Oracle Automatic Storage Management Cluster File System (Oracle ACFS)は、マルチプラットフォームのスケーラブルなファイルシステムであり、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)の機能を拡張して、すべてのカスタマ・ファイルをサポートするストレージ管理テクノロジです。Oracle ACFSでは、実行可能ファイル、データベース・データファイル、データベース・トレース・ファイル、データベース・アラート・ログ、アプリケーション・レポート、BFILEおよび構成ファイルなど、Oracle Databaseファイルおよびアプリケーション・ファイルがサポートされます。他にも、ビデオ、オーディオ、テキスト、イメージ、設計図、その他の汎用アプリケーションのファイル・データがサポートされます。Oracle ACFSは、LinuxおよびUNIXの場合はPOSIX標準に準拠し、Windowsの場合はWindows標準に準拠しています。
図11-1に示すように、Oracle ACFSファイルシステムはOracle ASMと通信し、Oracle ASMストレージを使用して構成されます。Oracle ACFSでは、次のことを可能にするOracle ASM機能を利用します。
Oracle ACFSの動的なファイル・システムのサイズ変更
Oracle ASMディスク・グループ・ストレージへの直接アクセスによるフォーマンスの最大化
I/Oの並列性向上によるOracle ASMディスク・グループ・ストレージ全体でのOracle ACFSの分散の平均化
Oracle ASMミラー化保護メカニズムによるデータの信頼性の確保
図11-1 Oracle Automatic Storage Managementの記憶域レイヤー
Oracle ACFSでは、Oracle ASMインスタンスおよびディスク・グループのステータス更新やディスク・グループのリバランスなどのOracle ASMの状態遷移に関与するために、Oracle ASMインスタンスとの通信を確立し、維持します。Oracle ACFSおよびOracle ASM動的ボリューム・マネージャ(Oracle ADVM)を備えたOracle Automatic Storage Managementでは、すべてのカスタマ・データをサポートし、Oracle Restart(スタンドアロン)構成とクラスタ構成の両方で、複数のベンダー・プラットフォームおよびオペレーティング・システム環境にわたってOracleストレージ管理ツールおよびサービスの共通セットを提供します。Oracle ADVMの概要は、「Oracle ASM動的ボリューム・マネージャの概要」を参照してください。
Oracle ACFSは、Oracle Clusterwareテクノロジと密接に結びついており、Clusterwareクラスタ・メンバーシップの状態遷移と、Oracle Clusterwareリソースベースの高可用性(HA)管理に直接関与します。さらに、Oracleのインストール、構成、検証および管理ツールが、Oracle ACFSをサポートするために更新されました。
Oracle ACFSは、ネイティブ・オペレーティング・システム・ファイルシステム・ツールと標準のアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)を使用してアクセスと管理ができます。Oracle ASMコンフィギュレーション・アシスタントを使用して、Oracle ACFSを管理することもできます。Oracle ACFSには、業界標準のネットワーク・アタッチド・ストレージ(NAS)ファイル・アクセス・プロトコルであるネットワーク・ファイルシステム(NFS)および共通インターネット・ファイルシステム(CIFS)を使用してアクセスできます。ただし、Oracle ACFS Linux、SolarisまたはAIXサーバーと接続している場合、Windows上のCIFSクライアントはACLを使用できませんが、Windows上のOracle ACFSと接続している場合はACLを使用できます。
ファイル・データの共有に加えて、Oracle ACFSではストレージ管理サービスを提供します。たとえば、Oracle Grid Infrastructureのクラスタ全体のマウント・レジストリ、オンライン・ファイルシステムの動的サイズ変更、各ファイルシステムの領域使用効率のよい複数のスナップショットなどがあります。
Oracle ACFSは、次の機能を提供して、Oracle全体のストレージ管理に貢献します。
Oracle ASMおよびOracle Clusterwareテクノロジと統合された汎用のスタンドアロン・サーバーおよびクラスタ・ファイルシステム・ソリューション
ネイティブ・オペレーティング・システムまたはサード・パーティ・ファイルシステムのソリューションに代わる、複数のベンダー・プラットフォームおよびオペレーティング・システムにわたるファイルシステム機能の共通セット
スタンドアロン内およびクラスタ全体で共有されるOracle Databaseホーム、すべてのOracle Databaseファイルおよびアプリケーション・データ
均一で一貫した共有ファイル・アクセスと、すべてのカスタマ・アプリケーション・ファイルに対するクラスタ全体でのネーミング
Oracle Clusterware高可用性リソースとの統合
詳細は、「Oracle ClusterwareリソースとOracle ACFSの管理」を参照してください。
Oracle ACFSは、大容量の記憶域と多数のクラスタ・ノードに対応します。多数のファイルシステムおよびファイルを効率的に管理し、エクサバイト(EB)対応のファイルおよびファイルシステム容量により、小型ファイルと大型ファイルの両方をサポートします。Oracle ACFSの最適化された高速ディレクトリ検索により、何百万ものファイルを持つ大型ディレクトリを検索できます。
Oracle ACFSファイルシステムは通常、すべてのOracle Cluster Synchronization Services(CSS)クラスタ・メンバー上にマウントされます。メンバーに障害が発生した場合、別のクラスタ・メンバーが、障害の発生したメンバーにかわり、未処理のメタデータ・トランザクションをただちにリカバリします。リカバリ後に、他のアクティブ・クラスタ・メンバーとリモート・クライアント・システムによるアクセスが再開されます。
次のリストに、Oracle ACFSに関する重要な情報を示します。
すべてのアプリケーションでは、write()サイズを大きくすると(8K以上など)、Oracle ACFSのパフォーマンスは最適になります。
最高のパフォーマンスを実現するために、Linuxシステム上のディスク・グループのディスク用の期限I/Oスケジューラを使用します。
Oracle ACFSファイルシステムをWindows上で作成する場合、Windowsドメイン・ユーザーとしてログオンします。また、Windows上のOracle ACFSファイルシステムでファイルを作成する場合、Windowsドメイン・ユーザーとしてログインして、ファイルがすべてのノードによってアクセス可能であることを確認する必要があります。
Windowsプラットフォーム上のクラスタ・ノード間でファイルシステムを使用する場合、ベスト・プラクティスは、ドメイン・ユーザーを使用しているファイルシステムをマウントして、セキュリティ識別子がクラスタ・ノード間で同じであることを確認することです。ファイルおよびディレクトリへのアクセス権限を定義する際に使用されるWindowsセキュリティ識別子は、ユーザーを識別する情報を使用します。ローカル・ユーザーは、ローカル・ノードのコンテキストでのみ認識されます。Oracle ACFSは、ファイルシステムへのデフォルトのアクセス権限を設定するため、最初のファイルシステムのマウント時にこの情報を使用します。
ファイルシステムがOracleベースの下にマウントされる場合、Oracleベース権限の詳細は、Windowsプラットフォーム用の『Oracle Databaseインストレーション・ガイド』を参照してください。
Oracle ACFSでは、Oracle ASMの管理に関連付けられたファイル(Oracle Grid Infrastructureホーム内およびOracle ASMの診断ディレクトリ内のファイルなど)は、サポートされません。
Oracle ACFSでは、Oracle Cluster Registry(OCR)および投票ファイルはサポートしません。
Oracle ACFSの機能では、ASM
およびADVM
のディスク・グループの互換性属性が11.2
以上に設定されていることが必要です。ディスク・グループの互換性の詳細は、「ディスク・グループの互換性」を参照してください。
Oracle DatabaseホームにOracle ACFSのファイルシステムを使用するには、Oracle 11gリリース2 (11.2)以上のリリースである必要があります。
Oracle ACFSの管理および監視の詳細は、「コマンドライン・ツールによるOracle ACFSの管理」および「ビューを使用したOracle ACFS情報の表示」を参照してください。