4 計画外停止時間用Oracle Database高可用性ソリューション

Oracle Databaseは、可用性を高め、計画停止時間と計画外停止時間のいずれもゼロまたは最小限に抑える高可用性ソリューションの統合スイートを提供します。これらのソリューションは、企業が24時間年中無休でビジネスの継続性を維持する場合に役立ちます。一方で、Oracle高可用性ソリューションは、プライマリ・システムおよびセカンダリ・システムでのシステム使用効率を高め、パフォーマンス、スケーラビリティおよび管理性全体の向上を支援するソリューションを提供することにより、停止時間の短縮にとどまらない機能を実現します。

表4-1は、計画外停止時間に対する様々なOracle高可用性ソリューションの説明です。この表は、後続の項で説明する機能を使用して、計画外停止時間の様々な原因に対処する方法を示しています。いくつかのOracleソリューションがリストされている場合、MAA推奨ソリューションはOracleソリューション列に示しています。

表4-2は、MAA参照アーキテクチャおよびマルチテナント・アーキテクチャにおける、各MAAサービス・レベル層の高可用性ソリューションの説明です。

表4-1 計画外停止時間の停止タイプとOracle高可用性ソリューション

停止範囲 Oracleソリューション メリット

サイトの障害

Oracle Data Guard (MAA推奨)およびOracle Applicationフェイルオーバー・ソリューション

統合されたクライアントとアプリケーションのフェイルオーバー

最も高速で簡単なデータベースのレプリケーション

すべてのデータ型のサポート

伝播遅延の解消によるデータ損失ゼロ

プライマリの負荷をオフロードするためのOracle Active Data Guardの読取り専用サービス、グローバル一時表および順序でのDMLのサポート

Database In-Memoryのサポート

Oracle GoldenGate

柔軟な論理レプリケーション・ソリューション(ターゲットは読取り/書取りで開く)

アクティブ-アクティブな高可用性(競合解決を含む)

異機種プラットフォームおよび異機種データベースのサポート

Recovery ManagerZero Data Loss Recovery ApplianceおよびOracle Secure Backup

完全に管理されたデータベース・リカバリおよびOracle Secure Backupとの統合

リカバリ・アプライアンスは、バックアップにエンドツーエンドの保護を提供し、データベース復元のデータ損失を削減します。

非リアルタイム・リカバリ

インスタンスまたはコンピュータの障害

Oracle Real Application ClustersおよびOracle Clusterware(MAA推奨)

統合されたクライアントとアプリケーションのフェイルオーバー

障害が発生したノードとインスタンスの自動リカバリ

Oracle Real Application Clustersによる最小限のアプリケーション低下

Oracle RAC One Node

統合されたクライアントとアプリケーションのフェイルオーバー

オンライン・データベースの再配置による接続とインスタンスの別のノードへの移行

従来のコールド・フェイルオーバー・ソリューションよりも高いデータベースの可用性

Oracle Data Guard

統合されたクライアントとアプリケーションのフェイルオーバー

最も高速で簡単なデータベースのレプリケーション

すべてのデータ型のサポート

伝播遅延の解消によるデータ損失ゼロ

プライマリの負荷をオフロードするためのOracle Active Data Guardの読取り専用サービス、グローバル一時表および順序でのDMLのサポート

Database In-Memoryのサポート

Oracle GoldenGate

柔軟な論理レプリケーション・ソリューション(ターゲットは読取り/書取りで開く)

アクティブ-アクティブな高可用性(競合解決を含む)

異機種プラットフォームおよび異機種データベースのサポート

ストレージ障害

Oracle Automatic Storage Management(MAA推奨)

ミラー化およびオンライン自動リバランスによる、個別の障害グループへのデータの冗長コピーの配置。

Oracle Data Guard(MAA推奨)

統合されたクライアントとアプリケーションのフェイルオーバー

最も高速で簡単なデータベースのレプリケーション

すべてのデータ型のサポート

伝播遅延の解消によるデータ損失ゼロ

プライマリの負荷をオフロードするためのOracle Active Data Guardの読取り専用サービス、グローバル一時表および順序でのDMLのサポート

Database In-Memoryのサポート

高速リカバリ領域を使用するRecovery ManagerおよびZero Data Loss Recovery Appliance (MAA推奨)

完全に管理されたデータベース・リカバリとディスクおよびテープのバックアップ

Oracle GoldenGate

柔軟な論理レプリケーション・ソリューション(ターゲットは読取り/書取りで開く)

アクティブ-アクティブな高可用性(競合解決を含む)

異機種プラットフォームおよび異機種データベースのサポート

データ破損

破損の予防、検出および修復(MAA推奨)

DB_BLOCK_CHECKINGDB_BLOCK_CHECKSUMおよびDB_LOST_WRITE_PROTECTなどのデータベース初期化設定

様々なレベルのデータおよびREDOブロック破損予防とデータベース・レベルでの検出

データ破損

Oracle Data Guard(MAA推奨)

Oracle Active Data Guard自動ブロック修復

DB_LOST_WRITE_PROTECT初期化パラメータ

Oracle Active Data GuardスタンバイがあるData Guard構成では、プライマリ・データベースで検出された物理ブロック破損は、スタンバイから取得されたブロックの良好なコピーを使用して自動的に修復されます。修復は、ユーザーとアプリケーションに対して透過的です。

Oracle Active Data Guardを使用して、データ破損がデータベースから強力に分離されます。

MAAの推奨初期化設定では、Oracle Active Data GuardおよびOracle Exadata Database Machineで、最も包括的でフル・スタックの破損保護が実現されます。

DB_LOST_WRITE_PROTECTが有効化されている場合、プライマリ・データベースで発生した書込み欠落がフィジカル・スタンバイ・データベースによって、またはプライマリ・データベースのメディア・リカバリ時に検出されると、リカバリはデータベースの一貫性を保つために停止します。Data Guardを使用してスタンバイ・データベースにフェイルオーバーすると、データの一部が失われます。Oracle Database 12cリリース1 (12.1.0.2)およびData Guard Brokerでは、プライマリ・データベースで書込み欠落が検出された場合に、Data Guard BrokerのPrimaryLostWriteプロパティで、SHUTDOWNとCONTINUE (Oracle Database 11gリリース2 (11.2.0.4)と同様)の他に、FAILOVERとFORCEFAILOVERオプションもサポートされます。『Oracle Data Guard Broker』を参照してください

書込み欠落がスタンバイ・データベースで検出される場合、書込み欠落を分離させて、ハードウェアの問題を修正できれば、影響を受けたファイルをリストアして、REDO Applyを再起動できます。

DB_LOST_WRITE_PROTECT初期化パラメータでは、書込み欠落が検出されます。

注意: 書込み欠落はデータベース全体を破損する可能性があり、ハードウェアの問題を解決した後に、影響を受けたデータベースを再構築することが必要になります。

Database In-Memoryのサポート

Dbverify、Analyze、データ・リカバリ・アドバイザRecovery ManagerZero Data Loss Recovery Appliance、および高速リカバリ領域を使用するASM修正(MAA推奨)

これらのツールを使用すると、管理者が手動チェックを実行できるため、様々なデータ破損を検出し、可能な場合には修復できます。

DbverifyとAnalyzeでは、物理的ブロック・チェックおよび論理的ブロック内チェックが実行されます。Analyzeでは、オブジェクト間の一貫性チェックを実行できます。

データ・リカバリ・アドバイザでは、データ破損が自動的に検出され、最適なリカバリ計画が推奨されます。

RMAN操作では、物理チェックとブロック内論理チェックの両方を実行できます。

RMANでは、フラッシュバック・ログ、バックアップまたはスタンバイ・データベースを使用してオンライン・ブロックメディア・リカバリを実行して、物理ブロック破損からリカバリできます。

リカバリ・アプライアンスは、バックアップが有効であることを確認できる定期的なバックアップ検証を実行します。リカバリ・アプライアンスでは、リカバリ期間要件を入力し、それらのSLAがリカバリ・アプライアンスで管理される既存のバックアップで満たされない場合にアラートを受信できます。

ASM修正では、標準冗長性および高冗長性のディスク・グループ内のASMペアを使用して、物理的および論理的データ破損が検出され、修復が試行されます。

データ破損

Oracle Exadata Database MachineおよびOracle Automatic Storage Management(MAA推奨)

DIX + T10 DIF拡張(該当する場合はMAA推奨)

Oracle ASMでは、破損を検出し、良好なミラーがある場合、良好なブロックを返し、後続の書込みI/O中にその破損を修復

Exadataが、不正または誤った記憶域I/Oを原因とするデータ破損を防止する、暗黙のHARD対応チェックを提供。

Exadataでは、ハード・ディスク修正および修復が自動的に行われます。不良セクターの検出および修正。

DIX +T10 DIF拡張では、ベンダーのホスト・アダプタからストレージ・デバイスに対するチェックサム検証を通じて、読取りおよび書込みのエンドツーエンドのデータ整合性が保証されます

Oracle GoldenGate

柔軟な論理レプリケーション・ソリューション(ターゲットは読取り/書取りで開く)。パートナ・レプリカが破損している場合、フェイルオーバー・ターゲットとして論理レプリカを使用可能

アクティブ-アクティブな高可用性(競合解決を含む)

異機種プラットフォームおよび異機種データベースのサポート

人的エラー

Oracleセキュリティ機能 (MAA推奨)

人的エラーを防ぐためのアクセスの制限

Oracle Flashbackのテクノロジ(MAA推奨)

不適切な結果のファイングレイン・エラー調査

ファイングレインおよびデータベース全体の巻戻しとリカバリ機能

遅延または減速

Oracle DatabaseおよびOracle Enterprise Manager

Oracle Data Guard (MAA推奨)およびOracle Applicationフェイルオーバー・ソリューション

Oracle Databaseでは、インスタンスおよびデータベースの遅延またはクラスタの減速を自動的に監視し、ブロックしているプロセスまたはインスタンスを取り除いて、遅延の長期化や不要なノード削除を防ごうとします。

アプリケーションまたはレスポンス時間の減速を検出し、これらのSLA違反に対応するようにOracle Enterprise Managerまたはカスタマイズしたアプリケーションのハートビートを構成できます。たとえば、Enterprise Managerのビーコンを構成して、アプリケーションのレスポンス時間を監視および検出できます。一定のしきい値に到達すると、Enterprise ManagerによってData GuardのDBMS_DG.INITIATE_FS_FAILOVER PL/SQLプロシージャがコールされ、フェイルオーバーが開始されます。『Oracle Data Guard Broker』の、アプリケーションによって開始されるファスト・スタート・フェイルオーバーに関する項を参照してください。

Database In-Memoryのサポート

ファイル・システム・データ

データベース以外のファイルに対するOracleレプリケーション・テクノロジ

データベース以外のファイルを含むフル・スタック・フェイルオーバーの有効化

DBaaSで多くのデータベースを管理している場合は、「Oracle MAA参照アーキテクチャ」の説明に従ってMAA層とOracle Multitenantを使用することをお薦めします。表4-2に、マルチテナント・アーキテクチャ内のデータベースに影響する可能性のある様々な計画外停止を示します。また、HAの各層で使用可能なOracle HAソリューションで、その停止に対応するものも示します。

表4-2 MAA参照アーキテクチャおよびマルチテナント・アーキテクチャの計画外停止マトリックス

イベント MAA層ごとのソリューション リカバリ期間(RTO) データ消失(RPO)

インスタンス障害

BRONZE: Oracle Restart

インスタンスを再起動できる場合は数分

ゼロ

SILVER: Oracle RACまたはオプションでOracle RAC One Node

Oracle RACの場合は数秒、Oracle RAC One Nodeの場合は数分

ゼロ

GOLD: Oracle RAC

ゼロ

PLATINUM: Oracle RAC(アプリケーション・コンティニュイティ機能あり)

アプリケーションの停止なし

ゼロ

永続的なノード障害(ただし、ストレージは使用可能)

BRONZE: リストアおよびリカバリ

数時間から1日

ゼロ

SILVER: Oracle RAC

ゼロ

SILVER: Oracle RAC One Node

ゼロ

GOLD: Oracle RAC

ゼロ

PLATINUM: Oracle RAC(アプリケーション・コンティニュイティ機能あり)

アプリケーションの停止なし

ゼロ

ストレージ障害

すべて: Automatic Storage Management

停止時間ゼロ

ゼロ

データ破損

BRONZE/SILVER: 基本的な保護。一部の破損では、プラガブル・データベース(PDB)、マルチテナント・コンテナ・データベース(CDB)全体またはコンテナ以外のデータベース(非CDB)のリストアおよびリカバリの回復が必要

1時間から数日

リカバリ不能な場合は、最後のバックアップ以降

リカバリ・アプライアンスではゼロまたはゼロ付近

GOLD/PLATINUM: Oracle Active Data Guardによる包括的な破損保護および自動ブロック修復

自動ブロック修復によりゼロ

破損の原因が書込み欠落で、Data Guardファスト・スタート・フェイルオーバーを使用している場合は、数秒から数分。

破損の原因が書込み欠落でない場合はゼロ

人的エラー

すべて: 論理障害はフラッシュバック・ドロップ、フラッシュバック表、フラッシュバック・トランザクション、フラッシュバック問合せ、プラガブル・データベースのフラッシュバックおよびUNDOにより解決

検出時間による異なるが、それらのオブジェクトを使用してPDBやアプリケーションに分離。

論理障害により異なる

すべて: RMANポイント・イン・タイム・リカバリ(PDB)またはプラガブル・データベースのフラッシュバックを必要とするデータベースおよびPDB全体に影響を与える包括的な論理障害

検出時間により異なる

論理障害により異なる

GOLD/PLATINUM: Oracle GoldenGateを使用している場合は、1つのPDBのみのフェイルオーバーが可能

検出時間により異なるが、実際のフェイルオーバーは数秒

論理障害により異なる

データベース使用不可、システム障害、サイト障害、ストレージ障害、大規模な破損または災害

BRONZE/SILVER: リストアおよびリカバリ

数時間から数日

最後のバックアップ以降

リカバリ・アプライアンスではゼロまたはゼロ付近

GOLD: セカンダリへのフェイルオーバー(Oracle Active Data GuardまたはOracle GoldenGate)

ゼロからほぼゼロ

PLATINUM: Active Data Guardフェイルオーバー(アプリケーション・コンティニュイティ機能あり)

アプリケーションの停止なし

ゼロ

パフォーマンスの低下

すべて: モニタリングと検出用のOracle Enterprise Manager、リソース制限用のデータベース・リソース管理および進行中のパフォーマンス・チューニング

停止時間はないがサービスは低下

ゼロ

関連項目:

個々のOracle高可用性アーキテクチャの計画外停止時間タイプすべての達成可能なリカバリ時間に関する概要は、「高可用性アーキテクチャ」を参照してください。