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Oracle® Databaseインストレーション・ガイド
12cリリース1 (12.1) for Linux
B71312-13
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5 Oracle Databaseのためのユーザー、グループおよび環境の構成

この章では、スタンドアロン・サーバー用のOracle DatabaseおよびGrid Infrastructureをインストールする前に完成させるユーザー、グループ・ユーザー環境および管理環境の設定について説明します。内容は次のとおりです。

5.1 必要なオペレーティング・システム・グループおよびユーザーの作成

システムにOracleソフトウェアを初めてインストールするかどうかにより、またインストールする製品により、複数のオペレーティング・システム・グループおよびユーザーの作成が必要になる場合があります。

ただし、Oracle Preinstallation RPMを使用してOracle Grid InfrastructureまたはOracle Databaseのインストール用にLinuxオペレーティング・システムをプロビジョニングする場合は、Oracle Pre-Install RPMによってOracle Databaseインストール所有者(oracle)、Oracleインベントリ・グループ(oinstall)およびOracle管理権限グループ(dba)が構成されます。

オペレーティング・システムのユーザー権限を割り当てるとき、1つの管理者ユーザーと1つのグループを使用してすべての管理権限のオペレーティング・システム認証を行う場合は、oracleユーザーをインストール所有者として使用し、1つのグループをOracle ASMおよびOracle Database管理に対する管理権限を必要とするユーザーのプライマリ・グループとして使用できます。このグループは、Oracleインベントリ・グループでもあります。Oracleツールのデフォルトの使用を容易にするには、グループ名をoinstallにします。

アクセス権を分けるジョブ・ロール別にカスタム構成グループおよびユーザーを作成することもできます。

rootとしてログインし、次の項の手順に従ってOracleインベントリ・グループおよびOracleソフトウェア所有者ユーザーを検索または作成します。

5.1.1 Oracle InventoryおよびOracle Inventoryグループの存在の確認

Oracleソフトウェアをシステムに初めてインストールすると、Oracle Universal InstallerによりoraInst.locファイルが作成されます。このファイルでは、Oracleインベントリ・グループ名(通常はoinstall)およびOracleインベントリ・ディレクトリのパスが識別されます。

1つのグループを、Oracleインベントリ、データベース管理者(OSDBA)、およびオペレーティング・システム認証のためにOracleソフトウェアで使用されるその他すべてのアクセス制御グループに対するアクセス制御グループとして構成できます。ただし、すべてのシステム権限のオペレーティング・システム認証の提供に1つのグループを使用する場合、このグループは、管理システム権限を付与する対象のすべてのユーザーに対するプライマリ・グループである必要があります。

既存のOracle中央インベントリがある場合は、必ずすべてのOracleソフトウェア・インストールで同じOracle Inventoryを使用し、インストールに使用するすべてのOracleソフトウェア・ユーザーがこのディレクトリへの書込み権限を持つようにします。

Oracleインベントリ・グループが存在するかどうかを判別するには、次の手順を実行します。

  1. oraInst.locファイルには、次のような内容が含まれます。

    inventory_loc=central_inventory_location
    inst_group=group
    

    前述の例では、central_inventory_locationがOracle中央インベントリの場所、groupが中央インベントリへの書込み権限のあるグループ名を示します。

    oraInst.locファイルが存在するかどうかを判別するには、次のコマンドを入力します。

    Linux x86-64およびIBM: システムz上のLinux:

    # more /etc/oraInst.loc
    

    oraInst.locファイルが存在する場合、このコマンドの出力は次のようになります。

    inventory_loc=/u01/app/oraInventory
    inst_group=oinstall
    
  2. grep groupname /etc/groupコマンドを使用して、Oracle Inventoryグループとして指定されたグループがまだシステムに存在していることを確認します。次に例を示します。

    # grep oinstall /etc/group
    oinstall:x:1000:grid,oracle
    

5.1.2 Oracle Inventoryが存在しない場合のOracle Inventoryグループの作成

oraInst.locファイルが存在しない場合は、次のコマンドを入力してOracleインベントリ・グループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54321 oinstall

5.1.3 役割区分を使用したOracleインストールについて

Oracle DatabaseとOracle ASMの役割区分の構成は、オペレーティング・システム認証の個別のグループを提供するためのグループおよびユーザーを作成する構成です。

Oracleソフトウェアに作成されるユーザーに対して、次の制限事項を確認してください。

  • 1つのソフトウェア所有者を作成し、各Oracleソフトウェア・インストールの所有者にすることをお薦めします。詳細は、「Oracleソフトウェア製品ごとのOracleソフトウェア所有者」を参照してください。

  • 別のOracleソフトウェア所有者を作成して、Oracleソフトウェア・インストールごとに、オペレーティング・システム権限グループを分離するには、各ユーザーのプライマリ・グループとして、Oracle中央インベントリ・グループ(oraInventory)が設定されている必要があります。このグループのメンバーはOracle中央インベントリ(oraInventory)ディレクトリに対する書込み権限を所有しており、DBAが書込みアクセス権を必要とするOracle Restartホーム内の様々なOracle Restartリソースおよびディレクトリに対する権限やその他の必要な権限が付与されます。Oracleドキュメントのコード・サンプルでは、このグループはoinstallと表されています。「Oracle Inventoryが存在しない場合のOracle Inventoryグループの作成」を参照してください。

  • Oracleソフトウェア・インストールの所有者ユーザーには、データベースのOSDBAグループ、Oracle Grid Infrastructureホーム(作成する場合)のOSDBAグループ、およびセカンダリ・グループとしてのOSOPER、OSBACKUPDBA、OSDGDBA、OSKMDBAグループ(作成する場合)も必要です。Oracleソフトウェア所有者には、データベース・インスタンスがOracle ASMにログオンできるよう、Oracle Grid InfrastructureホームのOSDBAグループに対するメンバーシップが必要です。

  • Oracle Databaseおよびスタンドアロン・サーバー用のOracle Grid Infrastructureのインストール所有者ユーザー(それぞれoracleおよびgrid)は、Oracleインベントリ・グループ(oinstall)に属する必要があります。

  • それぞれのOracleソフトウェア所有者は、同じ中央インベントリ・グループのメンバーであることが必要です。Oracleインストールに対して複数の中央インベントリを持たないことをお薦めします。あるOracleソフトウェア所有者が別の中央インベントリ・グループを持っている場合、その中央インベントリは破損することがあります。

  • スタンドアロン・サーバー・インストール所有者ユーザー(grid)用のOracle Grid Infrastructureは、あらゆるデータベース・ホームのOSDBAグループに存在する必要があります。

5.1.4 役割区分によるグループおよびユーザーの説明

次の項では、役割区分ごとにアクセス権限を分割するためのユーザーおよびグループの概要について説明します。

5.1.4.1 Oracleソフトウェア製品ごとのOracleソフトウェア所有者

スタンドアロン・サーバー・インストール用のOracle DatabaseおよびOracle Grid Infrastructureの両方を所有するための、単一ユーザー(oracleなど)を作成できます。ただし、各Oracleソフトウェア・インストールを所有するソフトウェア所有者を作成することをお薦めします(通常、データベース・ソフトウェアの場合はoracle、Oracle Restart所有者ユーザーの場合はgrid)。

Oracleソフトウェアをシステムに初めてインストールする場合、ソフトウェア所有者を少なくとも1つ作成する必要があります。


注意:

Oracleドキュメントでは、Oracle Grid Infrastructureソフトウェア・インストールのみを所有するために作成されたユーザーはgridユーザーと呼ばれます。すべてのOracleインストールまたはOracleデータベース・インストールのみのいずれかを所有するために作成されたユーザーはoracleユーザーと呼ばれます。

5.1.4.2 役割区分用の標準Oracle Databaseグループ

Oracle Databaseをインストールする場合は、次のオペレーティング・システム・グループを作成します。

  • OSDBAグループ(通常はdba)

    Oracle Databaseソフトウェアをシステムに初めてインストールする場合は、このグループを作成する必要があります。このグループにより、データベース管理権限(SYSDBA権限)を持つオペレーティング・システムのユーザー・アカウントが識別されます。

  • Oracle DatabaseのOSOPERグループ(通常はoper)

    これはオプションのグループです。データベースを起動および停止するためのデータベース管理権限の一部(SYSOPER権限)を持つ別個のオペレーティング・システム・ユーザー・グループが必要な場合は、このグループを作成します。このグループは、明示的に付与されないかぎりSYSOPERとして直接接続できません。ただし、SYSOPER権限で付与される権限を持ちます。デフォルトでは、OSDBAグループのメンバーには、SYSOPER権限により付与されるすべての権限があります。

5.1.4.3 役割区分用の拡張Oracle Databaseグループ

Oracle Database 12cリリース1 (12.1)からは、データベースの起動と停止を行うOSOPER権限に加え、よりタスクに特化し、OSDBA/SYSDBAシステム権限より権限が少ない新しい管理権限を作成し、日々のデータベース運用に必要な特定の管理権限タスクをサポートできます。これらのシステム権限を付与されたユーザーは、オペレーティング・システムのグループ・メンバーシップを介しても認証されます。

これらの特定のグループ名を作成する必要はありませんが、インストール中にオペレーティング・システム・グループを指定するように求められます(そのメンバーに、これらのシステム権限へのアクセス権が付与されます)。これらの権限を認証するために同じグループを割り当てることは可能ですが、一意のグループを割り当てて各権限を指定することをお薦めします。

OSDBAサブセット・ジョブ・ロール別の権限およびグループは、次のもので構成されています。

  • Oracle DatabaseのOSBACKUPDBAグループ(通常はbackupdba)

    このグループは、オペレーティング・システム・ユーザーの別のグループにバックアップおよびリカバリ関連権限の一部(SYSBACKUP権限)を付与する場合に作成します。

    Oracleソフトウェア・インストール所有者をOSBACKUPDBAグループに追加します。

  • Oracle Data GuardのOSDGDBAグループ(通常はdgdba)

    このグループは、オペレーティング・システム・ユーザーの別のグループにOracle Data Guardを管理および監視する権限の一部(SYSDG権限)を付与する場合に作成します。

    Oracleソフトウェア・インストール所有者をOSDGDBAグループに追加します。

  • 暗号化鍵を管理するOSKMDBAグループ(通常はkmdba)

    このグループは、オペレーティング・システム・ユーザーの別のグループに、Oracle Wallet Managerの管理など暗号化鍵を管理権限の一部(SYSKM権限)を付与する場合に作成します。

    Oracle DatabaseにOSKMDBAグループが必要な場合は、Oracleソフトウェア・インストール所有者がこのグループのメンバーであることが必要です。

5.1.4.4 役割区分用のOracle Automatic Storage Managementグループ

Oracle Grid Infrastructureをインストールする場合、次のオペレーティング・システム・グループを作成します。

  • Oracle ASMのOSDBAグループ(通常はasmdba)

    Oracle ASMのOSDBAグループは、データベースのOSDBAグループと同じでもかまいません。または、Oracle ASM用のOSDBAグループを別途作成して、Oracle ASMインスタンスへの管理者アクセス権限を提供することもできます。

    Oracle Grid Infrastructuretソフトウェア所有者(通常はgrid)は、OSDBAグループのメンバーである必要があります。OSDBAグループのメンバーシップにより、Oracle ASMで管理されるファイルにアクセスできます。Oracle ASM専用のOSDBAグループを作成した場合、Oracle Restartソフトウェア所有者は、各データベース用のOSDBAグループおよびOracle ASM用のOSDBAグループのメンバーである必要があります。

  • Oracle ASM管理のOSASMグループ(通常はasmadmin)

    Oracle ASM管理者用とOracle Database管理者用の管理権限グループを別にする場合、このグループを別のグループとして作成します。このグループのメンバーには、Oracle ASMを管理するためのSYSASMシステム権限が付与されます。メンバーにSYSASM権限が付与されたオペレーティング・システム・グループは、OracleドキュメントではOSASMグループと呼ばれ、コマンドラインではasmadminと呼ばれます。

    Oracle ASMは、複数のデータベースをサポートできます。システム上に複数のデータベースがあり、複数のOSDBAグループを使用してデータベースごとに別々のSYSDBA権限を提供できるようにする場合は、グループを作成してそのメンバーにOSASM/SYSASM管理権限が付与されるようにし、データベース・インストールを所有しないグリッド・インフラストラクチャ・ユーザー(grid)を作成する必要があります(これによって、Oracle Grid Infrastructure SYSASM管理権限がデータベース管理権限グループから分離されます)。

    OSASMグループのメンバーは、SQLを使用して、オペレーティング・システム認証を使用するSYSASMとしてOracle ASMインスタンスに接続できます。SYSASM権限により、ディスク・グループのマウントとディスマウントおよびその他のストレージ管理タスクが許可されます。SYSASM権限では、RDBMSインスタンス上へのアクセス権限は提供されません。

    OSASMグループとして別のグループを指定しない場合は、定義するOSDBAグループもデフォルトでOSASMグループに指定されます。

  • Oracle ASMのOSOPERグループ(通常はasmoper)

    これはオプションのグループです。このグループは、Oracle ASMインスタンスの起動と停止を含め、制限されたセットのOracleインスタンス管理者権限(ASMのSYSOPER権限)を持つ別のオペレーティング・システム・グループが必要な場合に作成します。デフォルトでは、OSASMグループのメンバーには、ASMのSYSOPER権限により付与されるすべての権限もあります。

    Oracle ASMのOSOPERグループを作成する場合、このグループのメンバーはOracle Grid Infrastructureの所有者にする必要があります。


関連項目:

  • OSDBA、OSASM、OSOPER、OSBACKUPDBA、OSDGDBAおよびOSKMDBAグループと、SYSDBASYSASM、SYSOPERSYSBACKUPSYSDGおよびSYSKMの各権限の詳細は、『Oracle Database管理者ガイド』を参照してください。

  • 『Oracle Databaseセキュリティ・ガイド』の管理権限の管理に関する項


5.1.5 役割区分によるデータベース・オペレーティング・システム・グループおよびユーザーの作成

次の各項では、必要なオペレーティング・システム・ユーザーおよびグループの作成方法について説明します。


注意:

  • この項で説明されている必要なオペレーティング・システム・グループを作成したら、それらのグループにOracleソフトウェア所有者ユーザー(通常はoracle)を追加する必要があり、追加しない場合、データベース・インストールの実行中にそれらのグループをOracle Universal Installerのオプションとして使用できません。

  • この項で説明されているUIDおよびGIDは単なる説明用です。UIDおよびGIDのデフォルトを使用しないことをお薦めします。かわりに、一般的に割り当てられるグループおよびユーザーIDを指定し、グループおよびユーザーを作成または変更する前にそれらが使用されていないことを確認してください。

  • 既存ユーザーやグループを使用または変更する前に、必要に応じて、システム管理者に連絡してください。


5.1.5.1 データベース・インストール用のOSDBAグループの作成

次の場合には、OSDBAグループを作成する必要があります。

  • OSDBAグループが存在しない場合。たとえば、これがシステムに対するOracle Databaseソフトウェアの初回インストールの場合。

  • OSDBAグループは存在するが、新規のOracle Databaseインストールでは、異なるオペレーティング・システム・ユーザー・グループにデータベース管理権限を付与する場合。

同じ名前のグループが存在する場合を除き、グループ名dbaを使用してOSDBAグループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54322 dba

5.1.5.2 データベース・インストール用のOSOPERグループの作成

一連の限られたデータベース管理権限(SYSOPERオペレータ権限)を持つオペレーティング・システム・ユーザーのグループを識別する場合のみ、OSOPERグループを作成します。ほとんどのインストールの場合、OSDBAグループを作成するのみで十分です。OSOPERグループを使用する場合は、次の状況で作成する必要があります。

  • OSOPERグループが存在しない場合。たとえば、これがシステムに対するOracle Databaseソフトウェアの初回インストールの場合。

  • OSOPERグループは存在するが、新規のOracleインストールでは、異なるオペレーティング・システム・ユーザー・グループにデータベース・オペレータ権限を付与する場合。

同じ名前のグループが存在する場合を除き、グループ名operを使用してOSOPERグループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54323 oper

5.1.5.3 データベース・インストール用のOSBACKUPDBAグループの作成

同じ名前のグループが存在する場合を除き、グループ名backupdbaを使用してOSBACKUPDBAグループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54324 backupdba

5.1.5.4 データベース・インストール用のOSDGDBAグループの作成

同じ名前のグループが存在する場合を除き、グループ名dgdba,を使用してOSDGDBAグループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54325 dgdba

5.1.5.5 データベース・インストール用のOSKMDBAグループの作成

同じ名前のグループが存在する場合を除き、グループ名kmdbaを使用してOSKMDBAグループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54326 kmdba

5.1.5.6 Oracle Automatic Storage Management用のOSDBAグループの作成

同じ名前のグループが存在する場合を除き、必要な場合には、グループ名asmdbaを使用して、Oracle ASM用のOSDBAグループを新しく作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54327 asmdba

5.1.5.7 Oracle Automatic Storage Management用のOSOPERグループの作成

同じ名前のグループが存在する場合を除き、必要な場合には、グループ名asmoperを使用して、Oracle ASM用のOSOPERグループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54328 asmoper

5.1.5.8 Oracle Automatic Storage Management用のOSASMグループの作成

同じ名前のグループが存在する場合を除き、必要な場合には、グループ名asmadminを使用して、OSASMグループを作成します。

# /usr/sbin/groupadd -g 54329 asmadmin

5.1.5.9 Oracleソフトウェア所有者ユーザーを作成するタイミング

新規ユーザーを作成するか、既存のユーザーを使用するかに応じて、次の項を参照してください。

  • Oracleソフトウェア所有者ユーザーが存在しない場合。たとえば、これがシステムに対するOracleソフトウェアの最初のインストールの場合。

  • Oracleソフトウェア所有者ユーザーは存在するが、新規のOracle Databaseインストールでは、別のグループ・メンバーシップを設定した別のオペレーティング・システム・ユーザーを使用して、これらのグループにデータベース管理権限を付与する場合。

  • Oracle Grid InfrastructureのOracleソフトウェア所有者(gridなど)を作成し、Oracle Databaseソフトウェア用に別のOracleソフトウェア所有者(oracleなど)を作成する場合。

5.1.5.10 Oracleソフトウェア所有者ユーザーが存在するかどうかの判別

oracleまたはgridというOracleソフトウェア所有者ユーザーが存在するかどうかを確認するには、次のようなコマンドを入力します。

# id oracle
# id grid

oracleユーザーが存在する場合、このコマンドからの出力は、次のようになります。

uid=54321(oracle) gid=54321(oinstall) groups=54322(dba),54323(oper)

gridユーザーが存在する場合、このコマンドからの出力は、次のようになります。

uid=54322(grid) gid=54321(oinstall) groups=54321(oinstall),54329(asmadmin),54327(asmdba),54322(dba)

既存ユーザーを使用するか、新規ユーザーを作成するかを決定します。既存のユーザーを使用する場合は、そのユーザーのプライマリ・グループがOracleインベントリ・グループであり、そのユーザーが適切なOSDBAグループおよびOSOPERグループのメンバーであることを確認します。選択内容に応じて、詳細は次の項のいずれかを参照してください。


注意:

必要に応じて、既存のユーザーの使用または変更の前にシステム管理者に連絡してください。

5.1.5.11 Oracleソフトウェア所有者ユーザーの作成

Oracleソフトウェア所有者ユーザー(oracleまたはgrid)が存在しない場合、または新規のOracleソフトウェア所有者ユーザーが必要な場合は、この項の説明に従って作成します(この例では、oracleユーザーを作成します)。

次の手順では、同じ名前のユーザーが存在する場合を除き、ユーザー名にoracleを使用します。

  1. oracleユーザーを作成するには、次のようなコマンドを入力します。

    # /usr/sbin/useradd -u 54321 -g oinstall -G dba,asmdba,backupdba,dgdba,kmdba oracle
    

    このコマンドの意味は次のとおりです。

    • -uオプションは、ユーザーIDを指定します。システムによって自動的にユーザーID番号を生成するようにできるため、このコマンド・フラグの使用は任意です。ただし、番号を指定することをお薦めします。ユーザーID番号は、インストール前の作業で必要になるため、記録しておく必要があります。

    • -gオプションはプライマリ・グループを指定します。プライマリ・グループは、oinstallなどのOracleインベントリ・グループである必要があります。

    • -Gオプションではセカンダリ・グループが指定され、これにはOSDBAグループおよび必要に応じてASMDBA、OSOPER、OSBACKUPDBA、OSDGDBAおよびOSKMDBAグループ(dbaasmdbaoperbackupdbadgdbakmdbaなど)を含める必要があります。

  2. oracleユーザーのパスワードを設定します。

    # passwd oracle
    

5.1.5.12 既存のOracleソフトウェア所有者ユーザーの変更

oracleユーザーは存在するが、プライマリ・グループがoinstallではない場合、または適切なOSDBA、OSOPER、またはASM用OSDBAグループのメンバーでない場合は、ユーザーoracleのユーザー・グループ設定を変更します。

-gオプションを使用してプライマリ・グループを指定し、-Gオプションを使用して必要なセカンダリ・グループを指定します。

# /usr/sbin/usermod -g oinstall -G dba,asmdba,backupdba,dgdba,kmdba[,oper] oracle

Oracleでは、既存のインストール所有者の変更はサポートされていません。制約の全一覧については、「役割区分を使用したOracleインストールについて」を参照してください。

5.2 Oracleソフトウェア・インストール・ユーザーのリソース制限の確認

Oracle Linuxシステムでは、オペレーティング・システムを構成してlimits.confファイルのリソース制限を設定するなど、インストール前の要件を満たすために、Oracle Preinstallation RPMをインストールすることをお薦めします。Oracle Preinstallation RPMでは、oracleユーザー用のlimits.confファイルのみが構成されます。Oracle Grid Infrastructureの役割区分を実装している場合、limits.confファイルのoracleユーザーの値をgridユーザーにコピーします。

各インストール・ソフトウェア所有者について、次の推奨範囲を使用して、インストールのリソース制限を確認します。

表5-1 インストール所有者のリソース制限の推奨範囲

リソースのシェル制限 リソース ソフト制限 ハード制限

オープン・ファイル記述子

nofile

1024以上

65536以上

ユーザー1人当たりに使用可能なプロセス数

nproc

2047以上

16384以上

プロセスのスタック・セグメントのサイズ

stack

10240KB以上

10240KB以上、32768KB以下

ロックされたメモリーの最大上限

memlock

HugePagesを有効にする場合は現在のRAMの90%以上、HugePagesを無効にする場合は、3145728 KB (3 GB)以上。

HugePagesを有効にする場合は現在のRAMの90%以上、HugePagesを無効にする場合は、3145728 KB (3 GB)以上。


リソース制限を確認するには、次の手順を実行します。

  1. インストール所有者としてログインします。

  2. ファイル記述子の設定のソフト制限とハード制限を確認します。結果が推奨範囲内であることを確認します。次に例を示します。

    $ ulimit -Sn
    1024
    $ ulimit -Hn
    65536
    
  3. ユーザー1人当たりに使用可能なプロセス数のソフト制限とハード制限を確認します。結果が推奨範囲内であることを確認します。次に例を示します。

    $ ulimit -Su
    2047
    $ ulimit -Hu
    16384
    
    
  4. スタック設定のソフト制限を確認します。結果が推奨範囲内であることを確認します。次に例を示します。

    $ ulimit -Ss
    10240
    $ ulimit -Hs
    32768
    
  5. Oracleソフトウェア・インストール所有者ごとに、この手順を繰り返します。

必要に応じて、/etc/security/limits.conf構成ファイルのインストール所有者のリソース制限を更新します。ただし、構成ファイルが配布固有であることに注意してください。配布固有の構成ファイルの情報については、システム管理者に問い合せてください。


注意:

gridユーザーまたはoracleユーザーがログインしている場合、これらのユーザーをログアウトしてログインしなおすまで、limits.confファイルの変更内容は有効になりません。これらのアカウントを使用してインストールを行う前に、変更内容を有効にする必要があります。

5.3 リモート表示およびX11転送の構成の設定

リモート端末で作業を行っていて、そのローカル・システムのみが表示されている場合(通常は、この状態になります)、次の構文を使用して、ユーザー・アカウントのDISPLAY環境変数を設定します。

Bourne、KornおよびBashシェル:

$ export DISPLAY=hostname:0

Cシェルの場合:

$ setenv DISPLAY hostname:0

たとえば、Bashシェルを使用していて、ホスト名がlocal_hostの場合は、次のコマンドを入力します。

$ export DISPLAY=local_host:0

X11転送が原因でインストールが失敗しないようにするには、次のように、Oracleソフトウェア所有者ユーザーに対してユーザーレベルのSSHクライアント構成ファイルを作成します。

  1. テキスト・エディタを使用して、ソフトウェア・インストール所有者の~/.ssh/configファイルを編集または作成します。

  2. ~/.ssh/configファイルでForwardX11属性がnoに設定されていることを確認します。次に例を示します。

    Host * 
                         ForwardX11 no
    
  3. ~/.sshに対する権限がoracleまたはgridユーザーに固定されることを確認します。次に例を示します。

    $ ls -al .ssh
    total 28
    drwx------  2 oracle oinstall 4096 Jun 21 2012
    drwx------ 19 oracle oinstall 4096 Jun 21 2012
    -rw-r--r--  1 oracle oinstall 1202 Jun 21 2012 authorized_keys
    -rwx------  1 oracle oinstall  668 Jun 21 2012 id_dsa
    -rwx------  1 oracle oinstall  601 Jun 21 2012 id_dsa.pub
    -rwx------  1 oracle oinstall 1610 Jun 21 2012 known_hosts
    

5.4 既存のOracleプロセスの停止


注意:

Oracle Database 12c製品を既存のOracleホームに追加でインストールする場合、リスナーおよびデータベースも含め、Oracleホームで実行中のすべての処理を停止します。Oracle Universal Installerを有効にして特定の実行可能ファイルおよびライブラリを再リンクするには、この作業を完了する必要があります。

スタンドアロン・サーバー用のOracle Grid Infrastructure、またはOracle Databaseをインストールする前に、次の内容を検討してください。

  • Oracle Restartを使用する場合は、データベースのインストールおよび作成を行う前に、スタンドアロン・サーバー用のOracle Grid Infrastructureをインストールする必要があります。データベースのインストールを実行するときは、スタンドアロン・サーバー用のOracle Grid Infrastructureのインストールの際に作成されたリスナーをデータベースで使用する必要があるため、この項で示す手順を実行する必要はありません。

    デフォルト・リスナーおよびその他のすべてのリスナーは、Oracle Grid Infrastructureホームで実行する必要があります。「Oracleソフトウェア所有者環境の構成」を参照して続行してください。

  • Oracle ASMで既存のOracle Database 12cが実行されている場合は、既存のOracle ASMインスタンスを停止します。スタンドアロン・サーバー用のOracle Grid Infrastructureのインストールが終了したら、Oracle ASMインスタンスを再起動します。

ソフトウェアのインストール時にデータベースの作成すると、ほとんどのインストール・タイプではTCP/IPポート1521とIPCキー値EXTPROCを使用して、デフォルトのOracle Netリスナーが構成および起動されます。既存のOracle Netリスナー・プロセスが同じポートまたはキー値を使用している場合は、Oracle Universal Installerは次に使用可能なポート(1522など)を探し、そのポートで新しいリスナーを構成および起動します。

既存のリスナー・プロセスが実行中かどうかを判別し、必要に応じてそれを停止する手順は、次のとおりです。

  1. ユーザーをoracleに切り替えます。

    # su - oracle
    
  2. 次のコマンドを入力し、リスナー・プロセスが実行中かどうかを判別し、プロセスの名前とそれがインストールされているOracleホーム・ディレクトリを識別します。

    $ ps -ef | grep tnslsnr
    

    このコマンドを実行すると、システム上で実行中のOracle Netリスナーに関する情報が表示されます。

    ... oracle_home1/bin/tnslsnr LISTENER -inherit
    

    この例で、oracle_home1は、リスナーがインストールされているOracleホーム・ディレクトリ、LISTENERはリスナー名です。


    注意:

    Oracle Netリスナーが実行中でない場合は、「Oracleソフトウェア所有者環境の構成」を参照して続行してください。

  3. ORACLE_HOME環境変数を設定して、リスナーに適切なOracleホーム・ディレクトリを指定します。

    • Bourne、Bash、またはKornシェルの場合:

      $ ORACLE_HOME=oracle_home1
      $ export ORACLE_HOME
      
    • Cまたはtcshシェルの場合:

      % setenv ORACLE_HOME oracle_home1
      
  4. 次のコマンドを入力し、リスナーが使用しているTCP/IPポート番号およびIPCキー値を識別します。

    $ $ORACLE_HOME/bin/lsnrctl status listenername
    

    注意:

    リスナーがデフォルト名LISTENERを使用する場合、このコマンドでリスナー名を指定する必要はありません。

  5. 次のようなコマンドを入力し、リスナー・プロセスを停止します。

    $ $ORACLE_HOME/bin/lsnrctl stop listenername
    
  6. この手順を繰り返して、このシステムで実行中のリスナーをすべて停止します。

5.5 Oracleソフトウェア所有者環境の構成

Oracle Universal Installerはoracleまたはgridアカウントから実行する必要があります。ただし、Oracle Universal Installerを起動する前に、oracleまたはgridユーザーの環境を構成する必要があります。環境を構成するには、次のことが必要です。

  • シェル起動ファイルで、デフォルトのファイル・モード作成マスク(umask)を022に設定します。

  • DISPLAY環境変数を設定します。


注意:

オペレーティング・システムのベンダーでサポートされるシェル・プログラムを使用してください。オペレーティング・システムでサポートされないシェル・プログラムを使用した場合、インストールの際にエラーが発生する可能性があります。

Oracleソフトウェア所有者の環境を設定するには、ソフトウェア所有者(oraclegrid)ごとに次の手順を実行します。次の手順は、oracleユーザーのみに対する手順を示しています。

  1. 新規Xターミナル・セッション(xterm)を開始します。

  2. 次のコマンドを入力し、Xウィンドウ・アプリケーションがこのシステム上に表示されることを確認します。

    $ xhost + RemoteHost
    

    RemoteHostは完全修飾されたリモートのホスト名です。次に例を示します。

    $ xhost + somehost.example.com
    
  3. そのユーザーでログインしていない場合は、構成するソフトウェア所有者に切り替えます。たとえば、oracleユーザーなどです。

    $ su - oracle
    
  4. oracleユーザーのデフォルトのシェルを判別するには、次のコマンドを入力します。

    $ echo $SHELL
    
  5. テキスト・エディタでユーザーのシェル起動ファイルを開きます。

    • Bashシェル(bash):

      $ vi .bash_profile
      
    • Bourneシェル(sh)またはKornシェル(ksh):

      $ vi .profile
      
    • Cシェル(cshまたはtcsh):

      % vi .login
      
  6. 次のように行を入力または編集して、デフォルトのファイル・モード作成マスクの値に022を指定します。

    umask 022
    
  7. ファイルを保存して、テキスト・エディタを終了します。

  8. シェル起動スクリプトを実行するには、次のいずれかのコマンドを入力します。

    • Bashシェルの場合:

      $ . ./.bash_profile
      
    • BourneまたはKornシェルの場合:

      $ . ./.profile
      
    • Cシェルの場合:

      % source ./.login
      
  9. ローカル・コンピュータにソフトウェアをインストールしない場合は、リモート・コンピュータで次のコマンドを実行して、DISPLAY変数を設定します。

    • Bourne、BashまたはKornシェルの場合:

      $ export DISPLAY=local_host:0.0       
      
    • Cシェルの場合:

      % setenv DISPLAY local_host:0.0
      

    この例で、local_hostは、インストーラを表示するためのシステム(ご使用のワークステーションまたは他のクライアント)のホスト名またはIPアドレスです。

    リモート・システム上で次のコマンドを実行し、SHELLおよびDISPLAY環境変数が正しく設定されていることを確認します。

    echo $SHELL
    echo $DISPLAY
    

    表示場所をデフォルト表示からリモート・システム表示に変更するには、ローカル・コンピュータで次のコマンドを実行します。

    $ xhost + RemoteHost
    

    Xアプリケーションの表示が正しく設定されていることを確認するには、オペレーティング・システムに付属のX11ベースのプログラム(xclockなど)を実行します。

    $ xclock
    

    この例では、xclock/usr/X11R6/bin/xclocksにあります。

    DISPLAY環境変数が正しく設定されていれば、xclockがコンピュータ画面に表示されます。エラーが表示される場合は、「X Windowの表示エラー」を参照してください。xclockが起動しない場合は、システム管理者に連絡してください。

  10. /tmpディレクトリの空きディスク領域が1GB未満である場合は、1GB以上の空き領域があるファイル・システムを特定し、そのファイル・システムの一時ディレクトリを指定するようにTMPおよびTMPDIR環境変数を設定します。

    1. マウント済の各ファイル・システム上の空きディスク領域を判別するには、次のコマンドを使用します。

      # df -h /tmp
      
    2. 必要に応じて、次のようなコマンドを入力し、識別したファイル・システム上に一時ディレクトリを作成し、そのディレクトリに適切な権限を設定します。

      $ sudo - s
      # mkdir /mount_point/tmp
      # chmod 775 /mount_point/tmp
      # exit
      
    3. 次のようなコマンドを入力し、TMPおよびTMPDIR環境変数を設定します。

      • Bourne、Bash、またはKornシェルの場合:

        $ TMP=/mount_point/tmp
        $ TMPDIR=/mount_point/tmp
        $ export TMP TMPDIR
        
      • Cシェルの場合:

        % setenv TMP /mount_point/tmp
        % setenv TMPDIR /mount_point/tmp
        
  11. システムに既存のインストール環境があり、同じユーザー・アカウントを使用して今回のインストールを行う場合は、ORACLE_HOMEORACLE_BASEORACLE_SIDTNS_ADMINの環境変数と、Oracleソフトウェア・ホームに接続されているOracleインストール・ユーザーに対して設定されたその他の環境変数の設定を削除します。

    次のコマンドを入力し、ORACLE_HOMEORACLE_BASEORACLE_SIDおよびTNS_ADMINの環境変数が設定されていないことを確認します。

    • Bourne、Bash、またはKornシェルの場合:

      $ unset ORACLE_HOME
      $ unset ORACLE_BASE
      $ unset ORACLE_SID
      $ unset TNS_ADMIN
      
    • Cシェルの場合:

      % unsetenv ORACLE_HOME
      % unsetenv ORACLE_BASE
      % unsetenv ORACLE_SID
      % unsetenv TNS_ADMIN
      

    次のコマンドを使用してPATH環境変数をチェックします。

    $ echo $PATH
    

    $ORACLE_HOME/binパスがPATH環境変数から削除されていることを確認します。


    注意:

    ORACLE_HOME環境変数が設定されている場合、Oracle Universal Installerはその環境変数でOracleホーム・ディレクトリのデフォルト・パスとして指定されている値を使用します。ORACLE_BASE環境変数を設定する場合は、ORACLE_HOME環境変数の設定を解除し、Oracle Universal Installerによって提示されるデフォルト・パスを選択することをお薦めします。

  12. 環境設定が正しく行われたかどうかを確認するには、次のコマンドを入力します。

    $ umask
    $ env | more
    

    umaskコマンドによって値22022または0022が表示されること、およびこの項で設定した環境変数に正しい値が指定されていることを確認します。

5.6 rootスクリプトの実行計画の決定

Oracle Grid Infrastructureのインストール中に、Oracle Universal Installerから、スーパーユーザー(またはroot)権限を使用してスクリプトを実行し、いくつかのシステム構成タスクを完了するかどうかを尋ねられます。これらのrootスクリプトは、必要な場合に手動でrootとして実行することも、次のroot権限委任オプションのいずれかを使用して、インストール中に構成情報やパスワードを指定することもできます。

  • ルート・ユーザー資格証明の使用

    スーパーユーザー(またはroot)のパスワードを指定します。このオプションは、rootスクリプトを自動的にrootユーザーとして実行します。

  • sudoの使用

    sudoはUNIXおよびLinuxのユーティリティで、sudoersグループ権限のメンバーは、個々のコマンドをrootとして実行できます。Sudoを有効にするには、適切な権限を持つシステム管理者がsudoersリストのメンバーであるユーザーを構成し、インストール時の求めに応じてユーザー名とパスワードを指定します。