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Oracle® Enterprise Manager Cloud Control拡張プログラマーズ・ガイド
13cリリース2
E92081-01
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3 管理対象ターゲットについて

この章では、管理対象ターゲットに関する情報を示します。内容は次のとおりです。

3.1 管理対象ターゲットの概要

各プラグインは、Enterprise Managerで監視できる新しいタイプのターゲットを定義します。ターゲット、すなわちターゲット・インスタンスは、企業内で監視できるエンティティとして定義できます。管理対象ターゲットは、Enterprise Managerが監視および管理できるエンティティです。ターゲットの例には、ホスト、データベース、アプリケーション・サーバー、アプリケーションおよびリスナーがあります。環境の変化につれて、必要に応じてEnterprise Managerに対してターゲットを追加および削除できます。

一般的に使用される管理対象ターゲットの多くは、Enterprise Managerのベース製品の一部として定義されています。これらは、管理可能な製品がインストールされると、管理用に自動的に事前構成されます。Oracleアプリケーション、Oracleデータベース、Oracleアプリケーション・サーバー、Oracle製品を実行する多くのオペレーティング・システムは、すべて管理可能なターゲットとして分類されます。

ターゲットが事前定義されていても(監視レベル、しきい値、通知ルールなど)、ビジネス要件に合うように必要に応じてEnterprise Managerをカスタマイズすることもできます。つまり、拡張インスツルメンテーションを実行して、標準的なターゲット構成で提供されるEnterprise Managerの豊富な管理機能により多くアクセスできます。

管理対象ターゲットは、次のとおりです。

  • 管理を必要とするアプリケーション

  • 個別に構成または管理できる、アプリケーションのサブシステム

  • 基礎となるアプリケーション・ハードウェア・トポロジの管理コンポーネント

3.2 ターゲット・モデルについて

ターゲット・モデルは、様々なタイプのエンティティで構成されていますが、エンティティはすべて、ターゲットのセキュリティ・インフラストラクチャによってもたらされるセキュリティの利点を引き出すためにターゲットとしてモデル化されます。たとえば、システム、サービスおよびグループはすべてターゲットとしてモデル化されます。各種エンティティの区別は、時間の経過とともに曖昧になり、ターゲットの概念全体に含まれてしまいます。そのため、別のプラグイン開発者にはターゲットが異なるものを意味することがあります。

どの種類のエンティティが実際にモデル化されているかを明確に区別するために、Enterprise Managerでは、管理可能なエンティティ(ME)クラスと呼ばれる上位レベル・クラスの概念を採用して、各エンティティを分類しています。各クラスには、明確に定義された定義および機能があります。定義を調べると、モデル化されたエンティティが分類されるクラスを把握することができます。

たとえば、今日、冗長性グループはグループであるとよく間違えられますが、実はシステムです。グループおよびシステムの定義を追跡すると、どのクラスに分類されるか明確になります。

3.2.1 管理可能なエンティティ(ME)

Enterprise Managerのコンテキストでは、管理可能なエンティティとはEnterprise Managerが管理できるエンティティです。これは、エンティティがCloud Controlアプリケーションでエンド・ユーザーになんらかの形式で公開され、適切に定義された属性とセマンティクスを持つことを意味します。

Enterprise Managerには、様々なクラスの管理可能なエンティティがあります。管理可能なエンティティ・クラスにはそれぞれ次の特性があります。

  • 定義: エンティティ・クラスのルールおよび固有の属性を指定します。

  • 表現: Enterprise Managerデータ・モデルでそのクラスのエンティティをどのように表現し、エンドユーザーに公開するかを処理します。

  • Enterprise Managerの機能: そのクラスのエンティティに対してEnterprise Managerに用意されている機能です。

Enterprise Managerでは、すべての管理可能なエンティティに次の共通機能があります。共通機能に加えて、それぞれのMEにリストされる機能があります。

  • Enterprise Managerセキュリティ・モデルで保護されます。

  • すべて、他のMEとの関係(アソシエーション)に追加できます。クラスとともに、注意する制限がいくつかあります。

  • 一意のIDを持っています。

  • プロパティ(名前/値ペア)をMEにアタッチできます。

Enterprise Managerでは、管理可能なエンティティは次のクラスのいずれかにのみ分類されます。将来のリリースでは、その他のクラスが追加される可能性があります。エンティティがどのクラスにも分類されない場合は、管理可能なエンティティではないか、サポートを必要とする新しいクラスのMEです。

  • 管理対象ターゲット

  • サービス

  • システム

  • グループ

  • ターゲット・コンポーネント

管理可能なエンティティは、次に説明する複数の状態になる可能性があります。

  • 管理対象状態または管理未定(NYM)状態

    ターゲットが検出されると、最初は、NYMエンティティとして管理リポジトリにロードされます。この状態では、エンティティはアソシエーションを保持できますが、管理エージェントによってまだ管理されていません。ユーザーは、検出結果ページに移動して、必須の資格証明とともに管理エージェントに割り当てることができます。その結果、エンティティは管理対象状態に移行します。また、Enterprise Manager UIからターゲット検出を手動で起動し、ターゲットの必要なプロパティをすべて取得または指定して管理対象ターゲットとして直接保存することもできます。自動検出は、NYMターゲットが存在するようになる1つのユースケースです。

  • 存在のみ状態

    Oracleでサポートされない検出されたエンティティは存在のみ状態になります。Oracleで管理できないことを除いては、NYMエンティティに似ています。

    プラグイン開発者は、このターゲット・タイプを登録するときに、is_existenceタイプ・プロパティをターゲット・タイプ・メタデータ・ファイルに追加する必要があります。タイプ・プロパティおよびターゲット・タイプ・メタデータ・ファイルの詳細は、Oracle Enterprise Managerオンライン・ドキュメント・セットの拡張性ページで、Cloud Control拡張プログラマーズ・リファレンスの「ターゲット・メタデータ・ファイルの作成」を参照してください。

    http://www.oracle.com/pls/em131/homepage
    

注意:

EDKを使用しているプラグイン開発者は、Enterprise Manager内で管理される新しいターゲット・タイプを定義できますが、これは管理対象ターゲットおよびターゲット・コンポーネントに限定されます。新しいインストール・ホーム、サービス、システムまたはグループ・タイプを定義する機能は、EDKの一部としてサポートされていません。

各クラスの定義および機能は、次の各項を参照してください。

3.2.2 管理対象ターゲット

管理対象ターゲットは、本質的に次の条件をすべて満たす(また、モデリングに適している)Enterprise Manager内の管理可能なエンティティです。これらは、エンティティに固有で、Enterprise Managerでの表現からは導出されません。

  • 可用性(稼働中/停止ステータス)。

  • 収集できる構成属性

  • レスポンス時間など、測定できるパフォーマンス属性

管理対象ターゲットの例には、ホスト、データベース、リスナーなどがあります。

ターゲット・タイプは、「ターゲット・アイデンティティ」で説明されているターゲット・メタデータXMLを使用して登録できます。

3.2.2.1 ターゲット・アイデンティティ

このリリースのEnterprise Managerでは、履歴を失わずにターゲットを新しい名前に変更できます。Enterprise Managerターゲット名は、Enterprise Managerでターゲットを探すのに後で使用できるターゲットに関連付けられた外部データとともに格納する必要はありません。

3.2.2.2 ライフサイクル・ステータス

ライフサイクル・ステータス・プロパティは、エンドユーザーによって次のいずれかの値に設定されます。

  • 開発

  • テスト

  • リリース

  • 本番

たとえば、このプロパティはイベントの優先処理で使用できます。このプロパティを使用するのに何もする必要はありません。

3.2.3 グループ

グループは管理可能なエンティティの集合で、エンドユーザーは多数のMEを1つの論理ユニットとして管理できるようになります。グループのメンバー間に必須のアソシエーションはありません。そのため、グループのメンバーは、メンバー間やメンバーを含むグループと固有の関係を持っていたり、持っていなかったりします。グループは、メンバーとの包含アソシエーションを持っています。

ユーザーは、グループのメンバーシップを(直接追加または基準に基づき)決定するため、設計時にグループ構成について何も仮定しません。

グループは、エンドユーザーによって非定型な方法でまたは特定のビジネス基準(ライン・オブ・ビジネス、テスト対本番、ターゲット・バージョンなどに)を指定してアセンブルできます。

権限の観点から、次の2つの異なるタイプのグループがあります。

  • 通常のグループ

    グループに対する表示権限のみがメンバーに伝播されます。

  • 権限伝播グループ

    グループに対するすべての権限がメンバーに伝播されます。

3.2.4 システム

システムは、本質的に関連し、連携して1つ以上のビジネス機能またはサービスを提供する管理可能なエンティティの集合です。

システムのメンバーは、明確に定義された関係を持っています。これらの関係は、アソシエーションによって指定されます。

システムとグループの主な相違点は、システムは本質的に関連するエンティティの集合であるのに対し、グループは主に多数のエンティティを1つとして管理するために作成されることです。システムにはグループを含めることができませんが、グループにはシステムを含めることができます。

3.2.4.1 システムの状態

システムは、基礎となるターゲットおよび必須のアソシエーションがすべて検出されている場合、完全に形成されます。必須のターゲットおよびアソシエーションのいずれかが検出されなかった場合、システムは部分的に形成されます。根本的な論理的問題のためにシステムが作成できない場合、システムは破損します。

システム操作は、完全に形成されたシステムに対してのみ可能です。システム操作は、部分的に形成されたシステムに対しても実行できます。部分的に形成されたシステムに対して操作をサポートするかどうかは自由に決定できます。

可用性は、完全に形成されたシステムについてのみ計算されます。チャートおよびトポロジは、部分的に形成されたシステムまたは破損したシステムに対しても表示できます。根本原因分析(RCA)および他の診断ユーティリティは、完全に形成されたシステムに対してのみ確実に機能します。

3.2.5 コンポジット・ターゲット

コンポジット・ターゲットは、グループとして管理される多数の関連ターゲットで構成されているターゲットです。関連ターゲットは、しばしばコンポジット・ターゲットの子またはメンバーと呼ばれます。プラグインの一部として、コンポジット・ターゲット自体を記述する様々なターゲット・タイプの他、その子のターゲット・タイプを定義します。

コンポジット・ターゲットは、ターゲットの固有グループで、そのセマンティクスはプラグイン自体に記述されます。Enterprise Managerでは、ターゲット・ナビゲータまたはコンポジット・ターゲットのトポロジ・ビューのいずれかでコンポジットと子の関係を視覚的に表す機能以外、追加のセマンティクスをコンポジット・ターゲットに割り当てません。その他のセマンティクスは、コンポジット・メトリックへのデータの集計、メンバー間のアソシエーション、またはコンポジットの子にまたがる操作(タスクまたはジョブ)として、プラグイン・コードで実施されます。

一般的なコンポジットの例の1つは、冗長グループのコンポジットです。この場合、一連の関連ターゲットにより、1つのコンポジット・エンティティとして管理されるグループが形成されます。グループの各メンバーは、別個に管理することもグループ(コンポジット)自体の一部として管理することもできます。フェイルオーバーの発生方法、監視情報の集計方法など、グループの動作方法の特定のセマンティクスは、プラグイン内で定義されているロジックの一部です。Enterprise Managerでは、追加のセマンティクスをコンポジット定義から推論しようとしませんが、コンポジットの一連のメンバーをまとめて表示し、メンバーと他のターゲット間のアソシエーション、メンバーとコンポジット・ターゲット自体間のアソシエーションを管理するためのサービスと、コンポジット・ターゲットまたはそのメンバーに関するメンバーシップまたはアソシエーションの詳細を取得するためのサービスを提供できます。

3.2.6 システム・ターゲット

コンポジット・ターゲットに加えて、このリリースのEDKでは、メタデータ・プラグインの一部としてシステム・ターゲット・タイプの定義に対するサポートを追加します。コンポジット・ターゲットを使用するとグループとして管理する関連ターゲットのセットを定義できますが、システム・ターゲット・タイプにはEnterprise Managerに付属する追加のセマンティクスに対するサポートが含まれています。

システム・ターゲットは、ITインフラストラクチャで実行されるアプリケーションのコンポーネントである監視対象サービスを定義するための基礎です。ITインフラストラクチャは、サービスが実行される一連のシステムとしてモデル化されます。したがって、Enterprise Managerでは、システムを表示および監視する機能、システムで実行されているサービスに対するサービス失敗の根本原因分析などの操作を実行する機能がサポートされています。

3.2.7 サービス

サービスは、ターゲットまたはシステムによって提供されるビジネス機能のアクセス・ポイントをモデル化します。サービスはゼロまたは1つのシステムと関連付けることができます。サービスでは、ビーコンまたはシステム・コンポーネントを使用して可用性およびパフォーマンス・データを計算できます。

たとえば、Beehiveアプリケーション・システムの電子メール・サービスではビーコン・トランザクションを使用しますが、SMTPプロトコルを使用して電子メールの可用性をチェックするためです。あるいは、サービスが依存するシステムの主要コンポーネントを定義して条件すべての主要コンポーネントが稼働中またはいずれかの主要コンポーネントが稼働中を指定することで、エンドユーザー・システムのサービス可用性を定義することもできます。

Enterprise Managerで管理されるシステムに関連付けられていないサービスの例に、リモートWebサービスがあります。Enterprise Managerでは、基礎となるシステムが不明なインフラストラクチャであってもEnterprise Managerによって管理されるインフラストラクチャであっても、可用性およびパフォーマンスのチェックにビーコン・トランザクションを使用してサービスを監視できます。

これにより、Enterprise Managerユーザーは、リモート・サービスをアプリケーションのトポロジに含めることができ、それらのサービスの監視をアプリケーション監視ソリューションの一部に組み込むことができます。

3.2.8 サポートされる管理機能

次の表に、Enterprise Managerでサポートされる様々なエンティティ・タイプごとにサポートされる機能のタイプを示します。メンバーのみとは、操作が、ME自体ではなく、MEのメンバーに対するものであることを意味します。たとえば、ジョブはグループのメンバーに対して実行できますが、ジョブがグループに対して発行されてもグループ自体に対しては実行できません。

機能 ターゲット NYM グループ システム(検出) システム(ユーザー定義) サービス

可用性(稼働中/停止ステータス)

Y

N

N

Y (オプション)

N

Y

パフォーマンス・メトリック(収集およびロールアップ)

Y

N

ロールアップのみ

Y

ロールアップのみ

Y

構成の収集(保存/比較操作)

Y

N

N

Y

メンバーのみ

Y

コンプライアンス・ルールおよびコンプライアンス標準

Y

N

Y

Y

Y

Y

アソシエーションに追加可能

Y

Y

メンバーとの包含に制限

Y

ユーザー定義のみ

Y

アソシエーション導出

Y

N

N

Y

N

Y

ジョブ

Y

N

メンバーのみ

Y

メンバーのみ

Y

イベント

Y

N

メンバーのみ

Y

メンバーのみ

Y

パッチ適用、プロビジョニング

Y

N

メンバーのみ

Y

メンバーのみ

Y

ブラックアウト

Y

N

メンバーのみ

Y

メンバーのみ

Y

テンプレート

Y

N

メンバーのみ

Y

メンバーのみ

Y

自動検出(Enterprise Managerによってエンティティを自動的に検出または構成可能)

Y

Y

N

Y

N

Y

権限

Y

Y

Y

Y

Y

Y

権限の伝播(権限をメンバーに伝播)

N

N

Y (オプション)

Y (オプション)

Y (表示のみ)

N

メトリック拡張

Y

N

N

Y

N

Y