この項では、Oracle Application Expressのインストールの概要を示し、インストール前に考慮する問題について説明します。
この項では、Oracle Application Expressのインストール・プロセスの概要を説明します。
インストール・プロセスには次のステップが含まれます。
インストールの計画: 計画フェーズでは、完全開発環境とランタイム環境のいずれをインストールするかを決定する必要があります。完全開発環境では、アプリケーションを開発するためにアプリケーション・ビルダー開発環境に完全にアクセスできます。変更できないアプリケーションを実行する本番実装に対しては、ランタイム環境を選択することをお薦めします。
使用するWebリスナーも決める必要があります。使用可能なオプションには、Oracle REST Data Services、埋込みPL/SQLゲートウェイまたはOracle HTTP Serverとmod_plsql
があります。
インストール要件の確認: ソフトウェアをインストールするために満たす必要がある最小のシステム要件については、「Oracle Application Expressのインストールの要件」を参照してください。
ソフトウェアのインストール: 必要なインストール・ステップは、使用するWebリスナーによって異なります。
パッチ・セットは、完全にテストおよび統合された製品の修正を配布するためのメカニズムです。パッチ・セットが提供するのは不具合の修正のみです。パッチ・セットは通常、新機能は含まず、ターゲット・システムでの認定は必要ありません。パッチ・セットには、セット内の不具合の修正を実装するために再ビルドされたすべてのライブラリが含まれます。パッチ・セット内の修正はすべてテスト済であり、相互に連携して機能することが保証されています。
製品のメジャー・リリースとメジャー・リリースの間に、ポイント・リリースを提供することがあります。ポイント・リリース(たとえば、Oracle Application Expressリリース4.2.5)には不具合の修正が含まれ、現在のすべてのパッチ・セットが統合されます。通常、ポイント・リリースでは、新しい機能は導入されません。
Application Expressエンジンは、多数のOracle表と、独自のバージョン固有のスキーマ内に存在する何千行ものPL/SQLプログラムから構成されています。Oracle Application Expressの各リリースで、このスキーマには、表1-1に示した固有の名前があります。
Oracle Application Expressを初めてインストールするか、以前のリリースから更新するかにかかわらず、同じインストール手順を使用して、同じファイルをOTNからダウンロードします。インストール・スクリプトは最新の既存のOracle Application Expressスキーマを確認し、インスタンス・メタデータ、ワークスペースおよびアプリケーションを、以前のスキーマから現在のスキーマに自動的にコピーします。以前のリリースに関連付けられた元のスキーマは、完全に不変に保たれます。ベスト・プラクティスに従って、新しいリリースのOracle Application Expressには新しい表領域を作成し、このドキュメントで示す適切なインストール手順に従うようお薦めします。
リリース1.5.x、1.6.x、2.0.x、2.2.x、3.0.x、3.1.x、3.2.x、4.0x、4.1xまたは4.2xのOracle Application Expressをご使用の場合は、このマニュアルに記載されているどのインストール例に従っても、Oracle Application Expressインスタンスがリリース5.0にアップグレードされ、新しいスキーマにOracle Application Express 5.0のデータベース・オブジェクトが作成され、アプリケーションのメタデータが新しいリリースに移行されます。この項では、アップグレード・プロセスに関連するその他の情報を説明します。
パッチ・セットとポイント・リリースは、My Oracle Supportからダウンロードできます。表1-2に、一般的なアップグレード・シナリオをリストします。
表1-2 サンプル・アップグレード・シナリオ
アップグレード・シナリオ | アクション |
---|---|
以前のOracle Application Expressリリースからのアップグレード |
「ダウンロード」ページから最新のファイルをダウンロードします。 |
Oracle Application Expressのメジャー・リリースからポイント・リリースへのアップグレード。 |
My Oracle Supportからポイント・リリースをダウンロードします。 |
Oracle Application Expressリリース4.2をデフォルトで含むOracle Database 12cのインストール。 |
「ダウンロード」ページから最新のファイルをダウンロードします。 |
Oracle Application Expressのどのリリースを現在実行しているかを判定するには、次のステップを実行します。
Oracle Application Expressにサインインします。
ワークスペースのホームページが表示されます。
現在のリリース・バージョンが右下隅に表示されます。
Application Expressのバージョン情報ページを表示するには、次の手順を実行します。
ページの最上部にあるヘルプ・メニューを見つけます。
「ヘルプ」メニューから「バージョン情報」を選択します。
Application Expressのバージョン情報ページが表示されます。
Oracle Application Expressの新しいリリースをインストールすると、インストール・プロセスにより、既存のアプリケーションが最新のリリースに更新されます。アップグレード・プロセスは、アプリケーション・ユーザー・インタフェースやアプリケーション・コンポーネントを変更しないように設計されています。結果として、ユーザー・インタフェースに影響する可能性があるアプリケーション・コンポーネントは、アップグレード・プロセスでは変更されません。これらのコンポーネントを手動で検討し、更新する、または現状のまま残すのは、開発者の担当範囲です。既存の機能に影響を与える場合があるコンポーネントの例には、対話モード・レポート、チャート、一部の検証などに追加された新しい機能などがあります。
ヒント: カスタムXMLを使用するチャートは手動で更新する必要があります。そうしない場合、カスタムXMLは失われます。 |
参照: 『Oracle Application Expressアプリケーション・ビルダー・ユーザーズ・ガイド』のアプリケーションの整合性をチェックするアドバイザの実行に関する項 |
各アプリケーション内では、「アプリケーション定義」で互換性モードを指定することもできます。アプリケーション互換性モードを変更すると、一部のランタイム動作も変更されます。互換性モード・オプションには、「4.1前」、「4.1」、「4.2」、および「5.0」などがあります。
参照: 『Oracle Application Expressリリース・ノート』の互換性モードに関する項、および『Oracle Application Expressアプリケーション・ビルダー・ユーザーズ・ガイド』のアプリケーション属性の編集に関する項、プロパティに関する項 |
Oracle Application Expressアップグレード時の、適切な回帰テストの量の判定は、アップグレードするアプリケーションの複雑さ、サイズおよび数に依存します。複雑なページ、特に大きなJavaScriptや、広範なPL/SQLの計算またはプロセスを統合しているページの大部分を含める必要があります。開発者は、「アプリケーションのアップグレード」または「アドバイザ」に基づいて手動で更新するページが回帰テストにも含まれていることを確認する必要があります。残りのページをすべて回帰テストに含める必要はありません。レポート、チャートおよびフォームを含む様々なページ・タイプを適切に代表する内容を含めることをお薦めします。アプリケーションの互換性モードがアップグレード後に変更された場合は、必ず回帰テストに含める必要があります。
エンド・ユーザーが中断されるリスクを最小にするにはアップグレードされたアプリケーションの回帰テストは必須ですが、長期間かからないようにすることが重要です。一般原則:
ステップ1: 先に開発環境をアップグレードします。開発者がアプリケーションを検討して、必要に応じて初期更新できるようにします。
ステップ2: QA/テスト環境をアップグレードします。
ステップ3: アプリケーションを、この環境に組み込まれた開発からアップグレードします。
手順4: 本番環境をアップグレードします。
ステップ5: アップグレードされたアプリケーションをこの環境に組み込みます。
すべての環境で最新リリースへのOracle Application Expressのアップグレードが成功したら、環境をクリーンアップする必要があります。新しいリリースでの開発を開始したら、以前のリリースに関連付けられたOracle Application Expressスキーマは削除できます。
以前のリリースが別の表領域にインストールされた場合、固有の表領域を単純に削除できます。以前のOracle Application Expressスキーマは、数週間残してから、開発、テストおよび本番環境から削除することをお薦めします。このクリーンアップ・プロセスによりディスク領域が解放され、SQL DeveloperやSQL*Plusなどのツールを使用して古いスキーマにアクセスするユーザーをゼロにできます。
実行するためには、Oracle Application ExpressにOracle REST Data Services、Oracle HTTP Serverおよびmod_plsql
または埋込みPL/SQLゲートウェイへのアクセス権が必要です。
Oracle Application Expressは、Oracle Database内に格納されたメタデータを使用してページが動的に生成される簡素なアーキテクチャを使用します。コード生成やファイル・ベースのコンパイルはありません。完全にインストールされると、開発者とエンド・ユーザーがOracle Application ExpressにアクセスするためのUniform Resource Locator (URL)が定義されます。ユーザーに必要なのは、Webブラウザと必要なURLのみです。追加クライアント・ソフトウェアは必要ありません。
Webリスナーは、データベースに格納されたプロシージャ・コールへのブラウザ・リクエストをマップすることにより、Webブラウザと、Oracleデータベース内のOracle Application Expressオブジェクトと間の通信ブローカとして機能します。Webリスナーには3つの選択肢があります。
Oracle REST Data Services(旧称Oracle Application Expressリスナー)。「Oracle REST Data Servicesについて」を参照してください。
Oracle HTTP Server。「Oracle HTTP Serverおよびmod_plsqlについて」を参照してください。
埋込みPL/SQLゲートウェイ。「埋込みPL/SQLゲートウェイについて」を参照してください。
Oracle REST Data Services(旧称Oracle Application Expressリスナー)はJavaベースで、サポートされている任意のJ2EE準拠Webサーバーにインストールでき、Oracle Application Expressと併用する場合の優先オプションです。Oracle WebLogic Server、Oracle Glassfish ServerおよびApache Tomcatに対して完全にサポートされている無料のツールです。Oracle REST Data Servicesは、Oracle Database Cloud Serviceを運用するために使用される参照アーキテクチャの一部です。
注意: Oracle WebLogic ServerとOracle Glassfish Enterprise Editionに関連付けられたライセンス・コストがあります。Oracle Glassfish Community Editionには有償オプションはありません。 |
Oracle REST Data Servicesを使用する、次から構成されたアーキテクチャが作成されます。
Webブラウザ
Oracle REST Data Services
Oracle Application Expressを含むOracle Database
このアーキテクチャの大きな利点は、中間層とデータベース層の分離です。
ヒント: このアーキテクチャは、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)環境に適しています。「Oracle RAC環境でのWebリスナーの選択」を参照してください。 |
参照: 「Webリスナーの要件」、『Oracle Application Expressアプリケーション・ビルダー・ユーザーズ・ガイド』の、Oracle REST Data ServicesとOracle Application Expressの構成に関する項、および「Application ExpressのインストールとOracle REST Data Servicesの構成」 |
注意: Oracle HTTP Server 12c (12.1.3)では、mod_plsql は非推奨となっています。詳細は、My Oracle Supportのノート1576588.1を参照してください。かわりに、Oracle REST Data Servicesを使用することをお薦めします。「Oracle REST Data Servicesについて」を参照してください。 |
mod_plsql
を使用するOracle HTTP Server (Apache)は、データベースと同じ物理マシン上にも、別の物理マシン上にも配置できます。Oracle HTTP Serverがデータベースと同じ物理マシン上にインストールされている場合、Oracle HTTP Serverは、Oracle Databaseライセンスに含まれる限定使用ライセンスの一部として含まれます。それ以外の場合は、別個のOracle HTTP Serverライセンスを取得する必要があります。
Oracle HTTP Server (Apache)をmod_plsql
とともに使用すると、次のもので構成されたアーキテクチャが作成されます。
Webブラウザ
Oracle HTTP Serverとmod_plsql
Oracle Application Expressを含むOracle Database
このアーキテクチャでは、中間層とデータベース層が分離されます。
ヒント: このアーキテクチャは、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)環境に適しています。「Oracle RAC環境でのWebリスナーの選択」を参照してください。 |
参照: 「Webリスナーの要件」、『Oracle Application Expressアプリケーション・ビルダー・ユーザーズ・ガイド』の、mod_plsqlを伴うOracle HTTP ServerとOracle Application Expressの構成に関する項、および「Application ExpressのインストールとOracle HTTP Serverの構成」 |
Oracle HTTP Serverの使用時にイメージが格納される場所
Oracle HTTP ServerまたはOracle Application Server構成では、imagesはファイル・システム上の別名/i/
で参照される場所に格納されています。以前のリリースからOracle Application Expressをアップグレードする場合は、次のファイルを確認してテキスト別名/i/
を検索することで、ファイル・システム上でimagesディレクトリを特定できます。
Oracle9iリリース2で配布されたOracle HTTP Serverの場合: httpd.conf
ファイルを確認します。
Oracle Application Server 10gの場合: marvel.conf
またはdads.conf
ファイルを確認します。
Oracle Database 11gまたは12cで配布されたOracle HTTP Serverの場合: marvel.conf
またはdads.conf
ファイルを確認します。
テキスト別名/i/
を見つけるための具体例は、「イメージ・ディレクトリのコピー」にあります。
Oracle XML DBプロトコル・サーバーおよび埋込みPL/SQLゲートウェイは、Oracle Databaseとともにインストールされます。Webサーバーを使用したOracle Database、さらに動的なアプリケーションの作成に必要なインフラストラクチャを利用できます。埋込みPL/SQLゲートウェイは、Oracle DatabaseのOracle XML DB Protocol Serverで実行され、mod_plsql
のコア機能を含みます。
埋込みPL/SQLゲートウェイは、WebブラウザおよびOracle Database(埋込みPL/SQLゲートウェイとOracle Application Expressを含む)の単純な2層アーキテクチャで構成されます。
埋込みPL/SQLゲートウェイの利点は次のとおりです。
構成が容易
データベースに含まれている
別のサーバーをインストールする必要がない
埋込みPL/SQLゲートウェイの使用時にイメージが格納される場所
埋込みPL/SQLゲートウェイを使用してOracle Application Expressを実行する場合、イメージは、Oracle XML DBリポジトリ内のデータベースに直接格納されます。imagesにアクセスするには、Oracle XML DBのWebDAV機能またはFTPを使用します。詳細は、『Oracle XML DB開発者ガイド』のプロトコルによるリポジトリへのアクセスに関する説明を参照してください。
表1-3「Webリスナーの比較」では、Oracle Application ExpressのWebリスナー・オプションを比較しています。
表1-3 Webリスナーの比較
機能 | Oracle REST Data Services | Oracle HTTP Serverとmod_plsql |
埋込みPL/SQLゲートウェイ |
---|---|---|---|
イメージの場所 |
ファイル・システム |
ファイル・システム |
データベース内 |
構成オプション |
GUIインタフェース(リリース2.0.3以降)、「管理」ページ |
データベース・アクセス記述子(DAD) |
データベース初期化パラメータ |
接続プール設定 |
JDBCパラメータ |
Min/MaxSpareServers; MaxClients |
SHARED_SERVERS; MAX_SHARED_SERVERS |
RESTful Webサービスの生成 |
はい(リリース2.0.3以降) |
× |
× |
複数データベースのサポート |
はい(Oracle RACを含む) |
はい(Oracle RACを含む) |
× |
ウィルス・スキャン・ファイル |
はい(ICAPサーバーに統合) |
× |
× |
PDFの印刷 |
はい。FOPサポートあり |
× |
いいえ |
推奨環境 |
すべて |
すべて |
開発のみ |
埋込みPL/SQLゲートウェイは、Oracle XML DB HTTPリスナーの一部としてデータベースで実行されます。Oracle XML DB HTTPリスナーおよび埋込みPL/SQLゲートウェイには、Oracle HTTP Serverおよびmod_plsql
と同等の主要機能があります。HTTPリスナーはOracle Application Expressがインストールされているデータベースと同じデータベースで実行されるため、データベースから分離できません。このため、インターネット上で実行されるアプリケーションに埋込みPL/SQLゲートウェイを使用することはお薦めしません。また、埋込みPL/SQLゲートウェイでは、Oracle REST Data ServicesやOracle HTTP Serverのような構成の柔軟性および詳細なロギングは提供されません。
Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)環境でOracle Application Expressを実行する場合、Oracle REST Data ServicesまたはOracle HTTP Serverとmod_plsql
を使用することをお薦めします。Oracle REST Data ServicesまたはOracle HTTP Serverとmod_plsql
では、1つのHTTP Serverがすべてのノードにアクセスできるように、サーバー名形式で接続を指定することができます。
Oracle RAC環境には埋込みPL/SQLゲートウェイ・オプションを選択しないことをお薦めします。埋込みPL/SQLゲートウェイではデータベース・インスタンスに組み込まれたHTTPサーバーを使用するため、Oracle RAC共有アーキテクチャを活用できません。
あらゆるソフトウェア開発のライフ・サイクルと同様に、開発、テスト/QAおよび本番用の環境は別々にするよう、強くお薦めします。Oracle Application Expressでは、テストおよび本番インスタンス用にOracle Application Expressのランタイム・バージョンのみをインストールする機能がサポートされています。このランタイム環境により、インストールするフットプリントと権限を最小限に抑えることができます。また、ランタイム・インスタンスでは開発者が本番アプリケーションを不注意で更新することが避けられるため、アプリケーションのセキュリティが向上します。
Oracle Application Expressランタイム環境では、本番アプリケーションは実行できますが、管理用のWebインタフェースは提供されません。ランタイム環境に含まれるのは、アプリケーションの実行に必要なパッケージのみです。このため、ランタイム環境はより堅牢な環境となります。Oracle Application Expressランタイム環境は、SQL*PlusまたはSQL DeveloperおよびAPEX_INSTANCE_ADMIN
APIを使用して管理します。詳細は、『Oracle Application Expressアプリケーション・ビルダー・ユーザーズ・ガイド』のApplication Expressのランタイム環境の優位性に関する項を参照してください。
既存のインスタンスに対して開発者インタフェースの削除または追加を行うスクリプトが提供されます。対応するインストールのタイプの詳細は、次のいずれかを参照してください。
関連項目: |