SNMP エージェント管理ガイド

     前  次    新しいウィンドウで目次を開く     
ここから内容の開始

Oracle SNMP エージェント インテグレータを使用したポーリング

以下の節では、Oracle SNMP エージェント インテグレータを管理ステーションのプロキシとして使用し、管理対象ノード上でローカルにポーリングを実行する方法について説明します。

 


ポーリングの概要

ポーリングとは、管理対象リソースの属性の値を特定の間隔でチェックするアクティビティです。重要なシステム コンポーネントやアプリケーションでの障害を検知するには、管理システムでポーリングを実行して、管理対象リソースの属性値が重大なしきい値に達していないかどうかを判別します。しかし、管理ステーションから直接ポーリングを実行すると、ネットワーク帯域と管理ステーション自体への負荷が増大し、ポーリング対象コンポーネントの数が増えるにつれて効率性が低下します。

Oracle SNMP エージェント インテグレータをマネージャのプロキシとして動作するようにコンフィグレーションすると、管理対象ノード上でローカルにポーリングを実行できます。分散されたインテグレータ エージェントにポーリングを実行させることで、管理ステーションへの負荷を軽減し、ネットワーク帯域の消費を抑えることができます。

チェックするしきい値はユーザが設定できます。ポーリングは、Oracle SNMP エージェント インテグレータの開始時に活性化するか、管理ステーションからの SNMP Set 要求で活性化できます。設定したしきい値に達すると、Oracle SNMP エージェント インテグレータがエンタープライズ固有の SNMP トラップを送信します。警告の理由を示すため、特定のしきい値に達したときに生成されるトラップに、送信する特定のトラップ タイプ番号をコンフィグレーションしておきます。マネージャと Oracle SNMP エージェント インテグレータの間の通信が発生するのは、マネージャが Set 要求を送信してポーリングを非活性化 (または再活性化) するときと、Oracle SNMP エージェント インテグレータが管理対象リソースで指定のイベントを検知して SNMP トラップを送信するときだけです。設定したしきい値に達したときにスクリプトやプログラムを実行するよう、Oracle SNMP エージェント インテグレータをコンフィグレーションすることもできます。

 


ローカル ポーリングの設定手順

Oracle SNMP エージェント インテグレータを使用してローカル ポーリングを実行するには、次の手順に従って設定を行います。

  1. どのリソースをモニタするかを決めます。
  2. モニタするリソースの属性は、MIB オブジェクトとして定義する必要があります。これらの MIB オブジェクトは、管理対象ノードにインストールされているエージェントまたはサブエージェントによってサポートされていなければなりません。

  3. Oracle SNMP エージェント インテグレータから管理対象リソースにアクセスできるようにします。
  4. Oracle SNMP エージェント インテグレータには、管理対象オブジェクトにアクセスする方法を知らせるなければなりません。つまり、そのオブジェクトのオブジェクト識別子を、Oracle SNMP エージェント インテグレータから認識できる OID ツリーのブランチ内に配置しておく必要があります。

    モニタする管理対象オブジェクトが管理対象ノードにインストールされている SMUX サブエージェントによってサポートされていない場合は、その OID ツリーのセクションがサブエージェントの開始時に Oracle SNMP エージェント インテグレータに自動的に登録されます。この登録内容は、Oracle SNMP エージェント コンフィグレーション ファイルの OID_CLASS エントリで変更できます。詳細については、「コンフィグレーション ファイル」を参照してください。

    ピア SNMP エージェント (または DPI と SMUX のマスタ エージェント) の場合は、Oracle SNMP エージェント コンフィグレーション ファイルの NON_SMUX_PEER エントリを使用して、エージェントがサポートする OID ツリーのセグメントを定義する必要があります。詳細については、「複数の SNMP エージェントで使用する Oracle SNMP エージェント インテグレータのコンフィグレーション」を参照してください。

    Oracle SNMP エージェント インテグレータで直接サポートされる MIB グループは、MIB-II の system グループと snmp グループ、SMUX MIB、および SNMP エージェント MIB の Oracle SNMP エージェント beaintAgtTable です。

  5. Oracle SNMP エージェント インテグレータへのポーリング指示を定義します。
  6. この手順では、以下の 2 つを行います。

    • 必要なしきい値を定義する
    • しきい値に達したときのアクションを指定する
    • SNMP への各ポーリング指示を「規則」と呼びます。規則は、Oracle SNMP エージェントの beamgr.conf コンフィグレーション ファイルの RULE_ACTION エントリで定義します。このファイルは、任意のテキスト エディタを使用して修正できます (規則の作成方法については、「新しいポーリング規則の作成」を参照してください)。規則の詳細については、「Oracle SNMP エージェント インテグレータの規則」で説明します。また、「コンフィグレーション ファイル」では、RULE_ACTION エントリの構文について解説しています。

  7. Oracle SNMP エージェント インテグレータのトラップの SNMP 管理システムをコンフィグレーションします。
  8. ポーリングしきい値に達すると、Oracle SNMP エージェント コンフィグレーション ファイルの TRAP_HOST エントリに指定された送り先に、Oracle SNMP エージェント インテグレータからエンタープライズ固有の SNMP トラップ通知が送信されます。Oracle SNMP エージェント インテグレータによって生成された SNMP トラップ通知を使用できるようにするには、SNMP 準拠の管理システムでいくつかのコンフィグレーションを実施する必要があります。どのような内容のコンフィグレーションを行うかは、使用している管理システムによって異なります。通常、トラップの受信時にアクションを実行するには、管理システムでコンフィグレーションやマッピングを実施する必要があります。たとえば、トラップを受信したらアイコンの色を赤にする、といったアクションをコンフィグレーションできます。詳細については、使用している管理システムのマニュアルを参照してください。

  9. Oracle SNMP エージェント インテグレータによるポーリングを開始します。
  10. Oracle SNMP エージェント インテグレータを開始すると、すべての有効なポーリングの実行が開始されます。詳細については、「Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング アクティビティの開始」を参照してください。

  11. 必要に応じて、Oracle SNMP エージェント インテグレータによるポーリングを非活性化したり再活性化したりします。
  12. ポーリング規則は、MIB オブジェクトとして扱うことができます。したがって、管理ステーションから SNMP Set 要求を送信することで、ポーリングを非活性化したり再活性化したりできます。詳細については、「Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング アクティビティの開始」を参照してください。

 


Oracle SNMP エージェント インテグレータの規則

Oracle SNMP エージェント インテグレータの規則とは、Oracle SNMP エージェント インテグレータに対するポーリング指示で、以下の部分から構成されます。

条件

Oracle SNMP エージェント インテグレータによるポーリングでは、指定された条件が満たされているかどうかが判別されます。条件は、オブジェクト識別子で指定されたオブジェクトと、そのオブジェクト値との間の関係として定義します。

条件を定義するための関係

条件が満たされる (しきい値に達する) のは、指定した関係がオブジェクトと値の間で成立したときのみです。たとえば、「より大きい」という関係は、「使用済みのディスク容量が 90% より大きい」という条件を定義するために使用します。

上記の場合、オブジェクト (使用済みディスク容量のパーセンテージ) の値が 90 より大きいと、条件が満たされて true と評価されます。この例では、条件を「より大きい」と日本語で記述していますが、実際のコーディングでは記号を使用します。

次の表に、条件の定義に使用できる関係を示します。

記号
意味
==
と等しい
!=
と等しくない
<
より小さい (数値の場合)
のサブ文字列 (文字列の場合)
>
より大きい (数値の場合)
を含む (文字列の場合)
<=
以下
>=
以上

SMUX サブエージェントを使用したポーリング

たとえば、Oracle SNMP エージェント インテグレータを使用して、活性化されていないサーバ グループがあるかどうかをチェックしたいとします。サーバ グループの状態は、beaSysPerf グループの tuxTgroupState オブジェクトによって示されます。Oracle SNMP エージェントのコンポーネントは、SNMP 多重化 (SMUX) プロトコルを使用して、Oracle SNMP エージェント インテグレータと通信したり、beaSysPerf グループ内の同じマシン オブジェクト上にある Oracle SNMP エージェント インテグレータにオブジェクトの値を提供したりします。このサブエージェントは、SMUX プロトコルを使用して Oracle SNMP エージェント インテグレータと通信します。

次のような条件を使用して、Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング規則を定義できます。

(VAL(.1.3.6.1.4.1.140.300.4.1.1.4.*) !=1)

VAL() は、tuxTgroupState オブジェクトの値を取得するために使用します。指定した条件 (!=1) が満たされるのは、いずれかのサーバ グループが活性化されていない場合です。この例では、最初のピリオドによって、これが絶対 OID であることを示しています。つまり、tuxTgroupState オブジェクトへのパスは .1.3.6.1.4.1.140.300.4.1.1.4 です。インスタンス インデックスのアスタリスク (*) ワイルドカードは、いずれかの tuxTgroupState が 1 と等しい場合に条件が満たされることを示します。スカラ オブジェクトの場合は、インスタンス インデックスとして 0 を指定します。詳細については、「インスタンス インデックス」を参照してください。

次に、上に示した条件を使用した Oracle SNMP エージェント インテグレータ規則の例を示します。

RULE_ACTION grpState 60 if (VAL(140.300.4.1.1.4.*) !=1)
{TRAPID_ERR=300}

この例の grpState は規則の名前です。Oracle SNMP エージェント インテグレータは、1 分 (60) ごとにサーバ グループの状態をチェックします。いずれかの tuxTgroupState の値が 1 と等しくない場合、TRAPID_ERR=300 の指示に従って、Oracle SNMP エージェント インテグレータがエンタープライズ固有のトラップを特定のトラップ タイプ番号 (300) で生成します。

注意 : Oracle SNMP エージェント インテグレータが取得できる MIB オブジェクトの値は、Oracle SNMP エージェント インテグレータが管理するエージェントまたはサブエージェントによってサポートされる MIB オブジェクトに応じて異なります。上の例で、Oracle SNMP エージェント インテグレータが tuxTgroupState オブジェクト値をポーリングできるのは、その管理対象ノードで tux_snmpd サブエージェントが実行されている場合のみです。また、Oracle SNMP エージェント インテグレータがピア SNMP エージェントを介してアクセスできる MIB オブジェクトは、Oracle SNMP エージェント コンフィグレーション ファイルの NON_SMUX_PEER エントリによって異なります。詳細については、「複数の SNMP エージェントの使用」を参照してください。

SNMP ピア エージェントを使用したポーリング

Oracle SNMP エージェント インテグレータは、ネットワーク内の同じマシンまたは別のマシンにある SNMP ピア (非 SMUX ピア) エージェントから MIB オブジェクト値を取得することもできます。たとえば、あるピア SNMP エージェントが MIB-II interfaces グループをサポートしているとします。そして、Oracle SNMP エージェント インテグレータを使用して、使用不能になっている物理インタフェースがないかどうかをチェックしたいとします。インタフェースの状態は、MIB-II interfaces グループの ifTable にある ifOperStatus オブジェクトによって示されます。この場合であれば、ifOperStatus の値が 1 と等しくないかどうかを調べることになります (ifOperStatus の値が 1 であれば、そのインタフェースは使用可能です)。マシン上の 1 番目のインタフェースの ifOperStatus 値をチェックするには、次のような条件を使用できます。

(VAL(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.8.1) != 1)

この条件が満たされるのは、ifTable 内の 1 番目のインタフェースが使用不能な場合のみです。最後の数値「1」はインスタンス インデックスで、テーブル内の 1 番目のインタフェースを指定しています。

この条件が満たされたときに、Oracle SNMP エージェント インテグレータに何らかのアクションを実行させることができます。たとえば、インタフェースの ifOperStatus 値が 1 でない (つまり、そのインタフェースが使用不能になっている) 場合に、Oracle SNMP エージェント インテグレータから管理ステーションに通知を送信できます。このようにするには、Oracle SNMP エージェント インテグレータがエンタープライズ固有の SNMP トラップを管理ステーションに送信するように指定します。このトラップには、特定のトラップ値を設定して、トラップが送信された理由をシステム管理者に伝えることができます。

特定のインタフェース (たとえば、ifTable 内の 1 番目のインタフェース) が使用不能になったときではなく、いずれかのインタフェースが使用不能になったときにこの通知を要求することもできます。

次に、その場合の規則エントリの例を示します。

RULE_ACTION checkIf 120
if (VAL(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.8.*) != 1) {TRAPID_ERR=300}

この例の checkIf は、この特定の規則に付けた名前です。値 120 は、Oracle SNMP エージェント インテグレータが 2 分ごとにインタフェースをチェックすることを示します。インスタンス インデックスにアスタリスク ワイルドカードを使用すると、ifTable 内のいずれかのインタフェースの ifOperStatus が 1 と等しくない場合に条件が満たされます (つまり、すべてのインタフェースがチェックされます)。いずれかのインスタンスの OID 値が 1 と等しくない場合 (つまり、インタフェースが使用不能な場合)、エンタープライズ固有のトラップが特定のトラップ ID (300) で送信されます。

注意 : この規則では、インタフェースが使用不能になっていることを Oracle SNMP エージェント インテグレータが初めて検知したときにのみトラップが生成されます。インタフェースが使用不能のままになっている間は、新しいトラップは生成されません。

条件に論理演算子を使用する

条件には、単純な条件と複雑な条件の 2 種類があります。単純な条件は、管理対象オブジェクトと値の間の関係を示します。ここまでに示したすべての例は単純な条件です。

論理演算子 AND、OR、および NOT を使用すると、複雑な条件を定義できます。たとえば、単純な条件 A と B がある場合、A と B の両方を満たすような複雑な条件を指定できます。

次の表に、複雑な条件の定義に使用できる記号を示します。

記号
意味
!(条件 A)
論理否定。「条件 A」が満たされない場合にのみしきい値に達する。
(条件 A || 条件 B)
論理和。「条件 A」または「条件 B」が満たされる場合にのみしきい値に達する。
(条件 A && 条件 B)
論理積。「条件 A」と「条件 B」の両方が満たされる場合にのみしきい値に達する。

複雑な条件の使用例

たとえば、修理のために使用不能にしていたインタフェースの ifOperStatus が「使用可能」になっていない場合に、Oracle SNMP エージェント インテグレータから警告を送信したいとします。この場合であれば、Oracle SNMP エージェント インテグレータに 2 つの条件 (ifOperStatus が「使用不能」かつ ifAdminStatus が「使用可能」) を判別させる規則を定義できます。つまり、使用可能になっているべきインタフェースがそうなっていない場合に通知されるようにします。

注意 : Oracle SNMP エージェント インテグレータが取得できる MIB オブジェクトの値は、Oracle SNMP エージェント インテグレータが管理するエージェントまたはサブエージェントによってサポートされる MIB オブジェクトに応じて異なります。
この例のサンプル コード

この例を実現するには、checkIf 規則を次のように変更します。

RULE_ACTION checkIf 60
if ((VAL(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.8.*) != 1) &&
(VAL(.1.3.6.1.2.1.2.2.1.7.*) == 1))
{TRAPID_ERR=301}

この規則のしくみ

この例では、Oracle SNMP エージェント インテグレータが 1 分 (60) ごとにインタフェースをチェックし、いずれかのインタフェースが使用可能でない (ifOperStatus が 1 と等しくない) にもかかわらず、ifAdminStatus の値が使用可能な状態になっている場合 (つまり、使用可能になっているべきインタフェースがそうなっていない場合) に、特定のトラップ値 (301) が設定されたエンタープライズ固有のトラップが生成されます。

注意 : この規則では、条件が初めて true と評価されたときにのみこのトラップが生成されます。インタフェースの状態がそのまま変わらない間は、新しいトラップは生成されません。

条件を定義するためのデータ型

次に、単純な条件の構文を示します。

(VAL(oid) relation value)

各要素について説明します。

relation

条件を定義するための関係」で説明した関係のいずれかを指定します。

oid

条件内でのオブジェクト識別子の指定」で説明する形式のいずれかを使用して指定します。

value

以下のデータ型のいずれかを指定します。

条件内でのオブジェクト識別子の指定

ポーリング条件の定義では、オブジェクト識別子 (OID) を数値で指定する必要があります。文字記号は使用できません (以下に示す MIB II [mib-2] や enterprises を除く)。オブジェクト識別子の指定には、以下のいずれかの形式を使用できます。

インスタンス インデックス

カラム オブジェクトは、表 MIB グループのカラムを表すために使用します。したがって、カラム オブジェクトには複数のインスタンスを持たせることができます。インスタンスを指定するには、OID の一部としてインデックスを追加します。インデックスが単一属性の場合は、OID の末尾の番号を使用して特定のインスタンスを指定します。1 つのインスタンスを特定するのに複数の属性が必要となる場合は、OID に追加する各属性のインスタンス番号をピリオドで区切ります。各インスタンス番号は、ASN.1 ファイルの INDEX 定義で指定した順序で指定します。

たとえば、特定のサーバが活性以外の状態にあるかどうか、という条件でチェックしたいとします。サーバ インスタンスをユニークに指定するには、グループ番号とサーバ ID の両方が必要です。ASN.1 ファイルの tuxTsrvrTbl の INDEX エントリでは、特定のインスタンスの INDEX を次の形式で指定します。

INDEX (tuxTsrvrGrpNo,tuxTsrvrId)

tuxTsrverState の相対 OID は次のとおりです。

140.300.20.1.1.5

したがって、グループが 55、サーバ ID が 3 のサーバ インスタンスを指定するには、次の OID を使用します。

140.300.20.1.1.5.55.3

tuxTsrvrState OID に追加する 2 つの属性インスタンスは、上記の INDEX 定義に従って、最初に tuxTsrvrGrpNo、その後に tuxTsrvrId という順序で指定します。

これで、チェックする条件を次のように定義できます。

VAL(140.300.20.1.1.5.55.3) != 1

この条件は、この特定のサーバ インスタンスが活性化されていないときは常に true と評価されます。

特定の番号を使用すると特定のインスタンスを指定でき、アスタリスク ワイルドカードを使用するとすべてのインスタンスを指定できます。スカラ オブジェクト (1 つのインスタンスしか持てないオブジェクト) の場合は、インスタンス インデックスとしてゼロを指定します。アスタリスク ワイルドカードは、カラム オブジェクトのすべてのインスタンスを表す場合にのみ使用します。以下に例を示します。

.1.3.6.1.4.1.140.1.1.0

この OID では、スカラ オブジェクトの単一のインスタンスを指定しています。

.1.3.6.1.4.1.140.2.22.1.2.*

この OID では、カラム オブジェクトのすべてのインスタンスを指定しています。ワイルドカードを使用して条件を定義する場合は、インスタンスが 1 つでも条件に合致すれば、その条件が満たされたことになります。

注意 :

状態と遷移

活性化された各ポーリングには「状態」が関連付けられます。活性化されている規則は、以下のいずれかの状態にあります。

ポーリングへの応答でアクションが実行されるかどうかは、状態が遷移したかどうかによって決まります。Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング規則では、規則の状態が OK から ERR または ERR から OK に遷移するときにのみ (トラップ通知の生成などの) アクションが実行されます。

Oracle SNMP エージェント インテグレータがポーリング規則を開始したときの初期状態は OK です。しきい値に達しない限り、規則の状態は OK のままとなります。しきい値に達すると、規則の状態が OK から ERR に遷移します。条件が true と評価されている間は、規則の状態が ERR のままとなります。その後、条件が false と評価されると、規則の状態は OK に戻ります。したがって、遷移には以下の 2 種類があることになります。

注意 : カラム オブジェクトのすべてのインスタンスの条件をワイルドカード (*) を使用して定義した場合、テーブルのいずれかの行のカラムで条件が true と評価されると、規則の状態が OK から ERR に遷移します。一方、規則の状態が OK に戻るのは、テーブルのすべての行のカラムで条件が false と評価されたときです。

アクション

Oracle SNMP エージェント インテグレータの規則では、ポーリング規則が遷移したときに実行するアクションを指定できます。指定できるアクションは以下の 2 種類です。

2 種類のアクションを、同じ規則に指定することもできます。

注意 : Oracle SNMP エージェント インテグレータは、状態が遷移したときにのみアクションを実行します。規則が同じ状態にある間は、ポーリングを継続してもアクションが再び実行されることはありません。この制約により、1 つのイベントの検知に対する応答で、トラップが重複して生成されるのを回避しています。

アクションの定義では、以下の 4 つのキーワードを使用します。

TRAPID_ERR = specific-trap-number

規則の状態が OK から ERR に遷移したときに送信するトラップを指定します。

TRAPID_OK = specific-trap-number

規則の状態が ERR から OK に遷移したときに送信するトラップを指定します。

COMMAND_ERR = “command”

command 部分に、規則の状態が OK から ERR に遷移したときに実行するプログラムをに指定します。

COMMAND_OK = “command”

command 部分に、規則の状態が ERR から OK に遷移したときに実行するプログラムをに指定します。
注意 : 実行するコマンドを指定する文字列は、引用符で囲む必要があります。たとえば、COMMAND_ERR = “usr/mybin/test.ksh” のように指定します。

実行可能ファイルやスクリプトの絶対パスを指定しない場合は、Oracle SNMP エージェント インテグレータの環境設定でパスを指定しておく必要があります。

アクションを指定する文は、中かっこ { } で囲む必要があります。1 つの規則内に複数のコマンドを指定する場合は、各コマンドをスペースで区切り、コマンド全体を引用符で囲みます。

COMMAND_ERR または COMMAND_OK アクションによって呼び出されるスクリプトやプログラムには、規則の名前と状態遷移の方向 (OK から ERR または ERR から OK) を表す文字列が引数として渡されます。

トラップ情報

Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング規則によって生成されたエンタープライズ固有のトラップでは、以下の情報が渡されます。

次の例では、Oracle SNMP エージェント インテグレータが 10 分 (600) ごとにポーリングして、使用済みのディスク容量が 90 パーセントを超えているかどうかをチェックします。いずれかのファイル システムで使用済み容量が 90 パーセントを超えると、エンタープライズ固有のトラップがトラップ番号 102 で生成されます。その後、すべてのファイル システムで使用済み容量が 90 パーセント以下になると、エンタープライズ固有のトラップがトラップ番号 202 で生成されます。

RULE_ACTION diskchk 600
if (VAL(140.2.22.1.5.*) > 90) {TRAPID_ERR = 102 TRAPID_OK = 202}

次の例では、Tuxedo アプリケーションをチェックし、トランザクションの triptime が 36 ミリ秒を超えるかどうかを判別します。しきい値に達すると、エンタープライズ固有のトラップが生成され、イベントの時間をログに記録するユーザ スクリプト logtime が呼び出されます。その後、以前のポーリングでしきい値に達していた triptime が 36 ミリ秒以下になると、エンタープライズ固有のトラップがトラップ番号 302 で生成されます。

RULE_ACTION triptime 20
if (VAL(140.150.1.3.*) > 36)
{TRAPID_ERR = 301 TRAPID_OK = 302
COMMAND_ERR = “/usr/sbin/logtime”}

注意 : この例のオブジェクト識別子は、Oracle MIB には定義されていません。ユーザ提供のカスタム MIB で定義する場合の例としてください。

次の例では、Oracle SNMP エージェント インテグレータが 5 秒ごとにポーリングして、Tuxedo サーバ Server1 による処理が完了した要求の数が 6 を超えるかどうかをチェックします。6 を超えると、エンタープライズ固有のトラップがトラップ番号 210 で生成され、コマンド C:/etc/srv_reqs.cmd が実行されます。

RULE_ACTION Server1 5
if ((VAL(140.300.20.2.1.12.*) > 6))
{ TRAPID_ERR=210 COMMAND_ERR="C:/etc/srv_reqs.cmd" }

次の例では、Oracle SNMP エージェント インテグレータが、活性以外の状態にある特定のサーバ インスタンスをチェックします。チェック対象のサーバは、グループ番号 (55) とサーバ ID (3) でユニークに識別されます。

RULE_ACTION srvrUp 60 if (VAL(140.300.20.1.1.5.55.3) != 1
{TRAPID_ERR = 306 TRAPID_OK = 307}

このサーバが条件を満たすと、規則が ERR 状態に遷移し、エンタープライズ固有のトラップがトラップ番号 306 で生成されます。その後、サーバが活性化されると、状態が OK に戻り、トラップ番号 307 のトラップが発行されます。

 


Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング アクティビティの開始

ポーリング規則は、Oracle SNMP エージェントの beamgr.conf コンフィグレーション ファイルの RULE_ACTION エントリとして定義します。このファイルのデフォルトの格納場所は、Windows システムでは C:\etc、UNIX システムでは /etc です。個々の規則は MIB オブジェクトで、beaIntAgtTable のエントリ (行) として格納されます。

Oracle SNMP エージェント インテグレータがその規則を実行するかどうか (つまり、Oracle SNMP エージェント インテグレータのアクティビティが規則に指定された条件をチェックするかどうか) は、各規則エントリのステータスによって決まります。各規則エントリのステータスは、beaIntAgtStatus オブジェクトに格納されます。規則のステータスが有効 (整数値 1) であれば、その規則のポーリングは活性化されています。規則のステータスが非活性 (整数値 3) であれば、その規則のポーリングは非活性化されています。特定の規則のステータスを変更するには、管理ステーション (OpenView、SunNet Manager など) から Set 要求を送信します。Set 要求では、エントリ インスタンス (行) を特定するためのキー フィールドとしてユニークな規則名を指定します。

注意 : beaIntAgtTable 内のオブジェクトへの Set 要求を正常に実行するには、Oracle SNMP エージェント インテグレータが実行されている必要があります。

Oracle SNMP エージェント インテグレータを最初に開始したときには、Oracle SNMP エージェントの beamgr.conf コンフィグレーション ファイルの RULE_ACTION エントリに定義されているすべてのポーリング規則の実行が開始されます。開始時には、beaIntAgtTable 内の各規則オブジェクトのステータスが有効になります。

新しいポーリング規則の作成

コンフィグレーション ファイルには、以下の 2 つの方法で規則を追加できます。

ポーリング規則の削除と変更

Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング規則は、作成時と同じ 2 つの方法で変更できます。

 


Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング アクティビティの停止

ポーリングは、以下のいずれかの方法で非活性化できます。

 


Oracle SNMP エージェント インテグレータのポーリング アクティビティの再開

管理ステーションから Set 要求を送信して非活性化したポーリング規則を再活性化するには、対応する beaIntAgtStatus オブジェクトの値を有効 (整数値 1) に設定するための Set 要求を管理ステーションから送信します。


  ページの先頭       前  次