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Oracle® Fusion Middleware Exalogicエンタープライズ・デプロイメント・ガイド
ExalogicリリースX2-2、X3-2およびX5-2
E88001-01
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1 Oracle Exalogicの理解

この章では、Oracle Exalogicの概要、およびOracle Fusion Middlewareエンタープライズ・デプロイメントにおけるExalogicの機能について説明します。

全体として、Exalogicコンポーネント、アーキテクチャ、Exalogicネットワーク、Exadataを備えたExalogicのデプロイに関する情報を提供します。

1.1 Exalogicとは何か

Oracle Exalogicは、幅広いアプリケーション・タイプおよび多様なワークロードに必要なプラットフォームをすべて提供する、ハードウェアおよびソフトウェアの統合システムです。

Exalogicは、大規模でパフォーマンスに依存する、ミッションクリティカルなアプリケーション・デプロイメントを対象としています。Oracle Fusion Middlewareソフトウェアと業界標準のSunハードウェアを組み合せることにより、セキュリティ、信頼性およびパフォーマンスの要件が異なる、同時にデプロイされたアプリケーション間で高度な分離を実現します。Exalogicを使用すると、アプリケーションのエンドツーエンドの統合をサポートできる単一の環境を開発できます。

1.2 Exalogicコンポーネントの理解

Oracle Exalogicはハードウェア・ラックとして提供され、そのハードウェア・コンポーネントに加え、Exalogicには、事前に統合済の、オペレーティング・システム、仮想化テクノロジ、ネットワーク・ソフトウェア、デバイス・ドライバ、ファームウェアなどの標準テクノロジで構成されるOracle Exalogic Elastic Cloudソフトウェアを組み合せることができます。

次のコンポーネントで構成されます。

  • 計算ノード(サーバー)

  • ZFS記憶域(ストレージ・エリア・ネットワーク/SAN)

  • 統合されたInfinibandネットワーク

Exalogicの詳細は、『Oracle Exalogic Elastic Cloudマシン・オーナーズ・ガイド』のExalogicマシンの概要に関する項を参照してください。

1.3 Exalogicハードウェア・アーキテクチャについて

この項では、Oracle Exalogicのハードウェア・アーキテクチャについて説明します。

Oracle Exalogicは、様々なハードウェア構成について広範囲にテストが実施され、ミドルウェア・タイプのデプロイメントに最適な構成に到達しました。その設計では、高可用性、計算密度、最先端のコンポーネント、バランスのとれたシステム設計、現場保守性、集中管理されたストレージ、高性能ネットワークなどが考慮されています。

図1-1 Exalogicハードウェア・アーキテクチャ

図1-1の説明が続きます。
「図1-1 Exalogicハードウェア・アーキテクチャ」の説明

この項の内容は次のとおりです。

1.3.1 計算ノードについて

計算ノードはサーバーとよく似ています。計算ノードには、CPU、ネットワーク、および内部フラッシュ・ストレージが含まれています。

処理は、計算ノードによって実行されます。Exalogicのフル・ラックには30個の計算ノード、ハーフ・ラックには16個の計算ノード、クォーター・ラックには8個の計算ノード、1/8ラックには4個の計算ノードがあります。

計算ノードは、従来のサーバー・ハードウェアと同じように汎用処理装置として設計されています。しかし、そのハードウェアおよびソフトウェアは、Javaベースのミドルウェア・ソフトウェアを実行するように特別に構築され、チューニングされています。

計算ノードには、Exalogic Linuxベースのイメージがプリロードされています。これは、SolarisまたはExalogic Elastic Cloud Software(EECS)サーバーのいずれかを使用して再イメージ化できます。計算ノード上では、オペレーティング・システムでサポートされているものであれば、任意のタイプのアプリケーションを実行できます。

計算ノードは、高性能と高密度のバランスがとられています。密度は、データ・センター内の所定のフロア・スペース量における計算能力の尺度です。単一の計算ノードに複数のアプリケーションをデプロイできます。計算ノードは、バックアップの計算ノードを持つように構成できます。

Exalogic計算ノード上のプロセッサ・コアの数は、マシンのバージョンによって異なります。たとえば、標準的なExalogic X2-2マシン上の計算ノードには、6コア・プロセッサが2つ(合計で12コア)あり、標準的なX3-2マシン上の計算ノードには、8コア・プロセッサが2つ(合計で16コア)あります。

1.3.2 Exalogicのストレージについて

共有ストレージは、すべての計算ノードからアクセス可能なSun ZFS Storage ZS3アプライアンスによって提供されます。ZFSストレージは、最適化された圧縮、パフォーマンスおよび信頼性の最適化を特徴とし、Exalogicマシンに組み込まれています。

ZFSにより、ミドルウェアとアプリケーションの両方のバイナリと構成を保持するよう、ストレージが特別にエンジニアリングされているため、インストール数が削減され、Exalogicシステムの構成管理が簡素化されます。

Exalogicのストレージ・サブシステムは、アクティブ/スタンバイ構成の物理的に別個の2つのストレージ・ヘッド、および大規模な共有ディスク・アレイで構成されています。各ストレージ・ヘッドは、冗長Quad Date Rate(QDR)InfiniBandを使用してI/Oファブリックに直接連結されています。システムのパフォーマンスを向上させるため、ストレージ・サブシステムは、それぞれリード・キャッシュおよびライト・キャッシュとして使用される2種類のソリッド・ステート・メモリーで高速化されます。ストレージ・ヘッドは、ディスク・アレイ内の多数のSerial Attached SCSIディスクを1つのZFSクラスタに透過的に統合し、このZFSクラスタは、計算ノードのオペレーティング・システムでサポートされている標準のネットワーク・ファイル・システムを通じてExalogicの計算ノードで利用できます。ZFSクラスタは、構成に応じて、計算ノードまたは仮想マシンとして使用できます。

1.3.3 Exalogicのネットワークについて

InfiniBandおよびイーサネット・スイッチは、Exalogic内でのネットワーク通信を可能にします。

InfiniBandでは、最大40Gb/sの帯域幅と1ミリ秒まで減少したレイテンシにより、ネットワーク・スタックの物理層で信頼性の高い配信、セキュリティ、およびサービス品質が提供されます。計算ノードおよびストレージ・ノードには、ホスト・チャネル・アダプタ(HCA)とも呼ばれるInfiniBandネットワーク・アダプタが含まれています。デュアルポートinfiniband HCAにより、計算ノードおよびストレージ・ノードをシステムのI/Oファブリックに接続するプライベート内部ネットワークが提供されます。

さらに、Exalogicに同梱されているオペレーティング・システム・イメージには、OpenFabrics Enterprise Distribution(OFED)と呼ばれる一連のInfiniBandドライバおよびユーティリティがバンドルされています。OFEDは、オラクル社がExalogic Elastic Cloud Softwareと呼ぶものの中核となるコンポーネントです。Exalogic Elastic Cloud Softwareには、Oracle Fusion Middleware内にエンジニアリングされ、OFEDを強化してInfiniBandを超える高いパフォーマンスを提供する最適化機能も含まれています。

IBネットワークは、Exalogicマシン内のすべての通信およびデータ転送に使用され、複数のOracleエンジニアド・システムを相互に接続して、非常に高性能な多目的コンピューティング環境を構築するために使用できます。

Exalogic内のハードウェアはInfiniBandファブリックを使用していますが、データ・センターの残りの部分は、その外部と同様にイーサネットのみを使用します。これには、Exalogic内で実行されているコンポーネントが通信する必要のある、Webブラウザや従来のエンタープライズ情報システムなどのアプリケーション・クライアントが含まれます。Exalogicのスイッチおよびノードは、InfiniBand(EoIB)プロトコルによるイーサネット経由での通信を可能にします。その名前が示唆するように、EoIBにより、IBハードウェアを使用してイーサネット接続をエミュレートする機能がInfiniBandデバイスに提供されます。

1.4 Oracle Exalogic Elastic Cloudについて

Oracle Exalogic Elastic Cloudは、エンタープライズJavaアプリケーション向けのオラクル社の最初のエンジニアド・システムです。

これらのアプリケーションには、Oracle Fusion Middleware、およびExalogicでサポートされているオペレーティング・システム、つまりLinuxまたはSolarisのいずれかで動作するアプリケーションが含まれます。ハードウェアおよびソフトウェアは、ともにJavaパフォーマンスを極限まで最適化するようにエンジニアリングされています。

Oracle Exalogicは統合にも使用でき、Oracle Elastic Cloudソフトウェアの追加により、Exalogicプラットフォームを仮想サーバー・ファームとして使用できます。

図1-2 Oracle Exalogic Elastic Cloud

図1-2の説明が続きます
「図1-2 Oracle Exalogic Elastic Cloud」の説明

オラクル社は、Exalogicコンポーネントのみならず、当社のFusion Middlewareおよびアプリケーションに対し、オンチップ・ネットワーク仮想化、オペレーティング・システムおよびJava Virtual Machine (JVM)層での高性能Remote Direct Memory Access(RDMA)、Oracle WebLogic Server(当社のJava EEアプリケーション・サーバー)におけるExalogicに対応したワークロード管理といった独自の最適化と拡張を行い、これにより、信頼性、可用性、スケーラビリティおよびパフォーマンスの最高水準を満たすことができます。

Exalogic Elastic CloudはExabusで構成され、それは、オペレーティング・システム、ミドルウェア・コンポーネント、さらには特定のOracleアプリケーションさえもがInfinibandファブリックとOracle Traffic Directorを最大限に活用できるようにする、一連のハードウェア、ファームウェア、およびソフトウェアの最適化です。

InfiniBandネットワーク・ファブリックにより、非常に大きな帯域幅と低いレイテンシが提供され、アプリケーション・サーバーとデータベース・サーバー間の通信、およびExalogicシステム内で実行されている様々なアプリケーション・サーバー・インスタンス間の通信に大きなパフォーマンスの向上をもたらします。

図1-3 Exalogic Elastic Cloudソフトウェア(v2.X)のパフォーマンス・ベンチマーク

図1-3の説明が続きます
「図1-3 Exalogic Elastic Cloudソフトウェア(v2.X)のパフォーマンス・ベンチマーク」の説明

Exalogic Elastic Cloudソフトウェアの現在のリリースには、緊密に統合されたサーバー仮想化レイヤーが含まれており、これは、原則的にExabus InfiniBandネットワークおよびストレージ・ファブリックにはI/O仮想化によるオーバーヘッドを発生させることなく、各サーバー・ノード上にアプリケーションまたはミドルウェアを含む複数の個別の仮想マシンを統合できるというユニークな機能を備えています。

物理的には、Oracle Exalogic Elastic Cloudは、物理サーバー・マシンに集中管理されたストレージを加えたラックとみなすことができ、そのすべてが協力して標準的な高性能Javaアプリケーションのユースケースを満たすように設計されています。

この項の内容は次のとおりです。

1.4.1 Exalogic Elastic Cloudのアーキテクチャの理解

この項では、Exalogic Elastic Cloudのアーキテクチャについて説明します。

Exalogicシステムは、次の2つの主要な要素で構成されています。

  • Exalogic X5­2 - OracleのQuad Data Rate(QDR)InfiniBand上に構築されたExabusと呼ばれる高性能I/Oサブシステムを使用し、ストレージおよび計算リソースを統合するようにアセンブルされた高性能ハードウェア・システム。

  • Exalogic Elastic Cloud Software - Oracle LinuxおよびSolarisと事前に統合されているExalogic固有のソフトウェア、デバイス・ドライバ、ファームウェアの必須のパッケージであり、Exalogicの高度なパフォーマンスおよびInfrastructure-as-a-Service(IaaS)機能、サーバーおよびネットワークの仮想化、ストレージおよびクラウド管理機能を実現します。

    • WebLogic Server - セッション・レプリケーションでは、大規模なデータ操作のパフォーマンスを最大化するためにIBネットワークのSDPレイヤーが使用され、標準的なTCP/IPネットワークの処理オーバーヘッドの一部が回避されます。HTTPリクエストを処理する場合、WebLogic ServerはOracle Traffic Directorによって呼び出されたとき、またはHTTPリクエストを行うときにSDPプロトコルをネイティブで使用します。Active Gridlink for RAC機能により、IBファブリック上でExadataとネイティブに通信する際、低レベルのSDPプロトコルを使用するようにWebLogic Server JDBC接続と接続プールを構成できます。

    • Coherence - 複数キャッシュに渡るデータ・セットを処理する際のネットワーク・レイテンシをさらに最小化するため、クラスタ通信は劇的に再設計されました。その伸縮自在なデータ機能は、ネットワークおよびメモリーの使用を最小限に抑えるようにRAMの使用とガベージ・コレクション処理の両方が最適化された計算ノード組込みのソリッド・ステート・ドライブとともに、パフォーマンスを向上させます。キャッシュ間でのデータ送信時にはRDMAレベルのIB動詞セットのみが使用されるため、ほぼすべてのTCP/IPネットワーク処理のオーバーヘッドが回避されます。

    • Tuxedo - Tuxedoも同様に、SDPおよびRDMAプロトコルの使用を増やし、計算ノード内および計算ノード間のプロセス間通信のパフォーマンスを最適化して強化されました。

1.4.2 Oracle Exalogic Elastic Cloudの稼働

Oracle Fusion Middlewareソフトウェアは、Exalogic上にデプロイするためのパフォーマンス最適化によって強化されています。

特定のFusion Middlewareアプリケーションについては、個々のソフトウェアのマニュアルを参照できます。

例:
  • Identity And Accessエンタープライズ・デプロイメント・ガイド

  • Web Centerエンタープライズ・デプロイメント・ガイド

  • SOAエンタープライズ・デプロイメント・ガイド

このドキュメントでは、Exalogicハードウェアの稼働方法やOracle Exalogic Elastic Cloudソフトウェアのインストール方法については説明していません。Exalogicハードウェアの稼働方法については、Oracle Exalogicドキュメント・ライブラリExalogicリリースEL X2-2、X3-2、X4-2およびX5-2を参照してください。

Weblogic ServerのExalogic最適化は、『Oracle WebLogic Serverの新機能』のExalogic Elastic Cloudソフトウェア・サポートに関する項の説明に従い、コア・サーバーに関する項を参照して有効にできます。

このドキュメントでは、Exalogicハードウェアの稼働方法やOracle Exalogic Elastic Cloudソフトウェアのインストール方法については説明していません。これを行う方法については、次のドキュメントを参照してください。

Oracle Exalogicドキュメント・ライブラリ ExalogicリリースEL X2-2、X3-2、X4-2およびX5–2。

http://docs.oracle.com/cd/E18476_01/

1.5 Exalogicネットワークの理解

この項では、Exalogicネットワークに関する情報を提供します。

次の項では、Exalogicマシンのネットワーク接続方法について説明します。

1.5.1 Exalogicマシンのネットワーク図

この項では、Exalogicマシンのネットワーク図に関する情報を提供します。

図4-1に、Oracle Exalogicマシンのネットワーク図を示します。

図1-4 Exalogicマシンのネットワークの概要

図1-4の説明が続きます
「図1-4 Exalogicマシンのネットワークの概要」の説明
このOracle Exalogicマシンのネットワーク接続の概略を表した図には、次のものが含まれています。
  • デフォルトのBOND0インタフェース。これは、プライベートのInfiniBandファブリックであり、この中で計算ノードがSun Network QDR InfiniBandゲートウェイ・スイッチを介して接続されます。

    このネットワークの標準的な用途は次のとおりです。
    • 計算ノード間で通信する

    • 内部Oracle ZFS Storage Applianceおよびファブリック上のその他のエンジニアド・システムにアクセスする

    • vServer間で通信する

    • InfiniBandのパーティションおよびメンバーシップにより、ネットワークの分離およびセキュリティを提供する

    注意:

    InfiniBand BOND0のインタフェースは、Exalogic計算ノードおよびストレージ・サーバー・ヘッドどうしの通信のためのデフォルトのチャネルです。IPサブネットおよび追加の結合を、このデフォルトの結合インタフェースの上に追加できます。

    Oracle LinuxのIPoIBネットワーク・インタフェースを表すデバイス・ノードの名前は、ib0およびib1です。Oracle Solarisによって作成される、対応する論理デバイスの名前は、ibp0およびibp1です。デフォルトのIPoIB結合インタフェースBOND0またはIPMP0 (Exalogic構成ユーティリティによって構成されます)には、これらのLinux固有インタフェースまたはSolaris固有インタフェースが含まれています。

  • BOND1インタフェース。これは、Ethernet over InfiniBand (EoIB)リンクです。

    このネットワークの標準的な用途は次のとおりです。
    • vLAN上のEoIB外部管理ネットワーク

    • ECUの構成プロセスで作成されたECUスプレッドシートに提供されるIPアドレス

    • Exalogic Controlによるクラウド管理に使用される

    • 個別のvLAN上のEoIBユーザー・アクセス・ネットワーク

    • Exalogicのインストール後にExalogic管理者によって作成される

    • ゲスト仮想サーバーとそのアプリケーション・サービスにアクセスするために使用される

    注意:

    Oracle LinuxのEoIBネットワーク・インタフェースを表すデバイス・ノードの名前は、vnic0およびvnic1です。Sun Network QDR InfiniBandゲートウェイ・スイッチ上に作成されるvnic0およびvnic1のインスタンスに対応する、ethデバイス・ノードがLinuxカーネルによって作成されます。

    Oracle Solarisによって作成される、対応する論理デバイスの名前は、eoib0およびeoib1です。EoIB結合インタフェースBOND1またはIPMP1は、手動で構成する必要があります。これらを構成するときは、使用するオペレーティング・システム固有のネットワーク・インタフェースを選択してください。

  • NET0インタフェース。これには、すべての計算ノードおよびストレージ・サーバー・ヘッドのホスト・イーサネット・ポート0 IPアドレスが関連付けられます。

    このネットワークの標準的な用途は次のとおりです。
    • すべての物理コンポーネントおよびILOMにアクセスする

    • システム管理およびライフサイクル管理を実行する

    • Exalogicコントロール・スタックで使用される

    注意:

    Oracle Linuxの管理ネットワーク・インタフェースを表すデバイス・ノードの名前は、eth0です。Oracle Solarisによって作成される、対応する論理デバイスの名前は、igb0です。

  • 外部データ・センター接続用のクライアント・アクセス・ネットワーク

1.5.2 ネットワーク・プロトコルの理解

Exalogicデプロイメントでは、すべてのネットワークはInfiniband経由です。

ほとんどの場合、企業のネットワークはイーサネット・ベースです。しかし、Infinibandネットワークがイーサネット・トラフィックを理解するように構成することで、Exalogicマシンを企業のネットワークに接続できます。これは、Ethernet over Infiniband(EoIB)として知られています。EoIBネットワークは、10GBイーサネットを使用して企業のネットワークと通信します。このネットワークは、クライアント/パブリック/外部のネットワークとして知られています。

Exalogicマシン内の他のコンポーネントと通信する場合は、イーサネットを使用する必要はありません。InfiniBandアダプタ(HCA)により、ネイティブの「動詞」プログラミング・インタフェースを介して使用できる高度な機能が提供されます。

  • データ転送は、ユーザー空間から直接ハードウェアに対して開始でき、カーネルをバイパスしてシステム・コールのオーバーヘッドを回避します。

  • アダプタは、送信側または受信側のいずれのCPUも使用せずに、大きなメッセージ(数MBでも)をパケットに分割し、ACKを生成し、失われたパケットを再送するなどのネットワーク・プロトコルをすべて処理できます。

  • IPoIB(IP-over-InfiniBand)は、IB上でIPパケットを送信する方法を定義するプロトコルです。たとえば、Linuxにはこのプロトコルを実装する「ib_ipoib」ドライバがあります。このドライバは、システム上のInfiniBandポートごとにネットワーク・インタフェースを作成し、HCAを通常のNICのように動作させます。

IPoIBは、HCA機能をフルには活用していません。ネットワーク・トラフィックは通常のIPスタックを通過します。これは、すべてのメッセージにシステム・コールが必要であり、ホストCPUで分割データをパケット化する処理が必要であることを意味します。ただし、通常のIPソケットを使用するアプリケーションは、IBリンクの最高速度で動作することを意味します。

IPoIBは、その上でTCP(またはUDP)ソケットを実行できる通常のIP NICインタフェースを提供します。

Sockets Direct Protocol(SDP)は、Remote Direct Memory Access(RDMA)ネットワーク・ファブリックを介してストリーム・ソケットをサポートする、トランスポート非依存プロトコルです。これは、Infinibandネットワーク専用に設計されています。

Sockets Direct Protocolの目的は、IP上でTCPプロトコルのかわりにRDMAで加速された代替プロトコルを提供することです。目標は、アプリケーションに対して透過的な方法でこれを行うことです。

SDPはストリーム・ソケットのみを扱い、システムにインストールされている場合は、RDMAファブリック上のエンドポイント間のストリーム接続で、オペレーティング・システムにあるTCPスタックをバイパスします。他のすべてのソケット・タイプ(データグラム、raw、パケットなど)は、Linux IPスタックでサポートされ、標準のIPインタフェース(InfiniBandファブリック上のIPoIB)上で動作します。IPスタックはSDPスタックに依存しません。ただし、SDPスタックはローカルIP割当てのIPドライバおよびエンドポイント識別情報のIPアドレス解決に依存します。

このガイドでは、IPoIBネットワークを内部ネットワークと呼びます。

両方のネットワーク(EoIBおよびIPoIB)は、連結されたIPアドレスを介してアクセスされます。トラフィックをEoIBネットワーク経由でルーティングする場合は、そのネットワークに関連付けられたIPアドレスを使用してトラフィックを送信します。同様に、トラフィックが内部ネットワークを通過するようにするには、そのネットワークに関連付けられているIPアドレスを使用します。例:

host1-intは、内部(IPoIB)ネットワークに関連付けられています

host1-extは、外部(EoIB)ネットワークに関連付けられています

内部ネットワーク経由でhost1と通信する場合は、host1-intにトラフィックを送信します。外部ネットワークを使用する場合は、host1-extを使用します。

1.6 Exadataを備えたExalogicのデプロイについて

ほとんどのOracle Fusion Middlewareアプリケーションは、Oracle Databaseとやりとりします。このデータベースは、データ・センター・ネットワークに接続された外部10GBイーサネット経由でExalogicマシンに接続されている外部のハードウェア上に置くことができます。

ただし、データベースがExalogicマシンに直接接続されているExadataアプライアンスにある場合に最大限のパフォーマンスが得られます。ExalogicがExadataに接続されている場合は、Infiniband(IPoIB)上のIPを使用してデータベースと通信するというオプションがあります。

Oracle ExalogicマシンをOracle Exadata Databaseマシンに接続する方法は、Oracle Fusion Middleware Exalogicマシン・マルチラック・ケーブリング・ガイドを参照してください。

1.7 デプロイメントのタイプの理解

この項では、Exalogicデプロイメントのタイプについて説明します。

Exalogicは、物理または仮想のデプロイメントで構成できます。

この項の内容は次のとおりです。

1.7.1 物理Exalogic構成について

物理的なExalogic構成では、アプリケーション・ソフトウェアは計算ノードにデプロイされます。各計算ノードでは、それ自身の単一のオペレーティング・システムが実行されます。

WebLogic Server、Coherence、およびTuxedoを含むすべてのアプリケーションは、このオペレーティング・システム・カーネルおよびローカルの計算ノード・リソースを共有します。

Exalogicの計算ノードはエンジニアド・サーバーであるため、計算ノードにデプロイされたJavaベースのミドルウェア・ソフトウェアに対し、非常に優れたパフォーマンスが提供されます。

この構成には、EECSおよびミドルウェアは含まれません。さらに、Exalogicプラットフォーム上で実行されるアプリケーションは、従来のプラットフォームにあるものとまったく同じようにデプロイおよび管理されます。新しいデプロイメントは、適切に物理的な計算、ストレージ、メモリーおよびI/Oリソースに関連付けられます。詳細は、主要な管理ツールである、『Oracle Enterprise Manager Cloud Control Oracle Exalogic Elastic Cloud Machineの管理とモニタリング』Enterprise Managerに関する項を参照してください。

1.7.2 仮想Exalogic構成について

サーバー仮想化の目的は、オペレーティング・システムおよびアプリケーション・スタックを、その基礎となる物理サーバーの制約と境界から根本的に分離することです。これにより、実際には仮想マシンが物理サーバーを他の仮想マシンと共有していても、複数の仮想マシンがそれぞれ独自の物理ハードウェア上で実行されているように感じられます。

これにより、ハードウェア、冷却、および不動産費用など、物理サーバーの増加に伴うコストを最小限に抑えながら、サーバー・ハードウェアの使用率を最大限に高めるためのサーバー統合が可能になります。

このハードウェアの分離は、ソフトウェア・ベースの共有または直接的なデバイス割当て(I/OデバイスがVMに直接割り当てられる)のいずれかによって実行されます。ソフトウェア・ベースの共有は、仮想マシンのオペレーティング・システムと、その基礎となるハードウェアの間に非常に薄いソフトウェア・レイヤーを挿入し、ハードウェアを直接エミュレートするか、または複数VM間でのCPUスケジューリング、I/O管理、エラー処理といったすべてのフローと制御を管理することによって実現されます。

仮想化の課題は、必要とされるコスト・ベネフィットの実現に十分な統合率を達成しながら、コア・アプリケーションから要求される、非常に優れた、予測可能なパフォーマンスを提供することです。

Oracle Exalogic Elastic Cloudでは、Exabusと呼ばれる独自の入力/出力のサブシステムが提供されます。Exabusは、統合されたネットワーク・ファブリックを使用して、Exalogicシステム内で実行されているアプリケーションにすべての入力/出力サービスを提供します。Exalogicシステム内に存在するアプリケーションは、Exabusを介してデータ・センター・ネットワーク内で提供されるすべてのネットワーク・サービスにアクセスできます。

Oracle Exalogicの最新バージョンでは、最新の標準ベースのテクノロジを使用してExabusのInfiniBand接続を仮想化し、パフォーマンスに影響を与えずに物理サーバーごとに複数の仮想マシンを統合できます。

Exalogicには高度に最適化されたバージョンのEECSハイパーバイザのサポートが含まれており、これを使用して、物理計算ノードを複数の仮想サーバー(vServer)に分割して、それぞれ個別のOracle Linuxオペレーティング・システム・インスタンスおよびアプリケーションを実行できます。

論理vServerには、特定の量の物理的な計算、ストレージ、メモリーおよびI/Oリソースがあり、必要に応じてミドルウェアおよびアプリケーションとともに事前構成されています。このアプローチでは、vServerが物理リソースを共有でき、数分でプロビジョニングできるため、最大レベルのリソース共有およびアジリティが可能になります。Oracleアプリケーション用の事前構成済のOVMテンプレートをダウンロードできます。

EECSは、Single Root I/O Virtualization(SR-IOV)と呼ばれる技術を使用し、ExalogicのExabus I/Oバックプレーンと緊密に統合するようにエンジニアリングされています。

SR-IOVは、最大限のパフォーマンスおよびスケーラビリティを実現するために仮想化のオーバーヘッドを排除し、同じInfiniBand I/Oアダプタを最大63台の仮想マシンで共有することができ、それぞれが冗長ペアのInfiniBand接続を備えており、非常に効率的な統合操作が可能です。ハードウェアの共有を可能にしながら仮想化のオーバーヘッドをほとんど排除するSR-IOV独自の機能により、サーバーの統合率およびパフォーマンスが大幅に向上します。

1.7.3 デプロイメントのタイプの選択について

両方のExalogic実装スタイル(物理および仮想)は、プライベート・クラウドの作成をサポートできます。

仮想システムでは、Exalogic Controlを使用してクラウドのユーザーおよびサービスを定義、管理およびモニターします。物理システムでは、同等の機能がEnterprise Managerによってクラウド管理パックとともに提供されます。

仮想化されたアプローチを使用する利点として、アプリケーションの統合、テナントの分離(複数のテナントに対する安全なExalogicリソースの提供)、スケール・アップやスケール・ダウンを含むデプロイメントの簡素化などがあります。Exalogic Elastic Cloudテクノロジの登場により、仮想化によるアプリケーションのスループットおよびレイテンシへの影響は、無視できるほどに最小化されました。Exalogic vServerで実行されるアプリケーションは、ベアメタルでのデプロイメントと同等のパフォーマンスを発揮しながら、サーバー仮想化による管理しやすさと効率のすべての利点を保持しています。

ベアメタル(物理的な)デプロイメントを使用してアプリケーションをデプロイする場合は、計算ノードのそのままの処理能力を自由に使用できます。単一のコンピューティング・ノードでは、アプリケーションの単一のコンポーネントが必要とするよりも、提供される処理能力のほうが高くなりがちです。したがって、使用可能な処理能力を最大限に活用するため、複数のアプリケーション・コンポーネントやアプリケーションが同じ計算ノードにインストールされます。

仮想デプロイメントを使用してアプリケーションをデプロイする場合は、コンポーネントをモジュール化して複数の小さな仮想サーバーを作成することで、アプリケーション・コンポーネントを分離できます。仮想デプロイメントでは、基礎となるハードウェアに障害が発生した場合、仮想サーバーを別の基礎となる物理ホストに移動して処理を再開できます。分散デプロイメントを使用すると、障害をより小さな領域に分離できます。