7 SAP ABAP BW
この章の内容は次のとおりです。
7.1 概要
SAP BWナレッジ・モジュールにより、Oracle Data IntegratorはSAP Java Connector (SAP JCo)ライブラリを使用してSAP-BWシステムに接続できます。これらのアダプタでは、SAP-BWシステムから大量のデータを抽出できます。
SAP BWアダプタを初めて使用する場合は、『Oracle Data IntegratorのためのSAP ABAP BWアダプタ・スタート・ガイド』を確認することをお薦めします。
これには、完全な前提条件のリストおよびSAP接続テストを含むステップを追った説明が含まれています。
7.1.1 概念
Oracle Data IntegratorのSAP BWナレッジ・モジュールは、次のような目的で、SAP-BWシステムの成熟したな統合方法を使用しています。
-
SAP BWメタデータのリバース・エンジニアリング
-
SAP BWシステム(ソース)からOracleステージング領域またはOracle以外のステージング領域へのデータの抽出およびロード
リバース・エンジニアリング・プロセスでは、ODIモデル内の次のSAP BWオブジェクトを返します。
-
各ODS/DSOオブジェクトは、ODIデータストアとして表されます。
-
各InfoObjectは、ODIでデータストアを最大3つまで含むサブモデルとして表されます。
-
マスター・データを持つInfoObjectsには、すべてのInfoObject属性を含むマスター・データ・データストアがあります。
-
テキスト・データが添付されているInfoObjectsには、すべてのテキスト関連の属性を含むテキスト・データストアがあります。
-
定義された階層を持つInfoObjectsには、すべての階層関連の属性を含む階層データストアがあります。
-
-
各InfoCubeは、単一のODIデータストアとして表されます。このデータストアには、すべてのディメンションのすべての特性に関する属性とすべてのキー数値に関する列が含まれます。
-
各OpenHubDestinationは、ODIデータストアとして表されます。
7.1.2 ナレッジ・モジュール
Oracle Data Integratorには、SAP BWデータを処理するためのナレッジ・モジュールが用意されています。これらのリストを表7-1に示します。
Oracle Data Integrator SAP BWナレッジ・モジュールでは、SAP JCoライブラリを使用したSAP BWシステムからの統合が可能です。このKMのセットには、次の機能があります。
-
SAP BWシステムからSAP BWデータを読み取ります。
-
Oracleステージング領域またはOracle以外のステージング領域にこのデータをロードします。
-
SAPメタデータをリバース・エンジニアリングし、必要なメタデータのみを選択するようツリー・ブラウザに指示します。
-
フレックスフィールドを使用してSAP BWデータ・ターゲット・タイプ(InfoCube、InfoObject、ODS/DSO、OpenHubおよびテキスト表)およびその属性をマップします。
表7-1 SAP BWナレッジ・モジュール
ナレッジ・モジュール | 説明 |
---|---|
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR) |
SQL*LOADERコマンド行ユーティリティを使用して、SAP BWシステムからフラット・ファイルにデータを抽出し、これをOracleステージング領域にロードします。 |
RKM SAP ERP接続テスト |
このRKMは、Oracle Data IntegratorからのSAP接続のテストに使用します。詳細は、「SAP ABAP ERPアダプタの追加情報」を参照してください。 |
RKM SAP BW |
InfoCubes、InfoObjects (テキストおよび階層を含む)、ODS/DSOおよびOpenHubDestinationsのSAP固有のメタデータを取得するリバース・エンジニアリング・ナレッジ・モジュール。 |
LKM SAP BW to SQL |
JDBC接続を使用して、SAP BWからフラット・ファイルにデータを抽出し、これをステージング領域にロードします。 |
7.1.3 SAP BW統合プロセスの概要
RKM SAP BWにより、Oracle Data Integrator (ODI)ではSAP JCoライブラリを使用してSAP BWシステムに接続し、SAP BWメタデータのカスタマイズされたリバース・エンジニアリングを実行できます。
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)およびLKM SAP BW to SQLは、SAP BWシステム(ソース)からOracleステージング領域またはOracle以外のステージング領域にデータを抽出およびロードする役割を果たします。
ノート:
SAP BWへのアクセスはABAPを使用して行われます。その結果、接続に使用されるテクノロジはSAP ABAPで、テクノロジ要素およびモデルはSAP ABAPテクノロジに基づきます。ODIにSAP BWテクノロジは存在しませんが、SAP ABAPテクノロジに基づいたSAP BW固有のKMが存在します。
7.1.3.1 リバース・エンジニアリング・プロセス
リバース・エンジニアリングではRKM SAP BWを使用します。
このナレッジ・モジュールはSAP BWデータ・オブジェクトのリストを抽出し、オプションでメタデータ・ブラウザのグラフィック・インタフェースにこのリストを表示します。ユーザーは、リバース・エンジニアリングするSAP BWオブジェクトをこのリストから選択します。
リバース・エンジニアリング・プロセスでは、データ・ターゲット、主キー、外部キーおよびインデックスがOracle Data Integratorモデルにリバース・エンジニアリングされます。
7.1.3.2 統合プロセス
SAPからのデータ統合は、LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)およびLKM SAP BW to SQLによって管理されます。
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)は、ABAPを経由したSAPからのマッピング・ソーシングと、Oracle Databaseへのステージング領域の配置に使用され、LKM SAP BW to SQLは、Oracle以外のステージング領域用に使用されます。
KMではまず、指定されたマッピングに必要な抽出プロセスに対応する、最適化されたABAPコードを生成します。このコードには、ソースのSAP BWサーバー内で直接処理できるフィルタおよび結合が含まれます。このABAPプログラムは、自動的にアップロードされ、OdiSAPAbapExecuteツールを使用して実行されて、SAP内に抽出ファイルが生成されます。
その後、KMは、この抽出ファイルを事前に構成されたFTPサーバーまたは共有ディレクトリのいずれかに転送します。さらに、このファイルは、このサーバーからODIエージェントがあるマシンに、FTP、SFTPまたはSCPを使用してダウンロードされるか、またはコピーされ、最後にSQL*LoaderまたはJDBC接続を使用してそのステージング領域にロードされます。また、このエージェントが、FTPサーバーのディスク上にある抽出ファイルを直接読み取ることもできます。詳細は、「ファイル転送の構成」を参照してください。
他の統合プロセス(データの整合性チェックおよび統合)は、他のOracle Data Integration KMで管理されます。
7.2 インストールおよび構成
SAP BWデータでの作業を開始する前に、この項の情報を必ず読んでください。
7.2.1 システム要件および動作要件
インストールを実行する前に、システム要件および動作要件のドキュメントを読んで、使用する環境がインストールする製品の最低インストール要件を満たすことを確認する必要があります。
サポートされているプラットフォームおよびバージョンのリストには、次のOracle Technical Network (OTN)からアクセスできます。
http://www.oracle.com/technetwork/middleware/data-integrator/overview/index.html
.
7.2.2 テクノロジ固有の要件
SAP BWの一部のナレッジ・モジュールでは、SAP-BWシステムおよびOracleデータベースに固有の機能を使用します。この項では、これらの機能に関連する要件をリストします。
-
アダプタとの互換性があるJCoバージョンを使用する必要があります。サポートされるJCoバージョンのリストはOracle Technology Network (OTN)で入手できます。詳細は、「システム要件と動作要件」を参照してください。
-
Oracle Data IntegratorおよびJCoの両方と互換性があるJVMバージョンを使用する必要があります。
-
このアダプタは、SAPシステムからODIエージェントにデータを転送するための転送モードとして、共有ディレクトリを使用したデータ転送とFTPを経由するデータ転送の2つをサポートしています。詳細および制約については、「ファイル転送の構成」を参照してください。
ファイル転送モードの選択に応じて、次の要件を満たす必要があります。
-
共有ディレクトリを使用したデータ転送(推奨される転送方式)
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)には、SAPシステムとODIエージェントとの間で共有されるフォルダが必要です。SAPアプリケーション・サーバーでは、SAPシステムとODIエージェント・マシンからアクセス可能なフォルダにデータを書き込むことでデータを転送します。これは通常、ODIエージェント・マシンのフォルダをSAPシステムと共有することで行われます。共有フォルダは、必ずしもODIエージェント・マシン上に置く必要はないことに注意してください。共有フォルダがODIエージェント・マシンとSAPシステムの両方からアクセス可能であるかぎりは、サード・マシン上に共有フォルダを置くこともできます。
ノート:
セキュリティ上の理由から、SAPサーバー上にあるフォルダは共有しないでください。そのかわりに、ODIエージェント・マシンのフォルダをSAPシステムと共有するか、または共有ファイル・サーバーとしてサード・マシンを使用します。
共有フォルダは、SAPシステムにアクセスできる必要があります。基盤となるオペレーティング・システムのみへのアクセスでは不十分です。つまり、フォルダはSAPトランザクションAL11内で宣言される必要があり、その結果、フォルダはAL11内で正常に開かれます。
-
FTP経由のデータ転送
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)では、SAP BWシステムからのデータのアップロードにFTPサーバーが必要になります。このデータの読取りは、マッピングを実行するエージェントによって(このエージェントがFTPサーバー・マシン上で実行されている場合)ローカルで実行されるか、またはリモートで(このエージェントがFTPサーバーとは異なるマシン上にある場合)実行されます。このFTPサーバーは、SAP BWマシンとエージェント・マシンの両方からネットワーク経由でアクセスできる必要があります。
-
-
「LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)」のみ: LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)を使用したマッピングの実行時には、エージェントを実行するマシン上にSQL*Loaderが必要です。SQL*Loaderは、SAPからOracleステージング領域に抽出されたデータのロードに使用されます。
7.2.3 接続性要件
Oracle Data Integratorは、JCoを使用してSAP BWデータをホストするSAP BWシステムに接続します。また、SAPシステムから抽出されたデータのホストには、FTPサーバーまたは共有ディレクトリを使用します。
この項では、次の必要な接続情報について説明します。
7.2.3.1 JCoのインストールと構成
SAPアダプタでは、JCoを使用してSAPシステムに接続します。プロジェクトを続行する前にJCoを構成する必要があります。
JCoをインストールおよび構成するには:
ノート:
SAP Secure Network Connectionsの場合、次のことを確認してください。
-
環境変数
SECUDIR
が、証明書ファイルを含むディレクトリを指していること。 -
環境変数
SNC_LIB
が、sapcrypto.dll
/libsapcrypto.so
(Linux用)を含むディレクトリを指していること。
証明書およびCryptoライブラリの詳細は、SAP管理者に問い合せてください。
7.2.3.2 SAPシステムへのODI SAPコンポーネントのインストール
ODI SAPアダプタは、いくつかのODI SAP RFCを使用してSAPシステムと通信します。これらのRFCは、SAP送信リクエストを使用してSAP Basisチームがインストールします。「ODI SAPコンポーネントのインストール」に示す手順に従い、ODI SAPコンポーネントをインストールして、SAPユーザーに必要な認可を割り当てる場合は、SAP管理者に連絡してください。
7.2.3.3 FTPサーバー・アクセスの要求
この項は、FTPを使用したデータ転送を計画する場合にのみ適用されます。データ転送に共有ディレクトリを使用する場合、またはSAPシステムが次より古い場合は、この項をスキップできます。
-
SAP ECC6 EHP6以上
-
SAP BW/BI 7.4以上
次のステップは、このガイド内の後続のステップを実行する前に実行する必要があります。通常、これらのステップはSAP Basisチームによって実行されます。これらの設定手順を実行しないと、ODI SAP抽出ジョブの実行時にFTPが失敗します。
FTPサーバー・アクセスをリクエストするには:
- SAPサーバーにログインします。
- トランザクションSE16を実行します。
- 「表名」フィールドに「
SAPFTP_SERVERS
」と入力し、アイコンをクリックしてエントリを作成します。 - 「FTP_SERVER_NAME」フィールドにFTPサーバーのIPアドレスを入力します。
- 「FTP_Server_Port」フィールドにFTPサーバーのポートを入力します。
- アイコンをクリックして保存します。
7.2.3.4 SAP環境設定の検証
「ODI SAP設定の検証」には、ODI SAPアダプタで使用する場合のSAP環境の基本検証に関する手順があります。SAP Basisチームに連絡してすべての検証を実行し、画面ショットのような検証結果と確認内容をお知らせください。
7.2.3.5 SAP接続情報の収集
SAP BWシステムに接続するには、SAP管理者に次の情報を要求する必要があります。
-
SAPグループ・ログオンの場合:
-
SAPシステムID: ランドスケープにおける3文字で一意のSAPシステムの識別子。
-
メッセージ・サーバー: SAP Message ServerのIPアドレス/ホスト名。
-
メッセージ・サーバー・ポート: SAP Message Serverのポート番号またはサービス名。
-
グループ/サーバー: SAPログオン・グループの名前。
-
-
SAPサーバー・ログオンの場合:
-
SAP BWシステムのIPアドレスまたはホスト名: SAPが実行されているホストのIPアドレスまたはホスト名。
-
SAPクライアント番号: SAPでクライアントと呼ばれる自己完結型の単位に割り当てられた3桁の番号。クライアントは、トレーニング、開発、テスト、本番クライアントなどです。また、大企業の個々の部門を表す場合もあります。
-
SAPシステム番号: Web Application Server (WAS)とも呼ばれるSAPインスタンスに割り当てられた2桁の番号。
-
SAPシステムID: ランドスケープにおける3文字で一意のSAPシステムの識別子。
-
-
SAP BWシステムのIPアドレスまたはホスト名: SAPが実行されているホストのIPアドレスまたはホスト名。
-
SAPユーザー: SAPシステムにログオンするためにユーザーに指定される一意のユーザー名。
-
SAPパスワード: ユーザーのログインに使用される、大文字と小文字を区別するパスワード。
-
SAP言語: 英語はEN、ドイツ語はDEなど、ログイン時に使用される言語コード。
-
SAPクライアント番号: SAPでクライアントと呼ばれる自己完結型の単位に割り当てられた3桁の番号。クライアントは、トレーニング、開発、テスト、本番クライアントなどです。また、大企業の個々の部門を表す場合もあります。
-
SAPシステム番号: Web Application Server (WAS)とも呼ばれるSAPインスタンスに割り当てられた2桁の番号。
-
SAPシステムID: ランドスケープにおける3文字で一意のSAPシステムの識別子。
-
SAP SNC接続プロパティ(オプション)/SAPルーター文字列(オプション): SAPでは、SNCおよびSAPルーターを使用してセキュリティを強化しています。これは、これらのセキュリティの実装時に使用されます。
-
SAPトランスポート・レイヤー名: SAPランドスケープ内のトランスポート・レイヤーを一意に識別する文字列。これにより、ODIは、SAPでの後のデプロイメントでトランスポート・リクエストを作成できます。ここにデフォルト値がある場合でも、このトランスポート・レイヤー名は、SAP Basisチームからの提供を受ける必要があります。これを行わない場合、インストールの際、大幅な遅れにつながる可能性があります。
-
SAP Temporary Directory (
SAP_TMP_DIR
): このパラメータは、SAPシステムでのカスタム作業ディレクトリを定義する場合に使用します。これは、FTP転送モードの場合のみ適用されます。このパスは、抽出時に一時ファイルに使用されます。デフォルト値(フレックスフィールド値は空白のまま)では、SAPプロファイルで定義されるDIR_HOME
パスを使用します。一時ファイルに使用されるディレクトリをSAPアプリケーション・サーバーで指定します。パスの最後は、SAPアプリケーション・サーバーが稼働するOSに応じて、スラッシュまたはバックスラッシュにしてください。ODI SAPユーザーには、このディレクトリに対する読取りおよび書込み権限が必要です。
警告:
デフォルト値(空のFF値)は、クリティカルなSAPシステムの場合は使用しないでください。抽出時に一時ファイルが多すぎると、それぞれのファイル・システムがいっぱいになり、SAPシステムで深刻な問題が生じることがあります。SAP開発システムの場合も、デフォルト値をオーバーライドすることを強くお薦めします。
-
SAP BWバージョン:
3.5
または7.0
。 -
SAP文字セット: この文字セットは、SAPシステムがUNICODEシステムではない場合にのみ必要となります。文字セットの完全なリストは、『Oracle Databaseグローバリゼーション・サポート・ガイド』のロケール・データに関する項を参照してください。たとえば、クロアチア語のデータの場合は
EE8ISO8859P2
です。UNICODEシステムの場合はUTF8
を使用します。
ノート:
前述の接続データ(SAP SNC接続プロパティおよびSAPルーター文字列を除く)はすべて必須であり、SAP管理者から要求されます。接続設定時には、SAP管理者にサポートを依頼することを検討することもできます。
7.2.3.6 FTP接続情報の収集
SAP BWシステムでは、FTPプロトコルを使用してデータをサーバーにプッシュします。システム管理者から次の情報を収集します。
-
FTPサーバー名またはIPアドレス
-
FTPログインID
-
FTPログイン・パスワード
-
一時データ・ファイルを格納するためのディレクトリ・パス
FTPサーバーがSAPシステムとODIエージェント・マシンの両方からアクセスできることを検証してください。
7.2.3.7 共有ディレクトリ情報の収集
共有ディレクトリ情報の収集は、共有ディレクトリを使用したデータ転送を計画する場合にのみ適用されます。SAPシステムでは、共有フォルダにデータをプッシュします。後述の設定のため、システム管理者から次の情報を収集します。
-
共有フォルダの(UNC)パス名
共有フォルダがSAPシステムとODIエージェント・マシンの両方からアクセスできることおよび、アクセスに対話型認証が必要ないことを確認します。
共有フォルダは、<sid>admユーザーを使用してSAPシステムからアクセスできる必要があること、およびODIエージェントを起動するオペレーティング・システム・ユーザーからアクセスできる必要があることに注意してください。
7.3 トポロジの定義
SAP統合に使用する2つのデータ・サーバーを定義する必要があります。定義するのは、SAP ABAPデータ・サーバーとFTPデータ・サーバーです。
7.3.1 ファイル・データ・サーバーの作成
このデータ・サーバーはFTPサーバーまたはファイル・サーバーに相当し、抽出ファイルはSAPからここにプッシュされ、SQL*LoaderまたはJDBCドライバ用に取得されます。
7.3.1.1 ファイル・データ・サーバーの作成
『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』のファイル・データ・サーバーの作成に関する項の説明に従って、ファイル・データ・サーバーを作成します。この項では、SAP BWに固有のパラメータについて説明します。
データ転送モードの選択に応じて、このデータ・サーバーは次のいずれかを指す必要があります。
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既存のFTPサーバー。抽出ファイルがSAPからここにプッシュされ、ロード用に取得されます。
-
共有フォルダ。SAPシステムにより抽出ファイルがここに書き込まれ、SQL*LoaderまたはODIフラット・ファイル・ドライバからそのファイルが取得されます。このスキーマは、抽出ファイルがプッシュされるFTPホスト内のフォルダを表します。
データ・サーバーのパラメータはデータ転送モードによって異なることに注意してください。
-
FTPを使用してデータを転送する場合は、次のようにパラメータを設定します。
-
ホスト(データ・サーバー): FTPサーバーのIPホスト名またはIPアドレス
-
ユーザー: FTPサーバーにログインするためのユーザー名
-
パスワード: ユーザーのパスワード
-
-
共有ディレクトリを使用してデータを転送する場合は、次のようにパラメータを設定します。
-
ホスト(データ・サーバー): 該当なし
-
ユーザー: 該当なし
-
パスワード: 該当なし
-
-
「LKM SAP BW to SQL」とともに使用する場合は、これらの追加パラメータも構成する必要があります。
-
JDBCドライバ・クラス: com.sunopsis.jdbc.driver.file.FileDriver
-
JDBC URL: jdbc:snps:dbfile?ENCODING=UTF8
前述のURLはSAP UNICODEシステム用です。非UNICODEシステムの場合のENCODINGパラメータの詳細は、『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』のファイル・データ・サーバーの作成に関する項を参照してください。このURLで選択するエンコーディングは、SAPアプリケーション・サーバーで使用するコード・ページと一致する必要があります。
-
詳細は、「ファイル転送の構成」を参照してください。
7.3.1.2 ファイル・スキーマの作成
このファイル・データ・サーバーでは、『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』のファイル物理スキーマの作成に関する項の説明に従って、物理スキーマを作成します。
このスキーマは、FTPホストまたはファイル・サーバーのいずれかにあるフォルダを表します。これは、抽出ファイルがプッシュされるフォルダであることに注意してください。データ転送モードに応じて、データおよび作業スキーマを次のように指定します。
-
FTPファイル転送の場合:
-
ディレクトリ(スキーマ): リモートの場所から抽出ファイルをアップロードまたはダウンロードするためのFTPサーバー上のパス。このパスは、SAP BWシステムからFTPサーバーに抽出ファイルをアップロードする際に使用されます。また、抽出ファイルをダウンロードするリモート・エージェントによって使用されます。このパスにはスラッシュを使用する必要があり、スラッシュ文字で終了する必要があります。
-
ディレクトリ(作業スキーマ): FTPサーバー・マシン上のローカル・パス。このパスは、FTPを経由することなく抽出ファイルにアクセスするため、このマシン上にインストールされたエージェントによって使用されます。このアクセス方法は、LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)またはLKM SAP BW to SQLのFTP_TRANSFER_METHODパラメータが
NONE
に設定されている場合に使用されます。作業スキーマはローカル・ディレクトリの場所です。そのため、スラッシュまたはバックスラッシュは、オペレーティング・システムに応じて使用する必要があります。このパスは、スラッシュまたはバックスラッシュで終了する必要があります。データ・スキーマと作業スキーマで指定されたパス名は必ずしも同じ名前ある必要はありません。FTPサーバーが、
/sapfiles
(ディレクトリ(スキーマ)の値)という名前のFTPディレクトリにアクセスできる一方、ローカルでは、c:\inetpub\ftproot\sapfiles
(ディレクトリ(作業スキーマ)の値)にあるファイルがアクセスされます。
-
-
共有ディレクトリ転送の場合:
-
ディレクトリ(スキーマ): 抽出ファイルの書込みおよび読取りを行う共有フォルダのパス(UNC)。SAPシステムによってこのフォルダに抽出ファイルが書き込まれます。また、リモート・エージェントによって、抽出ファイルをODIエージェント・マシンにコピーする場合にも使用されます。このパスには、SAPアプリケーション・サーバーのオペレーティング・システムに応じてスラッシュまたはバックスラッシュを使用し、その終わりにはスラッシュ文字またはバックスラッシュ文字を使用する必要があります。
-
ディレクトリ(作業スキーマ): 共有フォルダをホストするサーバー・マシン上のローカル・パス。このパスは、共有フォルダを経由することなく抽出ファイルにアクセスするため、このマシン上にインストールされたエージェントによって使用されます。このアクセス方法は、LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)またはLKM SAP BW to SQLのFTP_TRANSFER_METHODパラメータが
FSMOUNT_DIRECT
に設定されている場合に使用されます。作業スキーマはローカル・ディレクトリの場所です。そのため、スラッシュまたはバックスラッシュは、オペレーティング・システムに応じて使用する必要があります。このパスは、スラッシュまたはバックスラッシュで終了する必要があります。
詳細は、「ファイル転送の構成」を参照してください。
-
File Server for SAP ABAP
と呼ばれるファイル論理スキーマを作成して、物理スキーマにマップします。この論理スキーマ名はあらかじめ定義されており、SAP ABAPのファイル・サーバーにする必要があります。
7.3.2 SAP ABAPデータ・サーバーの作成
このSAP ABAPデータ・サーバーはSAPサーバーに相当し、ここからデータが抽出されます。
7.3.2.1 SAP ABAPデータ・サーバーの作成
SAP ABAPデータ・サーバーを構成するには:
データ・サーバー名を除いて、SAPデータ・サーバーの定義の際に指定するすべてのパラメータはSAP管理者によって提供される必要があります。これらのパラメータの詳細は、「SAP接続情報の収集」を参照してください。
7.3.2.2 SAP ABAPスキーマの作成
SAP ABAPスキーマを構成するには:
- 『Oracle Data Integratorの管理』の物理スキーマの作成に関する項の説明に従って、SAP ABAPデータ・サーバーの下に物理スキーマを作成します。このスキーマには、特定の構成は必要ありません。SAP ABAPデータ・サーバーの下に物理スキーマが1つのみ必要となります。
- 適切なコンテキスト内で、『Oracle Data Integratorの管理』の論理スキーマの作成に関する項の説明に従って、この物理スキーマ用の論理スキーマを作成します。
7.4 プロジェクトの設定
SAP BWの機能を使用してプロジェクトを設定するには、標準の手順に従います。『Oracle Data Integratorでの統合プロジェクトの開発』の統合プロジェクトの作成に関する項を参照してください。
次のKMをOracle Data Integratorプロジェクトにインポートします。
-
RKM SAP BW
-
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)
-
LKM SAP BW to SQL
これらの特定のSAP BW KMに加えて、Oracle Databaseでデータの抽出およびデータの品質チェックを実行する標準Oracle LKM、IKMおよびCKMをインポートします。利用できるKMのリストは、『Oracle Data Integrator接続およびナレッジ・モジュール・ガイド』 のOracle Databaseに関する項を参照してください。
7.5 モデルの作成およびリバースエンジニアリング
この項では、次の項目について説明します。
7.5.1 SAP BWモデルの作成
『Oracle Data Integratorでの統合プロジェクトの開発』のモデルの作成に関する項の説明に従って、標準の手順を使用してSAP ABAPテクノロジおよびSAP ABAP論理スキーマに基づくSAP BWモデルを作成します。
7.5.2 SAP BWモデルのリバース・エンジニアリング
RKM SAP BWを使用してカスタマイズされたリバース・エンジニアリングを実行するには、『Oracle Data Integratorでの統合プロジェクトの開発』のモデルのリバース・エンジニアリングに関する項の説明に従って、通常の手順を使用します。この項では、SAP BW固有のフィールドのみについて説明します。
- SAP BWモデルの「リバース・エンジニアリング」タブでRKM SAP BWを選択します。
- RKM SAP BWでは、USE_GUI KMオプションを
true
に設定します。 - モデルを保存します。
- モデル・エディタ・ツールバーで、「リバースエンジニアリング」をクリックします。
- セッションが開始されると、ツリー・メタデータ・ブラウザが表示されます。リバースするデータ・ストア・オブジェクト(複数も可)を選択します。
- ツリー・メタデータ・ブラウザ・ウィンドウで、「リバースエンジニアリング」をクリックします。
リバース・エンジニアリング・プロセスでは、選択されたデータ・ストア・オブジェクトをデータストアとして返します。
ノート:
ランタイム・エージェント上でリバース・エンジニアリングを実行する場合は、USE_GUIオプションをfalseに設定する必要があります。このオプションは、Studioに組み込まれたエージェントを使用して、カスタマイズされたリバース・エンジニアリングを開始する場合にのみ使用されます。
7.5.3 SAP BWモデルのPSA表のリバース・エンジニアリング
PSA表は、BWシステムのデータ・ソースのデータを格納するために使用されます。一般に、BWシステムでデータソースのロード(抽出)を実行するとき、パートナERPシステムからアクティブなすべてのメタデータ情報が取得され、これがBWシステムにレプリケートされます。
たとえば、ERPシステムに10個のフィールドがあり、それにフィールドを2つ追加した場合、これはBWシステムにレプリケートされます。
このデータはBWシステムに格納され、PSA表はERPシステムから抽出されたデータを保持します。PSA表は、透過的な一時表としてBWシステムに格納され、BWおよびERP間のデータソースのマッピングが作成されるときに作成されます。PSAは構成可能です。
PSA表の名前は/BIO/*(Standard)または/BIO/*(Custom)で始まります。
前提条件:
-
BristleconeサイトからSAP BW ADDON送信リクエストをダウンロードします(C.2.1.1項「送信リクエスト・ファイルのダウンロード」を参照)。
ノート: 参照先の項に示されているリンクのかわりに、次のリンクを使用してください。
http://www.bristleconelabs.com/edel/showdownload.html?product=odi_sap_bw_addon.
-
ダウンロードした送信リクエストをソースSAP BWシステムにインポートします(C.2.1.2 送信リクエスト・ファイルのインストールの項を参照)。
PSAリバース・エンジニアリング・プロセスの開始
SAP BW PSAデータストアのリバース・エンジニアリング・プロセスを開始するには:
-
「モデル」ツリー・ビューで、SAP BW SourceModelを開きます。
-
「リバース・エンジニアリング」タブで、次のようにします。
-
「グローバル」コンテキストを選択します。
-
「カスタマイズ済」オプションを選択します。
-
SAP BW DemoプロジェクトでインポートしたRKM SAP ERPを選択します。
-
SAP ERP KMオプションに次のパラメータを入力します。
USE_GUI: No
SAP_TABLES_NAME: /BIC/B0000133000
-
その他のパラメータを、実際のSAP構成に合せて設定します。
-
-
「ファイル」メニューから、「保存」をクリックして変更を保存します。
-
「リバース・エンジニアリング」をクリックして、リバース・エンジニアリング・プロセスを開始します。
-
「OK」をクリックします。「セッションを開始しました」ダイアログが表示されます。
-
「OK」をクリックします。
-
オペレータで、現在のセッションの状態が「実行中」であることを確認します。
セッションに失敗した場合は、設定を確認してください。すべてのインストール・ステップが正常に完了するまでは次に進まないでください。
-
リバースされたPSA表のモデルを確認します。
ノート:
現在、PSA表のリバースは非GUIモードでのみサポートされます。
7.6 マッピングの設計
Oracleステージング領域にSAP BWデータをロードするマッピングを作成するには:
- SAP BWモデルからソース・データストアを使用してマッピングを作成します。このマッピングは、Oracleターゲットを持つか、またはステージング領域としてOracleスキーマを使用する必要があります。
- マッピングに結合、フィルタおよびマップ属性を作成します。
- マッピングの物理的ダイアグラムで、SAP BWソース・データ・オブジェクトのアクセス・ポイントを選択します。このオブジェクトのプロパティ・インスペクタが開きます。
- 「ロード・ナレッジ・モジュール」タブでLKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)を選択します。
7.7 SAP BW統合の考慮事項
7.7.1 ファイル転送の構成
ODI SAPアダプタは、ABAPプログラムを使用してデータを抽出します。SAPシステムからODIエージェントにデータを転送するため、アダプタでは2つの転送モードと各種の構成がサポートされます。
7.7.1.1 共有ディレクトリを使用した転送(推奨)
抽出プロセスの間に、ABAPプログラムによって共有フォルダのデータ・ファイルにデータのチャンクが書き込まれます。パフォーマンスを向上させるには、この共有フォルダをODIエージェント・マシンに置く必要があります。この設定でLKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)の場合: SQL*Loaderによって、そのデータ・ファイルをローカルに読み込み、そのデータをOracleステージング領域にロードします。LKM SAP BW to SQLの場合: ODIファイル・ドライバによって、そのデータ・ファイルをローカルに読み込み、JDBCを使用してそのデータをOracle以外のステージング領域に挿入します。
フォルダがODIエージェント・マシン上にない場合、ODIエージェントではまず、共有フォルダからエージェントにファイルをコピーする必要があります。そして、次のステップでそのデータをSQL*LoaderまたはJDBC接続を使用してロードします。
構成1: 共有フォルダがODIエージェント・マシンに物理的に配置される場合(推奨)
FTP_TRANSFER_METHOD = FSMOUNT_DIRECT
の場合にこの構成を使用します。この構成では、次のデータの移動が行われます。
-
ABAPプログラムによって、FETCH_ BATCH SIZEレコードのチャンクが抽出され、そのレコードが共有フォルダ内のファイルに書き込まれます。
-
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)の場合: SQL*Loaderによって、このTEMP_DIRからデータ・ファイルが読み込まれ、そのデータがOracleステージング領域にロードされます。LKM SAP BW to SQLの場合: ODIファイル・ドライバによって、そのデータ・ファイルをこのTEMP_DIRから読み込み、JDBCを使用してそのデータをOracle以外のステージング領域に挿入します。
この構成では、次のトポロジの設定が必要です。
-
ファイル・サーバー/ODIエージェント・マシンを指すファイル・データ・サーバーを作成します。
-
ホスト(データ・サーバー): 該当なし
-
ユーザー: 該当なし
-
パスワード: 該当なし
-
-
このファイル・データ・サーバーで、共有フォルダを表す物理スキーマを作成します。データおよび作業スキーマを次のように指定します。
-
ディレクトリ(スキーマ): 抽出ファイルを書き込むABAPプログラムによって使用される共有フォルダのパス(UNC)。
-
ディレクトリ(作業スキーマ): エージェントがファイルをコピーするパス。同じ共有パスからファイルをコピーできる場合は、エージェントに対してスキーマで指定されたものと同じパスを指定してファイルをコピーします。
ノート:
ctl、bad、dscなどの一時ファイルは、ランタイム・エージェントのローカルの一時フォルダに作成されます。デフォルトの一時ディレクトリは、システムの一時ディレクトリです。UNIXでは通常/tmpとなり、Windowsではc:\Documents and Settings\<user>\Local Settings\Tempとなります。KMオプションのTEMP_DIRを使用してこのディレクトリを変更できます。
-
構成2: 共有フォルダがODIエージェント・マシン上に物理的に配置されていない場合
FTP_TRANSFER_METHOD = FSMOUNT
の場合にこの構成を使用します。この構成では、次のデータの移動が行われます。
-
ABAPプログラムによって、FETCH_ BATCH SIZEレコードのチャンクが抽出され、そのレコードが共有フォルダ内のファイルに書き込まれます。
-
ランタイム・エージェントによって、KMのTEMP_DIRオプションで指定されたディレクトリにファイルがコピーされます。
-
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)の場合: SQL*Loaderによって、このTEMP_DIRからデータ・ファイルが読み込まれ、そのデータがOracleステージング領域にロードされます。LKM SAP BW to SQLの場合: ODIファイル・ドライバによって、そのデータ・ファイルをこのTEMP_DIRから読み込み、JDBCを使用してそのデータをOracle以外のステージング領域に挿入します。
この構成では、次のトポロジの設定が必要です。
-
抽出ファイルがSAPからプッシュされ、SQL*Loader用に取得されるファイル・サーバーを指すファイル・データ・サーバーを作成します。
このデータ・サーバーのパラメータを次のように設定します。
-
ホスト(データ・サーバー): 該当なし
-
ユーザー: 該当なし
-
パスワード: 該当なし
-
-
このファイル・データ・サーバーで、共有フォルダを表す物理スキーマを作成します。データおよび作業スキーマを次のように指定します。
-
ディレクトリ(スキーマ): 抽出ファイルを書き込むABAPプログラムとそのファイルをコピーするエージェントによって使用される共有フォルダのパス(UNC)。
-
ディレクトリ(作業スキーマ): 共有フォルダのパス(UNC)、またはエージェントのホスト上の共有フォルダのマウント・ポイントのローカル・パス名。
-
データ・ファイルは、ローカルの一時フォルダにある共有フォルダからランタイム・エージェントにコピーされます。デフォルトの一時ディレクトリは、システムの一時ディレクトリです。UNIXでは通常/tmp
となり、Windowsではc:\Documents and Settings\<user>\Local Settings\Temp
となります。KMオプションのTEMP_DIRを使用してこのディレクトリを変更できます。
7.7.1.2 FTPベースの転送
抽出プロセスの最後に、ABAPプログラムによってFTPサーバーにデータ・ファイルがアップロードされます。パフォーマンスを向上させるには、このFTPサーバーをランタイム・エージェントと同じマシン上に置く必要があります。
エージェントがFTPサーバーと同じマシン上にない場合は、FTPサーバーからファイルをダウンロードした後に、SQL*LoaderまたはJDBC接続を使用してそのファイルをステージング領域にロードします。このダウンロード処理は、FTP、SFTPまたはSCPを使用して実行されます。
図7-3に示される構成は、FTP_TRANSFER_METHOD = NONE
の際に使用されます。この構成では、次のデータの移動が行われます。
-
ABAPプログラムでは、データを抽出し、そのデータ・ファイルをFTPサーバーにアップロードします。
-
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)の場合: SQL*Loaderによって、そのデータ・ファイルをローカルに読み込み、そのデータをOracleステージング領域にロードします。LKM SAP BW to SQLの場合: ODIファイル・ドライバによって、そのデータ・ファイルをローカルに読み込み、JDBCを使用してそのデータをOracle以外のステージング領域に挿入します。
この構成では、次のトポロジの設定が必要です。
-
FTPサーバーを指すファイル・データ・サーバーを作成します。
-
ホスト(データ・サーバー): FTPサーバーのホスト名またはIPアドレス
-
ユーザー: FTPサーバーにログインするためのユーザー名
-
パスワード: ユーザーのパスワード
-
-
このファイル・データ・サーバーに、抽出ファイルがプッシュされるFTPホスト内のフォルダを表す物理スキーマを作成します。データおよび作業スキーマを次のように指定します。
-
ディレクトリ(スキーマ): SAP抽出ファイルをアップロードするためのFTPサーバー上のパス。
-
ディレクトリ(作業スキーマ): SAP抽出ファイルを含むFTPサーバー・マシン上のローカル・パス。エージェントおよびSQL*LoaderまたはODIフラット・ファイル・ドライバによって、この場所から抽出ファイルを読み込みます。
-
図7-4に示される構成は、FTP_TRANSFER_METHOD
がFTP
、SFTP
またはSCP
の際に使用されます。この構成では、次のデータの移動が行われます。
-
ABAPプログラムでは、データを抽出し、そのデータ・ファイルをFTPサーバーにアップロードします。
-
ODIエージェントによって、FTPサーバーからKMオプションのTEMP_DIRで指定するディレクトリにそのファイルがダウンロードされます。
-
LKM SAP BW to Oracle (SQLLDR)の場合: SQL*Loaderによって、このTEMP_DIRからデータ・ファイルが読み込まれ、そのデータがOracleステージング領域にロードされます。LKM SAP BW to SQLの場合: ODIファイル・ドライバによって、そのデータ・ファイルをこのTEMP_DIRから読み込み、JDBCを使用してそのデータをOracle以外のステージング領域に挿入します。
この構成では、次のトポロジの設定が必要です。
-
FTPサーバーを指すファイル・データ・サーバーを作成します。
-
ホスト(データ・サーバー): FTPサーバーのホスト名またはIPアドレス
-
ユーザー: FTPサーバーにログインするためのユーザー名
-
パスワード: ユーザーのパスワード
-
-
このファイル・データ・サーバーに、抽出ファイルがプッシュされるFTPホスト内のフォルダを表す物理スキーマを作成します。データおよび作業スキーマを次のように指定します。
-
ディレクトリ(スキーマ): SAP抽出ファイルをアップロードするためのFTPサーバー上のパス。
-
ディレクトリ(作業スキーマ): <未定義>。データ・ファイルがFTPサーバーのファイル・システムから直接アクセスされることはないため、このパスは空白のままにします。
-
考慮点および制限:
FTPベースのデータ転送では、広範囲にわたる(S)FTPファイル転送を使用し、転送前にすべてのデータをSAPのアプリケーション・サーバー・メモリー内に保持する必要があります。したがって、SAPセッションごとに必要なメモリー量は、抽出されるデータ量に応じて増加するため、データ量の上限を設定することになります。この上限は、SAP内でのセッション・メモリーの設定を増やすことてある程度調節できます。
共有フォルダ・ベースの構成に必要な設定は多少複雑になりますが、すべてのデータをSAP ASのメモリーに格納する必要がなくなるため、推奨される抽出方法です。
7.7.2 実行モード
バックグラウンド処理
デフォルトでは、生成済ABAPコードはABAPレポートとしてデプロイされます。実行時に、このレポートはバックグラウンド処理のためにSAPスケジューラに発行されます。ジョブ・ステータスは、その後ODIによってモニターされます。
KMオプションのJOB_CLASS
では、バックグラウンド・ジョブの優先度を定義します。有効な値(SAP JOB_CLASS
設定に対応)は次のとおりです。
JOB_CLASS
= Aは最高の優先度です
JOB_CLASS
= Bは標準の優先度です
JOB_CLASS
= Cは最低の優先度です
ダイアログ・モード処理
後方互換性のため、KMオプションのBACKGROUND_PROCESSING
をfalseに設定できます。生成済ABAPコードはその後、RFCとしてデプロイされます。実行時に、このRFCはデータを抽出するためにODIからコールされます。
ダイアログ・モード処理は非推奨になっており、現在後方互換性のためにのみサポートされています。将来のリリースでは、ダイアログ処理は完全に削除される可能性があります。
7.7.3 本番環境でのABAPのアップロードおよびABAPコードの制御
開発の際には、ODIはABAPコードを生成し、マッピングを実行するたびに、これがSAP開発システムにアップロードされます。この自動的なコードのアップロードによって開発サイクルが早くなります。
マッピングまたはパッケージがユニット・テストされ、開発環境から移行する準備が整うと、他のSAP ABAPコードと同様にSAPのCTS (Change and Transport System)を使用して生成されたSAP ABAPコードをそれぞれのSAPシステムに転送する必要があります。これはSAPの標準的な動作です。このタスクを簡略化するために、開発環境へのアップロードの際にSAPトランスポート・リクエストが自動的に作成されます。生成されたODI SAP ABAPプログラムのトランスポートについては、SAP管理者に確認してください。
開発、テストおよび本番で異なるODIリポジトリを使用している場合、ODIシナリオがそれぞれのSAPシステムのODI ABAPコードと一致していることを確認してください。つまり、SAP CTSを使用してSAP ABAPコードをSAP開発システムからSAP QAシステムにトランスポートし、(トランスポートされるABAPコードを生成した)ODIシナリオをODI開発リポジトリからODI QAリポジトリにトランスポートする必要があります。ODIシナリオのトランスポート方法の詳細は、『Oracle Data Integratorでの統合プロジェクトの開発』のシナリオの使用に関する項を参照してください。
開発以外のODIでABAPコードをアップロードする必要がなくなると、ABAPコードはSAPのCTSによってトランスポートされるため、このような開発以外のシステムではABAPのアップロードができなくなります。
LKMオプションのUPLOAD_ABAP_CODE
をNo
に設定することによってアップロードを明示的に無効にできますが、通常、ODIトポロジ内のSAPデータ・サーバー上で定義された「SAP Allow ABAP Upload」フレックスフィールドを使用して無効にされます。つまり、ABAPコードのアップロードは、LKMオプションのUPLOAD_ABAP_CODE
およびSAP Allow ABAP Upload
フレックスフィールドの両方をYes
に設定した場合にかぎり実行されます。本番システムへのアップロードを無効にするには、トポロジ内の「SAP Allow ABAP Upload」フレックスフィールドを0
に設定するのみで十分です。
ヒント:
開発環境ではABAPコードをアップロードし、QAまたは本番環境ではそのアップロードをスキップするマッピングを構成するには:
-
すべてのマッピングにおいて、KMオプションの
UPLOAD_ABAP_CODE
をYes
に設定します。 -
トポロジ内のSAPデータ・サーバーを次のように構成します。
-
すべてのSAP開発システムで、SAP Allow ABAP Uploadフレックスフィールドを
1
に設定します。 -
他のすべてのSAPシステムで、SAP Allow ABAP Uploadフレックスフィールドを
0
に設定します。
-
ノート:
抽出プロセスを開始する前に、ODIは、マッピングおよびシナリオがSAPにインストールされているコードと一致することを確認します。シナリオが変更されたがABAPコードは再アップロードされていないなどの不一致がある場合は、例外がスローされます。
場合によっては、マッピングのABAP抽出コードのインストールのみを行い、データを抽出しないことが望ましい場合があります(自動インストールの場合など)。この場合、すべてのマッピングは、KMオプションのEXECUTE_ABAP_CODE
を各マッピングでFalse
に設定してパッケージ内でリンクできます。このパッケージを実行すると、ずべてのABAPコードがインストールされますが、どれも実行されません。
すべてのマッピングの変更を回避(前述のようにEXECUTE_ABAP_CODE
をFalse
に設定)するために、かわりにODI DataServerのSAP Allow ABAP Executeフレックスフィールドを使用して、すべてのSAP ABAPの実行を無効にできます。このフレックスフィールドが無効の場合、KMオプションのEXECUTE_ABAP_CODE
がTrue
に設定されていてもABAPコードは実行されません。
手動アップロード
場合によっては、開発システムでも自動アップロードが許可されないことがあります。そのような場合、KMオプションのMANUAL_ABAP_CODE_UPLOAD
により手動アップロードが可能です。true
に設定すると、生成済ABAPコードを含むテキスト・ファイルがODIで作成されます。ABAPコードを生成する場合、DataServer FlexField SAP Allow ABAP Uploadを1
に設定する必要があることに注意してください。これには、手動アップロードも含まれます。デフォルトでは、テキスト・ファイルは"REPORT_" + ABAP_PROG_NAME + ".ABAP"としてシステムの一時フォルダ("java.io.tmpdir")に作成されます。このコードはSAP管理者に渡され、インストールされます。インストールされると、ODIマッピングはMANUAL_ABAP_CODE_UPLOAD
およびUPLOAD_ABAP_CODE
を使用して実行できるようになり、両方の設定がfalse
に戻されます。
7.7.4 ODI SAPのトランスポート・リクエストの管理
開発の際には、マッピングを実行するたびに、ABAPコードがSAPシステムにアップロードされます。より正確には、次のようになります。
SAPデータを抽出するODIマッピングは、1つ以上のABAP抽出プログラムを生成します(たとえば、結合場所がステージングに設定されると、2つの抽出ジョブが作成されます)。デフォルトでは、1つのマッピングのすべてのABAP抽出プログラムが1つのSAP機能グループに割り当てられます。別のマッピングのABAP抽出プログラムは、別のSAP機能グループに割り当てられます。デフォルトの機能グループ名は、ZODI_FGR_<Mapping Id>
のような名前です。
アップロード中、各ODIマッピング(各SAP機能グループ)に対してSAP CTSトランスポート・リクエストが作成されます。このため、SAP CTSを介して生成されたODI ABAP抽出プログラムの詳細な開発が可能になります。
グループ化(バックグラウンド処理)
複数のODIマッピングのABAPコードをより大まかなデプロイメント制御のために単一のトランスポート・リクエストにグループ化する必要がある場合、次のステップを実行する必要があります。
-
すべてのABAPレポートの共通接頭辞にKMオプションの
SAP_REPORT_NAME_PREFIX
を設定します。たとえば、すべてのマッピングでZODI_DWH_SALES_にします。 -
すべての個別マッピングにKMオプションの
ABAP_PROGRAM_NAME
を選択します。たとえば、LOAD01、LOAD02などです。
これらのサンプル設定の結果は、ZODI_DWH_SALES_LOAD01、ZODI_DWH_SALES_LOAD02などと呼ばれる、ABAPレポートを含む単一のトランスポート・リクエストになります。
グループ化(ダイアログ・モード処理、非推奨)
複数のODIマッピングのABAPコードをより大まかな開発制御のための単一のトランスポート・リクエストにグループ化する必要がある場合、これらのマッピングのすべてのLKMのKMオプションのSAP_FUNCTION_GROUP
をユーザー定義の値(ZODI_FGR_DWH_SALES
など)に設定できます。こうすることによって、ODIはすべてのABAP抽出プログラムを同じSAP機能グループに生成し、このグループは単一のトランスポート・リクエストに結合されます。サイトの有効な機能グループ名は、SAP管理者に確認してください。
ヒント:
生成されたABAP抽出プログラムの名前は、デフォルトではZODI_<Mapping Id>_<SourceSet Id>
のような名前です。このことによって、一意のプログラム名による便利な開発を行えます。MappingIdは変更されませんが、ODIマッピングの特定の変更によって、SourceSetIdが変更され、結果としてそれぞれの抽出プログラム名が変更されます。したがって、開発が安定した後にはユーザー定義のプログラム名を使用することをお薦めします。ABAPプログラム名は、LKMオプションのABAP_PROGRAM_NAME
の値を定義することによって設定できます(ZODI_DWH_SALES_DATA01
など)。該当する命名規則については、SAP管理者に確認してください。
トランスポート・リクエストの説明
ODIでトランスポート・リクエストが作成されると、トランスポート・リクエストの説明が、KMオプションのSAP_TRANSPORT_REQUEST_DESC
で提供されたテキストに設定され、KMオプションのFUNCTION_GROUP
で定義された機能グループに適用されます。
デフォルトでは、ODIステップ名(通常はマッピング名)が使用されます。
ODI:<%=odiRef.getPackage("PACKAGE_NAME")%>
のようなコード生成式は、いくつかのマッピングを1つのSAP機能グループ / SAPトランスポート・リクエストにグループ化する場合に役立つ場合があります。
7.7.5 SAPパッケージおよびSAP機能グループ
SAPパッケージ
ODI SAPアダプタによってインストールされたすべてのSAPオブジェクトは、次のSAPパッケージにグループ化されます。
-
ZODI_RKM_PCKGは、任意のRKM関連オブジェクトを含みます。これらのオブジェクトは開発フェーズ中に使用されます。
-
ZODI_LKM_PCKGは、任意のSAP LKMで生成された任意の抽出プログラムを含みます。
SAP管理者からリクエストされた場合、KMオプションのSAP_PACKAGE_NAME_ODI_DEV
およびSAP_PACKAGE_NAME_ODI_PROD
を使用して、これらのデフォルト名を上書きできます。これらの値は、初回インストール時に設定する必要があります。後で変更する場合、ODI SAPアダプタを(事前にアンインストールして)再インストールする必要があります。
SAP機能グループ
すべてのSAP機能モジュールは、次のSAP機能グループにグループ化されます。
-
ZODI_FGRは、メタデータの取得用モジュールなどのデプロイメント時に必要な任意の機能モジュールを含みます。これらの機能モジュールは、RKMによって初回インストール時にインストールされます。
RKMの初回インストール時に、RKMオプションの
SAP_FUNCTION_GROUP_ODI_DEV
を使用してデフォルト名を上書きできます。 -
ZODI_FGR_PRODは、ABAPレポート実行ステータスのモニタリング用など、本番の実行時に必要な任意の機能モジュールを含みます。これらの機能モジュールは、RKMによって初回インストール時にインストールされます。
RKMの初回インストール時に、RKMオプションの
SAP_FUNCTION_GROUP_ODI_PROD
を使用してデフォルト名を上書きできます。 -
ZODI_FGR_PROD_...は、任意のデータ抽出機能モジュールを含みます。そのような機能モジュールは、非推奨のダイアログ・モード(BACKGROUND_PROCESSING = false)の使用時にLKMによって生成されます。
デフォルトでは、すべてのマッピングで独自の機能グループが使用されます。デフォルト値は、前述の2つの機能グループ名とは関係ないLKMオプションのSAP_FUNCTION_GROUP
を使用して上書きできます。
詳細は、「ODI SAPのトランスポート・リクエストの管理」を参照してください。
7.7.6 ログ・ファイル
RKMおよびLKMの実行中、多くのメッセージがODIのロギング機能のログに記録されます。ODIログ・ファイルおよびその他のログ・ファイルにあるこれらのメッセージには、有用なトラブルシューティングの詳細が含まれていることがあります。ODIのロギング機能の詳細は、『Oracle Data Integratorの管理』のODIコンポーネントの実行時ロギングに関する項を参照してください。表7-2には、各種ログ・ファイルとその使用方法が示されています。
表7-2 ログ・ファイル
デフォルトのログ・ファイル名 | KM /フェーズ | コンテンツ |
---|---|---|
|
RKM |
メタデータ取得の実行ログ |
|
RKM |
RKM用SAP RFCの初回インストールに関する情報
ノート: RKMベース・インストールのみ。 |
|
LKM - 生成時 |
ABAPエクストラクタのコード生成に関する情報 |
|
LKM - 実行時 |
ABAPエクストラクタのインストールに関する情報 |
|
LKM - 実行時 |
デルタ抽出に関する情報 |
|
LKM - 実行時 |
SQL*Loaderログ・ファイル |
|
LKM - 実行時 |
SQL*Loader実行時のOS標準出力には、SQL*Loaderがインストールされていない場合などの情報を含めることができます。 |
|
LKM - 実行時 |
SQL*Loader実行時のOSエラー出力には、SQL*Loaderがインストールされていない場合などの情報を含めることができます。 |
7.7.7 SAP BWアダプタの制限
SAP ABAP BWアダプタには次の制限があります。
-
ODIトポロジ・マネージャ内のSAP接続定義を検証する「テスト」ボタンはサポートされていません。
-
表のリバース・エンジニアリング後は、SAP BWデータ・ストア・タイプ(InfoCube、InfoObject、ODS/DSO、OpenHub、階層およびテキスト表)を変更できません。
-
SAP ABAP KMでは、順序付けられた結合のみをサポートします。
-
完全外部結合および右外部結合はサポートされません。
-
1対多のリレーションシップ(InfoCubeおよび関連付けられたInfoObject結合)では、最初のデータ・ターゲットはInfoCube、次はInfoObjectsおよびそのTextTablesにする必要があります。
-
SAP BW MultiCubeはサポートされません。
MultiCubeは物理InfoCubeの論理ビューであり、データ自体は保持されません。ベースInfoCubeから抽出し、ODIを使用してステージング領域でデータを結合することを検討してください。
-
InfoCubeは、ソースの複数のIOに左外部結合できます。
ノート:
-
ソースのText表に結合できるのは、これらのInfoObjectのいずれか1つのみです。
-
複数のInfoObjectをそれぞれのText表にステージングで結合できます。
-
-
階層データストアは、ソース上で他のどのSAP BWオブジェクトとも結合できません。
-
マスター・データを持たないInfoObjectsのテキスト・データストアは、ソース上で他のどのSAP BWオブジェクトとも結合できません。
-
OpenHubデータストアは、ソースで他のどのSAP BWオブジェクトとも結合できません。
-
属性RSHIENMのみが、
HIER_0GL_ACCOUNT.RSHIENM = 'MYHIER1'
などの定数文字列値を使用してフィルタ処理できます。