7 KPIの作成

この章では、キー・パフォーマンス・インディケータ(KPI)をOracle Business Activity Monitoring (BAM)で作成する方法について説明します。

この章の内容は次のとおりです。

7.1 KPIの理解

パフォーマンス・インディケータには、結果メトリックおよびドライバ・メトリックという2つの主要なタイプがあります。KPIは、モニタリング、改善および評価が必要な、より大きい組織の戦略にロールアップされる特定のビジネス・ゴールを実績メジャーと比較する結果メトリックです。

結果メトリックは遅行指標とも呼ばれ、1か月当たりの利益率や過去1時間のコール処理時間の移動平均などの、達成のための戦略が設計されているビジネス・アクティビティを測定します。ドライバ・メトリックは先行指標とも呼ばれ、結果メトリックに影響するビジネス・アクティビティを測定します。

KPI値は、時間とともに変わり、パフォーマンス・ステータスを決定するためのターゲットを持ちます。詳細な分析を可能にするディメンションが含まれ、傾向用およびパフォーマンス・パターンの特定のために経時的な比較を行えます。

BAMでは、リアルタイムKPIおよびスケジュールされたKPIという2つのタイプのKPIを定義できます。リアルタイムKPIは、データを収集し、メジャーの増分計算を連続して実行します。たとえば、コール・センターで、新しいコールが到着するたびに待機コールの数を更新できます。スケジュールされたKPIは、データを収集し、定期的な間隔で特定の時間からの集計を再計算します。たとえば、コール・センターで、未解決の顧客の苦情の数を毎週更新します。

KPIのステータスは、その値を、定義済の高いしきい値と低いしきい値に照らして比較することで決まります。たとえば、何千もの単位で製品売上を測定するKPIの場合、表7-1で説明している範囲を定義できます。

表7-1 しきい値およびステータスの例

評価範囲 しきい値 ステータス

120を超える値は、パフォーマンスが優れていることを表します。

121以上

80から120までの値は、パフォーマンスがよいことを表します。

80 - 120

80より小さい値は、パフォーマンスが悪いことを表します。

79以下

リスク・インディケータは、KPIに悪影響を及ぼす可能性のあるイベントを特定する早期警告サインを提供するドライバ・メトリックです。たとえば、在庫の単位数が低すぎると販売の遂行を妨げる可能性があるため、これを販売のリスク・インディケータにできます。リスク・インディケータをリアルタイムKPIと関連付けることができます。

7.2 KPIの前提条件と用途

KPIの前提条件は、作成したすべてのKPIが円滑に機能するために完了する必要があるタスクのリストです。

KPIを作成する前に、次のことを実行する必要があります。

  • KPIが分析するメジャーを含むデータ・オブジェクトをプロジェクトに追加します。プロジェクトの詳細は、「プロジェクトの計画および作成」を参照してください。データ・オブジェクトの詳細は、「データ・オブジェクトの使用」を参照してください。

  • スケジュールされたKPIを作成する場合は、KPIが基準とするディメンションがないグループSQL問合せを作成します。グループ問合せの詳細は、「グループSQL問合せの作成」を参照してください。

  • リスク・インディケータをリアルタイムKPIと関連付ける必要がある場合は、リスク・インディケータに連続した問合せを作成します。連続した問合せの詳細は、「連続した問合せの作成」を参照してください。

作成したKPIは次の方法で使用できます。

KPIウォッチリスト

関連するKPIのグループを使用する、KPIウォッチリストと呼ばれる特別なビューを作成できます。保存すると、ダッシュボードに追加できるようになります。KPIウォッチリストの詳細は、「KPIウォッチリストのビジネス・ビューの作成」を参照してください。ダッシュボードの詳細は、「ダッシュボードの作成」を参照してください。

KPIを他のビューで直接使用することはできませんが、(スケジュールされたKPIがゲージ・タイプのビューで基準とする)グループSQL問合せを使用できます。ゲージ・ビジネス・ビューの作成

アラート・アクションをトリガーする

KPIメジャー(高、中、低)の値を使用して、異なるアラート・アクションを開始できます。たとえば、内部コストKPIの値が特定の金額を超えたときに通知するアクションを定義できます。このアラート・アクションはKPIに固有で、「アラート」の左側のパネルのナビゲータには表示されません。アラート・アクションの詳細は、「アラート・アクション」を参照してください。

7.3 リアルタイムKPIの作成

この項では、リアルタイムKPIを作成する手順について概説します。

リアルタイムKPIを作成するには:

  1. 「デザイナ」ページに移動します。
  2. 左側のパネルのナビゲータの「KPI」をクリックするか、「KPI」を右クリックして「作成」メニュー・アイテムを選択します。

    「KPI」ダイアログが開きます。

  3. 「KPI名」を入力し、オプションで「KPI表示名」を編集し、「リアルタイムKPI」を選択し、「作成」をクリックします。

    「名前」は、大/小文字が区別され、文字で始まる必要があり、文字、数字およびアンダースコア文字のみを含めることができます。最大128文字を使用できます。KPIの作成後は変更できません。

    「表示名」は、大/小文字が区別され、フォルダ・パスを示すスラッシュ(/)を除く任意の文字を含めることができます。最大128文字を使用できます。いつでも変更できます。

    新しいKPIのタブが開きます。

  4. 「KPI」タブで、次の「メジャー」設定を指定します。
    • 説明 — KPI問合せの説明全体で使用される、メジャーのオプションの説明。

    • データ・オブジェクト — KPIが分析するメジャーを含むデータ・オブジェクト。

    • メジャー集計 — AVG、COUNT、COUNTDISTINCT、SUM、MAXまたはMINを選択します。

      COUNTDISTINCTは、重複を1回のみカウントします。表示されるオプションは、選択したメジャーによって異なります。たとえば、メジャーがVARCHAR型である場合、COUNTおよびCOUNTDISTINCTのみが表示されます。

    • メジャー — KPIメジャーの数値属性。

    • ローリング・ウィンドウを使用 — オプションで、受信データの集計が計算される期間と頻度を定義するには、このボックスを選択します。たとえば、過去1時間に完了したコールの数を10分ごとに更新できます。

    • 更新間隔 — 集計は、新しい受信データが受信されるたびに再計算されます。更新間隔により、ローリング・ウィンドウ内の結果が更新される頻度が決まります。

    • 単位 — 時間、分、秒またはミリ秒を選択します。この設定は、「更新間隔」および「ウィンドウ・サイズ」の両方に適用されます。

    • 基準 — ローリング・ウィンドウの計算が基準とする日付または時間の列。たとえば、コール開始時刻を選択した場合、指定したセルがローリング・ウィンドウ期間内かどうかがシステムによって判別されます。

    • ウィンドウ・サイズ — 過去の時間から現在までの、集計が計算される期間。ウィンドウ・サイズの例は、過去30分または過去24時間です。

  5. 次のオプションの「しきい値」設定を指定します。
    • 説明 — KPI問合せの説明全体で使用される、しきい値のオプションの説明。

    • しきい値 — 下向き矢印ボタンをクリックし、次のいずれかのオプションを選択します。選択したオプションに応じて、追加の設定が表示されます。

      • 定数 — テキスト・ボックスに整数値を入力して、高の範囲の上限を定義します。低の範囲の下限はゼロです。このことは、メジャー集計がAVGである場合を除き、デフォルトとなります。

      • 履歴 — テキスト・ボックスに整数値を入力します。整数の単位として、SECOND、MINUTE、HOUR、DAY、WEEKまたはMONTHを選択します。次に履歴参照メジャーを選択します。KPIメジャーと同じにすることができます。KPIおよび履歴参照メジャーは、同じ集計を使用します。

      • 標準偏差 — このオプションは、メジャー集計がAVGである場合にのみ表示されます。その場合、デフォルトとなります。追加のオプションは表示されません。

    • 偏差範囲 — 下向き矢印ボタンをクリックします。しきい値が定数または履歴である場合は、「定数」(デフォルト)または「パーセンテージ」を選択します。しきい値が標準偏差である場合、この設定は「標準偏差」です。

    • 「偏差範囲」表示 — ギア・アイコンをクリックし、範囲の「最小」「最大」および「増分」を変更します。

    • 「高」および「低」範囲スライダ — 目的の高いしきい値または低いしきい値が表示されるまで、範囲スライダを動かします。このスライダは、デフォルトで1および-1に設定されます。

    • <アクションを追加> — オプションで、KPIの「高」、「中」および「低」の範囲に対して異なるアクションを追加できます。アクションの詳細は、「アラート・アクション」を参照してください。

  6. 次のオプションの「リスク・インディケータ」設定を指定します。
    • 説明 — KPI問合せの説明全体で使用される、リスク・インディケータのオプションの説明。

    • リスク・インディケータ — KPIメジャーのドライバ・メトリックとしてデータ・オブジェクトで定義されているメジャーの連続した問合せ。連続した問合せの詳細は、「連続した問合せの作成」を参照してください。

  7. 「保存」をクリックします。

7.4 スケジュールされたKPIの作成

この項では、スケジュールされたKPIの作成手順について説明します。

スケジュールされたKPIを作成するには:

  1. 「デザイナ」ページに移動します。
  2. 左側のパネルのナビゲータの「KPI」をクリックするか、「KPI」を右クリックして「作成」アイコンを選択します。

    「KPI」ダイアログが開きます。

  3. 「KPI名」を入力し、オプションで「KPI表示名」を編集し、「スケジュールされたKPI」を選択し、「作成」をクリックします。

    「名前」は、大/小文字が区別され、文字で始まる必要があり、文字、数字およびアンダースコア文字のみを含めることができます。最大128文字を使用できます。KPIの作成後は変更できません。

    「表示名」は、大/小文字が区別され、フォルダ・パスを示すスラッシュ(/)を除く任意の文字を含めることができます。最大128文字を使用できます。いつでも変更できます。

    新しいKPIのタブが開きます。

  4. 「KPI」タブで、次の「メジャー」設定を指定します。
    • 説明 — KPI問合せの説明全体で使用される、メジャーのオプションの説明。

    • ビジネス問合せ — KPIが分析するメジャーの問合せ。ディメンションがないグループ問合せのみがリストされます。問合せの詳細は、「ビジネス問合せの作成」を参照してください。

    • メジャー集計 — AVG、COUNT、COUNTDISTINCT、SUM、MAXまたはMINを選択します。COUNTDISTINCTは、重複を1回のみカウントします。この設定で選択できるオプションは、選択した問合せによって異なります。

    • — SECOND、MINUTE、HOUR、DAYまたはMONTHを選択します。

    • 開始 — 日付を入力するか、「日付を選択」アイコンをクリックして、ポップアップ・カレンダから日付を選択します。デフォルトは本日です。

    • 時間 — 時間と分の整数を入力するか、「増分」ボタンおよび「減分」ボタンを使用します。時間ボックスでは24時間制が使用されます(たとえば、午後2時は14)。

  5. 次のオプションの「しきい値」設定を指定します。
    • 説明 — KPI問合せの説明全体で使用される、しきい値のオプションの説明。

    • しきい値 — 下向き矢印ボタンをクリックし、次のいずれかのオプションを選択します。この設定で選択できるオプションは、選択した問合せによって異なります。選択したオプションに応じて、追加の設定が表示されます。

      • 定数 — テキスト・ボックスに整数値を入力して、高の範囲の上限を定義します。低の範囲の下限はゼロです。このことは、メジャー集計がAVGである場合を除き、デフォルトとなります。

      • 履歴 — テキスト・ボックスに整数値を入力します。整数の単位として、SECOND、MINUTE、HOUR、DAY、WEEKまたはMONTHを選択します。次に履歴参照メジャーを選択します。KPIメジャーと同じにすることができます。KPIおよび履歴参照メジャーは、同じ集計を使用します。

      • 標準偏差 — このオプションは、メジャー集計がAVGである場合にのみ表示されます。その場合、デフォルトとなります。追加のオプションは表示されません。

    • 偏差範囲 — 下向き矢印ボタンをクリックします。しきい値が定数または履歴である場合は、「定数」(デフォルト)または「パーセンテージ」を選択します。しきい値が標準偏差である場合、この設定は「標準偏差」です。

    • 「偏差範囲」表示 — ギア・アイコンをクリックし、範囲の「最小」「最大」および「増分」を変更します。

    • 「高」および「低」範囲スライダ — 目的の高いしきい値または低いしきい値が表示されるまで、範囲スライダを動かします。このスライダは、デフォルトで1および-1に設定されます。

    • <アクションを追加> — オプションで、KPIの「高」、「中」および「低」の範囲に対して異なるアクションを追加できます。アクションの詳細は、「アラート・アクション」を参照してください。

  6. 「保存」をクリックします。

7.5 KPIの編集

KPIを編集すると、そのKPIを含むすべてのKPI、およびそれらのKPIのウォッチリストを含むすべてのダッシュボードに、変更内容が伝播します。

次の手順を使用して、KPIを開き、編集および保存します。

ノート:

スケジュールされたKPIが基準とするグループ問合せを編集する場合は、ディメンションを追加しないでください。追加した場合、KPIが機能しなくなります。

KPIを編集するには:

  1. 左ナビゲーション・ペインで、「KPI」の左側にある矢印をクリックします。

    現在のプロジェクトのすべての保存済KPIがリストに表示されます。

  2. KPI名をクリックするか、KPIを右クリックして「編集」メニュー・アイテムを選択します。
  3. 必要な変更を行います。
  4. 「保存」をクリックします。

7.6 KPIの名前変更

この項では、KPIの名前を変更する手順について概説します。

次の手順を使用して、KPIの「表示名」を変更します。

「表示名」は、大/小文字が区別され、フォルダ・パスを示すスラッシュ(/)を除く任意の文字を含めることができます。最大128文字を使用できます。いつでも変更できます。

KPIの名前を変更するには:

  1. 左ナビゲーション・ペインで、「KPI」の左側にある矢印をクリックします。

    現在のプロジェクトのすべての保存済KPIがリストに表示されます。

  2. KPIの名前を変更するには、KPI名を右クリックして「名前の変更」メニュー・アイテムを選択します。

    名前が編集可能フィールドのテキストになります。

  3. 新しい名前を入力し、[Enter]を押します。

    新しい名前がリストに表示されます。

KPIを編集するとき、新しい表示名がタブに表示されます。ただし、内部は変更されず、そのままです。KPIを編集するとき、この名前はヘッダーの左側に表示されます。

7.7 KPIの削除

この項では、KPIを削除する手順について概説します。

次の手順を使用して、KPIを削除します。KPIは、そのKPIを参照するすべてのビューやダッシュボードから削除されます。

KPIを削除するには:

  1. 左ナビゲーション・ペインで、「KPI」の左側にある矢印をクリックします。

    現在のプロジェクトのすべての保存済KPIがリストに表示されます。

  2. 「KPI」アイコンをクリックして「削除」アイコンをクリックするか、KPI名を右クリックして「削除」メニュー・アイテムを選択します。

    KPIの削除を確認するダイアログが表示されます。

  3. 「OK」をクリックします。

    リストにKPIが表示されなくなります。

7.8 KPIの保護

KPIは、KPIが作成されたプロジェクトのセキュリティ設定を継承します。

プロジェクトの詳細は、「プロジェクトの計画および作成」を参照してください。

KPIのセキュリティ設定を変更するには:

  1. 左ナビゲーション・ペインで、「KPI」の左側にある矢印をクリックします。

    現在のプロジェクトのすべての保存済KPIがリストに表示されます。

  2. KPIを右クリックし、ポップアップ・メニューから「セキュリティ設定」を選択します。

    KPIのセキュリティ・タブが開きます。

  3. 明示的に権限を付与または拒否するロールまたはグループを追加するには、次のステップを実行します。

    1. 「権限の付与」表または「権限の拒否」表で「追加」アイコンをクリックします。

      「アプリケーション・ロール、グループおよびユーザーの追加」ダイアログが開きます。

      ユーザーをロールおよびグループに追加する方法の詳細は、「Oracle BAMユーザーの管理」を参照してください。

    2. 追加するロールまたはグループの名前を「名前」に入力します。

    3. ドロップダウン・リストから「アプリケーション・ロール」または「グループ」を選択します。

    4. 「検索」をクリックして、「選択可能メンバー」リストにデータを移入します。

    5. 「選択済メンバー」リストにメンバーを追加するには、メンバーを選択し、一重の右矢印をクリックします。

    6. 「選択済メンバー」リストにすべてのメンバーを追加するには、メンバーを選択し、二重の右矢印をクリックします。

    7. 「選択済メンバー」リストからメンバーを削除するには、一重および二重の左矢印を使用します。

    8. 「選択済メンバー」リストが完成したら、「OK」をクリックします。

      「アプリケーション・ロール、グループおよびユーザーの追加」ダイアログが閉じ、「名前」に指定した名前が表に表示されます。

  4. ロールまたはグループを削除するには、表の行を選択し、「削除」アイコンをクリックします。

  5. 権限を付与するには、「権限の付与」表にリストされているユーザー、ロールおよびグループに対し、「読取り」「書込み」「削除」または「セキュリティ」を選択します。

  6. 権限を拒否するには、「権限の拒否」表にリストされているユーザー、ロールおよびグループに対し、「読取り」「書込み」「削除」または「セキュリティ」を選択します。

  7. 「保存」をクリックします。