この章では、オラクル社のZero Data Loss Recovery Appliance (Recovery Appliance)の機能とハードウェア・コンポーネントについて説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Recovery Applianceは、バックアップとリカバリのソリューションで、Oracleデータベースのデータ保護に特化して設計されています。提供されるリポジトリは非常に拡張性が高く、数百から数千に及ぶデータベースのデルタ変更(つまり差異)をすべて記録できます。
データベース・デルタ・プッシュ・テクノロジを使用すれば、Oracle DBAは、完全なRecovery Manager (RMAN)バックアップを一度だけ実行し、その後は、それぞれのデータベースからRecovery Applianceへ増分バックアップのみを実行するだけですみます。完全バックアップやテープ・バックアップを繰り返したり、RMANバックアップの削除、検証、メンテナンスのコマンドを何度も実行する必要はありません。
災害が発生した場合、DBAは、すべてのデータベースを任意の時点、または現在時刻まであと1秒未満の時点までリカバリできます。データベース・デルタ・ストアの仮想完全バックアップ・テクノロジは、RMANのデータベース・リストア・リクエストに対応して、常駐増分ブロックから物理バックアップを作成します。
ローカルのRecovery Applianceにあるバックアップを、安全なネットワークを使用して、簡単かつ迅速にリモートのRecovery Applianceにレプリケートし、サーバーやサイトの停止から保護できます。変更されたブロックのみがレプリケートされます。データベースのリストア操作には、リモートのRecovery Applianceの仮想完全バックアップを使用できます。
自律型テープ・アーカイブにより、サイト災害からの保護がさらに強化されます。Recovery Applianceでは、長期に渡る保存とアーカイブを目的として、仮想の完全バックアップと増分バックアップが自動的にテープにコピーされます。テープ・ハードウェアに直接接続できるよう、Recovery Applianceには、テープ・バックアップのソフトウェアが事前にインストールされており、オプションで、計算サーバーごとに16GBのファイバ・チャネル・カードもサポートされます。
データ保護のステータスをエンドツーエンドで把握しながら、このインフラストラクチャ全体を管理し、いつでも正常にデータをリカバリできます。主要な管理ツールは、Oracle Enterprise Manager Cloud ControlとRMANコマンド・インタフェースです。
Recovery Applianceは、計算サーバー、ストレージ・サーバーおよびネットワークに接続するためのネットワーク・コンポーネントで構成されています。Recovery Applianceは柔軟な構成が可能なため、必要なだけリソースを用意し、さらに必要になった場合には、追加して拡張できます。単一クラスタに最大18のフル・ラックを構成できます。
表1-1に、Recovery Appliance X6ラックのコンポーネントを示します。
表1-1 Recovery Appliance X6ラックのコンポーネント
数量 | コンポーネント |
---|---|
2 |
|
3から18 |
|
2 |
|
2 |
冗長15kVA PDU(単相または3相、高電圧または低電圧) |
1 |
|
2 |
表1-2に、Recovery Appliance X5ラックのコンポーネントを示します。
表1-2 Recovery Appliance X5ラックのコンポーネント
数量 | コンポーネント |
---|---|
2 |
|
3から18 |
|
2 |
|
2 |
冗長15kVA PDU(単相または3相、高電圧または低電圧) |
1 |
|
2 |
表1-3に、Recovery Appliance X4ラックのコンポーネントをリストします。
表1-4に、Oracle Server X6-2計算サーバーのコンポーネントを示します。
表1-4 Oracle Server X6-2のコンポーネント
数量 | 説明 |
---|---|
2 |
22コア・インテルXeon E5-2699 v4プロセッサ(2.2GHz) |
8 |
32GB RAM (合計256GB) |
4 |
600GB 10K RPM SASディスク |
1 |
ディスク・コントローラHBA (1GBのスーパーキャップバックアップ式ライト・キャッシュを搭載) |
2 |
InfiniBand 4X QDR (40Gb/s)ポート(1個のデュアル・ポートPCIe 3.0ホスト・チャネル・アダプタ(HCA)) |
4 |
1GbE/10GbE Base-Tイーサネット・ポート |
2 |
10GbEイーサネットSFP+ポート(Intel 82599 10GbEコントローラ・テクノロジに基づいた1個のデュアル・ポート10GbE PCIe 2.0ネットワーク・カード) |
1 |
イーサネット・ポート(Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM)のリモート管理用) |
1 |
16GBデュアル・ポートQLogic PCIe 3.0 HBAカード(オプション) |
表1-5に、Oracle Server X5-2計算サーバーのコンポーネントをリストします。
表1-5 Oracle Server X5-2のコンポーネント
数量 | 説明 |
---|---|
2 |
18コア・インテルXeon E5-2699 v3プロセッサ(2.3GHz) |
8 |
32GB RAM (合計256GB) |
4 |
600GB 10K RPM SASディスク |
1 |
ディスク・コントローラHBA (1GBのスーパーキャップバックアップ式ライト・キャッシュを搭載) |
2 |
InfiniBand 4X QDR (40Gb/s)ポート(1個のデュアル・ポートPCIe 3.0ホスト・チャネル・アダプタ(HCA)) |
4 |
1GbE/10GbE Base-Tイーサネット・ポート |
2 |
10GbEイーサネットSFP+ポート(Intel 82599 10GbEコントローラ・テクノロジに基づいた1個のデュアル・ポート10GbE PCIe 2.0ネットワーク・カード) |
1 |
イーサネット・ポート(Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM)のリモート管理用) |
1 |
16GBデュアル・ポートQLogic PCIe 3.0 HBAカード(オプション) |
表1-6に、Sun Server X4-2計算サーバーのコンポーネントをリストします。
表1-6 Sun Server X4-2のコンポーネント
数量 | 説明 |
---|---|
2 |
12コア・インテルXeon E5-2697 v2プロセッサ(2.7GHz) |
16 |
16GB RAM (合計256) |
4 |
600GB 10K RPM SASディスク |
1 |
ディスク・コントローラHBA(512MBのバッテリバックアップ式ライト・キャッシュを搭載)およびスワップ可能なバッテリ・バックアップ・ユニット(BBU) |
2 |
InfiniBand 4X QDR (40Gb/s)ポート(1個のデュアル・ポートPCIe 3.0ホスト・チャネル・アダプタ(HCA)) |
4 |
1GbE/10GbE Base-Tイーサネット・ポート |
2 |
10GbEイーサネットSFP+ポート(Intel 82599 10GbEコントローラ・テクノロジに基づいた1個のデュアル・ポート10GbE PCIe 2.0ネットワーク・カード) |
1 |
イーサネット・ポート(Oracle Integrated Lights Out Manager (ILOM)のリモート管理用) |
1 |
16GBデュアル・ポートQLogic PCIe 3.0 HBAカード(オプション) |
表1-7に、Oracle Server X6-2Lストレージ・サーバーのコンポーネントをリストします。
表1-7 Oracle Server X6-2Lのコンポーネント
数量 | 説明 |
---|---|
2 |
10コア・インテルXeon CPU E5-2630 v4 (2.2GHz) |
8 |
16GB RAM (合計128GB RAM) |
12 |
8TB 7.2 K RPM大容量SASディスク |
4 |
3.2TB NVMe (Non-Volatile Memory Express) PCIe 3.0フラッシュ・アクセラレータ・カード |
1 |
ディスク・コントローラHBA (1GBのスーパーキャップバックアップ式ライト・キャッシュを搭載) |
2 |
InfiniBand 4X QDR (40Gb/s)ポート(PCIe 3.0)、両方ともアクティブ・ポート |
4 |
内蔵ギガビット・イーサネット・ポート |
1 |
イーサネット・ポート(ILOMのリモート管理用) |
表1-8に、Oracle Server X5-2Lストレージ・サーバーのコンポーネントをリストします。
表1-8 Oracle Server X5-2Lのコンポーネント
数量 | 説明 |
---|---|
2 |
8コア・インテルXeon CPU E5-2630 v3 (2.4GHz) |
4 4 |
8GB RAM 16GB RAM (合計96GB RAM) |
12 |
4TB 7.2 K RPM大容量SASディスク |
4 |
1.6TB NVMe (Non-Volatile Memory Express) PCIe 3.0フラッシュ・アクセラレータ・カード |
1 |
ディスク・コントローラHBA (1GBのスーパーキャップバックアップ式ライト・キャッシュを搭載) |
2 |
InfiniBand 4X QDR (40Gb/s)ポート(1個のデュアル・ポートPCIe 3.0ホスト・チャネル・アダプタ(HCA)) |
4 |
内蔵ギガビット・イーサネット・ポート |
1 |
イーサネット・ポート(ILOMのリモート管理用) |
表1-9に、Sun Server X4-2Lストレージ・サーバーのコンポーネントをリストします。
表1-9 Sun Server X4-2Lのコンポーネント
数量 | 説明 |
---|---|
2 |
シックスコア・インテルXeon E5-2630 v2プロセッサ(2.6GHz) |
4 4 |
8GB RAM 16GB RAM (合計96GB RAM) |
12 |
4TB 7.2K RPM大容量SASディスク |
4 |
800GBのSun Flash Accelerator F80 PCIeカード |
1 |
ディスク・コントローラHBA(512MBのバッテリバックアップ式ライト・キャッシュおよびスワップ可能なBBU搭載) |
2 |
InfiniBand 4X QDR (40Gb/s) InfiniBandポート(1個のデュアル・ポートPCIe 3.0ホスト・チャネル・アダプタ(HCA)) |
4 |
内蔵ギガビット・イーサネット・ポート |
1 |
イーサネット・ポート(ILOMのリモート管理用) |
Recovery Appliance X6の予備のキットには、次のコンポーネントがあります。
1台の8TB 7.2K RPM大容量SASディスク
大容量ストレージ・サーバー専用の1枚のフラッシュ・アクセラレータF320 PCIeカード
ラック用の工具
Ciscoアクセサリ・アダプタおよびマニュアルの出荷キット
サーバーのマニュアル
Recovery Appliance X5の予備のキットには、次のコンポーネントがあります。
1台の4TB 7.2K RPM大容量SASディスク
大容量ストレージ・サーバー専用の1枚のフラッシュ・アクセラレータF160 PCIeカード
ラック用の工具
Ciscoアクセサリ・アダプタおよびマニュアルの出荷キット
サーバーのマニュアル
Recovery Appliance X4の予備のキットには、次のコンポーネントがあります。
1台の4TB 7.2K RPM大容量SASディスク
1枚の800GBのExadata Smart Flash Cacheカード
ラック用の工具
Ciscoアクセサリ・アダプタおよびマニュアルの出荷キット
サーバーのマニュアル
次の予備のケーブルは、Recovery Applianceラック内で結束されます。
3mのInfiniBandケーブル1または2本(ラックのサイズにより異なります)
青のイーサネット・ケーブル1本
赤のイーサネット・ケーブル1本
黒のイーサネット・ケーブル1本
ラックのドアとサイド・パネルを閉めるための鍵が、2本ずつ(2組)用意されています。
テープ・バックアップはオプションの機能です。オラクル社のテープ・システムと、サードパーティのテープ・システムを選択できます。
OracleのRecovery Applianceは、Oracleテープ・システムのインストールと構成をサポートします。Oracleテープ・システムへのバックアップ目的で、データ・センター内でRecovery Applianceをストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)に接続できます。
Recovery Applianceは、表1-10に記載されているものを含め、業界最高レベルのテープ・インフラストラクチャ・コンポーネントと連携するよう設計されています。
表1-10 オラクル社のテープ・システム・コンポーネント
コンポーネント | モデル | 注意 |
---|---|---|
オラクル社のテープ・ライブラリ |
SL150、SL3000、SL8500 |
ACSLS、ACSLS論理ライブラリ、FC-SCSI |
オラクル社のテープ・ドライブ |
T10000D、T10000C、LTO |
オラクル社の推奨ライブラリでは、すべてのインタフェースがサポートされています |
Automated Cartridge System Library Software (ACSLS) |
Automated Cartridge System Library Software (ACSLS) 8.x |
API、論理ライブラリ |
テープ暗号化 |
Oracle Key Manager (OKM) 2.3 |
エンタープライズ・キー管理の推奨キー管理。Recovery Applianceとシームレスに運用できます |
Recovery Applianceでは、Oracle Secure Backupのテープ管理ソフトウェアが、すぐに使用可能な状態でサポートされています。これには、次の利点があります。
Oracle Secure Backupは、Recovery Applianceのソフトウェア・インストールの一環としてデプロイおよび構成されます。
アップグレードは、Recovery Applianceのソフトウェア・アップグレードに含まれています。
テープ・バックアップにより、Recovery Applianceのメタデータが自動的に保護されます。
Oracle Secure Backupで、テープからの障害回復を自動化できます。
Oracle Secure Backupにより、ストレージの場所からテープにデータが直接コピーされます。
Oracle Secure Backupでは、InfiniBandとファイバ・チャネルのネットワークのみを使用することで、ローカルのテープ・パフォーマンスを高めています。テープ・バックアップが、IPネットワークに影響を与えることはありません。
Recovery Applianceでは、Recovery Applianceと互換性がある任意のサードパーティ(Oracle以外)のメディア管理ソフトウェアが、すぐに使用可能な状態でサポートされています。
Symantec NetBackupやHP Data Protectorなど、サードパーティ製メディア管理製品のクライアント・ソフトウェア・コンポーネントを計算サーバーにインストールできます。その後、10GbEネットワーク経由で、Recovery Applianceをクライアントとして構成できます。
Recovery Applianceのライセンス条件下では、計算ノードのファイバ・チャネル・インタフェースに接続してテープ・デバイスに直接(またはSAN経由で) Recovery ApplianceをバックアップできるのはOracle Secure Backupのみであるため、メディア・マネージャ・サーバー・コンポーネントをインストールできません。Oracle以外のメディア・マネージャ・ソフトウェアは、ネットワーク・クライアントとしてのみ構成されている必要があります。
次の点に注意してください。
Recovery Applianceのソフトウェア・アップグレードでは、クライアント・ソフトウェアやその構成が保存されません。
サードパーティのメディア・マネージャでは、Recovery Applianceのメタデータ保護がサポートされません。
Recovery Applianceにサードパーティ製のメディア・マネージャを構成する場合は、バックアップとリストアが想定どおりに機能し、Recovery Appliance RACクラスタのすべてのノードが使用されるように、構成を慎重に検証してください。
次の制限事項は、Recovery Applianceのソフトウェアおよびハードウェアの変更に適用されます。これらの制限事項に違反すると、保証およびサポートを受けられなくなる場合があります。
お客様は、My Oracle Supportノートに記載されている場合やOracleサポート・アナリストから明確に指示された場合を除き、Recovery Appliance計算サーバーの内部ソフトウェア・コンポーネントまたは内部構成を変更できません。これには、リスナーの変更または内部データベースへの追加、オペレーティング・システムまたはネットワーク構成ファイルの変更、カスタム・スクリプトのインストール、バックアップ場所のポーリングを除いたあらゆる目的のためのNFSマウントの作成、データベース・インスタンスの追加作成などのアクションが含まれます。
サードパーティ・ソフトウェア製品をアプライアンスにインストールすることはお薦めしませんが、My Oracle Supportノート2014361.1に記述されている条件のもとであればインストールは可能です。
お客様は、計算サーバー上で「LANバックアップ・エージェント」モードでサードパーティのメディア管理製品のクライアント・ソフトウェア・コンポーネントをインストールできます。Oracle Secure Backupのみがファイバ・チャネル接続を介したテープへのリカバリ・アプライアンス・バックアップをサポートするため、お客様は、メディア・マネージャ・サーバー・ソフトウェア・コンポーネントをインストールできません。
追加のソフトウェアをロードすることや、ストレージ・サーバーにインストールされているソフトウェアを変更することはできません。
Oracle Enterprise Manager Ops Centerのエージェントはインストールできません。ただし、Recovery Applianceのソフトウェア・インストール・プロセスの一環として、Oracle Enterprise Manager Cloud Controlの管理エージェントを計算サーバーにインストールして、システムをモニターすることは可能です。
Recovery Applianceのハードウェアは変更またはカスタマイズできません。これには、2つの例外があります。Recovery Applianceは次の点に関して、ハードウェアの変更が許可されています。
Recovery Applianceに含まれている管理用の48ポートCiscoギガビット・イーサネット・スイッチに対する変更。お客様は、次の作業を選択できます。
ギガビット・イーサネット・スイッチを、内部データ・センターのネットワーク標準に準拠した同等の1U 48ポートのギガビット・イーサネット・スイッチと自費で交換します。Recovery Applianceの到着後に、お客様が自費で交換する必要があります。お客様がこの変更を選択する場合、多くのシナリオが考えられるため、Oracleでは変更および変更のサポートを行うことができません。また、これは標準インストールに含まれていません。お客様が交換するハードウェアを調達し、他の手段でこの変更を行う必要があります。
Ciscoイーサネット・スイッチに接続されているCAT5ケーブルを取り外して、外部スイッチまたはパッチ・パネルでお客様のネットワークに接続します。お客様の作業および負担で、これらの変更を行う必要があります。この場合、ラックのCiscoイーサネット・スイッチの電源を切断して、データ・センター・ネットワークからの接続を解除します。
Recovery Applianceへのクライアント・アクセス・ネットワーク・スイッチの追加。ネットワーク・スイッチに次の制限が適用されます。
最大2台のクライアント・アクセス・ネットワーク・スイッチをラックに設置できます。
スイッチの高さは、1ラック・ユニット(RU)である必要があります。
空気は、ラックの前面からラックの背面に流れるようにする必要があります。
スイッチは、ラック・スロットU41またはU42に設置する必要があります。
消費電力は、各スイッチで400ワット未満である必要があります。
パワー・オーバー・イーサネット(PoE)機能(該当する場合)はこれらのスイッチで使用しないでください。
Ciscoギガビット・イーサネット・スイッチ上でIOSおよびファームウェアのバージョンを更新し、データ・センターの要件を満たすことができます。
計算サーバーのコンポーネントのファームウェアを更新するには、オラクル社が提供するパッチ・バンドルを適用する必要があります。
My Oracle Supportノート1927416.1とその関連ノートに記載された検証済バージョンに準拠している場合、InfiniBandスイッチのファームウェアを更新できます。