O メディア管理

この章では、異なる密度で記録された同じタイプのメディアを管理する方法と、古い密度で書き込まれたカートリッジと新しい密度で書き込まれたカートリッジとを区別する方法について説明します。

概要

この概要では、次の内容を理解できます。

  • 遭遇する可能性のある制限事項と問題

  • 異なる密度で同じメディアに記録するテープドライブの例

  • 推奨の解決方法

制限事項

既存のテープメディアを使用しながらより高い密度で記録する新しいテープドライブが導入される場合があります。これらの新しいドライブは、多くの場合、古い密度で記録されたテープを読み取れますが、古い密度で書き込むことはできません。古いテープドライブでは、高密度で読み取ることも書き込むこともできません。

このような制限のために、次の問題が発生することがあります。

  • 新しい密度で書き込まれたテープが古いドライブにマウントされたときに、古いドライブでこのテープを読み取ることができません。

  • ストレージ管理アプリケーションが、あとからファイルを追加することで、一部が使用されているテープに書き込もうとしたときに、新しいテープドライブで読み取れるが書き込めない密度とは異なる密度でテープが書き込まれていた場合、この書き込みは失敗します。

ライブラリ内に古いテープドライブと新しいテープドライブの両方が混在している場合は、メディアタイプが同じテープカートリッジを管理する必要があります。

次の例には、同じメディアに別々の密度で記録するテープドライブの組み合わせが示されています。

  • T10000A と T10000B のテープドライブで使用される T10000 メディア

    T10000B テープドライブは、T10000A と同じメディアを使用しますが、T10000A の倍の密度でデータを書き込みます。T10000B は、T10000A メディアを読み取り、T10000B 密度のデータの書き込みにそのメディアを再利用する (テープの先頭から書き込む) ことができますが、以前に書き込まれた T10000A メディアにデータを追加することはできません。

    T10000A ドライブは、T10000A 密度のデータを書き込むために T10000B カートリッジを再利用できますが、T10000B カートリッジに対してデータを読み取ることも、データを追加することもできません。

  • T9840A、T9840B、T9840C および T9840D のテープドライブで使用される 9840 メディア

    T9840A、T9840B、T9840C、T9840D のドライブの任意の組み合わせが存在する場合、次の理由から 9840 メディアを管理します。

    • T9840A と T9840B

      T9840A と T9840B のテープドライブは同じメディアを使用し、同じ密度で記録します。

    • T9840C

      T9840C は、T9840A および T9840B と同じメディアを使用しますが、倍の密度で記録します。

    • T9840D

      T9840D は、T9840C ドライブのほぼ倍の密度で書き込みます。

      T9840A、T9840B、T9840C、T9840D のドライブの任意の組み合わせが存在する場合、9840 メディアを管理します。

  • T9940A と T9940B のテープドライブで使用される 9940 メディア

    • T9940A

      T9940A ドライブは、単密度データの書き込みに T9940B カートリッジを再利用できますが、T9940B カートリッジに対してデータの読み取りも、データの追加も行えません。

    • T9940B

      T9940B テープドライブは、T9940A と同じメディアを使用しますが、T9940A の倍の密度でデータを書き込みます。T9940B は、T9940A メディアを読み取り、倍密度データの書き込み用にこのメディアを再利用できます。ただし、以前に書き込まれた T9940A カートリッジへのデータの追加はできません。

解決方法

ACSLS には、2 種類以上のドライブで書き込めるが記録密度に互換性がない一般的なメディアを管理するために使用できる複数のツールがあります。クライアントアプリケーションは、データの読み取り/追加の非互換性を管理するために、これらのツールを使用する必要があります。

ACS 内で、一般的なメディアに異なる密度で記録するドライブを管理する場合、次のいずれかの方法を使用します。

  • ACS 内のすべての古いドライブを同時に新しいドライブに交換する。

    これは、もっとも簡単でもっとも安全な方法です。この方法を使用して、異なる密度を使用したドライブの組み合わせの管理によって生じる問題を回避します。これを実施できない場合は、2 番目の項目で説明するように、徐々に古いドライブを新しいドライブに交換できます。

    注:

    古いドライブを新しいドライブに交換したあとで、古い記録密度で書き込まれたテープにファイルを追加しないでください。Veritas NetBackup では、これはテープを一時停止して行われます。
  • 徐々に古いドライブを新しいドライブに置き換える。

    この場合、異なる密度で記録された一般的なメディアを管理する必要が生じます。これは次のようにして行えます。

    • カートリッジが SL8500 および SL3000 ライブラリ内でマウント解除されるときに返される記録形式情報を使用してメディアを管理する。これについては、次のセクションで説明します。

    • 形式ごとに別々の ACSLS プールを作成する。

    • バックアップアプリケーション (Veritas NetBackup、Legato NetWorker、IBM Tivoli、CA BrightStor など) の機能を使用してメディアプールを管理する。

ACSLS によって報告される記録密度を使用した一般的なメディアの管理

最新のライブラリ内の最新のテープドライブからカートリッジをマウント解除するときに、カートリッジの記録形式が ACSLS に報告されます。ACSLS は記録形式をそのデータベースに保存します。display volume コマンドを使用して、この情報を表示できます。

記録形式は次の装置から報告されます。

  • ライブラリ:

    • SL3000

    • SL8500 (4.10 以降のファームウェア)

  • テープドライブ:

    • すべての T10000 テープドライブ (1.38 以降のファームウェア)

    • T9840A、T9840C および T9840D (T9840B を除くすべての T9840 テープドライブ) (1.4.2 以降のファームウェア)

    • T9940A および T9940B テープドライブ (1.4.2 以降のファームウェア)

次の例では、T10000A と T10000B の両方の形式で記録された T10000 メディアを管理する方法について説明します。次の表を使用して、自身の具体的な事例に手順を適用してください。

古い形式のドライブ
新しい形式のドライブ
T10000A T10000B
T9940A T9940B
T9840A/T9840B T9840C または T9840D
T9840C T9840D

注:

以降の説明では、コマンドおよびユーティリティーに次の構文規則を使用します。
  • そのまま入力されるコマンドとユーティリティーは太字で示されます。

  • 変数 (正しい値を入力する必要があります) は斜体で示されます。

手順

T10000B ドライブを取り付けたあとで、記録形式情報を使用して、互換性のあるテープドライブにカートリッジをマウントします。繰り返しになりますが、T10000A の密度で書き込まれたカートリッジは、T10000A ドライブまたは T10000B ドライブで読み取ることができますが、T10000A の形式で書き込まれたデータを追加できるのは T10000A ドライブだけです。T10000B ドライブだけが、T10000B 形式で書き込まれたカートリッジに対して読み取りや追加を行えます。

スクラッチカートリッジをマウントするときに特別な処理は必要ありません。テープの開始位置からカートリッジに書き込む場合は、以前の記録形式はどれでもかまいません。

データがすでに記録されているカートリッジに対して読み取りまたは追加を行うドライブを選択するには、この手順に従います。次のコマンドは、カートリッジの記録形式を読み取りおよび書き込みできるドライブを識別します。

非スクラッチカートリッジのマウント

  1. カートリッジの記録形式を表示します。

    display volume vol_id -f recording_format_family recording_format_model

    このボリュームの記録形式が表示されます。

  2. 次の query コマンドを使用して、互換性のあるドライブを識別します。

    query mount vol_id

    カートリッジと互換性のあるドライブが表示されます。

    • カートリッジをマウントする前に、正しいドライブタイプを選択します。

      この query コマンドでは、T10000A と T10000B の両方のドライブが返されます (どちらのドライブタイプも T10000 メディアと互換性があるため)。

    • ドライブタイプを使用して、T10000A と T10000B を区別します。

      リスト内の互換性のある最初のドライブを選択すると、パススルーが最小限に抑えられ、ライブラリのパフォーマンスが向上します。

  3. 次のコマンドを使用して、記録形式と互換性のあるドライブにカートリッジをマウントします。

    mount vol_id drive_id

新しい記録形式への移行

  • カートリッジ上のすべてのデータが期限切れになると、新しい記録形式でテープの開始位置からカートリッジに再度書き込むことができます。

    期限切れのカートリッジの詳細は、LSM の設定を参照してください。

  • すべての T10000A ドライブが T10000B ドライブに変換または交換されたあとで、T10000A 形式で書き込まれたカートリッジにデータが追加されていなければ、すべての T10000 メディアを T10000B ドライブで使用できます。

ACSLS プールを使用した、異なる密度で記録された一般的なメディアの管理

次の例では、T9940A と T9940B の両方の密度で記録された 9940 メディアを管理する方法について説明します。次の手順は、別々のテープドライブが異なる密度で一般的なメディアに記録するすべての場合に適用されます。次の表を使用して、自身の具体的な事例に手順を適用してください。

古い形式のドライブ
新しい形式のドライブ
T10000A T10000B
T9940A T9940B
T9840A/T9840B T9840C または T9840D
T9840C T9840D
SDLT 220 SDLT 320

手順

  1. ACS 内のすべての 9940 データ (非スクラッチ) カートリッジを特定し、それを T9940A プールに割り当てます。これは、T9940A ドライブを含む ACS 内に T9940B ドライブを取り付ける前に行なってください。

    これで、9940 スクラッチカートリッジを T9940A または T9940B プールに割り当てることができます。

    1. 次のコマンドを使用して、T9940A および T9940B のメディアプールを定義します。

      define pool pool_id

    2. すべての 9940 メディアを報告します。

      次に示すように、display volume コマンド (オプション 1) またはカスタムの volrpt (オプション 2) のどちらかを使用して、これを行えます。

      結果がファイルに書き込まれます。

      • オプション 1

        display volume コマンドを使用してファイルに結果を書き込みます。

        display volume * -media STK2P > filename

        ここでは:

        すべての 9940 テープカートリッジ (メディア STK2P) が報告されます。

        filename は、出力が書き込まれるファイル名です。カートリッジが配置されている ACS ID も一覧表示されます。

        必要に応じて特定の ACS からカートリッジを選択して、出力を読み取ります。

        1 つの ACS のカートリッジが必要な場合は、-home オペランドを使用して、この ACS のカートリッジだけを選択します。

        display volume * -home acs_id.*,*,*,* -media STK2P> filename

      • オプション 2

        ACS 内のすべてのボリュームに対してカスタムの volrpt を使用します。結果がファイルに書き込まれます。

        volrpt -d -f custom_volrpt_file -a acs_id > filename

        ここでは:

        custom_volrpt_file は、カスタムの volrpt で報告されるフィールドを指定したファイル名です。次のフィールドが報告されます。

        VOLUME_ID      6   2
        MEDIA_TYPE     7   2
        VOLUME_TYPE    4   2 
        

        acs_id は、管理している ACS の ID です。

        filename は、出力が書き込まれるファイル名です。

      メディアタイプが STK2P のボリュームだけを選択して、出力を読み取ります。

    3. 選択されたボリュームを、適切なプールに割り当てます。

      次のコマンドを使用して、すべての非スクラッチ (VOLUME_TYPE = D) カートリッジを T9940A プールに割り当てます。

      set scratch off pool_id vol_id
      

      次のコマンドを使用して、スクラッチカートリッジ (VOLUME_TYPE = S) を T9940A または T9940B のどちらかのプールに割り当てます。

      set scratch pool_id vol_id
      
  2. T9940B ドライブを取り付けたあとで、プールを使用して、互換性のあるテープドライブにカートリッジをマウントします。

    繰り返しになりますが、T9940A の記録密度で書き込まれたカートリッジは、T9940A ドライブまたは T9940B ドライブのどちらでも読み取ることができますが、9940A メディアにデータを追加できるのは T9940A ドライブだけです。T9940B ドライブだけが、9940B の記録密度で書き込まれたカートリッジに対して読み取りや追加を行えます。

    次のコマンドを使用して、T9940A または T9940B ドライブに適したプールからカートリッジを識別し、選択し、マウントできます。プールを使用して、確実に正しいドライブにカートリッジをマウントします。

    注:

    正しいドライブタイプにスクラッチカートリッジをマウントする場合は、手順 A に従います。データがすでに記録されている非スクラッチカートリッジをマウントする場合は、手順 B に従います。

    手順 A - スクラッチカートリッジのマウント

    1. ドライブに照会してドライブタイプを識別します。

      query drive drive_id | all  
      
    2. カートリッジを目的のドライブにマウントするために、正しいプール (メディアタイプ) を識別します。

    3. 指定のプールのドライブにスクラッチカートリッジをマウントします。

      mount * drive_id pool_id
      

    手順 B - 非スクラッチカートリッジのマウント

    1. カートリッジと互換性のあるドライブのステータスを表示します。

      display volume vol_id -f pool 
      

      このボリュームのプールが表示されます。

    2. 照会コマンドを使用して、互換性のあるドライブを特定します。

      query mount vol_id
      

      カートリッジと互換性のあるドライブが表示されます。

      カートリッジをマウントする前に、正しいドライブタイプを選択します。この照会コマンドでは、T9940A と T9940B の両方のドライブが返されます (どちらのドライブタイプも 9940 メディアと互換性があるため)。

      ドライブタイプを使用して、T9940A と T9940B を区別します。

    3. 選択したドライブにカートリッジをマウントします。

      mount vol_id drive_id
      
  3. カートリッジ上のすべてのデータが期限切れになると、スクラッチカートリッジを新しい記録密度のプールに移行できます。T9940A ドライブと T9940B ドライブはそれぞれの密度でカートリッジを再初期化できるため、スクラッチカートリッジを別のプールに再度割り当てることができます。

    set scratch pool_id vol_id
    
  4. すべての T9940A ドライブが T9940B ドライブに変換または交換されたあとで、データが T9940A 記録密度で書き込まれたカートリッジに追加されていなければ、すべての 9940 メディアを T9940B ドライブで使用できます。