この章では、Oracle GoldenGateの機能、基本用語および処理ロジックとアーキテクチャについて説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Oracle GoldenGateでは、エンタープライズの複数の異機種プラットフォーム間において、トランザクション・レベルでデータを交換および操作できます。トランザクションの整合性を維持したまま、既存インフラストラクチャへのオーバーヘッドを最小限に抑えて、コミットされたトランザクションを移動します。そのモジュール型のアーキテクチャによって、選択したデータ・レコード、トランザクション変更およびDDL(データ定義言語)変更を様々なトポロジ間で柔軟に抽出およびレプリケートできます。
注意: DDLサポート、トポロジおよび取得または配信の構成はデータベース・タイプごとに異なります。サポートされる機能および構成の詳細情報は、使用中のデータベースに対応するOracle GoldenGateのインストレーションおよび構成のドキュメントを参照してください。 |
この柔軟性と、Oracle GoldenGateのフィルタリング、変換およびカスタム処理の各機能により、次のような多くのビジネス要件に対応できます。
ビジネス継続性および高可用性。
初期ロードおよびデータベース移行。
データ統合。
意志決定支援およびデータ・ウェアハウス。
データベース | ログベース抽出(取得) | 非ログベース抽出(取得) | レプリケーション(配信) |
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* 非ログベース抽出では、Oracle GoldenGate APIと通信する取得モジュールを使用して、変更データをOracle GoldenGateに送信します。 |
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DB2 for z/OS |
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処理方法、サポートされるトポロジと機能、および構成要件の詳細は、使用中のデータベースに対応するOracle GoldenGateのドキュメントを参照してください。
Oracle GoldenGateは、次の目的で構成できます。
あるデータベースからデータ・レコードの静的抽出を行い、別のデータベースにそのレコードをロードする場合。
ソースとターゲットのデータ一貫性を維持するために、トランザクションデータ操作言語(DML)操作とデータ定義言語(DDL)変更(サポートされるデータベースの場合)を継続的に抽出およびレプリケートする場合。
データベースから抽出を行い、データベース以外の場所にあるファイルにレプリケートする場合。
Oracle GoldenGateは、次のコンポーネントで構成されます。
Extract
データ・ポンプ
Replicat
証跡または抽出ファイル
チェックポイント
Manager
Collector
図1-2は、初期データ・ロードとDML操作およびDDL操作の同期に対応するOracle GoldenGateの論理アーキテクチャを示しています。これは基本構成です。このモデルは、ビジネス要件に応じて変更することをお薦めします。
Extractプロセスは、Oracle GoldenGateの抽出(取得)メカニズムです。Extractは、データベース要件および実装要件に応じて、ソース・システムまたはダウンストリーム・データベース、あるいはその両方で実行されます。
Extractは次のいずれかの方法で構成できます。
初期ロード: 初期データ・ロードの場合、Extractは、ソース・オブジェクトから現在の静的データセットを直接抽出(取得)します。
変更同期: ソース・データと別のデータセットとの同期を維持するため、Extractは、初期同期の発生後にDML操作およびDDL操作を取得します。
Extractが取得するのは次のいずれかのデータソースからです。
ソース表(実行するのが初期ロードの場合)。
データベースのリカバリ・ログまたはトランザクション・ログ(Oracle REDOログやSQL/MX監査証跡など)。ログから取得する実際の方法は、データベース・タイプに応じて異なります。たとえば、Oracle GoldenGate for Oracleに用意されている統合キャプチャ・モードでは、Extractは、Oracleトランザクション・ストリームをマイニングするデータベース・ログマイニング・サーバーと直接通信します。統合取得の詳細は、Oracle DatabaseのためのOracle GoldenGateのインストールおよび構成の統合取得についてに関する項を参照してください。
サード・パーティの取得モジュール。この方法では、データおよびメタデータを外部APIからExtract APIに渡すための通信レイヤーが提供されます。データベース・ベンダーまたはサード・パーティ・ベンダーによって、データ操作を抽出してExtractに渡すコンポーネントが用意されます。
変更同期用に構成されている場合、Extractは、Extract構成内のオブジェクトに対して実行されるDML操作およびDDL操作を取得します。Extractは、操作が含まれるトランザクションのコミット・レコードまたはロールバックを受信するまで、それらの操作を格納します。Extractがロールバックを受信すると、そのトランザクションの操作は破棄されます。Extractがコミットを受信すると、トランザクションはディスクの証跡と呼ばれる一連のファイルに永続化され、ターゲット・システムへの伝播を待つキューに入ります。各トランザクションの操作はすべて、順次編成されたトランザクション単位として証跡に書き込まれます。この設計によって、処理速度とデータ整合性の両方が保証されます。
注意: Extractでは、Extract構成に存在しないオブジェクトに対する操作は無視されます。この動作は、Extract構成に存在するオブジェクトに対する操作が同じトランザクションに含まれている場合でも同様です。 |
複数のExtractプロセスを異なるオブジェクトに対して同時に動作させることができます。たとえば、データベースの規模が大きい場合、ターゲットのレイテンシを最小化するために、2つのExtractプロセスで抽出を行い、(2つの永続性証跡を使用する)2つのReplicatプロセスにパラレルに送信することもできます。異なるExtractプロセスどうしを区別するには、各プロセスにグループ名を割り当てます(1.4項「グループの概要」を参照)。
データ・ポンプは、ソースOracle GoldenGate構成内のセカンダリExtractグループです。データ・ポンプを使用しない場合、Extractは、取得したデータ操作をターゲットのリモート証跡に送信する必要があります。一方で、データ・ポンプを使用する標準的な構成では、プライマリExtractグループがソース・システムの証跡に書き込みます。データ・ポンプは、この証跡を読み取り、データ操作をネットワーク経由でターゲットのリモート証跡に送信します。データ・ポンプによって、記憶域の柔軟性が向上すると同時に、プライマリExtractプロセスがTCP/IPアクティビティから分離されます。
一般に、データ・ポンプはデータのフィルタリング、マッピングおよび変換を実行できますが、データを操作せずにそのままの状態で単純に転送するパススルー・モードでデータ・ポンプを構成することも可能です。パススルー・モードでは、オブジェクト定義を参照するすべての機能が回避されるため、データ・ポンプのスループットが向上します。
ほとんどのビジネス環境で、データ・ポンプを使用する必要があります。データ・ポンプを使用する理由として、次のことがあげられます。
ネットワークおよびターゲットの障害に対する保護: ターゲット・システムに証跡のみが存在するOracle GoldenGateの基本構成では、Extractが継続的にメモリーに抽出するデータ操作の格納場所がソース・システム上に存在しません。ネットワークまたはターゲット・システムが使用できなくなると、Extractはメモリーを使い果して異常終了する可能性があります。これに対し、ソース・システムに証跡とデータ・ポンプがあれば、取得データをディスクに移動して、プライマリExtractの異常終了を防ぐことができます。接続が回復されると、データ・ポンプは、ソース証跡からデータを取得して1つ以上のターゲット・システムに送信します。
データのフィルタリングまたは変換の複数フェーズによる実装。複雑なフィルタリング構成またはデータ変換構成を使用する場合、データ・ポンプを構成して、最初の変換をソース・システムまたはターゲット・システムのいずれかで(あるいは中間システムで)実行し、別のデータ・ポンプまたはReplicatグループを使用して2番目の変換を実行できます。
多くのソースから中央ターゲットへのデータの統合。複数のソース・データベースと中央ターゲット・データベースとを同期する場合、抽出したデータ操作を各ソース・システムに格納し、それらの各システムでデータ・ポンプを使用してターゲット・システムの証跡にデータを送信できます。記憶域の負荷がソース・システムとターゲット・システムで分割されるため、複数のソースから送信されるデータに対応するためにターゲット・システムに大量の領域を用意する必要がなくなります。
1つのソースと複数のターゲットの同期複数のターゲット・システムにデータを送信する場合、ソース・システムで各ターゲット用のデータ・ポンプを構成できます。いずれかのターゲットに対するネットワーク接続が切断されても、他のターゲットにデータを送信できます。
Replicatプロセスは、ターゲット・システムで実行されるもので、そのシステムの証跡を読み取り、DML操作またはDDL操作を再構成してターゲット・データベースに適用します。Replicatは動的SQLを使用して1つのSQL文を一度だけコンパイルした後、異なるバインド変数を使用してこの文を何回も実行します。
Replicatは次のいずれかの方法で構成できます。
初期ロード: 初期データ・ロードの場合、Replicatは、静的データ・コピーをターゲット・オブジェクトに適用するか、高速なバルク・ロード・ユーティリティにルーティングします。
変更同期: 変更同期用に構成されている場合、Replicatは、データベース・タイプに応じてネイティブ・データベース・インタフェースまたはODBCを使用して、レプリケートされたソース操作をターゲット・オブジェクトに適用します。
複数のReplicatプロセスを1つ以上のExtractプロセスおよびデータ・ポンプとともにパラレルに使用して、スループットを向上できます。データ整合性を維持するため、プロセスのセットごとに異なるオブジェクトを処理します。Replicatプロセスどうしを区別するには、各プロセスにグループ名を割り当てます(1.4項「グループの概要」を参照)。
複数のReplicatプロセスを使用するかわりに、1つのReplicatを調整モードまたは統合モードで構成できます。
調整モードは、Oracle GoldenGateでサポートされているすべてのデータベースに対応しています。調整モードでは、Replicatがスレッド化されます。1つのコーディネータ・スレッドが、レプリケートされたSQL操作をパラレルに実行する1つ以上のスレッドを作成して調整します。調整Replicatは1つのパラメータ・ファイルを使用し、1つの単位として監視および管理されます。詳細は、14.7項「オンラインReplicatグループの作成」を参照してください。
統合モードは、Oracle 11.2.0.4以降のバージョンでサポートされます。統合モードのReplicatでは、Oracleデータベース内で利用可能な適用処理機能を使用します。単一のReplicat構成では、インバウンド・サーバーの複数の子プロセス(適用サーバーと呼ばれる)が、元のトランザクション原始性を維持しつつ、トランザクションをパラレルに適用します。統合モードの詳細は、Oracle DatabaseのためのOracle GoldenGateのインストールおよび構成を参照してください。
Replicatは、レプリケートされた操作をターゲット・データベースに適用する前に一定の時間待機するよう遅延させることができます。遅延が推奨される場合として、たとえば、間違ったSQLの伝播を防ぐ場合、異なるタイムゾーンにわたるデータの受信を制御する場合、または他の計画済イベントの発生に備えて時間を考慮する場合があげられます。遅延の長さは、DEFERAPPLYINTERVAL
パラメータで制御します。
各種パラメータを使用して、Replicatがソース・トランザクションをターゲット・トランザクションに変換する方法を制御します。たとえば、BATCHSQL
、GROUPTRANSOPS
、MAXTRANSOPS
などのパラメータがあります。これらのパラメータとその他のReplicatパラメータの詳細は、Oracle GoldenGateリファレンスfor Windows and UNIXを参照してください。
データベース変更の継続的な抽出およびレプリケーションをサポートするために、Oracle GoldenGateは、取得した変更のレコードをディスク上の証跡と呼ばれる一連のファイルに一時的に格納します。証跡は、Oracle GoldenGateの構成方法に応じて、ソース・システム、中間システム、ターゲット・システムのいずれか、またはこれらを組み合せたシステムに配置できます。証跡は、ローカル・システムでは抽出証跡(またはローカル証跡)と呼ばれます。リモート・システムでは、リモート証跡と呼ばれます。
Oracle GoldenGateでは、記憶域として証跡を使用することで、データの正確性とフォルト・トレランスをサポートします(1.2.6項「チェックポイントの概要」を参照)。また、証跡の使用により、抽出アクティビティとレプリケーション・アクティビティを相互に独立して実行できます。これらのプロセスが分離されることで、データを処理して配信する方法の選択肢が広がります。たとえば、変更を継続的に抽出してレプリケートするかわりに、変更を継続的に抽出しながら、ターゲット・アプリケーションの必要に応じて後からいつでもターゲットにレプリケートできるように、それらの変更を証跡に格納することができます。
プライマリExtractとデータ・ポンプExtractが証跡に書き込みます。すべてのオンラインExtractプロセスが証跡にリンクしている必要があります。所定のローカル証跡に書き込めるのは、1つのプライマリExtractプロセスのみです。ローカル証跡ごとに異なる名前を付ける必要があります。
複数のデータ・ポンプExtractプロセスで、それぞれ同じ名前の証跡に書き込むことはできますが、物理証跡自体は異なるリモート・システム(データ分散トポロジなど)に配置する必要があります。たとえば、データ・ポンプ1pump
とデータ・ポンプ2pump
を両方ともsys01に配置して、リモート証跡aa
に書き込むことができます。その場合、データ・ポンプ1pump
はsys02
の証跡aa
に、データ・ポンプ2pump
はsys03
の証跡aa
に書き込むようにします。
証跡を読み取るプロセスには、次のものがあります。
データ・ポンプExtract: 前のExtract(通常はプライマリExtract)にリンクしているローカル証跡からDML操作およびDDL操作を抽出し、必要に応じてさらに処理を行い、後続のOracle GoldenGateプロセス(通常はReplicatだが、必要に応じて別のデータ・ポンプの場合もある)によって読み取られる証跡にデータを転送します。
Replicat: 証跡を読み取り、レプリケートされたDML操作およびDDL操作をターゲット・データベースに適用します。
証跡ファイル自体は処理中に必要に応じて作成されますが、ADD RMTTRAIL
コマンドまたはADD EXTTRAIL
コマンドでOracle GoldenGate構成に追加するときに、2文字の証跡名を指定します。デフォルトでは、証跡は、Oracle GoldenGateディレクトリのdirdat
サブディレクトリに格納されます。
証跡ファイルが自動的にエージングされるので、ファイル・メンテナンスのために処理を中断する必要はありません。新しいファイルを作成すると、各ファイルが2文字の証跡名を継承し、それに一意の6桁の順序番号(000000から999999)が追加されます(たとえば、c:\ggs\dirdat\tr000001
のようになります)。順序番号が999999に達すると、再度000000から番号付けが始まり、前の証跡ファイルは上書きされます。証跡ファイルは、ManagerパラメータのPURGEOLDEXTRACTS
を使用して、ルーチンごとに消去できます。
異なるオブジェクトまたはアプリケーションからデータを分離するために、複数の証跡を作成できます。TABLE
またはSEQUENCE
パラメータで指定したオブジェクトを、Extractパラメータ・ファイルのEXTTRAIL
またはRMTTRAIL
パラメータで指定した証跡にリンクします。
スループットを最大化し、システムのI/O負荷を最小化するため、抽出データの証跡に対する入出力は、サイズの大きいブロック単位で行われます。トランザクション順序は保持されます。
証跡と証跡に含まれるレコードの詳細は、付録C「Oracle GoldenGate証跡について」を参照してください。
一部の構成では、Oracle GoldenGateは抽出したデータを証跡ではなく抽出ファイルに格納します。抽出ファイルは、単一のファイルとすることも、オペレーティング・システムのファイル・サイズ制限を考慮して複数のファイルにロールオーバーするように構成することもできます。この点で、抽出ファイルは証跡と似ていますが、チェックポイントは記録されません。実行中に1つ以上のファイルが自動的に作成されます。証跡に適用されるバージョニング機能と同じ機能が、抽出ファイルにも適用されます。
チェックポイントは、プロセスの現在の読取り位置と書込み位置をリカバリ目的でディスクに格納します。チェックポイントは、同期のためにマークされたデータ変更が、実際にExtractにより取得されてReplicatによりターゲットに適用されることを保証し、重複処理を防止します。チェックポイントによって、システム、ネットワークまたはOracle GoldenGateプロセスを再起動した場合のデータ損失が防止され、フォルト・トレランスが実現します。複雑な同期構成では、チェックポイントにより、複数のExtractプロセスまたはReplicatプロセスを使用して同じ証跡セットから読取りを行うことができます。
チェックポイントは、メッセージがネットワーク内で失われないように、プロセス間の確認応答と連携して動作します。Oracle GoldenGateには、独自仕様のメッセージ配信保証テクノロジがあります。
Extractは、データソースおよび証跡内にその位置を示すチェックポイントを作成します。Extractはコミットされたトランザクションのみを取得するので、オープン・トランザクションのいずれかがコミットされた場合に備えて、すべてのオープン・トランザクションの操作を追跡します。そのため、トランザクション・ログ内で現在読取りを行っている場所を示すチェックポイントと、最も古いオープン・トランザクションの開始位置(現在のログまたは以前のいずれかのログ内)を記録することが求められます。
また、Oracleデータベースの停止後に再処理が必要になるトランザクション・ログの量を抑えるため、Extractは、処理の現在の状態およびデータ(長時間実行トランザクションの状態およびデータがあればそれも含む)を特定の間隔でディスクに永続化します。この間隔の後、Extractが停止した場合は、直前の間隔における位置または最後のチェックポイントからリカバリを実行できるので、最も古いオープンの長時間実行トランザクションが最初に現れたログ位置まで戻る必要はありません。詳細は、Oracle GoldenGateリファレンスfor Windows and UNIXのBRパラメータに関する項を参照してください。
Replicatは、証跡内にその位置を示すチェックポイントを作成します。Replicatは、これらのチェックポイントをターゲット・データベース内の表(チェックポイント表)とディスク上のチェックポイント・ファイルに格納します。チェックポイント表は、ユーザーが指定した名前と場所で格納されます。チェックポイント・ファイルは、Oracle GoldenGateディレクトリのdirchk
サブディレクトリに格納されます。
各トランザクションが完了すると、Replicatはトランザクションに関する情報をチェックポイント表の行に書き込み、そのトランザクションに特定の証跡ファイル内の一意の位置をリンクします。Replicatはトランザクションの完了時にチェックポイントをチェックポイント・ファイルにも書き込みます。また、一定の間隔で現在の読取り位置もチェックポイント・ファイルに書き込みます。通常、これらの位置はトランザクション境界ではなく、トランザクション内の任意の位置にあります。間隔の長さは、CHECKPOINTSECS
パラメータで制御されます。
チェックポイント表はデータベースの一部で、データベースのリカバリ・システムを利用できるため、Replicatのリカバリ・ポイントがより効率的になります。チェックポイント・ファイル内の最後のチェックポイントが最新のトランザクション境界とはかぎりません。Replicatによってまだ適用されていないトランザクションや、すでに適用済の過去のトランザクションの途中である可能性があります。チェックポイント表によって、Replicatは適切なトランザクション境界から開始できるので、各トランザクションが1回のみ適用されることが保証されます。チェックポイント表内の情報はリカバリに利用できる場合もありますが、主にGGSCIのINFO
コマンドなどで使用します。
Oracle GoldenGate環境(証跡を含む)の定期的なバックアップは、データベースのバックアップ、リカバリおよび保存の各ポリシーに適合している必要があります。データベース(とチェックポイント表)を過去のある時点にリストアすると、Replicatはその時刻と一致する過去のチェックポイントに位置を戻します。この期間の必要な証跡ファイルがすでにシステムからエージングされている場合、それらをバックアップからリストアする必要があります。証跡の管理とエージングの方法は、「証跡の概要」を参照してください。
非継続的なタイプの構成(バッチ・ロードや初期ロードなど)の場合、チェックポイントは不要です。障害が発生した場合は、これらのプロセスを最初の開始位置から再開できます。
チェックポイントおよびチェックポイント表の詳細は、付録Eを参照してください。
Managerは、Oracle GoldenGateの制御プロセスです。Managerは、ExtractまたはReplicatが起動される前に、Oracle GoldenGate構成内の各システムで稼働している必要があります。Managerは、リソース管理機能を実行するために、これらのプロセスの実行中は稼働し続ける必要があります。Managerは次の機能を実行します。
Oracle GoldenGateプロセスの起動
動的プロセスの起動
プロセスのポート番号の管理
証跡管理の実行
イベント、エラーおよびしきい値レポートの作成
1つのManagerプロセスで、複数のExtractまたはReplicatプロセスを制御できます。Windowsシステムでは、Managerはサービスとして実行できます。ManagerプロセスおよびTCP/IP接続の構成の詳細は、第3章「Managerおよびネットワーク通信の構成」を参照してください。
Collectorは、継続的なオンライン変更同期がアクティブである場合に、ターゲット・システム上でバックグラウンドで実行されるプロセスです。Collectorは次の処理を実行します。
リモートExtractからMangerへの接続リクエストが発生すると、スキャンを行って使用可能なポートにバインドし、リクエスト元のExtractプロセスに割り当てるポート番号をManagerに送信します。
Extractによって送信された抽出済のデータベース変更を受信し、証跡ファイルに書き込みます。ネットワーク接続が必要なときはManagerがCollectorを自動的に起動するので、Oracle GoldenGateユーザーがCollectorを操作する必要はありません。Collectorは1つのExtractプロセスからしか情報を受信できないので、使用するExtractごとにCollectorが1つ存在します。Collectorは、関連するExtractプロセスが終了すると終了します。
注意: Collectorは、必要に応じて手動で実行できます。これは、通常の動的Collectorと対比して、静的Collectorと呼ばれます。複数のExtractプロセスで1つの静的Collectorを共有できますが、1対1の比率が最適です。静的Collectorを使用すると、プロセスを確実に特定のポートで動作させることができます。静的Collectorの詳細は、Oracle GoldenGateリファレンスfor Windows and UNIXを参照してください。Managerによるポート割当て方法の詳細は、第3章「Managerおよびネットワーク通信の構成」を参照してください。 |
デフォルトでは、Extractがソース・システムからターゲットのCollectorに対してTCP/IP接続を開始しますが、Collectorがターゲットから接続を開始するようにOracle GoldenGateを構成することもできます。ターゲットから接続を開始する必要があるのは、たとえば、ターゲットが信頼できるネットワーク・ゾーンにある一方で、ソースのネットワーク・ゾーンの信頼度がそれより低い場合です。
Oracle GoldenGateは、要件に応じて、次の処理タイプでの構成が可能です。
オンラインExtractプロセスまたはReplicatプロセスは、ユーザーが停止するまで実行されます。オンライン・プロセスは、証跡にリカバリ・チェックポイントを保持するため、処理を中断しても再開することができます。ソース・オブジェクトとターゲット・オブジェクトの同期を維持するために、DML操作およびDDL操作(サポートされる場合)を継続的に抽出してレプリケートするには、オンライン・プロセスを使用します。このプロセス・タイプには、EXTRACT
パラメータとREPLICAT
パラメータが適用されます。
ソース表(初期ロードExtractとも呼ばれる)Extractプロセスは、別のデータベースへの初期ロードの準備として、現在の静的データセットをソース・オブジェクトから直接抽出します。このプロセス・タイプでは、チェックポイントは使用されません。このプロセス・タイプには、SOURCEISTABLE
パラメータが適用されます。
特別実行Replicatプロセスは、既知の開始ポイントと終了ポイントの範囲内でデータを適用します。Replicatの特別実行は初期データ・ロードで使用しますが、オンラインExtractと一緒に使用して、証跡内のデータ変更をバッチ形式で(継続的にではなく、1日1回など)適用することもできます。このプロセス・タイプでは、同じ開始ポイントと終了ポイントを使用して最初から実行しなおせるため、チェックポイントは保持されません。このプロセス・タイプには、SPECIALRUN
パラメータが適用されます。
リモート・タスクは、特殊なタイプの初期ロード・プロセスであり、ExtractがTCP/IP経由で直接Replicatと通信します。Collectorプロセスも、証跡またはファイルの一時ディスク記憶域も使用されません。このタスクは、RMTTASK
パラメータを使用してExtractパラメータ・ファイルに定義します。
システムの複数のExtractプロセスまたはReplicatプロセスを区別するには、処理グループを定義します。たとえば、異なるデータセットをパラレルにレプリケートするには、2つのReplicatグループを作成します。
処理グループは、プロセス(ExtractまたはReplicat)、パラメータ・ファイル、チェックポイント・ファイル、およびそのプロセスに関連する他のファイルで構成されます。Replicatの場合、グループには関連するチェックポイント表も含まれる場合があります。グループを定義するには、Oracle GoldenGateのコマンド・インタフェースであるGGSCIで、ADD EXTRACT
コマンドおよびADD REPLICAT
コマンドを使用します。
グループに関連するすべてのファイルおよびチェックポイントでは、グループ自体に割り当てられた名前を共有します。処理を制御または表示するコマンドを発行する場合、常に単一のグループ名または(ワイルドカードを使用して)複数のグループ名を指定します。
Oracle GoldenGateを使用する場合、コミット順序番号(CSN)を参照する必要がある場合があります。CSNは、トランザクション一貫性とデータ整合性を維持する目的でトランザクションを識別するためにOracle GoldenGateが作成する識別子です。これにより、トランザクションがデータベースにコミットされた時点を一意に識別します。
CSNは、トランザクション・ログでExtractの位置を指定する場合、証跡でReplicatの位置を再指定する場合、またはその他の目的で必要になることがあります。変換関数の中にはこれを返すものがあります。また、レポートおよび一部のGGSCI出力に含まれます。
CSNの詳細とデータベースごとのCSN値のリストは、付録D「コミット順序番号について」を参照してください。