2 クラスタの準備

この章には、システム管理者およびネットワーク管理者が、クラスタに2つのノードを構成するDBAをサポートする際に必要な情報が含まれています。この章では、Linuxオペレーティング・システムの基本を理解していることを前提としています。場合によっては、ご使用のオペレーティング・システム用の『Oracle Grid Infrastructureインストレーションおよびアップグレード・ガイド』の詳細を参照する必要があります。また、この章の特定のタスクを実行するために、rootまたはsudo権限(UNIXおよびLinuxシステム)、管理者権限(Windowsシステム)も必要です。

2.1 システム要件の確認

インストールを開始する前に、システムがOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)の要件を満たしていることを確認します。

この要件は、次のカテゴリに分けられます。

2.1.1 オペレーティング・システムの動作保証の確認

オペレーティング・システムとOracle Databaseソフトウェアの組合せが動作保証されているものであることを確認する必要があります。

動作保証されているオペレーティング・システムおよびOracle Databaseソフトウェアのリストは、次のWebサイトにあるMy Oracle Supportの動作保証情報を参照してください。

https://support.oracle.com

「動作保証」タブを選択することによって、動作保証情報を確認できます。サポート・ノートを検索して、ご使用のプラットフォームの動作保証の情報を調べることもできます。

注意:

Oracle Universal Installerは、サーバーおよびオペレーティング・システムがリストされた要件を満たしているかどうかを検証します。ただし、Oracle Universal Installerを起動する前に要件を確認し、サーバーおよびオペレーティング・システムが要件を満たしていることを確認する必要があります。このことは、ハードウェアまたはソフトウェアが動作保証されない場合に発生する可能性があるソフトウェア・インストール・プロセスの遅れを回避するのに役立ちます。

2.1.2 ハードウェア要件について

クラスタ(Oracle ClusterwareおよびOracle RACのインストール)に属する各ノードは、ソフトウェアの最小ハードウェア要件を満たしている必要があります。

注意:

Oracleソフトウェアをインストールする際、Oracle Universal Installer(OUI)によって自動的にハードウェア前提条件チェックが実行され、適合しない場合は通知されます。

最小限のハードウェア要件:

  • Clusterインストール用(Oracle RACをインストールする場合を含む)Oracle Grid Infrastructureのために、4GB以上のRAM

  • RAMと同じ容量以上のスワップ領域

  • パブリック・ネットワークとプライベート・ネットワークをサポートするための少なくとも2つのネットワーク・スイッチ(それぞれ1 GbE以上)

  • サーバーは実行レベル3または実行レベル5である必要があります。

  • 使用可能な/tmp内の一時領域(1GB以上)

  • インストールするOracleソフトウェア(64ビット)のリリースでの動作が保証されているプロセッサ・タイプ(CPU)

  • 1024 x 786以上のディスプレイ解像度(Oracle Universal Installer(OUI)を正しく表示するため)

  • クラスタ内で使用されるすべてのサーバーで同一のチップ・アーキテクチャ(たとえば、すべてが64ビット・プロセッサ)

  • ストレージ・エリア・ネットワーク(SAN)またはネットワーク・アタッチ・ストレージ(NAS)へのアクセス。

また、次の表に示すように、ソフトウェアのインストール場所に、Oracleソフトウェアを格納するのに十分なディスク領域が必要です。

場所 容量 目的
Gridホーム・ディレクトリ 8 GB以上 Oracle ClusterwareおよびOracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)のソフトウェア・インストール
Gridホーム・ディレクトリ 100 GBが推奨されます 関連するログ・ファイルおよびパッチ用の追加のディスク領域
Oracle Grid Infrastructureインストール所有者(Gridユーザー)のOracleベース 10 GB以上 Oracle ClusterwareおよびOracle ASMのログ・ファイルと、トレース・ファイル・アナライザ(TFA)コレクタによって生成される診断コレクションのため
Oracleホーム 6.4 GB以上 Oracle Databaseソフトウェア・バイナリ

注意:

実際のディスク領域要件については、ご使用のオペレーティング・システム用のOracle Grid Infrastructureインストレーションおよびアップグレード・ガイドOracle Real Application Clustersのインストレーション・ガイドを参照してください。Oracleソフトウェアで使用されるディスク領域は一定でなく、このマニュアルに記載されている値より大きくなることもあります。

2.1.3 共有記憶域について

Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACは共有記憶域にアクセスする必要があるため、クラスタ内の各ノードおよびインスタンスは同じファイル・セットにアクセスできます。

Oracle RACデータベースは、シェアード・エブリシング型のデータベースです。Oracle RACデータベースで使用されているすべてのデータファイル、制御ファイル、REDOログ・ファイルおよびサーバー・パラメータ・ファイル(SPFILE)は、すべてのOracle RACデータベース・インスタンスがアクセス可能な共有記憶域に配置する必要があります。このガイドで説明するOracle RACインストールでは、Oracle ClusterwareおよびOracle Databaseファイルの共有記憶域にOracle ASMが使用されます。

Oracle Clusterwareは、次のコンポーネントを使用することによって、優れたスケーラビリティと高可用性を実現します。

  • 投票ディスク: クラスタ・メンバーシップを管理し、ネットワーク障害の場合にノード間でクラスタ所有権を調整します。投票ディスクは、共有記憶域に存在するファイルです。可用性を高めるために、複数の投票ディスクを持つこと、および奇数の投票ディスクを持つことをお薦めします。単一の投票ディスクを定義する場合は、冗長性のためにファイル・システム・レベルでのミラー化を使用します。

  • Oracle Cluster Registry(OCR): クラスタ構成情報およびクラスタ内の任意のクラスタ・データベースに関する構成情報を保持します。OCRには、どのデータベース・インスタンスをどのノード上で実行するか、どのサービスをどのデータベース上で実行するかなどの情報が含まれます。また、OCRにはOracle Clusterwareが制御するプロセスに関する情報も格納されます。OCRは、クラスタ内のすべてのノードがアクセス可能な共有記憶域に存在します。Oracle ClusterwareではOCRを多重化(OCRの複数のコピーを保持)できるため、この機能を使用して高可用性を確保することをお薦めします。

  • グリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリ: Oracle Databaseのサービス品質管理、メモリー・ガードおよびクラスタ状態モニターをサポートします。

これらのOracle Clusterwareコンポーネントには、共有ファイル・システム上に次のようなディスク領域が必要です。

  • 3つのOracle Clusterwareレジストリ(OCR)・ファイル(それぞれが少なくとも400MBか、合計のディスク領域が1.2GB)

  • 3つの投票ディスク・ファイル(それぞれが300MBか、合計ディスク領域が900MB)

  • グリッド・インフラストラクチャ管理リポジトリには、さらに5.9 GBのディスク領域が必要で、OCRボリュームに格納されます。

2.1.4 ネットワーク・ハードウェア要件について

クラスタ内の全ノード間でパブリックとプライベートの両方の通信をサポートするハードウェアが必要です。

Oracle Clusterwareでは、クラスタ内のノードが、プライベート・インターコネクト を使用してプライベート・ネットワークに接続されている必要があります。プライベート・インターコネクトは、クラスタ・ノード間で構成する個別のネットワークです。インターコネクトは、クラスタ内のノード間の通信パスとして機能します。このインターコネクトは、プライベート・インターコネクトである(クラスタ・メンバー以外のノードからはアクセスできない)必要があります。

Oracle RACで使用されるインターコネクトは、Oracle Clusterwareで使用されるのと同じインターコネクトです。クラスタ・データベースの各インスタンスでは、各インスタンスの共有リソースの使用を同期化するためのメッセージ機能でインターコネクトを使用します。Oracle RACでは、複数のインスタンスで共有されるデータ・ブロックの転送にもインターコネクトを使用します。

Oracle RACおよびOracle Clusterwareに使用するネットワークを構成する場合は、クラスタ内の各ノードが次の要件を満たしている必要があります。

  • 各ノードに2つ以上のネットワーク・インタフェース・カード(NIC) (ネットワーク・アダプタ)が必要です。一方のアダプタはパブリック・ネットワーク・インタフェース用、もう一方のアダプタはプライベート・ネットワーク・インタフェース(インターコネクト)用です。ノードが次の条件のいずれかに該当する場合、ネットワーク・アダプタをノードにさらに追加します。

    • 2つ以上のネットワーク・アダプタが備わっていない場合。

    • 2つのネットワーク・インタフェース・カードが備わっているが、ネットワーク接続ストレージ(NAS)が使用されている場合。NAS用に別個のネットワーク・アダプタを装備する必要があります。

    • 2つのネットワーク・カードが備わっているが、冗長インターコネクトの使用機能(複数のネットワーク・アダプタで1つのアダプタとしてのアクセスが可能)を使用する場合。冗長なインターコネクトの使用によって、複数(最大4つ)のプライベート・ネットワーク(インターコネクトとも呼ばれる)全体にわたるロード・バランシングと高可用性が可能になります。

  • 管理を容易にするために、すべてのノードでパブリック・インタフェース名を同じにする必要があります。あるノードのパブリック・インタフェースがネットワーク・アダプタeth0を使用している場合は、すべてのノードのパブリック・インタフェースにeth0を構成する必要があります。ネットワーク・インタフェース名は大/小文字が区別されます。

  • パブリック・インタフェース用のネットワーク・アダプタでは、TCP/IPがサポートされている必要があります。

  • プライベート・インタフェース用のネットワーク・アダプタでは、高速ネットワーク・アダプタを使用するユーザー・データグラム・プロトコル(UDP)、およびTCP/IP(ギガビット・イーサネットまたはさらに高速のもの)対応のネットワーク・スイッチがサポートされている必要があります。

    注意:

    • UDPは、Oracle RAC用およびOracle Clusterware用のデフォルトのインタフェース・プロトコルです。

    • インターコネクトにはスイッチを使用する必要があります。専用のネットワーク・スイッチの使用をお薦めします。インターコネクトでは、トークン・リングまたはクロスオーバー・ケーブルはサポートされません。

    • ループバック・デバイスはサポートされません。

  • プライベート・ネットワークでは、指定されているすべてのインターコネクト・インタフェースのエンドポイントがネットワークで確実にアクセス可能である必要があります。クラスタ内のすべてのノードが、クラスタ内のすべてのプライベート・ネットワーク・インタフェースに接続できる必要があります。

  • 各ノードのホスト名は、英数字を使用できるRFC 952標準に準拠する必要があります。ホスト名にアンダースコア(_)は使用できません。

関連項目:

2.1.5 IPアドレス要件について

Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACでは、通信に様々なIPアドレスを使用します。

クラスタ用Oracle Grid Infrastructureの拡張インストールを実行する場合は、仮想IP (VIP)用のグリッド・ネーミング・サービス(GNS)および動的ホスト構成プロトコル(DHCP)を使用できます。GNSはマルチキャスト・ドメイン・ネーム・サーバー(mDNS)を使用して、ドメイン・ネーム・サーバー(DNS)でネットワーク・アドレス構成を追加しなくても、クラスタ上でノードが追加および削除される際に、クラスタがホスト名およびIPアドレスを動的に割り当てられるようにします。

クラスタ・ノードでIPv4、IPv6または両方のタイプのIPアドレスを使用するように、パブリック・ネットワークを構成できます。インストール時に両方のアドレス・タイプを持つネットワークにノードを接続することはできますが、インストール時に両方のアドレス・タイプを使用するようにVIPを構成することはできません。インストール後に、IPv4アドレスとIPv6アドレスを組み合せてクラスタ・メンバー・ノードを構成することはできます。Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACでは、RFC 2732で指定されている標準のIPv6アドレス表記をサポートしています。

このマニュアルでは、GNSを使用しないでIPv4アドレスのみを使用する標準インストールの実行方法を説明します。次のアドレスは、社内のDNSに手動で構成する必要があります。

  • 各ノードの固定パブリックIPアドレス

  • 各ノードの仮想IPアドレス

  • クラスタの3つの単一クライアント・アクセス名(SCAN)アドレス

注意:

Oracle Clusterwareは、プライベートとマークされたインタフェースを、クラスタ・インターコネクトとして使用します。インターコネクトのIPアドレスを指定する必要はありません。

インストール中にクラスタのSCANが構成され、これは、クラスタに割り当てられるすべてのSCANアドレスに解決されるドメイン名になります。パブリックIPアドレス、SCANアドレスおよび仮想IPアドレスは、すべて同じサブネット上に存在する必要があります。SCANがネットワーク内で一意であることが必要です。SCANアドレスは、インストール前にpingコマンドに応答しないようにします。標準インストールでは、SCANはクラスタの名前でもあるため、SCAN名はクラスタ名と同じ要件を満たし、15文字以内である必要があります。

クラスタ用のOracle Grid Infrastructureのインストール中に、各SCANアドレスに対するリスナーが作成されます。Oracle RACデータベースにアクセスするクライアントは、SCANまたはSCANアドレスを使用し、VIP名やVIPアドレスは使用しません。アプリケーションがSCANを使用してクラスタ・データベースに接続する場合、クラスタでノードの追加や削除があったときに、クライアント・コンピュータ上のネットワーク構成ファイルを変更する必要はありません。SCANとそれに関連付けられたIPアドレスは、クラスタを構成するノードとは無関係に、クライアントが接続に使用する安定した名前を提供します。クライアントは、簡易接続ネーミング・メソッドとSCANを使用してクラスタ・データベースへ接続することが可能です。

関連項目:

2.1.6 インストールされたオペレーティング・システムとソフトウェア要件の検証

システムがオペレーティング・システムのバージョンおよび他のソフトウェア要件を満たしていることを確認します。

使用している環境に固有の要件の詳細は、使用プラットフォームのOracle Grid Infrastructureインストレーションおよびアップグレード・ガイドOracle Real Application Clustersインストレーション・ガイドを参照してください。

2.1.6.1 オペレーティング・システムとソフトウェア要件について

Oracleソフトウェアをインストールする前に、オペレーティング・システムが要件を満たしていることを確認します。

オペレーティング・システムおよびソフトウェアの要件には、次のものが含まれます。

  • オペレーティング・システムのリリース

  • オペレーティング・システムのカーネル・バージョン

  • カーネル・パラメータの値の変更

  • インストール済のパッケージ、パッチまたはパッチ・セット

  • インストール済のコンパイラおよびドライバ

  • Webブラウザのタイプおよびバージョン

  • その他のアプリケーション・ソフトウェア要件

現在、実行中のオペレーティング・システムが、Oracle Database 12c リリース2 (12.2)でサポートされていないリリースの場合、最初にオペレーティング・システムをアップグレードしてから、Oracle Real Application Clustersをインストールする必要があります。

オペレーティング・システムにOracle Linuxを使用している場合は、Oracle Validated RPMシステム構成スクリプトを使用してシステム構成を行えます。

2.1.6.2 インストール修正スクリプトについて

インストールの最小要件を満たしていない場合はOracle Universal Installer(OUI)によって検知され、要件を満たしていないシステム構成手順を実行するために、修正スクリプトと呼ばれるシェル・スクリプトが作成されます。

OUIによって不完全なタスクが検知されると、修正スクリプト(runfixup.sh)が生成されます。「修正および再チェック」をクリックした後で、このスクリプトを実行できます。

修正スクリプトでは、次のことが実行されます。

  • 必要に応じて、インストールを正しく実行するために必要な値を次のカーネル・パラメータに設定します。

    • 共有メモリーのパラメータ

    • オープン・ファイル記述子およびUDP送信/受信パラメータ

  • Oracle Inventory(中央インベントリ)ディレクトリに権限を作成し、設定します。

  • インストール所有者、必要な場合はOracleインベントリ・ディレクトリおよびオペレーティング・システム権限グループの、プライマリおよびセカンダリ・グループ・メンバーシップが作成または再構成されます。

  • 必要に応じて、シェル制限に必要な値を設定します。

2.1.6.3 現在のオペレーティング・システムの構成の確認

構成が正しくないことをインストールで通知されるまで待つのではなく、インストール前に、オペレーティング・システム・コマンドを使用して、オペレーティング・システムの構成を手動で確認することができます。これは、Oracle Grid Infrastructureのインストールを開始する前に、オペレーティング・システムを更新するために追加の時間が必要かどうかの判断に役立ちます。

Oracle Linuxのオペレーティング・システム要件が満たされているかどうかを判断するには、次の手順を実行します。

  1. インストールされているLinuxディストリビューションおよびバージョンを確認するには、オペレーティング・システムのプロンプトでrootユーザーとして次のいずれかのコマンドを入力します。
    # cat /etc/oracle-release
    # cat /etc/redhat-release
    # lsb_release -id
    
  2. 各サーバーがどのチップ・アーキテクチャを採用しているか、およびどのバージョンのソフトウェアをインストールする必要があるかを確認するには、オペレーティング・システムのプロンプトで、rootユーザーとして次のコマンドを実行します。
    # uname -m
    

    このコマンドの出力結果には、プロセッサ・タイプが表示されます。64ビット・アーキテクチャの場合は、「x86_64」と出力されます。

  3. 必要なerrataレベルがインストールされているかどうかを判別するには、次の例に示すようにrootユーザーとしてunameコマンドを実行します。
    # uname -r
    2.6.39-100.7.1.el6uek.x86_64
    

    ほとんどのソフトウェアのように、オペレーティング・システム内でLinuxカーネルが更新され、バグが修正されます。このようなカーネルの更新を、エラータ・カーネルまたはエラータ・レベルといいます。

    前述の出力例は、カーネルのバージョンが2.6.39、エラータ・レベル(EL)が100.7.1.e16uekであることを示しています。ご使用のディストリビューションに必要なエラータ・レベルを確認します。そのエラータ・レベルが最低限必要とされるエラータ・レベルよりも低い場合、オペレーティング・システムに最新のカーネル更新をインストールします。カーネル更新は、オペレーティング・システムのベンダーから入手できます。

  4. インストールに影響を与えるオペレーティング・システムの問題がないことを確認するには、ご使用のプラットフォーム用のOracle Grid Infrastructureのインストレーション・ガイドを参照し、そこに記載されているオペレーティング・システムのパッチ更新およびパッケージがすべてインストールされていることを確認します。Oracle Linuxを使用している場合は、rootユーザーとして次のコマンドを実行すると、必要なパッケージ(特定の機能または計算を実行するプログラム)がインストールされているかどうかを判別できます。
    # rpm -q package_name
    

    package_name変数は、setarchなどの検証の対象とするパッケージの名前です。パッケージがインストールされていない場合は、Linuxの配布メディアからインストールするか、またはLinuxベンダーのWebサイトから必要なバージョンのパッケージをダウンロードしてインストールします。

    up2dateまたはYUM (Yellow dog Updater Modified)を使用して、パッケージおよびその依存性をLinuxシステムにインストールします。YUMでは、リポジトリを使用して、システムに合ったRPMパッケージを自動的に見つけて取得します。

2.2 サーバーの準備

システムがOracle RACのインストールの基本的要件を満たすことを確認した後、次に実行する手順はインストールの準備としてのサーバーの構成です。

2.2.1 オペレーティング・システム・ユーザーおよびグループについて

このサーバーにOracleソフトウェアがインストールされるのが初めてかどうかによって、オペレーティング・システム・グループおよびユーザーの作成が必要な場合があります。

2.2.1.1 必要なオペレーティング・システム・ユーザーおよびグループ

クラスタ用Oracle Grid InfrastructureおよびOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)をインストールするには、オペレーティング・システムのグループおよびユーザーを作成する必要があります。

表2-1 Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACのインストールに必要なオペレーティング・システムのユーザーおよびグループ

オペレーティング・システムのユーザーまたはグループ 説明

すべてのOracleソフトウェア・インストール(oinstall)に対するOracleインベントリ・グループ。

Oracleインベントリ・グループは、LinuxおよびUNIXプラットフォームにおけるOracleソフトウェア・インストール所有者のプライマリ・グループである必要があります。Oracleインベントリ・グループのメンバーには、Oracleインベントリ・ディレクトリに対するアクセス権があります。このディレクトリは、サーバー上のすべてのOracleソフトウェア・インストールの中央インベントリ・レコードであり、各インストールのインストール・ログおよびトレース・ファイルも含まれています。Windowsシステムで、このグループが自動的に作成および管理されます。

Oracleソフトウェアの所有者またはインストール・ユーザー。ソフトウェアのインストール時に使用するユーザー・アカウントです。

すべてのインストールに同じソフトウェア所有者を使用する場合、このユーザー名はoracleになります。クラスタ用Grid Infrastructureの管理権限とOracle Databaseの管理権限を区別するために、クラスタ用Oracle Grid InfrastructureとOracle RACを別のソフトウェア所有者でインストールする場合には、クラスタ用Oracle Grid Infrastructureの所有者にはgridを、Oracle RACの所有者にはoracleを使用します。

別々のユーザーを使用したOracle Grid InfrastructureおよびOracle RACのインストールは、推奨される構成です。

Oracle Database認証用のOSRACグループ。

OSRACグループは、システム権限グループであり、そのメンバーには、Oracle Databaseを管理するSYSRAC権限と、Oracle ClusterwareおよびOracle ASMを管理するSYSASM権限が付与されます。管理権限をきめ細かく制御するために、「オプションのオペレーティング・システム・ユーザーおよびグループ」の説明に従って複数のオペレーティング・システム・グループを作成することができます。

注意:

Microsoft WindowsプラットフォームにOracle RACをインストールする場合:

  • OUIは、Oracleソフトウェアに対するシステム認証アクセスに使用するグループを自動的に作成します。

  • インストールを実行するユーザーは管理者ユーザーである必要があります。

  • インストール中にOracleホームのユーザーを指定した場合は、このユーザーはドメイン・ユーザーである必要があります。

LinuxおよびUNIXシステムで、クラスタ用Oracle Grid InfrastructureとOracle RACで同じインストール所有者を使用する場合、管理タスクを実行するときには、管理するインスタンス(GridホームのOracle ASM、またはOracleホームのデータベース・インスタンス)に一致するようにORACLE_HOME環境変数の値を変更する必要があります。ORACLE_HOME環境変数を変更するには、次の例のようなコマンド構文を使用します(/u01/app/12.2.0/gridはクラスタ用Oracle Grid Infrastructureホームです)。

ORACLE_HOME=/u01/app/12.2.0/grid; export ORACLE_HOME

ORACLE_HOMEが正しくないバイナリ・パスに設定されているときに、SQL*Plus、LSNRCTLまたはASMCMDを使用してインスタンスの管理を試行すると、エラーが発生します。OracleホームのパスはSRVCTLコマンドに影響しません。

Windowsシステムで管理タスクを実行するには、Oracle Grid InfrastructureまたはOracle RACの適切なユーティリティを実行するだけで、ORACLE_HOMEが自動的に構成されます。

2.2.1.2 UNIXおよびLinuxシステムのOracleソフトウェア・インストール用の別のオペレーティング・システムのユーザーとグループ

すべてのOracleソフトウェア・インストールの所有者として単一のオペレーティング・システム・ユーザーを使用するかわりに、複数ユーザーを使用して、各ユーザーに1つ以上のOracleソフトウェア・インストールを所有させることができます。

すべてのOracleソフトウェア・インストールの所有者として単一のオペレーティング・システム・ユーザーを使用するかわりに、複数ユーザーを使用して、各ユーザーに1つ以上のOracleソフトウェア・インストールを所有させることができます。クラスタ用Oracle Grid Infrastructureインストールのみを所有するように作成されたユーザーはgridユーザーと呼ばれます。このユーザーは、Oracle ClusterwareとOracle Automatic Storage Managementの両方のバイナリを所有します。すべてのOracleソフトウェア・インストール(クラスタ用Oracle Grid Infrastructureを含む)、またはOracle Databaseソフトウェア・インストールのみを所有するように作成されたユーザーはoracleユーザーと呼ばれます。

Oracle Databaseソフトウェア・インストールごとに異なるユーザーを使用することもできます。また、Oracle Databaseソフトウェア・インストールごとに異なるOSDBAグループを指定できます。各Oracle Databaseインストールへの管理アクセスを認証するために異なるオペレーティング・システム・グループを使用することで、ユーザーに付与されるSYSDBA権限またはSYSRAC権限は、システム上のすべてのデータベース用ではなく、OSDBAまたはOSRACグループに関連付けられているデータベース用となります。

OSDBAグループのメンバーには、Oracle ASMへの管理アクセスが認可されるSYSASMシステム権限も付与できます。「オプションのオペレーティング・システム・ユーザーおよびグループ」の説明に従って、Oracle ASM認証に別のオペレーティング・システム・グループを構成して、Oracle ASMインスタンスに対するSYSASMアクセス権を持つユーザーを、データベース・インスタンスに対するSYSDBAアクセス権を持つユーザーと区別できます。

異なるOracleソフトウェア・インストールに対して、Oracleソフトウェア所有者を個別に作成し、別々のユーザーおよびオペレーティング・システム権限グループを使用する場合は、それらの各ユーザーがOracle中央インベントリ・グループ(oinstall)をプライマリ・グループとして持つ必要があることに注意してください。このグループのメンバーは、Oracleインベントリ・ディレクトリに対する必須の書込み権限を持っています。

注意:

クラスタ用Oracle Grid Infrastructureインストールを所有できるのは1ユーザーのみです。Oracle Clusterwareインストール済ファイルを所有するユーザーと、Oracle ASMインストール済ファイルを所有する別のユーザーを保有することはできません。

2.2.1.3 WindowsシステムのOracleソフトウェア・インストール用の別のオペレーティング・システムのユーザーとグループ

Windowsプラットフォームでは、オペレーティング・システムのユーザーおよびグループの管理がLinuxおよびUNIXシステムとは異なります。

Oracle Grid Infrastructureをインストールするときに、少なくとも1つのOracleインストール・ユーザー(Oracleソフトウェアをインストールする管理者ユーザー)を作成します。Oracle Databaseソフトウェアをインストールするときは、このOracleインストール・ユーザーまたは別のOracleインストール・ユーザーを使用できます。

インストール中にOracleホーム・ユーザーとして使用する、権限の付与されていないWindowsユーザー・アカウントを追加で作成する必要があります。Oracleホーム・ユーザーは、Oracleインストール・ユーザーとは異なります。Oracleインストール・ユーザーは、Oracle製品をインストールする管理権限を必要とするユーザーです。Oracleホーム・ユーザーは、Oracleホームで必要とするほとんどのWindowsサービスを実行するインストール中に指定される権限の弱いWindowsユーザー・アカウントです。システムの異なるOracleホームは、同じOracleホーム・ユーザーを共有したり、異なるOracleホーム・ユーザーを使用できます。Oracleソフトウェアによって自動的に作成および管理されるため、オペレーティング・システム・グループを作成する必要はありません。

Oracleホーム・ユーザーには、組込みアカウントまたはWindowsドメイン・ユーザーを指定できます。Oracleホーム・ユーザーで実行するOracle DatabaseサービスにOracle製品の実行に必要な権限のみが付与されるように、Windowsドメイン・ユーザーは、権限の弱い非管理アカウントにする必要があります。Oracleソフトウェア製品ごとに個別のOracleホーム・ユーザーを作成して、異なるOracleホームの管理制御を持ちます。

Oracle Databaseソフトウェア・インストールごとに異なるOracleホーム・ユーザーを使用する場合、各インストールの個別のSYSRAC権限に対して各Oracleホームに関連付けられているORA_HOMENAME_RACグループを使用できます。ORA_HOMENAME_RACグループのメンバーは、オペレーティング・システム認証を使用して、HOMENAMEという名前のOracleホームから実行されるOracle Databaseのみログインできます。ORA_RACグループのメンバーは、オペレーティング・システム認証を使用して、SYSRAC権限でOracle Databaseにログインできます。

Oracle ASMアクセス制御機能を使用して、Oracle ASM管理のロールの分離を有効にすることもできます。以前のリリースで、すべてのOracle Databaseサービスがローカル・システムとして実行されたため、Windowsのこの機能が無効になりました。Oracle ASM管理で、新しいグループORA_ASMADMINORA_ASMDBAおよびORA_ASMOPERがOracle Grid Infrastructureインストール中に自動的に作成および入力されます。

2.2.1.4 オプションのオペレーティング・システム・ユーザーおよびグループ

追加のユーザーおよびグループを使用して、クラスタ用Oracle Grid Infrastructureに対する管理アクセス権限を、他のOracleインストールに関連付けられた管理ユーザーおよびグループから分離できます。

管理アクセスの分離は、異なるオペレーティング・システム・グループのメンバーシップを指定することによって実装されます。インストール権限の分離は、Oracleインストールごとに別のインストール所有者を使用することによって実装されます。使用できるオプションのユーザーおよびグループは次のとおりです。

  • Oracle自動ストレージ管理グループ、またはOSASMグループ(通常、Linuxはasmadmin、WindowsはORA_ASMADMIN)。

  • ASMデータベース管理者グループ(ASMグループのOSDBA、通常、Linuxはasmdba、WindowsはORA_ASMDBA)。

  • Oracle DatabaseのOSOPERグループ(通常、Linuxはoper、WindowsはORA_OPER)。

  • Oracle ASMのOSOPERグループ(通常、Linuxはasmoper、WindowsはORA_ASMOPER)。

  • SYSDBAロールではなくSYSRACロールを使用するためのクラスタ・エージェントのOSRACDBAグループ(通常、Linuxはracdba、WindowsはORA_RAC)。

  • Oracle DatabaseのOSBACKUPDBAグループ。

  • Oracle Data GuardのOSDGDBAグループ。

  • 暗号化鍵の管理のOSKMDBAグループ。

関連項目:

2.2.2 Linuxシステムのオペレーティング・システム・ユーザーおよびグループの構成

このタスクでは、ソフトウェアをインストールする前にgridユーザーとoracleユーザーを作成する方法について説明します。

このガイドでの説明では、Oracle Grid Infrastructureのインストールに対してソフトウェア所有者を1つ使用し、Oracle Database (Oracle Real Application Clusters)のインストールには別のユーザーを使用します。これらのユーザーの名前は、gridおよびoracleです。oracleユーザーは、oinstallおよびdbaオペレーティング・システム・グループに所属します。

オペレーティング・システムで認証されるすべての管理権限を所有するソフトウェア所有者を作成するには、次の手順を実行します。

  1. /etc/groupファイルの内容をリストして、サーバーに存在するグループを確認します。
    cat /etc/group
    
  2. サーバーにOracleソフトウェアをインストールしたのが初めてであり、Oracleインベントリ・グループが存在しない場合は、クラスタ内のすべてのノードで現在使用されていないグループIDを使用して、Oracleイベントリ・グループ(oinstall)を作成します。rootユーザーとして次のようなコマンドを入力します。
    # /usr/sbin/groupadd -g 1000 oinstall
    
  3. rootユーザーとして次のようなコマンドを入力し、クラスタ内のすべてのノードで現在使用されていないグループIDを使用して、OSDBA(dba)グループを作成します。
    # /usr/sbin/groupadd -g 1001 dba
    
  4. rootユーザーとして次のようなコマンドを入力し、クラスタ内のすべてのノードで現在使用されていないグループIDを使用して、Oracle ASM用にOSDBAグループ(asmdba)を作成します。
    # /usr/sbin/groupadd -g 1002 asmdba
    
  5. Oracleソフトウェアを所有するユーザー(gridまたはoracle)がサーバーに存在しない場合は、ユーザーを作成する必要があります。クラスタ内のすべてのノードで現在使用されていないユーザーID(UID)を選択します。サーバーでどのユーザーが作成済かを確認するには、次のコマンドを使用して/etc/passwdファイルの内容を表示します。
    cat /etc/passwd
    

    次のコマンドは、gridユーザーおよびユーザーのホーム・ディレクトリ(/home/grid)の作成方法を示しています。デフォルト・グループはoinstall、セカンダリ・グループはdbaおよびasmdbaで、UIDには1100を使用します。

    # /usr/sbin/useradd -u 1100 –g oinstall -G dba,asmdba -d /home/grid -r grid
    

    次のコマンドは、oracleユーザーおよびユーザーのホーム・ディレクトリ(/home/oracle)の作成方法を示しています。デフォルト・グループはoinstall、セカンダリ・グループはdbaで、UIDには1100を使用します。

    # /usr/sbin/useradd -u 1200 –g oinstall -G dba,asmdba -d /home/oracle -r oracle
    
  6. 次のコマンドを使用して、gridアカウントおよびoracleアカウントのパスワードを設定します。passwordを自分のパスワードに置き換えます。
    passwd grid
    Changing password for user grid.
    New UNIX password: password
    retype new UNIX password: password
    passwd:  all authentication tokens updated successfully.
    passwd oracle
    Changing password for user oracle.
    New UNIX password: password
    retype new UNIX password: password
    passwd:  all authentication tokens updated successfully.
  7. クラスタ内の各ノードで手順1から手順6を繰り返します。
  8. クラスタの各ノードで、ユーザーgridおよびoracleの属性が同一であることを確認します。
    id grid
    id oracle 
    

    このコマンドの出力結果は、次のようになります。

    uid=1100(grid) gid=1000(oinstall) groups=1000(oinstall),1001(dba),1002(asmdba)
    uid=1200(oracle) gid=1000(oinstall) groups=1000(oinstall),1001(dba),1002(asmdba)

2.2.3 Linuxシステムのセキュア・シェルの構成

Oracleソフトウェアをインストールするには、すべてのクラスタ・メンバー・ノード間にセキュア・シェル(SSH)接続を設定する必要があります。

OUIは、インストール中にsshおよびscpコマンドを使用して、他のクラスタ・ノードに対してリモート・コマンドを実行し、そのクラスタ・ノードにファイルをコピーします。これらのコマンドを使用する際にパスワードを求めるプロンプトが表示されないように、SSHを構成する必要があります。SSHは、Configuration AssistantやOracle Enterprise Managerでも使用され、またクラスタにノードを追加する際にも使用されます。

Oracle Universal Installer(OUI)インタフェースから、インストール中に、インストールを実行しているユーザー・アカウントにSSHを構成することができます。自動構成によって、パスワードなしのSSH接続をすべてのクラスタ・メンバー・ノード間に作成することができます。

スクリプトを実行できるようにするには、すべてのOracleソフトウェア・インストール所有者のプロファイルからsttyコマンドを削除するとともに、ログイン時にトリガーされる他のセキュリティ手段で、端末に対してメッセージを生成するものを削除する必要があります。これらのメッセージやメール・チェックなどが表示されていると、Oracleソフトウェア・インストール所有者は、Oracle Universal Installerに組み込まれているSSH構成スクリプトを使用できません。これらの表示が無効になっていない場合は、SSHを手動で構成してからでなければ、インストールを実行できません。

Linuxシステムで、パス・フレーズの入力を求められずにOracle Universal Installerでsshコマンドおよびscpコマンドを使用できるようにするには、クラスタ内にユーザー等価関係が必要です。ユーザー等価は、クラスタのすべてのノードで次の条件が満たされたときクラスタに存在します。

  • 指定したユーザーのユーザー名、ユーザーID(UID)およびパスワードが同じ場合

  • 指定したユーザーが同じグループに属する場合

  • 指定したグループのグループID(GID)が同じ場合

関連項目:

2.2.4 Linuxシステムのソフトウェア所有者のShell環境の構成について

Oracle Linuxでは、gridアカウントからOracle Universal Installer (OUI)を実行します。OUIは、gridユーザー用に構成された環境変数から情報を取得します。

OUIの実行前に、クラスタ用Oracle Grid Infrastructureソフトウェア所有者のシェル起動ファイルに次のような変更を加える必要があります。

  • シェル起動ファイルで、インストール・ユーザー(grid)のデフォルトのファイル・モード作成マスク(umask)を022に設定します。 マスクを022に設定すると、ソフトウェア・インストールを実行するユーザーが作成するファイルの権限は常に644になります。

  • インストール・ユーザー(grid)のファイル記述子(nofile)およびプロセス(nproc)のulimit設定を設定します。

  • クラスタ用Oracle Grid Infrastructureをインストールする準備として、ソフトウェア所有者のDISPLAY環境変数を設定します。

  • ファイル内で環境変数ORACLE_SIDORACLE_HOMEまたはORACLE_BASEに値を設定している行は、すべて削除します。

変更を保存した後で、シェル起動スクリプトを実行して環境を構成します。

また、/tmpディレクトリの使用可能ディスク領域は1GBより少ないが、使用可能領域は1GB以上ある、共有されていない別のファイル・システムが確認された場合、TEMPおよびTMPDIRという環境変数を設定して、このファイル・システム上の代替一時ディレクトリを指定できます。

現在の環境設定を確認するには、gridユーザーとしてenv | moreコマンドを使用します。

注意:

インストールを開始する前に、非表示ファイル(ログオン、プロファイル・スクリプトなど)からすべてのsttyコマンドを削除します。Linuxシステムでは、このようなsttyコマンドが含まれるファイルがある場合、インストール中にこれらのファイルがリモート・シェルによってロードされると、OUIにエラーが表示され、インストールが停止します。

関連項目:

2.3 ネットワークの構成

Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACをインストールする前に、ネットワーク名を決定してIPアドレスを構成する必要があります。

クライアントおよびアプリケーションは、単一クライアント・アクセス名(SCAN)を使用してデータベースに接続します。SCANとそれに関連付けられたIPアドレスは、クラスタを構成するノードとは無関係に、クライアントが接続に使用する安定した名前を提供します。SCANは、パブリック・クライアント接続を処理するクラスタ内で、複数のリスナーを参照する複数のIPアドレスに解決されることによって機能します。インストール・プロセスにより、こうしたリスナー(SCANリスナー)が作成されます。

クラスタ用Oracle Grid Infrastructureのインストールの準備でネットワークを構成するには、次の手順を実行します。

  1. クラスタ名を決定します。
    クラスタ名は次の条件を満たす必要があります。
    • 1文字以上、15文字未満であること。

    • ホスト名に使用されるキャラクタ・セット(シングルバイト英数字(aからz、AからZおよび0から9)とハイフン(-))と同じキャラクタ・セットで構成されていること。

    • ホスト・ドメイン内でグローバルに一意であること

    • サード・パーティ・ベンダーのクラスタウェアを使用する場合は、そのベンダーのクラスタ名を使用することをお薦めします。

  2. クラスタ内の各ノードに対してパブリック・ホスト名と仮想ホスト名を指定します。
    • パブリック・ホスト名には、各ノードのプライマリ・ホスト名を使用します。この名前は、hostnameコマンドによって表示される名前です。このホスト名は、永続ホスト名または仮想ホスト名のいずれか(racnode1など)になります。

    • 各ノードの仮想ホスト名を決定します。仮想ホスト名はパブリック・ノード名で、ノードが停止している場合にノードに送信されるクライアント・リクエストを再ルーティングするためにOracle Clusterwareにより使用されます。<パブリック・ホスト名>-vipという形式(racnode1-vipなど)で名前を指定することをお薦めします。

  3. 各ノードで次のコマンドを実行して、すべてのネットワーク・アダプタのインタフェース名および関連するIPアドレスを識別します。
    # /sbin/ifconfig
    

    出力から、パブリック・ネットワーク・インタフェースとして指定する各ネットワーク・アダプタのインタフェース名(eth0など)およびIPアドレスを識別します。

    オペレーティング・システムが、システム構成を変更するためのグラフィック・ユーザー・インタフェース(GUI)をサポートしている場合、次のコマンドを使用して、利用できるGUIを起動し、ネットワーク・アダプタと/etc/hostsファイルを構成することができます。

    /usr/bin/system-config-network &
    

    注意:

    Oracle ClusterwareおよびOracle RACをインストールする際に、各ネットワーク・アダプタごとにインタフェースの名前およびIPアドレスを入力するよう求められます。

  4. クラスタの各ノードで、対応するネットワーク名を持つパブリックIPアドレスを1つのネットワーク・アダプタに割り当てます。各ノードのパブリック名は、ドメイン・ネーム・システム(DNS)に登録する必要があります。プライベートとして指定したサブネット上のIPアドレスは、クラスタ・メンバー・ノードのプライベートIPアドレスとして割り当てられます。/etc/hostsファイルでこれらのアドレスを手動で構成する必要はありません。

    pingコマンドを使用して、インターコネクト・インタフェースが接続可能かどうかをテストできます。

  5. クラスタ内の各ノードで、仮想IPアドレスとして動作する3番目のIPアドレスを構成します。
    次の要件を満たすIPアドレスを使用します。
    • その仮想IPアドレスとネットワーク名は、現在使用されていない

    • その仮想IPアドレスは、パブリックIPアドレスと同じサブネット上に存在する。

    各ノードの仮想ホスト名は、DNSに登録する必要があります。

  6. 3つのIPアドレスに解決されるSCANをDNSに定義します。
  7. ネットワーク構成の完了時、IPアドレスおよびネットワーク・インタフェースの構成は、次の表のようになります(ノード名やIPアドレスが異なる場合があります)。

    表2-2 手動によるネットワークの構成例

    ID ホーム・ノード ホスト・ノード 指定された名前 タイプ アドレス アドレスの割当て方法 解決方法

    ノード1パブリック

    ノード1

    racnode1

    racnode1脚注1

    パブリック

    192.0.2.101

    固定

    DNS

    ノード1 VIP

    ノード1

    Oracle Clusterwareにより選択

    racnode1-vip

    仮想

    192.0.2.104

    固定

    DNS、hostsファイル

    ノード1プライベート

    ノード1

    racnode1

    racnode1-priv

    プライベート

    192.168.0.1

    固定

    DNS、hostsファイル、またはなし

    ノード2パブリック

    ノード2

    racnode2

    racnode2脚注1

    パブリック

    192.0.2.102

    固定

    DNS

    ノード2 VIP

    ノード2

    Oracle Clusterwareにより選択

    racnode2-vip

    仮想

    192.0.2.105

    固定

    DNS、hostsファイル

    ノード2プライベート

    ノード2

    racnode2

    racnode2-priv

    プライベート

    192.168.0.2

    固定

    DNS、hostsファイル、またはなし

    SCAN VIP 1

    なし

    Oracle Clusterwareにより選択

    docrac-scan

    仮想

    192.0.2.201

    固定

    DNS

    SCAN VIP 2

    なし

    Oracle Clusterwareにより選択

    docrac-scan

    仮想

    192.0.2.202

    固定

    DNS

    SCAN VIP 3

    なし

    Oracle Clusterwareにより選択

    docrac-scan

    仮想

    192.0.2.203

    固定

    DNS

    脚注1

    ノード・ホスト名は複数のアドレスに解決される場合があります。

    DNSを使用している場合でも、各ノードの/etc/hostsファイルに、パブリックIPアドレスを指定する行を追加することをお薦めします。次の例のように、/etc/hostsファイルを構成します。

    #eth0 - PUBLIC
    192.0.2.100       racnode1.example.com       racnode1
    192.0.2.101       racnode2.example.com       racnode2
    

    注意:

    /etc/hostsファイルに構成したアドレスか、またはDNSに登録したアドレスをメモしておいてください。クラスタ用Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACのインストール時に、パブリック・アドレス、仮想IPアドレスおよびSCANアドレスの入力を求められます。

    SCAN VIPアドレスの構成は、hostsファイルで行わないことを強くお薦めします。SCAN VIPにはDNS解決を使用します。

    クラスタの完全修飾SCANのデフォルトは、cluster_name-scan.GNS_subdomain_nameで、docrac-scan.grid.example.comのようになります。クラスタの短縮SCANはdocrac-scanです。GNSがなく、SCANをDNSで直接構成する場合は、完全修飾SCANはdocrac-scan.example.comに類似したものになります。ネットワーク内で一意であり、RFC 952標準に準拠していれば、どのような名前もSCANとして使用できます。

  8. DNSサーバーでIPアドレスの構成を行った場合は、次に示すように、rootユーザーとしてすべてのノードの/etc/nsswitch.conf中のhosts検索順序を変更します。

    変更前:

    hosts:  files nis dns
    

    変更後:

    hosts:  dns files nis
    
  9. nsswitch.confファイルを変更した後で、次のコマンドを使用して、各ノードでnscdデーモンを再起動します。
    # /sbin/service nscd restart
    

インストール・プロセスを完了した後、クラスタへのアクセスにSCANを使用するようにクライアントを構成します。前述の例を使用すると、クライアントはクラスタへの接続にdocrac-scanを使用します。

2.3.1 ネットワークの構成の検証

ネットワークの構成後、検証テストを実行して、ネットワークが正しく構成されていることを確認します。クラスタのノード間のネットワーク接続に問題があると、Oracle Clusterwareのインストールに失敗します。

Oracle Linuxで動作する2ノードのクラスタにおいてネットワークの構成を検証するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーとして、パブリック・ネットワークおよびプライベート・ネットワークの構成を検証します。クラスタ内のすべてのノードで、インタフェースが同じネットワーク(プライベートまたはパブリック)上に構成されているかどうかを検証します。

    この例では、各ノードで、パブリック・ネットワークにeth0が使用され、プライベート・ネットワークにeth1が使用されます。

    # /sbin/ifconfig
     
    eth0      Link encap:Ethernet  HWaddr 00:0E:0C:08:67:A9  
              inet addr: 192.0.2.100   Bcast:192.0.2.255   Mask:255.255.240.0
              UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
              RX packets:270332689 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
              TX packets:112346591 errors:2 dropped:0 overruns:0 carrier:2
              collisions:202 txqueuelen:1000 
              RX bytes:622032739 (593.2 MB)  TX bytes:2846589958 (2714.7 MB)
              Base address:0x2840 Memory:fe7e0000-fe800000 
     
    eth1      Link encap:Ethernet  HWaddr 00:04:23:A6:CD:59  
              inet addr: 10.10.10.11   Bcast: 10.10.10.255   Mask:255.255.240.0   
              UP BROADCAST RUNNING MULTICAST  MTU:1500  Metric:1
              RX packets:21567028 errors:0 dropped:0 overruns:0 frame:0
              TX packets:15259945 errors:0 dropped:0 overruns:0 carrier:0
              collisions:0 txqueuelen:1000 
              RX bytes:4091201649 (3901.6 MB)  TX bytes:377502797 (360.0 MB)
              Base address:0x2800 Memory:fe880000-fe8a0000 
  2. rootユーザーとしてpingコマンドを使用して、クラスタ内の各ノードからその他すべてのノードに対する接続をテストし、ネットワークの構成を検証します。たとえば、rootユーザーとして、各ノードで次のコマンドを実行します。
    # ping -c 3 racnode1.example.com
    # ping -c 3 racnode1
     
    # ping -c 3 racnode2.example.com
    # ping -c 3 racnode2
    

    Oracle Clusterwareがインストールされ、実行中になるまでは、仮想IP(racnode1-vipracnode2-vip)やSCAN IPに対してpingコマンドを使用しても、ノードから応答は得られません。パブリック・アドレスに対するpingコマンドが失敗した場合は、その問題を解決してから次の手順に進みます。

  3. pingコマンドを使用して、デフォルトのゲートウェイにアクセスできることを確認します。デフォルトのゲートウェイを識別するには、Oracle Linuxのヘルプ・ユーティリティで説明されているように、routeコマンドを使用します。

2.4 オペレーティング・システムおよびソフトウェアの準備

ご使用のサーバーにOracleソフトウェアをインストールする際、Oracle Universal Installerでは、特定のパッケージとソフトウェア・アプリケーションがオペレーティング・システムにインストール済であることを前提としています。

2.4.1 すべてのノードにおける時間の設定について

インストールを開始する前に、すべてのクラスタ・ノードの日時が可能なかぎり同じ日時に設定されていることを確認してください。

クラスタ時刻同期メカニズムによって、すべてのクラスタ・メンバーの内部時計を同期させることができます。Linux上のOracle RACでは、ネットワーク・タイム・プロトコル(NTP)またはOracleクラスタ時刻同期化サービスを使用できます。

NTPは、ネットワークで接続された複数のサーバーのクロックを同期化するためのプロトコルです。NTPを使用すると、ネットワーク上の各サーバーでクライアント・ソフトウェアが実行され、参照NTPサーバーと呼ばれる1つ以上のサーバーに対して定期的にタイミング・リクエストを行います。タイミング・リクエストで戻された情報は、サーバーの時計を調整するために使用されます。クラスタ内のすべてのノードで、同じ参照NTPサーバーを使用する必要があります。

注意:

LinuxまたはUNIXプラットフォーム上でNTPを使用する場合は、-xフラグを使用して構成する必要があります。NTPの構成方法の詳細は、ご使用のプラットフォーム用の『Oracle Grid Infrastructureインストレーションおよびアップグレード・ガイド』を参照してください。

NTPを構成しない場合は、OracleによりCluster Time Synchronization Service (CTSS)が構成および使用されます。CTSSを使用して、すべてのクラスタ・メンバーの内部時計を同期させることもできます。CTSSはクラスタのメンバー・ノードの同期を保ちます。CTSSではクラスタ内の1番目のノードがマスターとされ、クラスタ内のその他すべてのノードはマスター・ノードと同じ時刻になるように同期されます。CTSSでは、同期化に外部時計は使用しません。

注意:

NTPまたはCTSSを使用しても、ノードのシステム時刻を変更したために発生する人為的エラーからは保護されません。

2.4.2 カーネル・パラメータの構成について

OUIでは、様々なカーネル・パラメータの現在の設定をチェックして、Oracle RACのデプロイの最低要件を満たすかどうかを確認します。本番データベース・システムの場合は、使用している特定のシステムのパフォーマンスを最適化するように設定をチューニングすることをお薦めします。

注意:

ご使用のシステムのパラメータ設定またはシェルの制限値が、OUIが示す値よりも大きい場合は、このパラメータの設定を変更しないでください

2.4.3 プラットフォーム固有の構成タスクの実行について

Oracle RACのインストール先とするオペレーティング・システムに固有の、またはクラスタと併用するコンポーネント用の、特別な構成手順の実行が必要になる場合があります。

オペレーティング・システムに固有のインストール・タスクには、次のような例があります。

  • SUSE Linux、Red Hat Enterprise Linux、またはOracle Linuxでは、Hugeページの使用を構成します。

  • Red Hat LinuxシステムまたはOracle Linuxシステムでは、Oracle ClusterwareおよびOracle RACで使用可能なファイル数およびプロセス数が増加するように、oracleユーザーのシェル制限を設定します。

  • HP-UXでは、Xライブラリのシンボリック・リンクを作成します。

  • AIXベースのシステムでは、ネットワーク・チューニング・パラメータを構成します。

2.5 インストール・ディレクトリおよび共有記憶域の構成

Oracle RACでは、Oracle Clusterwareファイルを格納するために共有ファイル・システムへのアクセスが必要です。また、Oracleソフトウェアおよびデータベース・ファイルをインストールする場所を決定する必要もあります。

Oracle Universal Installerを起動する前に、一定の記憶域構成タスクを完了する必要があります。

注意:

サード・パーティ・ベンダーのマルチパス・ディスクでOracle Automatic Storage Managementライブラリ・ドライバ(ASMLIB)を使用するには、追加の構成が必要です。これらの要件の詳細は、ご使用のオペレーティング・システム用のOracle Grid Infrastructureインストレーション・ガイドを参照してください。

2.5.1 Oracleインベントリ・ディレクトリについて

Oracleインベントリ(oraInventory)ディレクトリは、サーバー上のすべてのOracleソフトウェア・インストールの中央インベントリ・レコードです。

oraInventoryディレクトリには、次のものが含まれています。

  • システム上のOracleホーム・ディレクトリ(クラスタ用Oracle Grid InfrastructureおよびOracle Database)のレジストリ。

  • Oracleソフトウェアのインストール時のインストール・ログおよびトレース・ファイル。これらのファイルは、将来参照するためにそれぞれのOracleホームにもコピーされます。

OUIはインストール時にoraInventoryディレクトリを作成します。デフォルトでは、Oracleインベントリ・ディレクトリはOracleベース・ディレクトリの下にインストールされません。これは、Oracleソフトウェアのすべてのインストールで共通のOracleインベントリが共有されるため、Oracleインベントリは全ユーザーに対して1つのみ存在します(ただし、Oracleベース・ディレクトリについては、ソフトウェアのインストールを行うユーザーごとに個別に存在します)。

2.5.2 Oracleインベントリ・ディレクトリの検索

既存のOracleインベントリがある場合は、すべてのOracleソフトウェアのインストールで同じOracleインベントリを使用し、インストールに使用するすべてのOracleソフトウェア・ユーザーにこのディレクトリへの書込み権限があることを確認してください。

システムにOracle中央インベントリ・ディレクトリ(oraInventory)があるかどうかを確認するには、次の手順を実行します。

  1. 次のコマンドを実行して、既存のOracleインベントリ・ディレクトリが存在するかを確認します。
    # more /etc/oraInst.loc
    
    • oraInst.locファイルが存在する場合、このコマンドの出力は次のようになります。

      inventory_loc=/u01/app/oraInventory
      inst_group=oinstall
      

      前述の出力例は、次の内容を示します。

      • inventory_locグループは、Oracleインベントリの場所を示します。

      • inst_groupパラメータは、Oracleインベントリ・グループ名(この例ではoinstall)を示します。

    • Oracleインベントリ・ディレクトリが存在しない場合、ファイルまたはディレクトリが存在しないことを示すエラー・メッセージが表示されます。

  2. Oracleインベントリ・ディレクトリが存在しない場合、Oracleソフトウェアをインストールする前にこれを作成する必要はありません。

2.5.3 クラスタ用Oracle Grid Infrastructureホーム・ディレクトリの作成

インストール中に、クラスタ用Oracle Grid Infrastructureのソフトウェアを格納するホーム・ディレクトリへのパスを指定するように求められます。OUIでは、Oracle ClusterwareおよびOracle ASMを、Grid_homeというディレクトリにインストールします。

Grid_homeに対して指定するディレクトリ・パスが次の要件を満たすことを確認します。

  • 既存のOracleホーム外のパスに作成する必要があります。

  • ユーザー・ホーム・ディレクトリには作成できません。

  • すべてのファイルをrootによって所有可能なパス内のサブディレクトリとして作成するか、一意のパス内に作成します。

  • インストール前にパスを作成する場合は、クラスタ用Oracle Grid Infrastructureのインストール所有者(oracleまたはgrid)が所有し、権限に775が設定されている必要があります。

インストールを開始するには、クラスタ・ディレクトリ用Oracle Grid Infrastructureのファイルシステムに十分なディスク領域が必要です。Gridホーム・ディレクトリに使用するファイル・システムには、4.5GB以上の使用可能なディスク領域が必要です。

Gridホーム・ディレクトリのパスは、すべてのノード上で同じである必要があります。rootユーザーとして、Optimal Flexible Architecture(OFA)ガイドラインに準拠したパスを作成する必要があり、これにより、OUIはインストール中にこのディレクトリを選択できるようになります。

Gridホーム・ディレクトリを作成するには、次の手順を実行します。

オペレーティング・システムにrootユーザーとしてログインし、次のコマンドを入力しますが、ここで、gridはOracle Grid Infrastructureソフトウェアをインストールするユーザーの名前です。

# mkdir -p /u01/app/12.2.0/grid
# chown -R grid:oinstall /u01/app/12.2.0/grid

注意:

LinuxおよびUNIXシステムで、Gridホーム・ディレクトリがOracleベース・ディレクトリのサブディレクトリでないことを確認する必要があります。Oracle ClusterwareをOracleベース・ディレクトリにインストールすると、インストール・エラーが発生します。

2.5.4 Oracleベース・ディレクトリの作成

Oracleソフトウェアをインストールする前に、Oracleベース・ディレクトリを構成する必要があります。OUIでは、Oracleベース・ディレクトリをOracleインベントリ・ディレクトリの場所の決定の他、Oracle RACのインストールにも使用します。

Oracle Universal Installer (OUI)では、指定した場所にOracleベース・ディレクトリが作成されます。このディレクトリは、インストールを実行するユーザーによって所有されます。Oracleベース・ディレクトリ(ORACLE_BASE)によって、Oracleインストール環境の編成が容易になり、複数データベースのインストール環境でOptimal Flexible Architecture(OFA)構成を維持できるようになります。

OFAガイドラインでは、Oracleベース・ディレクトリに対して次のようなパスを使用することが推奨されています。

/mount_point/app/user

前述のパスの例では、変数mount_pointはOracleソフトウェアをインストールするファイル・システムのマウント・ポイント・ディレクトリ、userはOracleソフトウェア所有者(通常はoracle)です。OUIにこのパスをOracleソフトウェア・パスとして認識させるには、/u01/appのようにu0[1-9]/app形式にする必要があります。

Oracleベース・ディレクトリのパスは、すべてのノード上で同じである必要があります。Oracleベース・ディレクトリに対する権限は、750以上にする必要があります。

/u01としてマウントするファイル・システムにはクラスタ用Oracle Grid InfrastructureとOracle RACソフトウェアの両方に必要な空き領域があるとします。また、/u01/app/oracle/ディレクトリをOracleベース・ディレクトリにします。すべてのOracleソフトウェアをインストールするユーザーは、oracleユーザーです。

Oracleベース・ディレクトリを作成するには、次の手順を実行します。

  1. rootユーザーでログインします。
  2. mkdirコマンドを使用して、Oracleベース・ディレクトリへのパスを作成します。
    # mkdir -p /u01/app/oracle/
    
  3. Oracleベース・パスの所有権をOracleソフトウェア所有者(oracle)に変更します。
    # chown -R oracle:oinstall /u01/app/oracle/
    
  4. Oracleベース・ディレクトリに対する権限を775に変更します。
    # chmod -R 775 /u01/app/oracle/
    

2.5.5 Oracleホーム・ディレクトリについて

Oracleホーム・ディレクトリは、Oracle RACソフトウェアがインストールされる場所です。

ローカル・ファイル・システムで作成されたOracleホーム・ディレクトリ(/u01/app/oracle/product/12.2.0/dbhome_1など)を使用できます。クラスタ内のすべてのノードに、同じディレクトリが存在する必要があります。インストール前にこれらのディレクトリを作成する必要はありません。デフォルトで、インストーラはOracleホーム用にOracleベース・ディレクトリのサブディレクトリを提示します。

共有Oracleホームを使用することもできます。共有Oracleホームの場所は、ネットワーク記憶域上でも、Oracle Automatic Storage Managementクラスタ・ファイル・システム(Oracle ACFS)などのサポートされているクラスタ・ファイル・システム上でもかまいません。Oracle ACFSの詳細は、『Oracle Automatic Storage Management管理者ガイド』を参照してください。

Oracleホーム・ディレクトリに対してローカル・ファイル・システムを使用するときに、同じサーバーに異なるリリースのOracle RACまたはOracle Databaseをインストールする場合、各ソフトウェア・インストールで個別のOracleホーム・ディレクトリを使用する必要があります。同じ製品または異なる製品の複数のリリースは、異なるOracleホームから同時に実行できます。あるOracleホームにインストールされた製品は、別のOracleホームにインストールされた製品と競合または相互作用しません。

インストール済のソフトウェアに異なるOracleホームを使用することによって、別のOracleホームのソフトウェアに影響を与えずに、あるホームのOracleソフトウェアのメンテナンス操作を実行できます。ただし、各Oracleホームのアップグレードまたはパッチの適用は個別に行う必要があるため、ソフトウェアのメンテナンス・コストは増大します。

2.5.6 共有記憶域の構成

クラスタにある各ノードは、Oracle Clusterware (Oracle Cluster Registryと投票ディスク)ファイルおよびOracle Databaseファイルを格納するための外部共有ディスクを必要とします。

サポートされる共有記憶域のタイプは、使用しているプラットフォームによって異なります。次に例を示します。

  • Oracle自動ストレージ管理(強く推奨)

  • サポートされたクラスタ・ファイル・システム。OCFS2 (Linux版)またはIBMプラットフォームのGeneral Parallel File System (GPFS)

  • ネットワーク・ファイル・システム(NFS)。POWER上のLinux、またはLinuxベースのIBM zSeriesではサポート対象外

  • (アップグレードの場合のみ)ブロック・デバイスで構成される共有ディスクのパーティション。ブロック・デバイスは、Linuxファイル・システムを使用してマウントされていないディスク・パーティションです。これらのパーティションには、Oracle ClusterwareおよびOracle RACによって直接書込みが行われます。

    注意:

    OUIを使用して、Oracle Clusterwareファイルをブロック・デバイスまたはRAWデバイスにインストールすることはできません。Oracle Automatic Storage Managementクラスタ・ファイル・システム(Oracle ACFS)に、Oracle Clusterwareのバイナリおよびファイルを配置することはできません。

OCFS2を使用してOracle Clusterwareファイルを格納する場合、オペレーティング・システムのバージョンに適したバージョンのOCFS2を使用する必要があります。OCFS2はOracle LinuxおよびRed Hat Linuxのカーネルのバージョン2.6で動作します。

すべてのインストールに対して、Oracle ClusterwareファイルおよびOracle Databaseファイルで使用する記憶域オプションを選択する必要があります。このマニュアルの例では、Oracle ClusterwareおよびOracle Databaseファイルの格納にOracle ASMを使用しています。クラスタ用Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACソフトウェアは、共有ファイル・システムではなく、各ノードに対してローカルなディスクにインストールされます。

このガイドでは、Oracle ASMで使用する共有ディスクを構成するための2つの異なる方法について説明します。

注意:

Oracle RACのインストール用にサポートされる記憶域オプションの最新情報は、My Oracle Supportの「動作保証」ページを参照してください。

https://support.oracle.com

関連項目:

2.5.7 NASデバイスでのOracle Automatic Storage Management用のファイルの作成

動作保証されているNASストレージ・デバイスがある場合は、NFSマウント・ディレクトリにゼロ埋込みファイルを作成し、そのファイルをOracle ASMディスク・グループのディスク・デバイスとして使用できます。

Oracle ASMディスクにASM検出パスを指定していることを確認してください。
Oracle Grid Infrastructure 12cリリース2 (12.2)のインストール時に、Oracle Universal Installer (OUI)は指定のNFSマウント・ディレクトリにファイルを作成できます。次の手順は、NFSマウント・ディレクトリに手動でファイルを作成してOracle ASMディスク・グループのディスク・デバイスとして使用する方法を説明しています。
  1. 必要に応じて、NASデバイスのディスク・グループ・ファイル用にエクスポート・ディレクトリを作成します。
  2. ユーザーをrootに切り替えます。
  3. マウント・ポイント・ディレクトリをローカル・システムに作成します。

    次に例を示します。

    # mkdir -p /mnt/oracleasm
  4. システムの再起動時にNFSファイル・システムが確実にマウントされるように、マウント・ファイル/etc/fstabにファイル・システムのエントリを追加します。
  5. 次のようなコマンドを入力し、ローカル・システムでNFSをマウントします。
    # mount /mnt/oracleasm
  6. 作成するディスク・グループの名前を選択し、ディスク・グループ名をディレクトリ名として使用して、NFSファイル・システム上のファイル用のディレクトリを作成します。
    たとえば、salesデータベースのディスク・グループを設定する場合、次のようになります。
    # mkdir /mnt/oracleasm/sales1
  7. 次のようなコマンドを使用して、このディレクトリに必要な数のゼロ埋込みファイルを作成します。
    # dd if=/dev/zero 
    of=/mnt/oracleasm/sales1/disk1 bs=1024k 
    count=1000 

    この例では、NFSファイル・システムに1GBのファイルを作成します。作成するディスク・グループが外部冗長性であれば1つ、通常の冗長性であれば2つ、高い冗長性であれば3つのファイルを作成する必要があります。

    注意:

    同一のNASデバイスに複数のゼロ埋込みファイルを作成しても、NASの障害に対する保護策にはなりません。かわりに、各NASデバイスに1つのファイルを作成し、Oracle ASMテクノロジを使用してミラーしてください。
  8. 作成したディレクトリとファイルの所有者、グループおよび権限を変更するには、次のようなコマンドを入力します。
    # chown -R grid:asmadmin /mnt/oracleasm
    # chmod -R 660 /mnt/oracleasm
    この例では、インストール所有者はgridでOSASMグループはasmadminです。
  9. Oracle Databaseのインストール中に、Oracle ASMディスク検出文字列を編集して、作成したファイル名に一致する正規表現を指定します。

    次に例を示します。

    /mnt/oracleasm/sales1/

2.5.8 Oracle ASMとOracle ASMフィルタ・ドライバについて

Oracle Grid Infrastructureのインストール時に、Oracle Automatic Storage Management Filter Driver(Oracle ASMFD)のインストールと構成を選択できます。Oracle ASMFDにより、Oracle ASMディスクとディスク・グループ内のファイルの破損を防ぐことができます。

Oracle ASMフィルタ・ドライバ(Oracle ASMFD)は、Oracleソフトウェアによって発行されたのではない書込みI/Oリクエストを拒否します。この書込みフィルタによって、管理権限を持つユーザーが誤ってOracle ASMディスクに書き込むことがなくなり、Oracle ASMディスクとディスク・グループ内のファイルの破損が防がれます。ディスク・パーティションの場合、ユーザーがパーティション表に触っていないとして、Oracle ASMFDによって管理されるディスク上の領域が保護されます。

Oracle ASMFDを使用すると、システムを再起動するたびにOracle ASMで使用するディスク・デバイスをリバインドする必要がなくなるため、ディスク・デバイスの構成および管理が簡単になります。

お使いのLinuxシステムにOracle ASMLIBが存在している場合、Oracle Grid Infrastructureをインストールする前にOracle ASMLIBを削除し、Oracle Grid Infrastructureのインストール時にOracle ASMFDのインストールおよび構成を選択できるようにします。

注意:

Oracle ASMFDは、Linux x86–64およびOracle Solarisオペレーティング・システムでサポートされています。

2.5.9 Oracle ASMFDを使用したOracle ASM用のディスクの構成

Oracle ASMフィルタ・ドライバ(Oracle ASMFD)を使用すると、システムを再起動するたびにOracle ASMで使用するディスク・デバイスをリバインドする必要がなくなるため、ディスク・デバイスの構成および管理が簡単になります。

Oracle ASMFDを使用してディスクを構成する全体プロセスは次のとおりです。

  1. Oracle Grid InfrastructureソフトウェアをOracle Gridホーム・ディレクトリに解凍します。

  2. Oracle ASMコマンド・ツール(ASMCMD)を使用して、インストール時にディスク・グループに使用するディスクにラベルを付けます。

  3. Oracle Grid Infrastructureをインストールして構成します。インストール時に、ディスクとOracle ASMFDを使用するオプションを選択します。