Oracle Databaseは、自動データベース診断モニター(ADDM)と呼ばれる自己診断エンジンを搭載しています。ADDMを使用すると、Oracle Databaseによってデータベース自身のパフォーマンスが診断され、特定された問題の解決方法が判断されます。
ADDMを使用した自動パフォーマンス診断を円滑化するために、Oracle Databaseではデータベースの状態およびワークロードのスナップショットが定期的に収集されます。スナップショットとは、パフォーマンスの比較のためにADDMで使用される一定期間の履歴データのセットです。スナップショットは、ある時点のシステムの状態に関する統計的サマリーを提供します。スナップショットは自動ワークロード・リポジトリ(AWR)に格納され、SYSAUX
表領域に配置されます。スナップショットは、設定した期間(デフォルトでは8日間)にわたってこのリポジトリに格納された後、新しいスナップショット用の領域を確保するためにパージされます。
ADDMは、データを分析してシステムの主な問題を判別し、解決策を提示して予想される利益を定量化します。ADDM分析結果は、検出結果のセットを表しています。
EM Expressには、3タイプのADDM結果が用意されています。
ADDM
ADDMではAWRに取得および格納されたデータの分析が行われます。ADDMでのスナップショットのデフォルトの収集間隔は1時間です。
通常、ADDMはシステム全体のシステムの問題を特定するために使用します。次のようなパフォーマンスの問題に注意を促します。
SQL文を頻繁にロードしたためにデータベースによってCPU時間またはメモリーが多く使用された場合などに起こるリソース競合(ボトルネック)
アプリケーションによってデータベースに長時間ログインした場合などに起こる接続管理の低下
あるユーザー・プロセスが表内のデータを安全に更新するためにロックを取得しており、同じ表に対するロックを取得する必要がある他のユーザー・プロセスが待機状態になることで、データベースのパフォーマンスが低下する場合などに起こるマルチユーザー環境でのロック競合
リアルタイムADDM
リアルタイムADDMは、リアルタイムで自動的にデータベースを監視します。
リアルタイムADDMでは、次のような多大な影響を与える一時的な問題がアプリケーション・パフォーマンスを脅かす前に、それらを事前に検出して診断します。
高CPU
I/Oのスパイク
メモリー
インターコネクトの問題
ハングおよびデッドロック
リアルタイムADDMは発生する可能性のあるパフォーマンスの問題を検出すると、データの収集をトリガーします。データはレポート・リポジトリ(AWRの一部)に保存されます。リアルタイムADDMレポートをEM Expressから表示すると、分析が実行され、結果と推奨事項が作成されます。リアルタイムADDMレポートはAWRに格納されるため、一定期間の問題の繰返しの識別に役立ちます。
最新のADDM結果
過去5分間のリアルタイムADDM結果がある場合、次の両方が指定されていると、それらは「パフォーマンス・ハブ」の「最新のADDM結果」タブに表示されます。
「パフォーマンス・ハブ」の「期間の選択」フィールドで「リアルタイム - 最近1時間」が選択されている
「パフォーマンス・ハブ」の日時ピッカーで選択されている期間が現在である(日時ピッカーの影付きブロック領域が「パフォーマンス・ハブ」の右端にある)
表10-1は、EM Expressで使用可能なADDMの機能をまとめたものです。
表10-1 EM ExpressでのADDMの機能
機能 | 新規かどうか | 説明 | 分析期間 | 分析結果を表示する方法 |
---|---|---|---|---|
ADDM |
いいえ |
これは前のデータベース・リリースに存在していた従来のADDMです。「ADDMタスク」は、「パフォーマンス・ハブ」の「ADDM」タブに表示されます。 |
デフォルトのAWR間隔は1時間 |
「ADDM」タブの「ADDMタスク」表で、「タスク名」をクリックします。 |
リアルタイムADDM |
あり |
多大な影響を与える一時的な問題をリアルタイムで事前に検出して診断します。「リアルタイムADDMレポート」は、「パフォーマンス・ハブ」の「ADDM」タブに表示されます。 |
リアルタイム |
「ADDM」タブの「リアルタイムADDMレポート」表で、レポートを選択し「パフォーマンス・レポートの表示」をクリックします。 |
最新のADDM結果 |
あり |
過去5分間のリアルタイムADDM分析および結果をトリガーします。「最新のADDM結果」は、「パフォーマンス・ハブ」の「最新のADDM結果」タブに表示されます。 |
過去5分 |
「最新のADDM結果」表で、結果を選択し「結果の表示」をクリックします。 |
関連項目:
データベースのパフォーマンスの自動監視の詳細は、『Oracle Database 2日でパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください。