更します。msgid 引数は、既存のメッセージ待ち行列の ID である必要があります。cmd 引数は、次のいずれか 1 つです。

IPC_STAT

待ち行列のステータスの情報を buf が指すデータ構造体に入れます。この呼び出しを行うには、プロセスが読み取り権を持つ必要があります。

IPC_SET

所有者のユーザー ID とグループ ID、アクセス権、およびメッセージ待ち行列の大きさ (バイト数) を設定します。この呼び出しを行うには、プロセスが所有者、作成者、またはスーパーユーザーの有効なユーザー ID を持つ必要があります。

IPC_RMID

msqid 引数で指定したメッセージ待ち行列を削除します。

次のコードに、さまざまなフラグをすべて指定した msgctl(2) の使用例を示します。

#include                        <sys/types.h>
#include                        <sys/ipc.h>
#include                        <sys/msg.h>
        ...
        if (msgctl(msqid, IPC_STAT, &buf) == -1)  {
                perror("msgctl: msgctl failed");
                exit(1);
        }
        ...
        if (msgctl(msqid, IPC_SET, &buf) == –1) {
                perror("msgctl: msgctl failed");
                exit(1);
        }
...

メッセージの送受信

msgsnd(2)msgrcv(2) は、それぞれメッセージを送信および受信します。msgid 引数は、既存のメッセージ待ち行列の ID である必要があります。msgp 引数は、メッセージのタイプとテキストを含む構造体へのポインタです。msgsz 引数は、メッセージの長さをバイト数で指定します。msgflg 引数は、さまざまな制御フラグを渡します。

次のコードに、msgsnd(2)msgrcv(2) の使用例を示します。

#include                     <sys/types.h>
#include                     <sys/ipc.h>
#include                     <sys/msg.h>
...
        int              msgflg;        /* message flags for the operation */
        struct msgbuf    *msgp;         /* pointer to the message buffer */
        size_t           msgsz;         /* message size */
        size_t           maxmsgsize;    /* maximum message size */
        long             msgtyp;        /* desired message type */
        int              msqid          /* message queue ID to be used */
        ...
        msgp = malloc(sizeof(struct msgbuf) – sizeof (msgp–>mtext) 
                         + maxmsgsz);
        if (msgp == NULL) {
              (void) fprintf(stderr, "msgop: %s %ld byte messages.\n",
                         "could not allocate message buffer for", maxmsgsz);
              exit(1);
              ...
              msgsz = ...
              msgflg = ...
              if (msgsnd(msqid, msgp, msgsz, msgflg) == –1)
                         perror("msgop: msgsnd failed");
              ...
              msgsz = ...
              msgtyp = first_on_queue;
              msgflg = ...
              if (rtrn = msgrcv(msqid, msgp, msgsz, msgtyp, msgflg) == –1)
                         perror("msgop: msgrcv failed");
...

System V セマフォー

セマフォーを使用すると、プロセスはステータス情報を問い合わせたり、変更したりできます。通常、セマフォーは共有メモリーセグメントなどのシステムリソースが利用可能かどうかを監視して制御するために使用します。セマフォーは、個々のユニットまたはセット内の要素として操作できます。

System V IPC セマフォーは、大きな配列の中に存在できるため、極めて重いセマフォーです。より軽量なセマフォーは、スレッドライブラリで利用できます。また、POSIX セマフォーは System V セマフォーの最新の実装です (「POSIX セマフォー」を参照)。スレッドライブラリセマフォーは、マッピングされたメモリーで使用する必要があります (「メモリー管理インタフェース」を参照)。

セマフォーのセットは、制御構造体と個々のセマフォーの配列からできており、デフォルトでは、25 個までの要素を持つことができます。セマフォーのセットは、semget(2) を使用して初期化する必要があります。セマフォー作成者は semctl(2) を使用して、その所有権またはアクセス権を変更でき、アクセス権を持つプロセスは、semctl(2) を使用して操作を制御できます。

セマフォー操作は semop(2) によって行います。このインタフェースは、セマフォー操作構造体の配列へのポインタを受け入れます。操作配列内の各構造体は、セマフォーに実行する操作についてのデータを持ちます。読み取り権を持つプロセスは、セマフォーがゼロ値を持っているかどうかを検査できます。セマフォーを増分または減分する操作には、書き込み権が必要です。

操作が失敗すると、どのセマフォーも変更されません。IPC_NOWAIT フラグが設定されている場合を除いて、プロセスはブロックし、次のいずれかになるまでブロックされたままです。

セマフォーを更新できるのは、一度に 1 つのプロセスだけです。異なるプロセスが同時に要求した場合は、任意の順序で処理されます。操作の配列が semop(2) 呼び出しによって与えられると、配列内のすべての操作が正常に終了できるまで更新されません。

セマフォーを排他的に使用しているプロセスが異常終了し、操作の取り消しまたはセマフォーの解放に失敗した場合、セマフォーはメモリー内にロックされたままになります。この現象を防ぐには semop(2)SEM_UNDO 制御フラグを指定して、各セマフォー操作に undo 構造体を割り当て、セマフォーを以前の状態に戻すことができるようにします。プロセスが異常終了すると、undo 構造体内の操作がシステムによって適用されます。これにより、プロセスが異常終了しても、セマフォーの整合性が保たれます。

プロセスがセマフォーによって制御されるリソースへのアクセスを共有する場合は、SEM_UNDO を有効にしてセマフォーに対する操作を行わないでください。現在、リソースを制御しているプロセスが異常終了すると、そのリソースは整合性のない状態になったと見なされます。別のプロセスがこのリソースを整合性のある状態に復元するためには、そのことを認識できるようにする必要があります。

SEM_UNDO を有効にしてセマフォー操作を実行するときは、取り消し操作を行う呼び出しについても SEM_UNDO を有効にしておく必要があります。プロセスが正常に実行されると、取り消し操作は undo 構造体に補数値を補って更新します。このため、プロセスが異常終了しない限り、undo 構造体に適用された値は最終的に取り消されて 0 になります。undo 構造体は 0 になると削除されます。

SEM_UNDO を正しく使用しないと、割り当てられた undo 構造体がシステムをリブートするまで解放されないため、メモリーリークが発生する可能性があります。

セマフォーのセットの初期化

semget(2) は、セマフォーの初期化またはセマフォーへのアクセスを行います。呼び出しが成功すると、セマフォー ID (semid) を返します。key 引数は、セマフォー ID に関連付けられた値です。nsems 引数は、セマフォー配列内の要素数を指定します。nsems が既存の配列の要素数を超えると呼び出しは失敗します。正しい数がわからない場合は、nsems 引数を 0 に指定すると正しく実行されます。semflg 引数は、初期状態のアクセス権と作成の制御フラグを指定します。

SEMMNI システム構成オプションは、配列内のセマフォーの最大数を指定します。SEMMNS オプションは、すべてのセマフォーのセットを通じて個々のセマフォーの最大数を指定します。ただし、セマフォーのセット間の断片化のため、利用できるすべてのセマフォーを割り当てられない場合もあります。

次のコードに、semget(2) の使用例を示します。

#include                        <sys/types.h>
#include                        <sys/ipc.h>
#include                        <sys/sem.h>
...
         key_t    key;       /* key to pass to semget() */
         int      semflg;    /* semflg to pass to semget() */
         int      nsems;     /* nsems to pass to semget() */
         int      semid;     /* return value from semget() */
         ...
         key = ...
         nsems = ...
         semflg = ...
         ...
         if ((semid = semget(key, nsems, semflg)) == –1) {
                 perror("semget: semget failed");
                 exit(1);
         } else
                 exit(0);
...

セマフォーの制御

semctl(2) は、セマフォーのセットのアクセス権とその他の特性を変更します。有効なセマフォー ID を指定して呼び出してください。semnum 値は、そのインデックスによって配列内のセマフォーを選択します。cmd 引数は、次のいずれかの制御フラグです。

GETVAL

単一セマフォーの値を戻します。

SETVAL

単一セマフォーの値を設定します。この場合、argint 値の arg.val と解釈されます。

GETPID

セマフォーまたは配列に対して最後に操作を実行したプロセスの PID を戻します。

GETNCNT

セマフォーの値が増加するのを待っているプロセス数を戻します。

GETZCNT

特定のセマフォーの値が 0 に達するのを待っているプロセス数を戻します。

GETALL

セット内のすべてのセマフォーの値を戻します。この場合、argunsigned short 値の配列へのポインタである arg.array と解釈されます。

SETALL

セット内のすべてのセマフォーに値を設定します。この場合、argunsigned short 値の配列へのポインタである arg.array と解釈されます。

IPC_STAT

制御構造体からセマフォーのセットのステータス情報を取得し、semid_ds 型のバッファーへのポインタ arg.buf が指すデータ構造体に入れます。

IPC_SET

有効なユーザーおよびグループの識別子とアクセス権を設定します。この場合、argarg.buf と解釈されます。

IPC_RMID

指定したセマフォーのセットを削除します。

IPC_SET または IPC_RMID コマンドを実行するには、所有者、作成者、またはスーパーユーザーとして有効なユーザー識別子を持つ必要があります。その他の制御コマンドには、読み取り権と書き込み権が必要です。

次のコードに、semctl(2) の使用例を示します。

#include                     <sys/types.h>
#include                     <sys/ipc.h>
#include                     <sys/sem.h>
...
        register int         i;
...
        i = semctl(semid, semnum, cmd, arg);
        if (i == –1) {
               perror("semctl: semctl failed");
               exit(1);
...

セマフォーの操作

semop(2) は、セマフォーのセットへの操作を実行します。semid 引数は、以前の semget(2) 呼び出しによって戻されたセマフォー ID です。sops 引数は、セマフォー操作について次のような情報を含む構造体の配列へのポインタです。

sembuf 構造体は、sys/sem.h に定義されているセマフォー操作を指定します。nsops 引数は配列の長さを指定します。配列の最大長は、SEMOPM 構成オプションで指定されます。このオプションでは、単一の semop(2) 呼び出しで使用できる最大操作数が決定され、デフォルトではその値は 10 に設定されています。

実行する操作は、次のように判断されます。

semop(2) で使用できる制御フラグは IPC_NOWAITSEM_UNDO の 2 つです。

IPC_NOWAIT

配列内のどの操作についても設定できます。IPC_NOWAIT が設定されている操作を実行できなかった場合、セマフォーの値を変更せずにインタフェースを戻します。セマフォーを現在の値より多く減らそうしたり、セマフォーが 0 でないときに 0 かどうか検査しようとするとインタフェースは失敗します。

SEM_UNDO

プロセスの終了時に配列内の個々の操作を取り消します。

次のコードに、semop(2) の使用例を示します。

#include                                <sys/types.h>
#include                                <sys/ipc.h>
#include                                <sys/sem.h>
...
         int              i;            /* work area */
         int              nsops;        /* number of operations to do */
         int              semid;        /* semid of semaphore set */
         struct sembuf    *sops;        /* ptr to operations to perform */
         ...
         if ((i = semop(semid, sops, nsops)) == –1) {
                 perror("semop: semop failed");
         } else
                 (void) fprintf(stderr, "semop: returned %d\n", i);
...

System V 共有メモリー

SunOS 5.10 オペレーティングシステムで共有メモリーアプリケーションを実装するには、mmap(2) とシステムの内蔵仮想メモリー機能を利用する方法がもっとも効率的です。詳細は、第 1 章メモリーと CPU の管理を参照してください。

SunOS 5.10 は System V 共有メモリーもサポートしますが、物理メモリーのセグメントを複数のプロセスの仮想アドレス空間に接続する方法としては最適ではありません。複数のプロセスに書き込みアクセスが許可されているときは、セマフォーなどの外部のプロトコルやメカニズムを使用して、不整合や衝突などを回避できます。

プロセスは、shmget(2) を使用して共有メモリーセグメントを作成します。この呼び出しは、既存の共有セグメントの ID を取得する際にも使用できます。作成プロセスは、セグメントのアクセス権と大きさ (バイト数) を設定します。

共有メモリーセグメントの元の所有者は、shmctl(2) を使用して所有権をほかのユーザーに割り当てることができます。所有者はこの割り当てを取り消すこともできます。適切なアクセス権を持っていれば、ほかのプロセスも shmctl(2) を使用して共用メモリーセグメントにさまざまな制御機能を実行できます。

共有メモリーセグメントを作成したあとは、shmat(2) を使用してプロセスのアドレス空間にセグメントを接続できます。切り離すには shmdt(2) を使用します。プロセスを接続するには、shmat(2) に対して適当なアクセス権を持つ必要があります。接続すると、プロセスは接続操作で要求されているアクセス権に従って、セグメントの読み取りまたは書き込みを実行できます。共有セグメントは、同じプロセスによって何回でも接続できます。

共有メモリーセグメントは、物理メモリー内のある領域を指す一意の ID を持つ制御構造体から成ります。セグメント ID は shmid と呼びます。共有メモリーセグメントの制御構造体は sys/shm.h に定義されています。

共有メモリーセグメントのアクセス

shmget(2) を使用して、共有メモリーセグメントへアクセスします。成功すると、共有メモリーセグメント ID (shmid) を返します。次のコードに、shmget(2) の使用例を示します。

#include                     <sys/types.h>
#include                     <sys/ipc.h>
#include                     <sys/shm.h>
...
        key_t     key;       /* key to be passed to shmget() */
        int       shmflg;    /* shmflg to be passed to shmget() */
        int       shmid;     /* return value from shmget() */
        size_t    size;      /* size to be passed to shmget() */
        ...
        key = ...
        size = ...
        shmflg) = ...
        if ((shmid = shmget (key, size, shmflg)) == –1) {
               perror("shmget: shmget failed");
               exit(1);
        } else {
               (void) fprintf(stderr,
                             "shmget: shmget returned %d\n", shmid);
               exit(0);
        }
...

共有メモリーセグメントの制御

shmctl(2) を使用して、共有メモリーセグメントのアクセス権とその他の特性を変更します。cmd 引数は、次の制御コマンドのいずれか 1 つです。

SHM_LOCK

指定したメモリー内の共有メモリーセグメントをロックします。このコマンドを実行するプロセスは、有効なスーパーユーザーの ID を持つ必要があります。

SHM_UNLOCK

共有メモリーセグメントのロックを解除します。このコマンドを実行するプロセスは、有効なスーパーユーザーの ID を持つ必要があります。

IPC_STAT

制御構造体にあるステータス情報を取得して、buf が指すバッファーに入れます。このコマンドを実行するプロセスは、セグメントの読み取り権を持つ必要があります。

IPC_SET

有効なユーザー ID およびグループ ID とアクセス権を設定します。このコマンドを実行するプロセスは、所有者、作成者、またはスーパーユーザーの有効な ID を持つ必要があります。

IPC_RMID

共有メモリーセグメントを削除します。このコマンドを実行するプロセスは、所有者、作成者、またはスーパーユーザーの有効な ID を持つ必要があります。

次のコードに、shmctl(2) の使用例を示します。

#include                     <sys/types.h>
#include                     <sys/ipc.h>
#include                     <sys/shm.h>
...
int     cmd;                 /* command code for shmctl() */
int     shmid;               /* segment ID */
struct  shmid_ds  shmid_ds;  /* shared memory data structure to hold results */
        ...
        shmid = ...
        cmd = ...
        if ((rtrn = shmctl(shmid, cmd, shmid_ds)) == –1) {
                perror("shmctl: shmctl failed");
                exit(1);
...

共有メモリーセグメントの接続と切り離し

共有メモリーセグメントの接続と切り離しを行うには、shmat()shmdt() を使用します (shmop(2) のマニュアルページを参照)。shmat(2) は、共有セグメントの先頭へのポインタを返します。shmdt(2) は、shmaddr で指定されたアドレスから共有メモリーセグメントを切り離します。次のコードに、shmat(2)shmdt(2) の呼び出しの使用例を示します。

#include              <sys/types.h>
#include              <sys/ipc.h>
#include              <sys/shm.h>

static struct state { /* Internal record of attached segments. */
        int           shmid;        /* shmid of attached segment */
        char          *shmaddr;     /* attach point */
        int           shmflg;       /* flags used on attach */
} ap[MAXnap];                       /* State of current attached segments. */
int     nap;                        /* Number of currently attached segments. */
...
char    *addr;                      /* address work variable */
register int          i;            /* work area */
register struct state *p;           /* ptr to current state entry */
...
        p = &ap[nap++];
        p–>shmid = ...
        p–>shmaddr = ...
        p–>shmflg = ...
        p–>shmaddr = shmat(p->shmid, p->shmaddr, p->shmflg);
        if(p–>shmaddr == (char *)-1) {
                perror("shmat failed");
                nap–-;
        } else
                (void) fprintf(stderr, "shmop: shmat returned %p\n",
                                    p–>shmaddr);
        ...
        i = shmdt(addr);
        if(i == –1) {
                 perror("shmdt failed");
        } else {
                 (void) fprintf(stderr, "shmop: shmdt returned %d\n", i);
                 for (p = ap, i = nap; i–-; p++) {
                         if (p–>shmaddr == addr) *p = ap[–-nap];
                 }
        }
...