この章では、バックアップ・イメージ・インスタンスを別のコンテナに自動的にコピーまたは移動する準備として、1つ以上のバックアップ・イメージ・インスタンスをコンテナに格納できるOracle Secure Backupステージング機能について説明します。
この章の構成は、次のとおりです。
ステージングでは、バックアップ・イメージ・インスタンスを別のコンテナに自動的にコピーまたは移動する準備として、1つ以上のバックアップ・イメージのインスタンスをコンテナに格納できます。
Oracle Secure Backupの場合、ステージング・コンテナはディスク・プール・デバイスである必要があります。一般的なステージング・シナリオでは、バックアップ・インスタンスはディスク・プールからテープ・ドライブに移動されます。
ステージングには複数のバックアップ・イメージ・インスタンスを含めることができ、スケジュールされた時刻に特定の条件に基づいて実行されるように構成できます。条件の例には、一連のバックアップ・イメージのサイズ、バックアップのクライアント・ホスト、およびデータベース情報などが含まれます。
ステージングはオンデマンドでも実行できます。
ステージングの利点
ディスクを使用すると、テープよりも高速にバックアップ・ファイルにランダム・アクセスできます。テープは、長期保存用のオフサイトに移動できます。ステージングでは、ディスクとテープの両方にバックアップを自動的に格納できるため、高速なリストアおよびテープに格納する利点の両方が実現します。
ステージングでは、バックアップおよびリカバリ操作で複数のストリームをパラレルに使用できます。バックアップの場合、データは後でテープ・ドライブにコピーされます。
ステージングが使用されている場合、ステージング操作が遅いクライアントは同時にディスク・プールにバックアップされてから、単一の高速なデータ・ストリームでテープにコピーされるため、ステージング操作が遅いクライアントをテープにバックアップする場合に発生する停止および再配置の問題を最小限に抑えることができます。
ステージングでは、バックアップ・インスタンスはテープに書き込まれた後もディスク上に残ります。各インスタンスには異なる有効期限を設定できるため、バックアップは、迅速にリストアするためにディスク上に残る一方で、長期保存用のテープにも存在します。
ステージングを使用すると、リモートOracle Secure Backupメディア・サーバーを使用してオフサイトの場所でバックアップ・イメージ・インスタンスの追加のコピーを作成できるため、冗長性による追加のデータ保護を提供できます。
ステージングの概念
次の用語は、ステージングの概念を説明しています。
stagescan
コマンドを使用してオンデマンドで起動することもできます。注意:
すべてのcopyfromstageジョブには、1から開始して増加するシステム・ジョブID番号があります。スケジュールされたstagescanジョブにも、システム・ジョブIDがあります。obtoollsjob
コマンドの出力では、システム・ジョブは常にジョブ・リストの最初に表示され、これは非常に長いジョブ・リストの最上部に表示されます。copyfromstageジョブおよびstagescanジョブの両方を表示するには、lsjob
コマンドを発行するときにそれらのジョブをジョブ・タイプとして指定します。lsjob
コマンドの詳細は、『Oracle Secure Backupリファレンス』を参照してください。ステージ・ルールは、どのバックアップ・イメージをいつコピーするかを制御します。また、このルールを使用して、バックアップ・イメージがステージ・デバイス上に確実に残る最小時間を制御できます。
Oracle Secure Backupには、すべてのインスタンスと一致するデフォルト・ステージ・ルールが用意されています。スケジュールされたstagescanジョブについて、デバイスの他のステージ・ルールがバックアップ・イメージ・インスタンスと一致しない場合、そのインスタンスは常にデフォルト・ステージ・ルールによってコピーされます。デフォルト・ステージ・ルールの目的は、ステージ・ディスク・プール内のすべてのインスタンスが必ずコピーされるようにすることです。すべてのインスタンスをコピーすることで、構成エラーが発生して必要なインスタンスがコピーされていない場合に、ソース・ディスク・プールで期限切れになったバックアップ・イメージ・インスタンスが完全に失われることがないようにします。
ステージ・ルールに一致するとは、インスタンスがメディア・ファミリ名および1つ以上の場所(データベースID、データベース名、またはファイル・システムのホスト名)と一致することを意味します。ステージ・ルール制限リストにクラウド・デバイスが含まれている場合、インスタンスがルールと一致するには暗号化されている必要もあります。条件が一致しない場合、インスタンスに対してデフォルト・ステージ・ルールは起動されません。次の状況では、一致した場合でもインスタンスがコピーされない可能性があります。
stagescanジョブを起動した現在のstagescanスケジュールと一致しないstagescanスケジュールがステージ・ルールにリストされている場合。インスタンスは後で他のスケジュールが実行されるときに、そのルールによってコピーされます。
一致するステージ・ルールの最小経過時間フィルタの値、または最小コピー・サイズ・フィルタの値が、インスタンスがコピーされることのないような大きな値に設定されている場合。インスタンスはその有効期限を超えた場合でも削除されません。これらのフィルタに値を設定する場合は、常に注意が必要です。
デフォルト・ステージ・ルールの制限リストにあるデバイスはエラー・デバイスとみなされるため、デフォルト・ステージ・ルールによってそこにコピーされたインスタンスは誤りとみなされます。これらの誤りは、ソース・ディスク・プール・デバイスに格納されているこれらのバックアップ・イメージのインスタンスと一致する追加ステージ・ルールを追加することで訂正できます。
ステージ・ループ
Oracle Secure Backupでは、copyfromstageジョブがソースと宛先の両方に同じディスク・プールを使用するのを防止します。ただし、複数の単一プールでステージングが有効になっていると、ステージ・ループが発生した場合に、インスタンスが元のプールにコピーして戻される可能性があります。たとえば、次の状況では、ステージ・ループが発生する場合があります。
copyfromstageジョブのstagescanスケジュールによって、ソース・ディスク・プールA
から、ステージングが有効になっている宛先ディスク・プールB
にインスタンスがコピーされた場合。後で別のstagescanスケジュールによって、宛先プールB
の新しいインスタンスをコピーして元のソース・ディスク・プールA
に戻すcopyfromstageジョブが作成された場合。
インスタンスがプールA
からプールB
に、次にプールB
からプールC
に、その後プールC
から元のプールA
にコピーして戻された場合。
ステージ・ループは、ディスク・プールの領域がなくなるまで同じインスタンスが何度も容易にレプリケートする可能性があるため、回避する必要があります。
ステージ・ループを防止するために、Oracle Secure Backupでは、ステージ・ルールがデバイスに追加されたり、ステージ・ルール制限リストに対して変更が行われたときに次の処理が実行されます。
ソース・デバイスのステージ・ルール・リストをスキャンし、各ステージ・ルール制限リストにあるディスク・プールのいずれかにインスタンスがコピーされる可能性があると想定します。
潜在的な宛先ディスク・プール・デバイスの各ステージ・ルールの制限リストをスキャンし、これらのディスク・プールのいずれかにインスタンスがコピーされる可能性があると想定します。
これらのディスク・プールのいずれかが元のディスク・プール、またはすでにインスタンスの宛先として想定されている他のディスク・プールの場合は、構成コマンドが失敗し、エラー・メッセージが表示されます。次に例を示します。
ob> chstage --restrict pool1 srule2 Error: stage loop - pool1 -> srule2:pool0 -> srule1:pool1 Error: restriction list not changed ob>
ステージ・ループ検出の制限
ディスク・プールでステージングが有効になっている場合でもインスタンスが任意のステージ・ルールと一致するかどうかを確認するためのチェックはありません。ステージ・ルール制限リストを変更して、ステージ・ループを作成することはできません。
通常、Oracle Secure Backupでステージ・ループ検出のために検索するのは、深さ4までのディスク・プールのみです。多数のディスク・プールとステージ・ルールがある場合は、検索が10秒後にタイムアウトする可能性があります。Oracle Secure Backupでは、所要時間に関係なく常に深さ2ディスク・プール・レベルを検索することが保証されます。したがって、前述の例の場合は、必ず検出されます。
ディスク・プールに、ステージ・ルール制限リストにディスク・プール・デバイスが指定されたステージ・ルールがある場合は、ステージ・ループの原因となるため、そのディスク・プール・デバイスをデフォルト・ステージ・ルールの制限リストに追加することはできません。
制限リストにディスク・プールが指定されたステージ・ルールは、デフォルト・ステージ・ルールの制限リストにすでにあるディスク・プール・デバイスには追加できません。
次に、ステージングを設定するときに注意する必要のある概念とガイドラインをいくつか示します。
ステージングを使用するとき、ステージ・ディスク・プール・デバイスにコピーされたバックアップ・イメージ・インスタンスは、すべて別の場所にコピーされると想定されます。この想定によって、コピーが必要なインスタンスがコピーされていない状態や、インスタンスが失効して削除され、リストアするバックアップがないといった不適切な構成が防止されます。これを防止するために、ステージング・ディスク・プール内のインスタンスは、失効した場合でも、コピーされるまで自動的に削除されることはありません。(ただし、必要に応じて、rminstance
コマンドを使用してインスタンスを明示的に削除できます。)
意図的にバックアップ・イメージ・インスタンスがコピーされるようにデフォルト・ステージ・ルールを使用しないでください。かわりに、エラーが発生したディスク・プールにインスタンスが表示されたときに、他のステージ・ルールと一致しないインスタンスが識別されるように、エラー・ディスク・プールをターゲット・デバイスとして指定して使用してください。
デフォルト・ステージ・ルールを使用すると、ステージング設計内の複数のインスタンスをコピーできますが、そのようにすると、デフォルト・ルールは常にいずれのルールとも一致しないインスタンスをコピーするため、インスタンスが予定どおりにコピーされていないことを検出しづらくなる可能性があることに注意してください。したがって、ルールでコピーする必要があるインスタンスがそのルールと一致しない場合、そのインスタンスは、デフォルト・ステージ・ルールによってコピーされる他のすべてのインスタンスと混在して取得されます。
必要な最小数のステージ・ルールを使用して、stagescanジョブが可能なかぎり高速で実行されるようにします。
copyfromstageジョブのインスタンスが多すぎないようにするには、最初にステージングを使用するようにアップグレードするときに、既存のディスク・プールをステージング・デバイスとして使用しないでください。既存のディスク・プールのインスタンスが比較的少数である場合は、このガイドラインを無視できます。
ステージ・ルールの制限リストを空のままにしないでください。宛先デバイスを明示的にリストします。
ステージングを設定するには様々な方法があります。次に、1つの例を示します。
ステージングを設定するには、次のようにします。
mkdev
コマンドを使用して、ターゲット・ディスク・プール・デバイスを作成します。
ob> mkdev --type disk --initialize --attach somehost:/somepath/pooltarget pooltarget
mksched
コマンドを使用して、2つのstagescanスケジュールを作成します。
ob> mksched --type stagescan --day daily --time 6:00 scheda ob> mksched --type stagescan --day daily --time 12:00 schedb
3つのステージ・ルールを作成します。--dbid
、--dbname
および--fshost
オプションは、これらの例で指定されていないため、すべてデフォルトでアスタリスク・ワイルドカード文字(*)に設定されます。
mkstage --schedule scheda --matchfamily mfa --targetfamily mftarget --restrict pooltarget rulea mkstage --schedule schedb --matchfamily mfb --targetfamily mftarget --restrict pooltarget ruleb mkstage --matchfamily mfc --targetfamily mftarget --restrict pooltarget rulec
最初のステージ・ルールrulea
は、メディア・ファミリmfa
と一致し、スケジュールscheda
を使用します。
2番目のステージ・ルールruleb
は、メディア・ファミリmfb
と一致し、スケジュールschedb
を使用します。
最後のステージ・ルールrulec
は、メディア・ファミリmfc
と一致し、スケジュールがありません。
デフォルト・ステージ・ルールのターゲット・メディア・ファミリと制限を設定します。
ターゲット・メディア・ファミリと制限リストがデフォルト・ステージ・ルールに設定されるまで、--staging yes
を使用してディスク・プール・デバイスでのステージングを有効にすることはできません。これは、1回のみ実行する必要があります。(次の例では、vt1
という名前のテープ・デバイスがあると想定しています。)
ob> chstage --targetfamily mftarget --restrict vt1 OSB-DEFAULT-STAGE-RULE
ステージング・ディスク・プール・デバイスを作成します。
ob> mkdev --type disk --initialize --stagerule rulea,ruleb,rulec --staging yes --attach somehost:/somepath/poolstage poolstage
スケジュールscheda
がトリガーされると、ステージ・ルールと一致するインスタンスstagea
(つまり、メディア・ファミリmfa
を使用してバックアップされたインスタンス)は、メディア・ファミリmftarget
を使用してディスク・プールpoolstage
にコピーされます。ステージ・ルールrulec
と一致するインスタンス(つまり、メディア・ファミリmfc
を使用してバックアップされたインスタンス)がコピーされます。rulec
にはスケジュールがないため、すべてのスケジュールと一致します。
スケジュールschedb
がトリガーされると、ステージ・ルールと一致するインスタンスstageb
(つまり、メディア・ファミリmfb
を使用してバックアップされたインスタンス)は、メディア・ファミリmftarget
を使用してディスク・プールpoolstage
にコピーされます。ステージ・ルールrulec
と一致するインスタンス(つまり、メディア・ファミリmfc
を使用してバックアップされたインスタンス)がコピーされます。