この章では、エンタープライズ・デプロイメントをホストする各コンピュータまたはサーバーから実行する必要があるタスクについて説明します。たとえば、必要な共有記憶域システムをホストにマウントする方法や、各ホストで必要な仮想IPアドレスを有効化する方法について説明します。
この章には次の項が含まれます:
エンタープライズ・デプロイメントに必要なハードウェアを取得したら、各ホスト・コンピュータにログインし、第5.1項「エンタープライズ・デプロイメント・トポロジ用のハードウェアおよびソフトウェアの要件」に示すシステム要件を確認します。
Oracle Exalogicなどの仮想サーバー環境にデプロイしている場合、仮想サーバーそれぞれが最小要件を満たしていることを確認します。
十分なローカル・ディスクがあり、共有記憶域が第7章「エンタープライズ・デプロイメント用のファイル・システムの準備」で説明されているように構成されていることを確認します。
十分なスワップ領域および一時領域を確保します。具体的には、次のとおりです。
スワップ領域: システムに500MB以上ある必要があります。
一時領域: /tmp
に500MB以上の空き領域がある必要があります。
ホスト・コンピュータが最小オペレーティング・システム要件を満たしていることを確認するには、動作保証済のオペレーティング・システムがインストールされていることと、そのオペレーティング・システムに必要なパッチがすべて適用されていることを確認してください。
さらに、エンタープライズ・デプロイメント用の一般的なLinuxオペレーティング・システムの設定について、次の項を確認してください。
次のカーネル・パラメータおよびシェル制限の値は、単なる推奨値です。これらの値をチューニングしてシステムのパフォーマンスを最適化することをお薦めします。カーネル・パラメータの調整については、ご使用のオペレーティング・システムのマニュアルを参照してください。
カーネル・パラメータは、トポロジのすべてのノードで次の最小値以上の値に設定する必要があります。
次の表の値は、現行のLinuxの推奨値です。Linuxおよびその他のオペレーティング・システムの最新の推奨値は、Oracle Fusion Middlewareのシステム要件と仕様を参照してください。
データベースをホストにデプロイしている場合、追加のカーネル・パラメータを変更する必要がある場合があります。ご使用のプラットフォームの12c Oracle Grid Infrastructureインストレーション・ガイドを参照してください。
これらのパラメータを設定するには:
root
としてログインし、ファイル/etc/sysctl.conf
のエントリを追加または修正します。
ファイルを保存します。
次のコマンドを発行して変更をアクティブ化します。
/sbin/sysctl -p
UNIXオペレーティング・システムでは、オープン・ファイル制限は重要なシステム設定です。ホスト・コンピュータ上で動作するソフトウェアのパフォーマンス全体に影響を及ぼす可能性があります。
Oracle Fusion Middlewareエンタープライズ・デプロイメントに適したオープン・ファイル制限の設定のための指針として、第5.1.2項「 ホスト・コンピュータのハードウェア要件」を参照してください。
注意: 次の例はLinuxオペレーティング・システム用です。オペレーティング・システムのドキュメントを確認して、システムで使用するコマンドを判別します。 |
詳細は、次のトピックを参照してください。
次のコマンドでオープンになっているファイル数を確認できます。
/usr/sbin/lsof | wc -l
オープン・ファイル制限を確認するには、次のコマンドを使用します。
Cシェル:
limit descriptors
Bash:
ulimit -n
オープン・ファイル制限を変更する手順は次のとおりです。
root
としてログインして、次のファイルを編集します。
/etc/security/limits.conf
limits.conf
ファイルに次の行を追加します。(ここに示す値は例にすぎません):
* soft nofile 4096 * hard nofile 65536 * soft nproc 2047 * hard nproc 16384
nofiles
の値はオープン・ファイル制限を表します。各値はプロセス制限を表します。
推奨値の詳細は、第5.1.2.3項「Oracle SOA Suiteエンタープライズ・デプロイメントに必要な標準的なメモリー、ファイル・ディスクリプタおよびプロセス数」を参照してください。
変更内容を保存して、limits.conf
ファイルを閉じます。
ホスト・コンピュータを再起動します。
Oracleソフトウェアのインストールを開始する前に、ホストのIPアドレス、完全修飾ホスト名および短縮名がすべてDNSサーバーに登録されていることを確認します。または、ローカルhosts
ファイルを使用して、次のようなエントリを追加することもできます。
IP_Address Fully_Qualified_Name Short_Name
例:
10.229.188.205 host1.example.com host1
エンタープライズ・デプロイメントをホストする各コンピュータで定義するユーザーおよびグループのリストは次のとおりです。
グループ
各ノードに次のグループを作成する必要があります。
oinstall
dba
ユーザー
各ノードに次のユーザーを作成する必要があります。
nobody
: 権限のないユーザー。
oracle
: Oracleソフトウェアの所有者。別の名前も使用できます。このアカウントのプライマリ・グループはoinstall
にする必要があります。このアカウントは、dba
グループにも属している必要があります。
注意:
|
オペレーティング・システムの構成がOracle Fusion Middleware製品でサポートされる文字の動作に影響を与えることがあります。
UNIXオペレーティング・システムでは、LANG
とLC_ALL
の各環境変数をUTF-8文字セットを使用したロケールに設定し、Unicodeサポートを有効化することを強くお薦めします。これにより、Unicodeのすべての文字が処理できるようになります。たとえば、Oracle SOA SuiteテクノロジはUnicodeに基づいています。
オペレーティング・システムがUTF-8以外のエンコードを使用するように構成されている場合、Oracle SOA Suiteコンポーネントが予期しない動作をする可能性があります。たとえば、ASCII以外のファイル名の場合は、ファイルにアクセスできず、エラーが発生する可能性があります。オペレーティング・システムの制約によって発生した問題は、オラクル社ではサポートしていません。
第7.2項「エンタープライズ・デプロイメントをインストールおよび構成する場合の共有記憶域の推奨事項」の説明に従って構成された共有記憶域が、それを使用するホスト上で使用可能になっている必要があります。
エンタープライズ・デプロイメントでは、ハードウェア記憶域ファイラが存在することと、それがデプロイメント用に取得した各ホスト・コンピュータに接続されて使用可能になっていることが前提とされています。
共有記憶域を、アクセスが必要なすべてのサーバーにマウントする必要があります。
各ホストでは、適切な権限をNetwork Attached Storage (NAS)またはStorage Area Network (SAN)内で設定し、共有記憶域への書込みを可能にする必要があります。
共有記憶域のマウントについては、組織のベスト・プラクティスに従ってください。この項では、NFS記憶域を使用してLinuxでこれを行う方法の例を示します。
共有記憶域の場所を作成してマウントし、SOAHOST1とSOAHOST2が2つの別々のボリュームへのバイナリ・インストールである場合に、それらが同じ場所を参照できるようにする必要があります。
詳細は、第7.2項「エンタープライズ・デプロイメントをインストールおよび構成する場合の共有記憶域の推奨事項」を参照してください。
次のコマンドを使用して、共有記憶域をNAS記憶域デバイスからLinuxホストにマウントします。別のタイプの記憶域デバイスまたはオペレーティング・システムを使用している場合、これを行う方法の詳細は製造元のドキュメントを参照してください。
注意: 共有記憶域のファイル・システムの作成に使用されるユーザー・アカウントは、これらのファイルに対する読取り、書込みおよび実行権限を持ちます。オペレーティング・システム・グループにおける他のユーザーは、ファイルの読取りや実行は可能ですが、書込み権限はありません。インストールと構成の権限の詳細は、『Oracle Fusion Middlewareインストレーション・プランニング・ガイド』のインストレーション・ユーザーの選択に関する項を参照してください。 |
これらの例では、nasfiler
は共有記憶域ファイラを表します。これらは単なる例であることに注意してください。通常、これらの共有記憶域場所のマウントは、UNIXシステム上の/etc/fstabsファイルを使用して行う必要があります。これにより、再起動しても、これらのデバイスのマウントが維持されます。詳細は、オペレーティング・システムのドキュメントを参照してください。
SOAHOST1から次のように実行します。
SOAHOST1上に/u01/oracle
ディレクトリを作成し、共有記憶域をマウントします。例:
mount -t nfs nasfiler:VOL1/oracle /u01/oracle
SOAHOST2から次のように実行します。
SOAHOST2で手順を繰り返します。/u01/oracleディレクトリを作成し、次のように共有記憶域をマウントします。
mount -t nfs nasfiler:VOL1/oracle /u01/oracle
共有記憶域の構成の検証
構成した共有記憶域にテスト・ファイルを作成し、新しくマウントしたディレクトリでファイルの読取りおよび書込みができることを確認します。
例:
$ cd newly mounted directory
$ touch testfile
所有者と権限が正しいことを確認します。
$ ls -l testfile
ファイルを削除します。
$ rm testfile
注意: 共有記憶域には、NASデバイスまたはSANデバイスを使用できます。次は、NASデバイスの記憶域をSOAHOST1から作成する例を示しています。オプションは、具体的な記憶域デバイスに応じて異なる場合があります。mount -t nfs -o rw,bg,hard,nointr,tcp,vers=3,timeo=300,rsize=32768,wsize=32768 nasfiler:VOL1/Oracle /u01/oracle 使用する環境に適切なオプションについては、ストレージ・ベンダーとマシン管理者と相談してください。 |
エンタープライズ・デプロイメント用に各ホストを準備するには、第5.2項「エンタープライズ・デプロイメント用の必須IPアドレスの予約」で説明されている仮想IP (VIP)アドレスを有効化する必要があります。
すでにVIPアドレスおよびホスト名を予約済であり、ネットワーク管理者がそれらを有効化していることを前提とします。その後、第5.2.3項「エンタープライズ・トポロジによって必要とされる物理および仮想IPアドレス」の説明に従って、適切なホストでそれらのVIPを有効化できます。
エンタープライズ・トポロジで使用する仮想IPアドレスは、サーバー全体の移行(選択した管理対象サーバーおよびクラスタの場合)または手動フェイルオーバー(管理サーバーの場合)によって管理されるため、永続化されません。
各ホストでこのVIPアドレスを有効にするには、次のコマンドをroot
として実行します。
/sbin/ifconfig interface:index IPAddress netmask netmask /sbin/arping -q -U -c 3 -I interface IPAddress
ここで、interface
はeth0
またはeth1
、index
は0
、1
または2
です。
例:
/sbin/ifconfig eth0:1 100.200.140.206 netmask 255.255.255.0
ネットワークを有効化し、仮想IPアドレスの新しい場所を登録します。
/sbin/arping -q -U -c 3 -I eth0 100.200.140.206
別のノードからping
を行って、アドレスが使用可能であることを検証します。例:
/bin/ping 100.200.140.206