概念とアーキテクチャ

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サービス管理

この節では、Oracle Service Bus のサービス モニタとサービス管理機能について説明します。Oracle Service Bus の管理とモニタに携わるシステム管理者およびオペレータを対象としています。内容は以下のとおりです。

 


サービス モニタ

サービスのルーティングやトランスフォーメーションといった Enterprise Service Bus の機能に加えて、Oracle Service Bus には、サービス モニタとサービス管理機能が用意されており、この機能によって IT 組織が期待する適切なオペレーションが確実に行われるようになります。以下のトピックでは、Oracle Service Bus のサービス管理とサービス モニタの機能について説明します。

ダッシュボード

Oracle Service Bus では、実行時統計を集計してカスタマイズ可能なダッシュボードに表示し、システムのオペレーション ヘルスをモニタしてメッセージング サービスにある問題にフラグを付け、問題発生時にこれを素早く分離して診断することができます。また、Oracle Service Bus Console を使用してシステムのパフォーマンスに応じたサービス レベル アグリーメント (SLA) を確立でき、SLA に違反した場合に自動的に応答するアラートをトリガするためのルールをコンフィグレーションできます。

図 6-1 Oracle Service Bus ダッシュボード

Oracle Service Bus ダッシュボード

システムのオペレーションについてのヘルス情報は、サーバとサービスによって編成されます。ドメイン全体の状態、またはドメイン内の個別のサーバの状態を色分けされた円グラフで表示することができます。サービスの概要も表示され、アラートの数や、定義されたアラートが発生しモニタが有効になっているすべてのサービスで対応する重大度が表示されます。

ダッシュボードに加えて、Oracle Service Bus には個別のサービス レベルでオペレーションとパフォーマンスの統計を表示する機能もあります。これらの統計値は、ドメイン内にある個別のサービス、または指定したサーバのものになります。より詳細な分析のために、オペレーション レベルでのサービスのパフォーマンス統計も表示されます。

Oracle Service Bus Console のダッシュボードの詳細については、『Oracle Service Bus Console の使い方』の「モニタ」を参照してください。

メトリックの集約

ダッシュボードに表示される情報は、システム処理時に収集されるデータの非同期集約に基づきます。Oracle Service Bus プロダクション クラスタ ドメインでは、Oracle Service Bus データ集約機能はクラスタ内のいずれかの管理対象サーバ上でシングルトン サービスとして実行されます。サーバ固有のデータ集約は、ドメインの各管理対象サーバで実行されます。集約機能は、一定間隔 (コンフィグレーション可能) ですべての管理対象サーバからデータを収集および集約します。

サービスごとにダッシュボードに表示できるメトリックを次の表に示します。

表 6-1 Oracle Service Bus サービスのメトリック
メトリック
説明
平均実行時間
プロキシ サービスの場合、転送におけるメッセージの受信時から例外処理時または応答送信時までの時間の平均を示します。
ビジネス サービスの場合、発信転送におけるメッセージの送信時から例外受信時または応答受信時までの時間の平均を示します。
メッセージの総数
サービスに送信されたメッセージの数です。JMS プロキシ サービスで、例外によってトランザクションが中断され、メッセージが失われないようにキューに戻された場合、デキューが再試行されるたびに別々のメッセージとしてカウントされます。同様に、発信トランザクションの場合、再試行またはフェイルオーバのたびに別々のメッセージとしてカウントされます。
エラーによるメッセージ
エラー応答を伴うメッセージの数です。
プロキシ サービスの場合、システム エラー ハンドラまたは返信失敗アクションによって終了される原因となったメッセージの数を示します。エラーがサービス内で処理され、返信が成功するか再開アクションが行われる場合、エラーとして扱われません。
ビジネス サービスの場合、転送エラーまたはタイムアウトの原因となったメッセージの数を示します。再試行およびフェイルオーバは別々のメッセージとして扱われます。
成功/失敗比率
(メッセージの総数 - エラーが発生したメッセージの数)/エラーが発生したメッセージの数
セキュリティ
WS-Security エラーを伴うメッセージの数です。このメトリックは、プロキシ サービスおよびビジネス サービスの両方で計算されます。
検証
フロー内の検証アクションで失敗した数です。このメトリックは、プロキシ サービスにのみ適用されます。

これらのメトリックは、コンフィグレーションされた集約時間ごとに、クラスタ全体で集約されます。ダッシュボードにはシステム全体のヘルス情報が表示され、一定間隔で表示が更新されます。

アラート経由の SLA の適用

Oracle Service Bus には、ビジネス サービスおよびプロキシ サービスにサービス レベル アグリーメント (SLA) を設定する機能が用意されています。これらの SLA は、ビジネス サービスおよびプロキシ サービスで期待されているサービスの正確なレベルと品質を定義します。SLA の測定に基づいてアラートをトリガするルールをコンフィグレーションできます。アラートには、通常、警告、軽度、重要、重大、致命的という複数のレベルの重大度をコンフィグレーションできます。ビジネス サービスまたはプロキシ サービスに対して、複数のアラート条件を組み合わせることができます。各アラートは、次のパラメータに基づいています。

SLA アラートは、オペレーション チームに対してビジネスおよびプロキシ サービスのヘルスに関する問題や、示されたサービスの品質に関する問題を通知するために設定されます。

Oracle Service Bus にはサービス レベル アグリーメント (SLA) が実装されており、許容できないサービス パフォーマンス状態と、そのような状態において必要なシステム応答を指定する「ルール」を使用することにより、SLA に違反した場合の応答を自動化できます。ルールは、Oracle Service Bus Console を使用して定義および作成されます。Oracle Service Bus で集約されたメトリック データが更新されるたびに、そのデータに対してルールが評価されます。

ルールの評価が True の場合は、アラートが発生します。Oracle Service Bus Console のダッシュボードにアラートに関する情報が表示されるほか、Oracle Service Bus はルールの評価が True の場合に実行するように指定したアクションが実行されます。ルールには次の任意のタイプのアクションを割り当てることができます。

アラートには、処理時間帯をコンフィグレーションすることもできます。ルールとアラートの処理は、Oracle Service Bus Alert Manager が行います。Alert Manager は、システムのメトリック集約機能と同じ管理対象サーバ上で稼働します。

Oracle Service Bus を使用すると、SLA アラートの他に、メッセージ フロー内からアラート アクションをコンフィグレーションすることもできます (パイプライン アラート)。これらのパイプライン アラート アクションは、パイプラインのメッセージ コンテキストに基づいてアラートを生成し、アラート送り先に送信します。アラート アクションには、アラート名、説明 ($order などのメッセージ要素を含めることができる)、アラート送り先、またはアラート重大度をコンフィグレーションできます。

Oracle Service Bus Console のアラートのコンフィグレーション方法については、『Oracle Service Bus Console の使い方』の「モニタ」を参照してください。

 


メッセージ レポート

Oracle Service Bus では、メッセージがプロキシ サービスを介して渡すメッセージ データについてレポートできます。レポートはレポート アクションによって行われ、要求/応答パイプラインまたはエラー パイプライン ステージの任意の場所に置くことができます。レポート アクションは、メッセージがプロキシを通過するときのメッセージ情報のフィルタとして使用できます。レポート アクションによって捕捉されたデータは、レポート プロバイダを経由してアクセスできます。レポート アクションを使用することによって、問題がメッセージのトランスフォーメーション前とトランスフォーメーション後のどちらにあるのか、ルーティング中にあるのかなどを判断する場合に役立ちます。

レポート アクションでは、Oracle Service Bus のレポート データ ストリームに書き込む必要がある各メッセージについての情報を指定することができます。次の図に、レポート アクションの例を示します。

図 6-2 レポート アクションの例

レポート アクションの例

Oracle Service Bus には JMS レポート プロバイダが組み込まれています。JMS レポート プロバイダによってレポートされたデータが取得され、レポート データ ストアの役割を果たすメッセージ レポート データベースに格納されます。Oracle Service Bus には、独自のレポート プロバイダの使用を予定する顧客のために Java API も用意されています。

Oracle Service Bus Console のメッセージ レポート モジュールには、概要情報も含めて、レポート データ ストアの情報が表示されます。メッセージ レポート画面では、特定のメッセージに関する概要情報を表示できるほか、詳細情報も表示できます。

図 6-3 Oracle Service Bus ダッシュボードでのメッセージ レポートの概要の例

Oracle Service Bus ダッシュボードでのメッセージ レポートの概要の例

特定のレポート要件を満たすようにデータをフィルタおよびソートすることで、表示されるメッセージ レポートの情報をカスタマイズすることが可能です。レポート アクションのコンフィグレーション方法の詳細については、『Oracle Service Bus Console の使い方』のプロキシ サービスにあるアクションの追加を参照してください。

注意 : メッセージ レポート画面に表示される情報は、レポート アクションを含むパイプラインを通過するメッセージに限定されます。

Oracle Service Bus Console には、メッセージ データの管理に便利なパージ機能が備わっています。その他のデータ管理機能については、レポート データ ストアのホストに使用しているデータベースに対して標準的なデータベース管理手続きを適用できます。レポート データ ストア用にサポートされるデータベース プラットフォームの一覧については、Oracle Service Bus でサポート対象のコンフィグレーションの「サポート対象のデータベース コンフィグレーション」を参照してください。

Oracle Service Bus のモニタ、SLA アラート、およびレポート機能を使用すると、IT オペレーション部門はリアル タイムでサービス インフラストラクチャのヘルスと可用性を管理することができ、SLA の遵守を計測して、効果的で効率のよい報告を管理チームや経営者に行うことができます。


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