Oracle® Fusion Middleware Oracle Business Intelligence Enterprise Editionシステム管理者ガイド 12c (12.2.1.3.0) E90019-04 |
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システム容量を拡大または縮小するには、クラスタで使用できるプロセスの数を調整します。リソースの効率的な使用によるシステム容量の拡大または縮小はスケーラビリティと呼ばれています。スケーラブルなシステムは、レスポンス時間とスループットを低下させることなく、リクエストの増加に対処できます。
この章の内容は次のとおりです。
スケーリングとは、Oracle Business Intelligenceクライアントのリクエストを処理できるプロセス数を変更することによって、システムの容量を増大したり縮小したりするプロセスのことを指します。
容量は、システムをスケールアウトすると増大され、スケールインすると縮小されます。スケーリングは、高可用性を目的としたデプロイメントの構成にも重要な部分となります。システム容量を拡大または縮小するには、クラスタで使用できるプロセスの数を調整します。クラスタは、同時に動作し、連携して高度なスケーラビリティと信頼性を実現する複数のサーバー・インスタンスで構成されます。
Oracle Business Intelligence環境のスケーリングは、主に、リソース集中型のシステム・プロセスおよびJavaコンポーネントに適用されます。さらに多くのプロセスをデプロイすることにより、Oracle Business Intelligenceではレスポンスを低下させることなく、より多くのリクエストを処理できるようになります。
垂直方向のスケーリングでは、同じコンピュータ上にOracle Business Intelligenceコンポーネントを追加して、そのコンピュータでのハードウェア・リソースの使用を増大します。たとえば、特定のコンピュータ上でリクエストを処理するシステム・コンポーネントの数を増やすことによって、Oracle Business Intelligenceが垂直方向にスケーリングされ、その結果、コンピュータでのハードウェア・リソースの使用が増大します。
水平方向のスケーリングでは、使用している環境にコンピュータを追加します。たとえば、複数のコンピュータにリクエストの処理を分散することで、Oracle Business Intelligenceが水平方向にスケーリングされます。
Oracle Business Intelligence Javaコンポーネントおよびシステム・コンポーネントの両方をスケーリングできます。「管理サーバー、管理対象サーバーおよびシステム・コンポーネントについて」を参照してください。
水平方向および垂直方向の両方のスケールアウトをサポートしているのは、Oracle BIプレゼンテーション・サービス、Oracle BIサーバー、およびJavaHostの3つのシステム・コンポーネントです。
Oracle BIスケジューラは、プレゼンテーション・サービスおよびOracle BIサーバーのプロセスを利用してコンピュータを集中的に使用する作業を実行します。一方、クラスタ・コントローラは他のコンポーネントを管理するのみで、コンピュータを集中的に使用することはありません。そのため、Oracle BIスケジューラまたはクラスタ・コントローラをスケールアウトする必要はありません。これら2つのプロセスは高可用性デプロイメントの必要に応じて配信できますが、容量をスケーリングする必要はありません。
プロセスをスケールアウトするタイミング
システム・コンポーネントおよび管理対象サーバーは実際の負荷に基づいてスケールアウトします。Fusion Middleware Controlで提供されるパフォーマンス・メトリックを使用してプロセスの状態を監視し、パフォーマンス向上のために容量を増大するタイミングを判断できます。たとえば、CPU使用率が50%を超えたとき、またはメモリー使用量がシステムの上限に近いときは、デプロイメントへのコンピュータの追加が必要になります。システム・メトリックの表示の詳細は、「サービス・レベルの監視」を参照してください。
可用性の高いOracle Business Intelligence環境を構成するには、プロセスをスケールアウトして冗長性を実現する必要もあります。「高可用を実現するOracle Business Intelligenceのデプロイ」を参照してください。
スケーリング対象プロセス
Oracle Business Intelligenceでは、Oracle Business Intelligenceインストーラ(水平方向のスケールアウト)およびWebLogic Scripting Tool (WLST)(垂直方向および水平方向のシステム・コンポーネントのスケーリング)の組合せによるスケールアウトをサポートしています。
管理対象サーバーおよびシステム・コンポーネントをスケーリングする場合は、次のガイドラインに従ってください。
デプロイメント内の各コンピュータに対して管理対象サーバーが少なくとも1つ実行されていることを確認します。インストール中にOracle Business Intelligence構成アシスタントが1つの管理対象サーバーをプロビジョニングします。これは無効にしたり削除したりしないでください。
多くのJavaコンポーネントはシステムの重要な処理を実行しているため、それを個別に削除することはしないでください。各管理対象サーバーでJavaコンポーネントの完全なセットを保持してください。使用されないコンポーネントがパフォーマンスに重要な影響を与える可能性は低いです。
各コンピュータで実行するシステム・コンポーネントは実際の負荷に基づいて決定できます。デプロイメント内の特定のコンピュータには、0個以上の各コンポーネント・タイプを配置できます。たとえば、Oracle BIサーバー・コンポーネントを3つ、JavaHostコンポーネントを2つ、プレゼンテーション・サービス・コンポーネントを4つ配置できます。デフォルトでコンポーネントの対称セットがスケールアウトしたコンピュータで作成されます。
管理対象サーバーまたはシステム・コンポーネントとともに構成済HTTPサーバーをスケーリングする必要はありません。HTTPサーバーの構成は、実行するプロセス数とは無関係です。
特定のOracle Business Intelligenceコンポーネントのインスタンスが複数ある場合、グローバル・キャッシュおよび共有Oracle BIスケジューラ・スクリプトを含むファイルとディレクトリが共有ストレージ・デバイス(NASまたはSANなど)にあります。
共有されたファイルおよびディレクトリを使用すると、システムの管理(Oracle Business Intelligenceコンポーネントのスケールアウトを含む)が単純化されます(次の図を参照)。
この項では、次の項目について説明します。
Oracle Business Intelligenceメタデータは、シングルトン・データ・ディレクトリ(SDD)に格納されています。
デフォルトの場所は次の場所に設定されます。
DOMAIN_HOME/bidata
SDDパスが次のbi-environment.xmlファイルで定義されます。
DOMAIN_HOME/config/fmwconfig/bienv/core/bi-environment.xml
「Oracle Business Intelligenceの主なディレクトリ」を参照してください。
SDDがすべてのホスト・コンピュータに構成されます。
グローバル・キャッシュとは、クラスタに参加しているすべてのOracle BIサーバーが共有する問合せキャッシュです。
「グローバル・キャッシュについて」を参照してください。
クラスタに参加しているすべてのOracle BIサーバーでキャッシュのシーディング・イベントおよびパージ・イベントを共有するようにグローバル・キャッシュを構成することをお薦めします。
Oracle Business Intelligenceシステム・コンポーネントの数を変更して、容量要件を満たすことができます。
使用するクラスタ化されたコンポーネントの共有ファイルおよびディレクトリを最初に構成する必要があります(「共有ファイルとディレクトリの設定」を参照)。
BIシステム・コンポーネントの数を変更して容量要件を満たすことができます。
この項で説明するコマンドは、上級のユーザーのみ使用する必要があります。
システムが停止している場合(オフライン)、BIシステム・コンポーネントをコンピュータに追加できます。
注意:
SSLが構成されている場合は、Oracle Business Intelligence Enterprise Editionセキュリティ・ガイドのOracle Business IntelligenceでのSSLの構成に関する項を参照してください。前提:
適切なファイル・システム権限を持つ必要があります。
特に指定されていないかぎり、ポートはOracle Business Intelligenceポート範囲から割り当てられます。
サポートされているシステム・コンポーネント・タイプは、OBIPS (BIプレゼンテーション・サーバー)、OBICCS (クラスタ・コントローラ)、OBIJH (BI JavaHost)およびOBISCH (BIスケジューラ)です。
OBISインスタンスがサービス・インスタンスの一部として管理されるため、OBISはスケール・アウトされません。
「システム・コンポーネントについて」を参照してください。
コンポーネント・タイプOBICCS、OBISCHごとに2つのインスタンスのみ作成できます(1つがアクティブ、1つがパッシブ)。このため、別のホストに別のインスタンスを追加する必要がある場合、既存のインスタンスを最初に削除する必要があります。
事後状態
新しいコンポーネントが作成されます。
新しいポートが割り当てられます。
新しいコンポーネントが起動します。
「WLST (WebLogic Scripting Tool)の使用」を参照してください。
コンピュータから不要または非アクティブのプレゼンテーション・サービスシステム・コンポーネント・インスタンスを削除できます。
前提:
適切なファイル・システム(オフライン)権限があるかぎり、システムが停止している場合(オフライン)にコマンドを実行します。
サポートされているシステム・コンポーネント・タイプは、OBIPS (BIプレゼンテーション・サーバー)、OBICCS (BIクラスタ・コントローラ)、OBIJH (BI JavaHost)およびOBISCH (BIスケジューラ)です。「システム・コンポーネントについて」を参照してください。
デプロイメント内に特定のOracle Business Intelligenceコンポーネントのインスタンスが複数ある場合は、まず、クラスタ化された各コンポーネントで使用する共有ファイルとディレクトリを構成する必要があります。
「共有ファイルとディレクトリの設定」を参照してください。
水平方向にスケール・アウトした後、通常は、複数の管理対象サーバー全体にリクエストを配信するためにHTTPサーバーおよびロード・バランサを構成します。『Oracle WebLogic Serverクラスタの管理』のクラスタでのロード・バランシングに関する項を参照してください。フロント・エンドのロード・バランサが設定されている場合、BIクラスタ(bi_cluster)のWebLogic Serverフロントエンド・ホストおよびポートを設定する必要があります。
この項で説明するコマンドは、上級のユーザーのみ使用する必要があります。追加のホストを構成する場合に可用性コマンドがプロセスの対称セットを自動的に作成することに注意してください。
「WLST (WebLogic Scripting Tool)の使用」を参照してください。
注意:
SSLが構成されている場合に新しいノードをクラスタに追加するには、新しいクラスタにスケール・アウトする必要があります(「新しいコンピュータの追加」を参照)。次に、SSLが正しく設定されていることを確認します(『Oracle Business Intelligence Enterprise Editionセキュリティ・ガイド』のOracle Business IntelligenceのSSLの構成に関する項を参照)。
新しいコンピュータを追加し、複数のコンピュータにまたがってBIクラスタを拡張することで、可用性および容量を向上できます。
前提
新しいコンピュータは、同じインストールの前提条件(たとえば、オペレーティング・システム、メモリー)を満たす必要があります。
SDDを設定している必要があります。
ORACLE_HOMEは、両方のコンピュータで同じ絶対パスを指定する必要があります。
DOMAIN_HOMEが両方のホストで同じであることは必須ではありませんが、お薦めします。
アクティブ/アクティブ・コンポーネントの対称セットが新しいコンピュータに作成されます。
BIシステムを停止する必要があります(オフライン)。
適切なファイル・システム(オフライン)またはWeblogic管理者(オンライン)権限を持つ必要があります。
同じポートが元のホストに割り当てられます。
管理対象サーバーは既存のOracle Business Intelligenceクラスタに追加されます。
クラスタ・コントローラ、スケジューラおよびBIサーバー・マスターが変更されていません。
オプションのベース・コンピュータおよびサーバー・パラメータが提供され、m1/bi_server1が削除されている場合をサポートすることに注意してください。
指定されていないかぎり、コンピュータ(WebLogicマシン)名のデフォルトはリスニング・アドレスで、32文字未満である必要があります。
新しいコンピュータを追加すると、新しいコンピュータに追加の管理対象サーバー、ノード・マネージャ、システム・コンポーネントおよびサービスが作成されます。
事後状態
コンピュータ、管理対象サーバー、ノード・マネージャおよびシステム・コンポーネントが作成されます。
2番目のコンピュータにサービス・インスタンスが登録されます。
ポートが割り当てられます。
注意:
リリース12.2.1.2以上にアップグレードする場合、システムを水平方向にスケーリングした後、(uploadrpd
コマンドを使用して)リポジトリをアップロードするときに、次のようなエラーが発生することがあります。Operation failed. An exception occurred during execution, please check server logs. uploadRpd Failed: Did not receive a success response to REST call.ログ・ファイルには次のようなエラーが表示されます。
Aug 16,2017 22:10:32 oracle.bi.lcm.rest.si.rpd.RpdEndpointV1 SEVERE - Exception during RPD file upload: java.io.IOException: No such file or directoryこの場合は、マスター・マシンに次のフォルダを作成します。
ORACLE_HOME/user_projects/domains/DOMAIN_HOME/bidata/service_instances/<serviceinstanceKey>/metadata/datamodel
uploadrpd
コマンドを再実行します。このコマンドで、新しく作成したフォルダにファイルが生成され、アップロード・プロセスが続行されます。
BIクラスタから障害が発生したコンピュータまたは冗長なコンピュータを削除します。
前提
バイナリ、構成または状態は削除されたコンピュータから削除されません。
クラスタ・コントローラ、スケジューラおよびBIサーバー・マスターが変更されていません。
マスター・コンピュータを削除できません。
サービス・インスタンス登録を追加または削除できます。
BIシステムが実行中(オンライン)または停止している(オフライン)可能性があります。
適切なファイル・システム(オフライン)またはWeblogic管理者(オンライン)権限を持つ必要があります。
コマンドの結果がサービスの損失になりません。
ユーザーが強制した場合のみコマンドの結果が可用性の損失になる可能性があります。
前提条件
可能な場合、status.shおよびstop.shスクリプトを使用して削除する前にターゲット・コンピュータのアクティブなコンポーネントを停止する必要があります。「コマンドを使用した起動、停止およびOracle BI EEプロセスのステータスの表示」を参照してください。
事後状態
コンピュータ、管理対象サーバー、ノード・マネージャおよびシステム・コンポーネントがそのコンピュータから削除されます。
サービス・インスタンスがそのコンピュータから登録解除されます。
ポートの割当てが解除されます。
使用しているシステムのサイズおよびスコープに合わせて適切に構成されていることを確認するには、コンポーネントを検証する必要があります。
Fusion Middleware Control、Oracle WebLogic Server管理コンソールおよびコマンドラインを使用して、スケールアウトしたコンポーネントのステータスを検証できます。
この項では、次の項目について説明します。
コマンドを使用したステータスの表示の詳細は、「ドメインのOracle Business Intelligenceコンポーネントのステータスの表示」を参照してください。
Fusion Middleware Controlを使用して、デプロイメント内のすべてのシステム・コンポーネントのステータスを表示できます。
次の図は、「可用性」ページの「プロセス」タブを示しています。