A 汚染物質の管理

この付録では汚染物質の管理について説明します。

環境汚染物質

テープライブラリ、テープドライブ、およびテープメディアは大気中に浮遊する微粒子によって損傷を受けやすいため、コンピュータ室の汚染物質レベルの管理はきわめて重要です。ほとんどの微粒子は 10 ミクロンよりも小さく、多くの状況下では裸眼で見ることができませんが、これらの微粒子は最大の被害をもたらす可能性があります。結果として、オペレーティング環境は次の要件に従う必要があります。

  • ISO 14644-1 クラス 8 環境。

  • 大気中に浮遊する微粒子の全質量を 1 立方メートルあたり 200 マイクログラム以下にする必要がある。

  • ANSI/ISA 71.04-1985 準拠の重要度レベル G1。

現在、Oracle では 1999 年に承認された ISO 14644-1 標準を必要としていますが、ISO 14644-1 の更新済みの標準が ISO 理事会で承認されると、それもすべて必要になります。ISO 14644-1 標準では、主として微粒子の量と大きさおよび適切な測定方法を重視していますが、微粒子の全体的な質量には取り組んでいません。結果として、コンピュータ室またはデータセンターで ISO 14644-1 仕様を満たすことができても、室内の特定タイプの微粒子のせいで引き続き装置が損傷を受けるので、全質量を制限するための要件も必要です。加えて、一部の大気中化学物質はさらに有害なため、ANSI/ISA 71.04-1985 仕様ではガス状汚染物質に取り組んでいます。3 つの要件はすべて、他の主要なテープストレージのベンダーが設定した要件と一致しています。

必要な大気質レベル

微粒子やガスなどの汚染物質は、コンピュータハードウェアの永続的な運用に影響を及ぼすことがあります。影響は、断続的な干渉から実際のコンポーネント障害まで多岐にわたる可能性があります。コンピュータ室は、高い清浄度レベルを達成するように設計されている必要があります。ハードウェアに与える潜在的な影響を最小限にできるように、大気中のほこり、ガス、および水蒸気を定義された制限の範囲内に保つ必要があります。

大気中に浮遊する微粒子のレベルを ISO 14644-1 クラス 8 環境の制限の範囲内に保つ必要があります。この標準では、大気中の浮遊微粒子の濃度に基づいてクリーンゾーンの大気質クラスを定義します。この標準では、微粒子の大きさがオフィス環境の標準空気に比べて 1 桁小さくなります。10 ミクロン以下の粒子は、数多く存在する傾向があるためにほとんどのデータ処理ハードウェアにとって有害であり、さらに損傷を受けやすい多数のコンポーネントの内部空気フィルタ処理システムを簡単に逃れることができます。コンピュータハードウェアがこれらのサブミクロン粒子に大量にさらされると、可動部分や損傷を受けやすい接合部分への脅威やコンポーネントの腐食によってシステムの信頼性が損なわれます。

また、特定のガスの濃度が過剰に高くなると、腐食が進み、電子部品が故障する可能性があります。ハードウェアが損傷を受けやすいこと、また適切なコンピュータ室の環境ではほぼ完全に空気が再循環していることの両方の理由で、ガス状汚染物質はコンピュータ室では特に関心の高い問題です。室内の汚染物質の脅威は、気流パターンの循環的性質によって増大します。よく換気されたサイトではあまり懸念されないほどのエクスポージャーでも、空気を再循環している部屋ではハードウェアを繰り返し攻撃します。また、コンピュータ室の環境が外的影響にさらされるのを防ぐ隔離によっても、室内の取り込まれずにいる有害な影響が増大する可能性があります。

電子部品に特に危険なガスには、塩素化合物、アンモニアとその誘導体、硫黄酸化物、および石油系炭化水素が含まれています。適切なハードウェアのエクスポージャーの限度を設けていない場合は、健全性のエクスポージャーの限度を使用する必要があります。

以降のセクションで ISO 14644-1 クラス 8 環境を維持するためのいくつかの最良事例について詳しく説明しますが、次の基本的な注意事項を守る必要があります。

  • この場所への飲食の持ち込みを禁止すること。

  • データセンターの清潔な場所に段ボール、木材、または梱包材を保管しないこと。

  • クレートやボックスから新しい機器を開梱するための個別の場所を特定すること。

  • データセンターで建設またはドリル作業を行う場合は、損傷を受けやすい機器と、特にその機器に向けられる空気をあらかじめ隔離すること。建設では、ISO 14644-1 クラス 8 基準を超える高レベルの微粒子が局所的に生成されます。特に乾式壁や石こうはストレージ装置に損傷を与えます。

汚染物質の特性と汚染源

室内の汚染物質はさまざまな形態を取ることがあり、数えきれないほどの汚染源から発生します。室内での機械的処理によって危険な汚染物質が生成されたり、静まっていた汚染物質がかき回されたりすることがあります。微粒子を汚染物質とみなすには、2 つの基本的な条件が満たされる必要があります。

  • ハードウェアに損傷を与える可能性がある物理特性を備えている。

  • 物理的な損傷が起こる可能性のある領域に移動できる。

    潜在的な汚染物質と実際の汚染物質の唯一の違いは時間と場所です。粒子物質は、それが大気中を浮遊している場合に損傷を与える可能性がある場所に移動する確率がもっとも高くなります。このため、大気中の粒子濃度はコンピュータ室の環境の質を判定するのに役立つ測定値となります。現地の状況によっては、1,000 ミクロンの大きさの粒子が大気中に浮遊するようになる可能性がありますが、その活動期間は非常に短く、ほとんどのフィルタ装置によって捕まります。損傷を受けやすいコンピュータハードウェアにとってサブミクロンの粒子ははるかに危険です。なぜなら、それらがかなり長期間にわたって浮遊し続けて、フィルタを逃れやすいからです。

オペレータの活動

コンピュータスペース内での人間の動きは、それ以外では清潔なコンピュータ室で、おそらく単一でもっとも大きな汚染源です。通常の動きによって、ふけや髪の毛などの組織片や衣類の布繊維が払い落とされる可能性があります。引き出しやハードウェアパネルの開閉または金属と金属を擦りあわせる動作によって金属の削りくずが生じる可能性があります。フロアを歩いて横切るだけで静まっていた汚染物質がかき回されて大気中を浮遊し、危険になる可能性があります。

ハードウェアの動き

ハードウェアの設置や再構成では、下張り床での作業がかなり多くなるため、静まっていた汚染物質がいとも簡単にかき乱されて、部屋のハードウェアへの供給空気流の中を浮遊するようになります。これは特に、下張り床のデッキが保護されていない場合に危険です。保護されていないコンクリートは、細かい粉じんを空気流に排出し、白華 (蒸発や静水圧によってデッキの表面に生じる無機塩類) の影響を受けやすくなります。

外気

管理された環境の外側から入ってくる空気のフィルタリングが不十分であると、数えきれないほどの汚染物質が取り込まれる可能性があります。ダクト工事でのフィルタ処理後の汚染物質は、空気流となって、ハードウェア環境に取り込まれる可能性があります。これは特に、下張り床のすき間が給気ダクトとして使用されている下降流方式の空調設備で重要です。構造上のデッキが汚染されている場合、またはコンクリート平板がふさがれていない場合は、微粒子物質 (コンクリートの粉じんや白華) が部屋のハードウェアに直接運ばれる可能性があります。

保管品

未使用のハードウェアや補給品の保管と取り扱いもまた汚染源となることがあります。段ボール箱や木製スキッドを移動したり、取り扱ったりすると、繊維が落ちます。保管品は汚染源であるだけではありません。コンピュータ室の管理された場所でそれらを取り扱うことで、室内にすでにある静まっていた汚染物質がかき回される可能性があります。

外的影響

負圧環境では、隣接したオフィス地域や建物の外装からの汚染物質がドアのすき間や壁の浸透によってコンピュータ室の環境に入り込める可能性があります。アンモニアやリン酸は農産加工に関連していることがよくあり、工業地域では数えきれない程の化学薬品が生じる可能性があります。そのような工業がデータセンター施設の近辺に存在する場合は、薬剤用のフィルタ処理が必要になることがあります。自動車の排ガス、地域の採石場や石造施設からの粉じん、または海霧からの潜在的な影響も、関連があれば評価するようにしてください。

清掃活動

不適切な清掃のやり方によっても環境が悪化することがあります。通常の、つまり「オフィス」での清掃に使用される多くの化学薬品は、損傷を受けやすいコンピュータ機器に損傷を与える可能性があります。潜在的に有害な化学物質 (概要については「清掃手順と洗浄装置」セクションを参照) は避けるようにしてください。これらの製品からのガス放出またはハードウェアコンポーネントとの直接の接触によって障害が発生する可能性があります。ビルのエアハンドラに使用されるいくつかの殺生物性処理剤もコンピュータ室での使用が不適切です。なぜなら、それらにコンポーネントに悪影響を及ぼす可能性のある化学物質が含まれているか、またはそれらが再循環方式の空調設備の空気流内で使用するように設計されていないからです。手押し式モップやフィルタ処理が不十分な電気掃除機の使用でも汚染物質が放出されます。

金属粒子、大気粉じん、溶媒蒸気、腐食ガス、ばい煙、飛散繊維、塩などの大気汚染物質がコンピュータ室の環境に入り込んだり、その中で生成されたりしないようにするための対策を講じることが不可欠です。ハードウェアのエクスポージャーの限度を設けていない場合は、OSHA、NIOSH、または ACGIH が提供する人間のエクスポージャーの限度を使用するようにしてください

汚染物質の影響

浮遊微粒子と電子計器の間で有害な相互作用が発生する方法はいくらでもあります。干渉方法は、クリティカルインシデントの時間と場所、汚染物質の物理特性、およびコンポーネントが配置されている環境によって異なります。

物理的干渉

張力が成分材料のそれよりも 10% 以上大きい硬質粒子は、粉砕作用や埋め込みによってコンポーネントの表面から材料をはがすことがあります。軟質粒子はコンポーネントの表面に損傷を与えることはありませんが、所々に溜まって適切な機能を妨げる可能性があります。これらの粒子に粘着性がある場合は、ほかの粒子物質を集める可能性があります。非常に小さな粒子でも、粘着性のある表面上に集まったり、帯電の結果として凝集したりすれば影響を与える可能性があります。

腐食障害

微粒子の本来備わっている組成が原因か、または微粒子による水蒸気やガス状汚染物質の吸収が原因で発生する腐食障害または間欠接触も損傷を与える可能性があります。汚染物質の化学組成がきわめて重要な場合があります。たとえば、塩は大気中の水蒸気を吸収して大きくなることができます (核生成)。損傷を受けやすい場所に無機塩類の堆積物が存在し、その環境に十分な湿気がある場合、それはメカニズムに物理的に干渉しうる大きさまで成長するか、または食塩水となって損傷を与える可能性があります。

漏電

伝導経路は、回路基板などのコンポーネント上の微粒子が堆積することで生じる可能性があります。もともと伝導性のある微粒子の種類はそれほど多くはありませんが、湿気の多い環境ではかなりの量の水を吸収できます。導電性のある微粒子が原因で発生した問題は、断続的な故障から実際のコンポーネント障害や運用上の障害まで多岐にわたる可能性があります。

熱による損傷

フィルタ付きデバイスの早期の目詰まりによって、空気流内に制約が生じて、内部のオーバーヒートやヘッドのクラッシュを引き起こす恐れがあります。ハードウェアコンポーネント上に何層にも堆積した大量のほこりもまた、絶縁層を形成して、熱に関連した障害を招く恐れがあります。

室内条件

データセンターの管理されたゾーン内の表面はすべて高い清浄度レベルに保つようにしてください。「清掃手順と洗浄装置」セクションの説明のとおり、訓練を受けた専門家が定期的にすべての表面を清掃するようにしてください。ハードウェアの下の部分、およびアクセスフロアのグリッドには特別な注意を払うようにしてください。ハードウェアの空気取り入れ口近くにある汚染物質は、損傷を与える恐れのある場所により簡単に運ばれる可能性があります。アクセスフロアのグリッド上に堆積した微粒子は、下張り床を利用するために床タイルが持ち上げられると大気中に強制的に運ばれる可能性があります。

下降流方式の空調設備での下張り床のすき間は、給気吹き出し口の役目を果たします。この部分は空調装置によって圧力がかけられ、空調された空気が穴の開いた床板を通してハードウェアスペースに取り込まれます。そのため、空調装置からハードウェアに移動するすべての空気は、最初に下張り床のすき間を通過する必要があります。給気吹き出し口の状態が不適切であると、ハードウェア領域の状態に劇的な影響を及ぼす可能性があります。

データセンター内の下張り床のすき間は、ケーブルやパイプを走らせるのに便利な場所としかみなされないことがよくあります。これはダクトでもあるため、二重床の下の状態を高い清浄度レベルに保つ必要があることを覚えておくことが重要です。汚染源には、劣化した建築資材、オペレータの活動、または管理されたゾーンの外側からの侵入が含まれることがあります。微粒子の堆積物が形成され、そこでケーブルなどの下張り床の部品がエアダムを作ることによって、微粒子が沈着し堆積することがよくあります。これらの部品を移動すると、その微粒子が供給空気流に再度取り込まれ、そこからハードウェアに直接運ばれる可能性があります。

損傷したか、または適切に保護されていない建築資材は、下張り床の汚染物質の汚染源になることがよくあります。保護されていないコンクリート、石積みブロック、しっくい、または石こうボードは時間とともに劣化して、微粒子を大気中に排出するようになります。フィルタ処理後の空調装置の表面や下張り床の部品の腐食も問題になることがあります。これらの汚染物質に対処するために、下張り床のすき間を定期的に十分かつ適切に除染する必要があります。除染処理には、HEPA (High Efficiency Particulate Air) フィルタを備えた電気掃除機のみを使用するようにしてください。フィルタ処理が不十分な電気掃除機では微粒子が捕まらず、それらはそのユニットを高速で通過して、大気中に強制的に放出されます。

保護されていないコンクリート、石積み、またはその他の同様の材料は持続的に劣化しやすくなります。建設中に通常使用される封止剤や硬化剤は、激しい通行量からデッキを保護したり、床材の適用に備えてデッキを準備したりするためのものであることが多く、給気吹き出し口の内表面には向いていません。定期的な除染は遊離した微粒子の対処には役立ちますが、表面は引き続き時間とともに劣化しやすいか、または下張り床での活動によって摩耗します。建設時に下張り床のすべての表面が適切に保護されるのが理想的です。そうでない場合は、オンライン室の表面に対処するために特別な予防措置が必要になります。

封止処理では適切な材料と方法のみを使用することがきわめて重要です。封止剤や手順が不適切であると、改善させるはずの状態が実際には悪化してしまい、ハードウェアの操作や信頼性に影響を及ぼす可能性があります。オンライン室の給気吹き出し口を封止する際には、次の予防措置を取るようにしてください。

  • 手動で封止剤を塗布します。オンラインのデータセンターではスプレーの適用はまったく適切ではありません。吹き付け処理は、封止剤が供給空気流に強制的に運ばれて、デッキにつながるケーブルを封止する可能性が高くなります。

  • 着色した封止剤を使用します。着色すると、封止剤の塗布されているところを目で確認できるようになり、すべての範囲に確実に塗布できます。また、時間とともに損傷を受けたり、露出したりする部分を特定するのにも役立ちます。

  • 対象となる領域の不規則なテクスチャーを効果的にカバーするために、また湿分移動や水分による損傷を最小限に抑えるために、高い柔軟性と低い多孔性を備えている必要があります。

  • 封止剤から有害な汚染物質が放出されることがあってはいけません。業界でよく使われる多くの封止剤は、高度にアンモニア処理されているか、またはハードウェアに害を及ぼす可能性のある他の化学物質が含まれています。このガス放出によって即座に破壊的な障害が発生するという可能性はきわめて低いですが、これらの化学物質がコンタクト、ヘッド、またはその他のコンポーネントの腐食の一因となることはよくあります。

オンラインのコンピュータ室で下張り床のデッキを効果的に封止することは細心の注意を要する非常に難しいタスクですが、適切な手順と材料を使用すれば、安全に行うことができます。天井のすき間を建物の空気システムの給気口または排気口として使用しないようにしてください。この部分は一般に汚れがひどく、掃除をするのが困難です。構造表面は繊維質の耐火材で覆われていることが多く、天井のタイルや断熱材も剥がれやすくなっています。フィルタ処理を行う前であっても、これは室内の環境状態に悪影響を及ぼす可能性がある不必要なエクスポージャーです。天井のすき間に圧力がかからないようにすることも重要です。これによって汚れた空気がコンピュータ室に強制的に送り込まれてしまうからです。下張り床と天井の両方に侵入のある支柱またはケーブルのみぞによって、天井のすき間に圧力がかかる可能性があります。

エクスポージャーポイント

データセンター内の潜在的なすべてのエクスポージャーポイントに取り組んで、管理されたゾーンの外側から受ける潜在的な影響を最小限にするようにしてください。コンピュータ室の正圧は汚染物質の侵入を制限するのに役立ちますが、部屋の周囲に割れ目があれば、それを最小限にすることも重要です。環境が正しく維持されるようにするには、次のことを考慮するようにしてください。

  • すべてのドアがその枠にぴったりと合うようにします。

  • すき間を埋めるには、詰め物と横木を使用できます。

  • 誤作動の可能性がある場所では自動ドアを避けるようにしてください。別の制御方法として、カートを押している要員がドアを簡単に開けられるようにドアのトリガーをリモートで取り付けます。損傷を非常に受けやすい領域、またはデータセンターが望ましくない状態にさらされている場所では、従業員向けの仕掛けを設計して取り付けることを推奨することがあります。間に緩衝剤が入っている二重のドアセットは、外部の状態への直接的なエクスポージャーを制限するのに役立つことがあります。

  • データセンターと隣接する領域との間の侵入をすべて封印します。

  • コンピュータ室の天井または下張り床の吹き出し口を管理のゆるい隣接した領域と共有しないようにします。

フィルタ処理

フィルタ処理は、管理された環境で大気中の浮遊微粒子に対処する効果的な手段の 1 つです。データセンターで機能するすべてのエアハンドラが十分にフィルタリングされて、室内が適切な状態に保たれるようにすることが重要です。部屋の環境を管理する際に推奨される方法は、室内のプロセス冷却です。室内のプロセスクーラーは室内空気を再循環させます。ハードウェア領域からの空気は、それがフィルタリングされて冷却されるユニットに通されてから、下張り床の吹き出し口に取り込まれます。その吹き出し口に圧力がかけられ、調和空気が穴の開いたタイルを通して室内に強制的に送り込まれたあと、再調整のために空調装置に送り返されます。標準的なコンピュータ室のエアハンドラに関連する気流パターンと設計は、標準の快適な冷却用空調装置よりも換気率がはるかに高いため、空気はオフィス環境よりもかなり頻繁にフィルタリングされます。適切なフィルタ処理によって大量の微粒子を捕まえることができます。室内に設置されたフィルタ (再循環方式の空調装置) は、最低効率が 40% (集塵効率、ASHRAE 52.1 標準) になります。より高価なプライマリフィルタの寿命を延ばすためには、低品質の前置フィルタを設置するようにしてください。

換気または正圧のためにコンピュータ室の管理されたゾーンに取り込まれる空気は、最初に高性能フィルタを通過します。建物の外側にあるソースからの空気は、HEPA (High Efficiency Particulate Air) フィルタを使用して、99.97% (DOP Efficiency MILSTD-282) 以上の効率でフィルタ処理されるのが理想的です。高価な高性能フィルタは、より頻繁に取り替えられる何層もの前置フィルタによって保護するようにしてください。低品質の前置フィルタ (ASHRAE 集塵効率 20%) はプライマリ防衛線になります。次のフィルタバンクは、ASHRAE 集塵効率が 60 - 80% のひだ付きのタイプと袋タイプのフィルタから構成されます。

ASHRAE 52-76集塵効率 % 3.0 ミクロン 1.0 ミクロン 0.3 ミクロン
25-30 80 20 <5
60-65 93 50 20
80-85 99 90 50
90 >99 92 60
DOP 95 -- >99 95

低性能フィルタは、大気からサブミクロンの微粒子を除去する際はほぼ完全に効果がありません。使用するフィルタがエアハンドラに適切な大きさであることも重要です。フィルタパネルの周りのすき間によって、空気が空調装置を通過するときにフィルタを逃れる可能性があります。すき間や穴がある場合は、ステンレス鋼板やカスタムのフィルタアセンブリなどの適切な材料を使ってふさぐようにしてください。

正圧と換気

正圧と換気の要件に対応するためには、コンピュータ室のシステムの外側から空気を計画的に導入する必要があります。データセンターは、正圧を管理のゆるい周辺地域と関連付けて達成するように設計されています。より損傷を受けやすい領域の正圧は、部屋の周囲のちょっとした割れ目による汚染物質の侵入を制御する効果的な方法です。正圧システムは、コンピュータ室の汚染物質の侵入を最小限に抑えるため、データ処理センター内の出入り口などのアクセスポイントに空気の外向きの力がかかるように設計されています。最低限必要な空気のみが管理された環境に取り込まれます。複数の部屋があるデータセンターでは、もっとも損傷を受けやすい場所にもっとも高い圧力がかけられます。ただし、部屋に正圧をかけるために使用する空気が室内の環境状態に悪影響を及ぼさないことがきわめて重要です。コンピュータ室の外側から取り込まれる空気が適切にフィルタリングされ、許容できるパラメータの範囲内にあるように調整されることが不可欠です。空気の取り込みは最低限にするべきなので、これらのパラメータを目標としている部屋の状態よりも緩くできます。許容できる限界の正確な決定は、取り込まれる空気の量と、データセンターの環境への潜在的な影響に基づいています。

ほとんどのデータセンターではクローズドループ型の再循環方式の空調設備が使用されるため、部屋の占有者の換気要件を満たすのに最低限必要な量の空気を取り込む必要があります。通常、データセンターの領域の人口密度はかなり低いため、換気に必要な空気はごくわずかになります。多くの場合、正圧の実施に必要な空気は部屋の占有者を適応させるために必要なそれを超える可能性があります。通常、外気量は補給空気の 5% 未満で十分です (『ASHRAE Handbook: Applications』の第 17 章)。占有者 1 人またはワークステーション 1 台につき 15 CFM の外気量で部屋の換気ニーズに十分対応できます。

清掃手順と洗浄装置

完全に設計されたデータセンターであっても継続的な保守が必要になります。設計上の欠陥や妥協を含むデータセンターでは、目標の制限内に状態を保つために多大な努力が必要になる場合があります。ハードウェアの性能は、データセンターの高い清浄度レベルのニーズに貢献する重要な要素の 1 つです。

もう 1 つの考慮事項はオペレータの認識です。かなり高い清浄度レベルを保つことは、データセンター内に居る間の特別な要件や制限に関する占有者の意識レベルを高めます。データセンターの占有者または訪問者は、管理された環境に高い関心を持ち続け、それにふさわしい行動を取る傾向が強くなります。また、かなり高い清浄度レベルに保たれ、きちんとよく整理されたやり方で維持されている環境は、部屋の居住者や訪問者から敬意を払われます。顧客になる可能性のある人がその部屋を訪れると、部屋の全体の外観を、優秀さと高品質への総合的な取り組みとみなします。効果的な清掃スケジュールは、特別に設計された短期的および長期的なアクションで構成する必要があります。これらは次のように要約できます。

頻度
タスク
毎日のアクション ごみ捨て
週に 1 度のアクション アクセスフロアの保守 (掃除機と水を含ませたモップでのモップがけ)
3 か月に 1 度のアクション ハードウェアの除染

部屋の表面の除染

2 年に 1 度のアクション 下張り床のすき間の除染

空調設備の除染 (必要に応じて)


毎日のタスク

ここで説明する作業は、毎日捨てられるごみを部屋から取り除くことに重点を置いています。また、印刷室やオペレータの活動量がかなり多い部屋には毎日床に電気掃除機をかけることが必要になる場合があります。

週に 1 度のタスク

ここで説明する作業は、アクセスフロアシステムの保守に重点を置いています。1 週間の間に、アクセスフロアは溜まったほこりや傷で汚くなります。アクセスフロア全体に電気掃除機をかけ、水を含ませたモップで拭きます。どのような目的であっても、データセンターで使用するすべての電気掃除機には HEPA (High Efficiency Particulate Air) フィルタが装備されているようにしてください。フィルタが不十分な機器は小さい粒子を捕まえられないだけでなく、それらをかき回して、改善させるはずだった環境を悪化させます。モップの先端部や雑巾がごみを落とさない適切なデザインになっていることも重要です。

データセンター内で使用する洗剤がハードウェアを脅かすものであってはいけません。ハードウェアに損傷を与える可能性のある液剤には、次のような製品が含まれます。

  • アンモニア処理されている

  • 塩素系

  • リン酸塩系

  • 漂白剤が濃縮されている

  • 石油化学系

  • 床をはがすものや修繕するためのもの

適切な液剤であっても濃度が不適切だと損傷を与える可能性があるため、推奨される濃度で使用することも重要です。液剤は、プロジェクト全体を通じて良好な状態に保ち、過度の適用は避けるようにしてください。

3 か月に 1 度のタスク

3 か月に 1 度の作業は、ずっと詳細で包括的な除染スケジュールを必要とし、熟練したコンピュータ室の汚染管理の専門家によってのみ行われます。これらのアクションは、アクションのレベルと存在している汚染物質に基づいて 1 年間に 3 - 4 回行うようにします。戸棚、水平の出っ張り、ラック、棚、支援機材など、部屋のすべての表面を徹底的に除染します。高い出っ張り、照明器具、および一般にアクセスしやすい部分は、適宜処理したり、掃除機をかけたりします。

窓、ガラスの仕切り、ドアなどの垂直面を完全に処理します。表面除染プロセスでは、粒子吸収物質を含浸させた特殊な雑巾を使用します。これらの活動を行うときに一般的なぼろ切れや織布を使用しないでください。これらの活動中に化学薬品、ワックス、または溶剤を一切使用しないでください。

ハードウェアのすべての外面 (水平面と垂直面を含む) から沈着している汚染物質を取り除きます。ユニットの空気吸い込み口および吹き出し口の鉄板を同様に処理します。ユニットの操縦翼面は軽い圧縮空気を使用すれば除染できるので、この部分を拭き取らないでください。キーボードとライフセーフティーコントロールの清掃時にも特別な注意を払うようにしてください。ハードウェアのすべての表面の処理には、特殊加工を施された雑巾を使用します。モニターは、オプティカルクリーナと静電気が起きない布で処理します。静電放電 (ESD) 散逸性化学物質は腐食性があり、損傷を受けやすいほとんどのハードウェアに有害であるため、コンピュータハードウェア上でこの物質を一切使用しないようにしてください。コンピュータハードウェアは、静電気散逸性を受け入れるように十分に設計されているため、それ以上の処理は必要ありません。ハードウェアと部屋の表面の除染がすべて完全に終わったら、「週に 1 度のアクション」で詳述したように、アクセスフロアに HEPA 装備の掃除機をかけ、水を含ませたモップで拭きます。

2 年に 1 度のタスク

下張り床のすき間は、吹き出し口の表面の状態と汚染物質の溜まり具合に基づいて 18 - 24 か月ごとに除染するようにしてください。1 年の間に、下張り床のすき間ではかなりの量の活動が行われて、汚染物質が新たに蓄積されます。週に 1 度の床の上の清掃活動によって下張り床に溜まるほこりは大幅に減りますが、表面のほこりの一部は下張り床のすき間に入り込みます。下張り床はハードウェアの給気吹き出し口の役目を果たしているため、この部分を高い清浄度レベルに保つことが重要です。二次汚染を減らすために下張り床の除染処理は短時間で行うことが最善です。この処理の担当者は、ケーブルの接続と優先順位を判断できるように十分な訓練を受けています。下張り床のすき間のそれぞれのエクスポージャー部分を個別に検査して、ケーブルの取り扱いや移動が可能かどうか評価します。ケーブルの移動前に、すべてのツイストインおよびプラグイン接続を確認して、完全にはめ込みます。下張り床の活動はすべて、通気配分と床荷重を適切に考慮した上で行う必要があります。アクセスフロアの整合性と適切な湿度状態を維持するために、床組から外される床タイルの数は慎重に管理するようにしてください。ほとんどの場合、各作業班が一度に開くアクセスフロアは約 24 平方メートル (6 タイル) 以下になるようにします。アクセスフロアをサポートしているグリッドシステムも、まず遊離した破片を電気掃除機で除去し、次に堆積した残留物を湿ったスポンジで吸い取ることで完全に除染します。グリッドシステムを構成する金属の枠組みとしてゴムガスケットが存在する場合は、グリッドシステムから外し、同様に湿ったスポンジで掃除します。床緩衝材、床タイル、ケーブル、表面の損傷など、床のすき間の内部で発生した異常な状態はすべて書き留めて報告するようにしてください。

活動とプロセス

データセンターの隔離は、適切な状態を保つ上で欠かすことのできない要素の 1 つです。データセンターでは不必要な活動をすべて回避し、必要な要員しかアクセスできないようにします。偶発的な接触を避けるために、ツアーなどの周期的な活動を制限し、人の出入りをハードウェアから離れた場所に限定します。不必要なエクスポージャーを避けるために、室内で作業しているすべての要員 (派遣社員や清掃員を含む) に、ハードウェアのもっとも基本的な感度の訓練を受けさせます。データセンターの管理された場所を汚染物質が生じる活動から完全に隔離します。印刷室、仕分けチェック室、指令センターなどの機械または人間の高度な活動を伴う場所がデータセンターに直接接することがないようにします。これらの場所への入退出路によって入退出者が主要なデータセンター領域を通り抜ける必要がないようにします。