B ダウンストリーム・マイニング・データベースの構成

この付録では、統合キャプチャ・モードのExtractをサポートするようダウンストリームOracleマイニング・データベースを準備する手順について説明します。

統合キャプチャの詳細は、「使用するキャプチャ方法の決定」を参照してください。

ダウンストリーム・マイニング構成の例は、「ダウンストリーム・マイニング構成の例」を参照してください。

内容は次のとおりです。

ダウンストリーム・デプロイ用のキャプチャ・オプションの評価

ダウンストリーム・デプロイによってソース・データベースの負荷を軽減できます。

ダウンストリーム・マイニング・データベースでは、アーカイブ・ログとオンラインREDOログの両方をソース・データベースから受け入れることができます。

複数のソース・データベースのREDOデータを1つのダウンストリーム・データベースに送信できます。ただし、ダウンストリーム・マイニング・データベースは、それらのソース・データベースの1つからのみオンラインREDOログを受け入れることができます。残りのソース・データベースはアーカイブ・ログを送る必要があります。

オンライン・ログがダウンストリーム・データベースに送られると、Extractによるリアルタイム・キャプチャが可能です。Extractでソース・ログからの読取りと同様に変更がキャプチャされます。オンラインREDOログをソース・データベースから受け入れるには、ダウンストリーム・マイニング・データベースにスタンバイREDOログが構成されている必要があります。

ダウンストリーム・マイニング構成を使用する場合、ソース・データベースとマイニング・データベースは、エンディアンとビット・サイズ(64ビット)が同じであることが必要です。たとえば、ソース・データベースがLinux 64ビットだとすると、マイニング・データベースを64ビットWindowsで実行できます(これらのエンディアンとビット・サイズが同じため)。

ダウンストリーム・デプロイ用のソース・データベースの準備

ソース・データベースはREDOログをダウンストリーム・データベースに送り、Extractはダウンストリーム・データベースでログマイニング・サーバーを使用してREDOログをマイニングします。

この項では、次のプロセスについて説明します。

ソース・ユーザー・アカウントの作成

ソース・データベースにExtractユーザーが必要です。Extractではこのユーザーの資格証明を使用してメタデータ問合せを行い、必要に応じてソース・データベースから列値をフェッチします。ソース・ユーザーはUSERIDALIASパラメータによって指定されます。

必要な権限を割り当てるには、「Oracle GoldenGate資格証明の確立」の手順に従います

ソースからダウンストリーム・マイニング・データベースへのREDO転送の構成

ソース・データベースからダウンストリーム・マイニング・データベースへのREDOログ・ファイルの転送を設定し、ダウンストリーム・マイニング・データベースでこれらのREDOログ・ファイルを受け入れる準備をするには、このトピックで説明した手順を実行します。

複数のソースから1つのダウンストリーム・マイニング・データベースへのREDOの送信をサポートするためのルールを次に要約します。

  • オンラインREDOログをダウンストリーム・マイニング・データベースのスタンバイREDOログに送信するよう構成できるのは、1つのソース・データベースのみです。このソース・データベースのlog_archive_dest_n設定にTEMPLATE句を含めることはできません

  • オンラインREDOログをダウンストリーム・マイニング・データベースのスタンバイREDOログに送信しないソース・データベースには、log_archive_dest_nパラメータにTEMPLATE句を指定する必要があります

  • ダウンストリーム・マイニング・データベースに送信する各ソース・データベースは一意のDBIDを持つ必要があります。これらのソース・データベースのv$databaseビューからDBID列を選択し、DBIDが一意であることを確認します。

  • ダウンストリーム・マイニング・データベースに対して、FAL_SERVER値を設定する必要があります。FAL_SERVERは、スタンバイ・データベースのフェッチ・アーカイブ・ログ(FAL)サーバーを指定します。値はOracle Netサービス名のリストで、スタンバイ・データベース・システムで、目的のFALサーバーをポイントするように正しく構成されていることを前提とします。リストには、ダウンストリーム・データベースにREDOを送信する可能性のある任意のデータベースのNetサービス名が含まれます。

  • REDO転送を使用する場合、ネットワーク待機時間のためREDOの処理に遅延が生じる可能性があります。統合Extractの場合、この待機時間はソース・データベースから受信したLCR間の遅延を測定して報告することで監視されています。待機時間がしきい値を超える場合、レポート・ファイル内に警告メッセージが表示され、ラグが標準的な値まで減少すると後続の情報メッセージが表示されます。しきい値のデフォルト値は10秒です。

注意:

ソース・データベースから送られたアーカイブ・ログは、外部アーカイブ・ログと呼ばれます。外部アーカイブ・ログの格納にダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域を使用することはできません。そのような構成は、統合キャプチャでサポートされません。

これらの手順では、必要に応じて複数のソースからREDOを転送するための要件が考慮されています。これらのソースのそれぞれについてExtractプロセスを構成する必要があります。

REDO転送を構成する手順

  1. 各ソース・データベースがマイニング・データベースと通信できるようOracle Netを構成します。手順は、『Oracle Database Net Services管理者ガイド』を参照してください。
  2. REDOデータの転送をサポートするよう、各ソース・データベースとダウンストリーム・マイニング・データベースで認証を構成します。REDO転送セッションは、Secure Sockets Layer(SSL)プロトコルまたはリモート・ログイン・パスワード・ファイルを使用して認証されます。ソース・データベースにリモート・ログイン・パスワード・ファイルがある場合、マイニング・データベース・システムの適切なディレクトリにコピーします。パスワード・ファイルは、すべてのソース・データベースとマイニング・データベースで同じである必要があります。REDO転送の認証要件については、『Oracle Data Guard概要および管理』スタンバイ・データベースを作成するためのプライマリ・データベースの準備に関する項を参照してください。
  3. 各ソース・データベースで、REDOデータをダウンストリーム・マイニング・データベースに転送するためにLOG_ARCHIVE_DEST_n初期化パラメータを1つ構成します。リアルタイム・キャプチャ・モードを使用するか、アーカイブログのみキャプチャ・モードを使用するかに応じて、次の例のいずれかのようにこのパラメータの属性を設定します。
    • ソース・データベースがオンラインREDOログをダウンストリーム・データベースに送信する場合のダウンストリーム・マイニング・サーバーでのリアルタイム・キャプチャの例:

      ALTER SYSTEM 
      SET LOG_ARCHIVE_DEST_2='SERVICE=DBMSCAP.EXAMPLE.COM ASYNC NOREGISTER
      VALID_FOR=(ONLINE_LOGFILES,PRIMARY_ROLE)DB_UNIQUE_NAME=dbmscap'
      
    • ダウンストリーム・ログマイニング・サーバーでのアーカイブログのみキャプチャの例:

      ALTER SYSTEM SET
      LOG_ARCHIVE_DEST_2='SERVICE=DMBSCAP.EXAMPLE.COM ASYNC NOREGISTER
      VALID_FOR=(ONLINE_LOGFILES,PRIMARY_ROLE)
      TEMPLATE=/usr/oracle/log_for_dbms1/dbms1_arch_%t_%s_%r.log
      DB_UNIQUE_NAME=dbmscap'

    注意:

    アーカイブ・ログのみのダウンストリーム・マイニング・データベースを使用する場合、TEMPLATE属性の値を指定する必要があります。ソース・データベースでTEMPLATE句を使用して、すべてのリモート・ソース・データベースのログ・ファイルが、ローカル・データベース・ログ・ファイルと分けて保管され、ログ・ファイル同士が分けて保管されるようにすることをお薦めします。

  4. ソース・データベースで、次の例に示すように、ダウンストリーム・マイニング・データベースの宛先に相当するLOG_ARCHIVE_DEST_nパラメータに対応するLOG_ARCHIVE_DEST_STATE_n初期化パラメータに値ENABLEを設定します。
    ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_STATE_2=ENABLE
    
  5. ソース・データベースとダウンストリーム・マイニング・データベースで、次の例に示すように、ソース・データベースとダウンストリーム・データベースのDB_UNIQUE_NAMEを含むようLOG_ARCHIVE_CONFIG初期化パラメータのDG_CONFIG属性を設定します。
    ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_CONFIG='DG_CONFIG=(dbms1,dbmscap)'

ダウンストリーム・マイニング・データベースの準備

ダウンストリーム・マイニング・データベースでは、アーカイブ・ログとオンラインREDOログの両方をソース・データベースから受け入れることができます。

次の項で、ダウンストリーム・マイニング・データベースを準備する方法について説明します。

ダウンストリーム・マイニング・ユーザー・アカウントの作成

ダウンストリーム・マイニング構成を使用する場合、ダウンストリーム・データベースにExtractマイニング・ユーザーが必要です。マイニングExtractプロセスはこのユーザーの資格証明を使用して、ダウンストリーム・ログマイニング・サーバーと対話します。ダウンストリーム・マイニング・ユーザーは、MININGUSERALIASオプションを使用したTRANLOGOPTIONSパラメータで指定します。ご使用のデータベース・バージョン用の正しい資格証明を割り当てるには、「Oracle GoldenGate資格証明の確立」を参照してください。

ローカルREDOログ・ファイルをアーカイブするためのマイニング・データベースの構成

この手順では、REDOデータをオンラインREDOログにアーカイブするようダウンストリーム・マイニング・データベースを構成します。これらは、ダウンストリーム・マイニング・データベースで生成されるREDOログです。

Extractをリアルタイム統合キャプチャ・モードで実行する場合、ダウンストリーム・マイニング・データベースでアーカイブを有効にする必要がありますが、これはアーカイブ・ログのみキャプチャの場合も推奨されます。統合キャプチャ・モードのExtractはデータベースの状態情報を書き込みます。ダウンストリーム・マイニング・データベースでディスクの障害や破損があった場合、アーカイブと通常のバックアップによって、この状態情報をリカバリできます。

ローカルREDOログ・ファイルをアーカイブする手順

  1. ダウンストリーム・マイニング・データベースをアーカイブ・ログ・モードに変更します。これは、次のDDLコマンドを発行して行います。
    STARTUP MOUNT;
    ALTER DATABASE ARCHIVELOG;
    ALTER DATABASE OPEN;
    
  2. ダウンストリーム・マイニング・データベースで、次の例に示すように、1つ目のアーカイブ・ログの宛先をLOG_ARCHIVE_DEST_n初期化パラメータに設定します。
    ALTER SYSTEM SET
    LOG_ARCHIVE_DEST_1='LOCATION=/home/arc_dest/local
    VALID_FOR=(ONLINE_LOGFILE,PRIMARY_ROLE)'
    

    あるいは、次の例のようなコマンドを使用します。

    ALTER SYSTEM SET
    LOG_ARCHIVE_DEST_1='LOCATION='USE_DB_RECOVERY_FILE_DEST' valid_for=(ONLINE_LOGFILE,PRIMARY_ROLE)'
    

    注意:

    ダウンストリーム・マイニング・データベースによって生成されるオンラインREDOログはリカバリ領域にアーカイブできます。ただし、外部アーカイブ・ログのステージングやスタンバイREDOログのアーカイブにダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域は使用できません。高速リカバリ領域の構成の詳細は、『Oracle Databaseバックアップおよびリカバリ・ユーザーズ・ガイド』を参照してください。

  3. ローカル・アーカイブの宛先を有効にします。
    ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_STATE_1=ENABLE
     

これらの初期化パラメータの詳細は、『Oracle Data Guard概要および管理』を参照してください。

リアルタイム・キャプチャ用のダウンストリーム・マイニング・データベースの準備

この手順は、ダウンストリーム・マイニング・データベースでリアルタイム・キャプチャを使用する場合にのみ必要です。アーカイブ・ログのみキャプチャ・モードを使用する場合は必要ありません。リアルタイム・キャプチャを使用する場合、「ローカルREDOログ・ファイルをアーカイブするためのマイニング・データベースの構成」に示すようにローカルREDOデータをアーカイブするようダウンストリーム・データベースがすでに構成されているものとします。

スタンバイREDOログ・ファイルの作成

次の手順では、スタンバイREDOログ・ファイルをダウンストリーム・マイニング・データベースに追加する手順を概説します。スタンバイREDOログの作成ルールを次に要約します。

  • 各スタンバイREDOログ・ファイルのサイズは、少なくともREDOソース・データベースの最大REDOログ・ファイルと同程度である必要があります。管理を簡単にするために、ソース・データベースのすべてのREDOログ・ファイルとダウンストリーム・マイニング・データベースのスタンバイREDOログ・ファイルを同じサイズにすることをお薦めします。

  • スタンバイREDOログは、ソース・データベースのREDOスレッドごとにソース・データベースのREDOログより1つ以上多い数のREDOログ・グループを持つ必要があります。

スタンバイREDOログ・ファイルの追加に必要な特定の手順やSQL文は、環境によって異なります。スタンバイREDOログ・ファイルのデータベースへの追加の詳細は、『Oracle Data Guard概要および管理11gリリース2 (11.2)』を参照してください。

注意:

1つのダウンストリーム・マイニング・データベースにREDOを送信するソース・データベースが複数ある場合、それらのソースのうち1つのみがマイニング・データベースのスタンバイREDOログにREDOを送信できます。このソース・データベースからのREDOをマイニングするExtractプロセスはリアルタイム・モードで実行できます。他のソース・データベースはすべてアーカイブ・ログのみをダウンストリーム・マイニング・データベースに送信し、このデータを読み取るExtractはアーカイブ・ログのみモードで実行されるよう構成される必要があります。

スタンバイREDOログ・ファイルを作成する手順

  1. SQL*Plusで、管理ユーザーとしてソース・データベースに接続します。
  2. ソース・ログ・ファイルのサイズを確認します。結果を控えておきます。
    SELECT BYTES FROM V$LOG;
    
  3. ソース・データベースに構成されているオンライン・ログ・ファイル・グループの数を確認します。結果を控えておきます。
    SELECT COUNT(GROUP#) FROM V$LOG;
    
  4. 管理ユーザーとしてダウンストリーム・マイニング・データベースに接続します。
  5. スタンバイ・ログ・ファイル・グループをマイニング・データベースに追加します。スタンバイ・ログ・ファイルのサイズは、ソース・ログ・ファイルのサイズ以上である必要があります。スタンバイ・ログ・ファイル・グループの数は、ソース・オンライン・ログ・ファイル・グループの数より1つ以上多い数である必要があります。これは、RACインストールの各インスタンス(スレッド)に適用されます。ソース・データベースに"n"個のスレッドがあり、それぞれ"m"個のREDOログ・グループがある場合、n*(m+1)個のREDOログ・グループをダウンストリーム・マイニング・データベースで構成する必要があります。

    次の例は、3つのスタンバイ・ログ・グループを示しています。

    ALTER DATABASE ADD STANDBY LOGFILE GROUP 3
    ('/oracle/dbs/slog3a.rdo', '/oracle/dbs/slog3b.rdo') SIZE 500M;
    ALTER DATABASE ADD STANDBY LOGFILE GROUP 4
    ('/oracle/dbs/slog4.rdo', '/oracle/dbs/slog4b.rdo') SIZE 500M;
    ALTER DATABASE ADD STANDBY LOGFILE GROUP 5
    ('/oracle/dbs/slog5.rdo', '/oracle/dbs/slog5b.rdo') SIZE 500M;
    
  6. スタンバイ・ログ・ファイル・グループが正常に追加されたことを確認します。
    SELECT GROUP#, THREAD#, SEQUENCE#, ARCHIVED, STATUS
    FROM V$STANDBY_LOG;
    

    結果は次のようになります。

    GROUP#     THREAD#    SEQUENCE#  ARC STATUS
    ---------- ---------- ---------- --- ----------
             3          0          0 YES UNASSIGNED
             4          0          0 YES UNASSIGNED
             5          0          0 YES UNASSIGNED
    
  7. ソース・データベースのログ・ファイルが、設定したローカルのLOG_ARCHIVE_DEST_nLOCATION属性で指定した場所にあることを確認します。ディレクトリ内のファイルを確認するために、ソース・データベースでログ・ファイルの切り替えが必要な場合があります。
スタンバイREDOログ・ファイルをローカルにアーカイブするためのデータベースの構成

この手順では、ソース・データベースのオンラインREDOログからREDOデータを受信するスタンバイREDOログをアーカイブするようダウンストリーム・マイニング・データベースを構成します。外部アーカイブ・ログは、ダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域にアーカイブできないことに注意してください。

スタンバイREDOログをローカルでアーカイブする手順

  1. ダウンストリーム・マイニング・データベースで、次の例に示すように、2つ目のアーカイブ・ログの宛先をLOG_ARCHIVE_DEST_n初期化パラメータに設定します。
    ALTER SYSTEM SET
    LOG_ARCHIVE_DEST_2='LOCATION=/home/arc_dest/srl_dbms1
    VALID_FOR=(STANDBY_LOGFILE,PRIMARY_ROLE)'
    

    外部アーカイブ・ログ(リモート・ソース・データベースからのログ)はローカル・マイニング・データベース・ログ・ファイルと分けて保管し、ログ・ファイル同士も分けて保管することをお薦めします。外部アーカイブ・ログのステージングにダウンストリーム・マイニング・データベースのリカバリ領域を使用することはできません。

  2. 前のステップで設定したLOG_ARCHIVE_DEST_2パラメータを次の例に示すように有効にします。
    ALTER SYSTEM SET LOG_ARCHIVE_DEST_STATE_2=ENABLE