企業間(B2B)統合では、選択したB2Bドキュメント・プロトコルを使用して、取引パートナとビジネス情報を交換する機能が必要です。この章では、AIAを使用したB2B統合、B2Bドキュメント・フロー、Oracle Fusion MiddlewareのB2Bコンポーネント、およびB2B用のSOAコア拡張機能インフラストラクチャの概要を説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Oracle Application Integration Architecture (AIA)のB2Bソリューションは、次の主要な機能で構成されています。
新しいB2Bドキュメント・プロトコルに対するサポートを迅速に作成するために使用できる柔軟な統合アーキテクチャ。
AIAおよびOracle Fusion Middlewareを使用したエンドツーエンドのB2Bフローの作成に使用できるインフラストラクチャ・コンポーネント。
一般的なB2Bドキュメント・プロトコルに対する事前作成済のサポート。
同梱のB2B統合アーティファクトに対するカスタマイズのサポート。
図10-1に、大規模な企業のB2B統合ニーズを満たすためのAIAの正規ベース統合アーキテクチャの適用方法を示します。
図10-1 AIAのB2Bアーキテクチャの構成図概要
次に、B2B統合にAIAを使用する主要な利点を示します。
AIAでは、参加アプリケーションがB2B統合レイヤーから分離されます。
参加アプリケーションでは、取引パートナの変化するB2B統合ニーズを追跡する必要がなくなりました。また、顧客は、新しいB2Bプロトコルおよび取引パートナ要件に対するサポートを追加でき、この追加によって参加アプリケーション・コードは影響されません。
B2Bドキュメント・フローは通常、注文獲得などの複雑なビジネス・プロセスで構成されるタスクのサブセットです。
B2B機能をSOAコア拡張機能の最上部のレイヤーとして作成すると、この機能を複数のアプリケーションおよびビジネス・プロセスで再使用できます。
顧客、サプライヤ、品目、注文書、出荷、請求書、カタログ住所などの既存のAIAのエンタープライズ・ビジネス・オブジェクト(EBO)は、一般的に使用されるB2Bドキュメントの大半にマップされます。
これらの簡単に使用できるEBOの使用、およびこれらのEBOに対する事前作成済のB2Bコネクタ・サービス(B2BCS)によって、B2B統合では多大な時間とコストが節約されます。
この項には次のトピックが含まれます:
図10-2に、AIAを使用して実装されたサンプルのアウトバウンドB2Bフローを示します。
図10-2 アウトバウンドB2Bドキュメント・フロー
次に、アウトバウンドB2Bドキュメント・フローの主要なステップを示します。
参加アプリケーションは、リクエスタ・アプリケーション・ビジネス・コネクタ・サービス(ABCS)およびペイロードとしてアプリケーション・ビジネス・メッセージ(ABM)をトリガーします。
ベスト・プラクティスの推奨は、ファイア・アンド・フォーゲット・フローをモデル化する一方、アプリケーションとリクエスタABCS間でキューベースの通信を使用することです。これによって、リクエスト・メッセージは保持されてその処理は保証されます。
リクエスタABCSは、ABMをエンタープライズ・ビジネス・メッセージ(EBM)に変換し、次にエンタープライズ・ビジネス・サービス(EBS)実装を呼び出します。
EBSは、EBMを調査して、取引パートナのB2Bドキュメント・プリファレンスに基づいて適切なプロバイダB2BCSにルーティングします。
プロバイダB2BCSは、EBMを業界標準のB2B形式に変換して、AIA B2Bインタフェース・サービスを呼び出します。
AIA B2Bインタフェース・サービスは、必要なヘッダー・パラメータを入力して、B2Bペイロードを入力として渡すOracle Fusion Middleware B2Bコンポーネントを呼び出します。
Oracle B2Bは、取引パートナおよびドキュメント・タイプに対応する取引パートナ・アグリーメントを参照して、B2Bドキュメントをリモート取引パートナに安全にトランスポートします。
Electronic Data Interchange (EDI)などの非XML形式ベース・プロトコルの場合は、Oracle B2Bの変換機能を使用して、AIAレイヤーで生成された中間XMLを非XMLのB2Bドキュメント形式に変換できます。
図10-3に、AIAを使用して実装されたサンプルのインバウンドB2Bフローを示します。
図10-3 インバウンドB2Bドキュメント・フロー
次に、インバウンドB2Bドキュメント・フローの主要なステップを示します。
Oracle B2Bは、取引パートナからB2Bドキュメントを受信して、送信元取引パートナおよびB2Bドキュメント・タイプを識別します。
EDIなどの非XML形式の場合、Oracle B2Bは、インバウンド・ペイロードを中間XML形式に変換します。
メッセージは、JMS B2Bインバウンド・キューにキューされます。B2Bドキュメント・ペイロードとともに、B2Bドキュメントに関する次の主要メタデータもAIAおよびSOAコンポジット・レイヤーに渡されます。
送信元取引パートナ
送信先取引パートナ
ドキュメント・タイプ
ドキュメント・タイプ・リビジョン
AIA B2Bインタフェースは、Oracle B2BからB2Bドキュメントおよびヘッダー情報を受信して、ドキュメント・タイプのパラメータに基づいて適切なリクエスタB2BCSにルーティングします。
リクエスタB2BCSは、B2BドキュメントをEBMに変換してEBSを呼び出します。
EBSは、EBMを調査して、適切なプロバイダABCSにルーティングします。
プロバイダABCSは、EBMをABM形式に変換して、参加アプリケーションAPIまたはWebサービスを呼び出します。
Oracle B2Bは、企業と取引パートナ間における安全で信頼性の高いビジネス・ドキュメントの交信を可能にするE-Commerceゲートウェイです。Oracle B2Bは、B2Bドキュメント標準、セキュリティ、トランスポート、メッセージング・サービス、および取引パートナ管理をサポートしています。Oracle B2Bがバインディング・コンポーネントであるOracle SOA Suiteプラットフォームにより、E-Commerceビジネス・プロセスの実装が可能になります。
この項には次のトピックが含まれます: AIAによるOracle Fusion Middleware Oracle B2Bの補完。
前の項で説明したように、AIAは、Oracle B2Bコンポーネントの機能を利用して、エンドツーエンドのB2B統合ソリューションを作成します。特に、B2B統合領域では、Oracle B2B機能とAIA機能間の主要な区別に注意してください。
高度なOracle B2Bでは、次の機能を提供することでB2Bをサポートします。
リモート取引パートナ・システムへのB2Bドキュメント・ペイロードのトランスポート。
暗号化、デジタル署名および否認防止を使用した安全な統合のサポート。
Applicability Statement 2 (AS2)やRosettaNet Implementation Framework (RNIF)などの業界標準のメッセージ・パッケージング・プロトコルのサポート。
EDI、位置指定フラット・ファイルまたはデリミタ区切りフラット・ファイルなどの非XML形式とXML間での透過的な構成ベースの変換。
監査やレポートを含む、単一のエンタープライズB2B情報ゲートウェイのサポート。
高度なAIAでは、次の機能を提供することでB2Bをサポートします。
AIA正規オブジェクト形式とB2B標準ドキュメント形式間での変換の事前作成。
カスタムB2B統合の作成に使用できる正規のエンタープライズ・オブジェクト・ライブラリとサービス、参照アーキテクチャ、インフラストラクチャおよび開発ツール。
SOA統合ベスト・プラクティスを使用したB2Bフローのビジネス・プロセス編成。
Oracle B2Bの詳細は、『Oracle B2Bユーザーズ・ガイド』を参照してください。
この項には次のトピックが含まれます:
B2B統合を支援するSOAコア拡張機能では、アーキテクチャおよびプログラミング・モデルとともに、追加のインフラストラクチャ・コンポーネントが提供されます。
この項では、SOAコア拡張機能で提供されるB2Bインフラストラクチャの高度な説明を提供します。AIAを使用してB2Bフローを開発および実装する場合、図10-4に示すインフラストラクチャ・コンポーネントの使用方法の詳細は、「アウトバウンドB2B統合フローの開発と実装」および「インバウンドB2B統合フローの開発と実装」を参照してください。
図10-4 SOAコア拡張機能のB2Bインフラストラクチャ・コンポーネント
AIAエラー処理フレームワークには、B2B統合フローのエラー・シナリオに対するサポートが含まれています。
AIA B2Bエラー処理インタフェース・コンポジットは、Oracle Fusion Middleware B2Bコンポーネントで発生するエラーをリスニングします。
Oracle B2Bで発生したエラーは、B2Bキューからデキューされて正規AIAフォルト構造に変換されます。
次に、このフォルト・メッセージを入力としてAIAエラー処理フレームワークがトリガーされます。
AIAエラー処理フレームワークがトリガーされた後は、その付属のエラー処理機能をエラー解決のために利用できます。
AIAエラー処理フレームワークの主要機能を次に示します。
正規フォルト・メッセージへのすべてのエラーの変換およびAIAエラー・トピックへのエラーのキュー。
エラー情報のロギング。
Oracle BPM Worklistアプリケーションを使用したエラー解決タスクの追跡(オプション)。
事前構成済ロールへのエラー通知の発行(オプション)。
カスタム・エラー処理および補正プロセスの起動機能。
これらのすぐに使用できるエラー処理機能によって、統合コード全体でエラー処理コードの重複が削減されます。
エラー処理フレームワークの機能および取込みの詳細は、Oracle Fusion Middleware Oracle Application Integration Architecture SOAコア拡張機能インフラストラクチャ・コンポーネントとユーティリティ・ユーザーズ・ガイドのエラー処理の設定に関する項を参照してください。
AIA B2Bインタフェースは、Oracle Fusion MiddlewareのB2BCSとOracle B2Bコンポーネント間の抽象レイヤーとして機能する再使用可能なメディエータベースのSOAコンポジットです。AIA B2Bインタフェースは、Oracle B2Bとの接続に採用された内部デリバリ・チャネルからB2BCSを保護します。
AIA B2Bインタフェースは、インストール時にOracle AIAインストーラによって、JMSベースのキューを使用してOracle B2Bに接続するように構成されます。ただし、実装では、特定の統合ニーズに基づいて他の使用可能な内部デリバリ・チャネル(Oracle Advanced Queuing、ファイル・デリバリ・チャネル、B2Bアダプタなど)を使用して、AIAとOracle B2Bを統合することが必要な場合があります。AIA B2Bインタフェース・コンポジットは、JMSの使用をこれらの内部デリバリ・チャネルのいずれかで置換するように変更でき、B2BCSをそれぞれ変更する必要はありません。
B2Bアダプタの詳細は、『Oracle B2Bユーザーズ・ガイド』の、Oracle B2Bの使用開始に関する項を参照してください。