概要とロードマップ

アプリケーション開発者は、アプリケーションに管理機能を実装することによって、アプリケーションの運用および管理コストを大幅に減らすことができます。最も単純な機能は、メッセージロギングです。この機能は、アプリケーションの内部で発生したイベントをレポートし、ファイルまたはその他のリポジトリにメッセージを書き込むものです。アプリケーションの重要度、プロダクション環境の複雑さ、およびオペレーションセンターで使用しているモニタシステムによっては、Java Management Extensions (JMX) をベースとするより高度な機能を構築することでニーズをさらに満たすことができます。JMX を使用すると、汎用管理システムでアプリケーションをモニタし、注意が必要なときに通知を生成し、アプリケーションのコンフィグレーションまたは実行時の状態を変更することで問題を解決できます。

このマニュアルでは、JMX を使用して管理の容易なアプリケーションを作成する方法について説明します。

以下の節では、このマニュアル『JMX による管理の容易なアプリケーションの開発』の内容と構成について説明します。

ドキュメントの内容と対象読者

このマニュアルは、Java EE アプリケーション用の管理サービスを開発するソフトウェア開発者を対象としています。また、WebLogic Server を評価するビジネスアナリストや、特定のアプリケーションで JMX の使用を考えているシステム設計者にとって便利な情報も掲載されています。

このマニュアルは、Java EE および一般的なアプリケーション管理の概念に精通している読者を対象としています。

このマニュアルは、ソフトウェアプロジェクトの設計段階と開発段階に関する情報を説明するものです。このマニュアルでは、プロダクション段階での管理、モニタ、パフォーマンスチューニングについては扱いません。それらのトピックに関する WebLogic Server のドキュメントとリソースへのリンクについては、「関連ドキュメント」を参照してください。

このマニュアルでは、限定的でありながら有用な一連の JMX 管理サービスを開発するための実践的な方法を重点的に扱います。JMX をより広範な管理上の問題に適用するには、「関連ドキュメント」に挙げる JMX 仕様などのドキュメントを参照してください。

このドキュメントの手引き

この章「概要とロードマップ」では、このマニュアルの構成を紹介します。
「JMX について」では、JMX の概要と、Java EE アプリケーション開発者が JMX を使用する方法について説明します。
「管理の容易なアプリケーションの設計」では、JMX で Java EE アプリケーションの管理を容易にするための設計パターンについて説明します。
「カスタム MBean のインスツルメントと登録」では、独自の MBean (カスタム MBean) を作成することによって、アプリケーションをより大規模な管理システムの管理対象オブジェクトにする方法について説明します。
「WebLogic Server JMX タイマーサービスの使用」では、JMX タイマーサービスの WebLogic Server の実装を使用して、JMX クライアントが指定した時間に、または定期的にタスクを実行するようにコンフィグレーションする方法について説明します。
「カスタム MBean へのアクセス」では、JMX 以外の手段で MBean にアクセスするためのオプションについて説明します。

関連ドキュメント

「Sun Developer Network」には、JMX に関する書籍、ホワイトペーパー、および詳細情報へのリンクが掲載された Web サイト (http://java.sun.com/products/JavaManagement/) があります。

WebLogic Server アプリケーション用に他のタイプの管理サービスを開発するためのガイドラインについては、以下のマニュアルを参照してください。

『アプリケーションロギングの WebLogic ロギングサービスユーザーズガイド』。WebLogic によるログメッセージのインターナショナライゼーションとローカライゼーションのサポートについて説明し、WebLogic Server で提供されているテンプレートおよびツールを使用して、ロケール固有のメッセージカタログを作成または編集する方法を示します。
『WebLogic 診断フレームワークのコンフィグレーションと使い方』。システム管理者が、JMX、ロギングなどの管理機能を通じてエクスポーズされていないアプリケーションモニタデータを収集する方法について説明します。

WebLogic Server アプリケーションを開発およびチューニングするためのガイドラインについては、『WebLogic Server アプリケーションの開発』を参照してください。

JMX 開発者向けのサンプルコード

このマニュアルの他にも、Avitek Medical Records アプリケーション (MedRec) に 2 つの JMX サンプルコードが用意されています。MedRec は WebLogic Server に付属したエンドツーエンドのサンプル Java EE アプリケーションであり、一元的で独立した医療記録管理システムをシミュレートします。MedRec アプリケーションには、患者、医師、および管理者に対して、さまざまなクライアントを使用して患者のデータを管理するフレームワークが用意されています。

MedRec の JMX コードでは、次の管理タスクが例示されています。

JMX を使用したアプリケーションのモニタ

MedRec のセッション EJB の 1 つは、JMX で管理するためにインスツルメントされています。EJB は、データベースへの書き込み回数を追跡し、そのカウンタを MBean 属性としてエクスポーズします。

JMX を使用したセキュリティレルムの拡張

MedRec アプリケーションの JSP およびサポート Java クラスは JMX API を呼び出して、新しい管理者ユーザを MedRec セキュリティレルムに追加します。この JSP は新しいユーザ情報を収集するためのインタフェースを提供し、サポートクラスはその情報を検証して新しいユーザをレルムに挿入します。

次の手順に従って、MedRec の JMX サンプルコードに関する情報を参照します。

MedRec サーバを起動します。

「Oracle WebLogic Server 10g リリース 3 サンプルアプリケーションおよびサンプルコード」(http://edocs.bea.com/wls/docs103/samples.html) を参照してください。

MedRec サーバが起動すると、Web ブラウザにホームページが表示されます。MedRec ホームページで、[その他のサンプル] リンクをクリックします。

WebLogic Server Code Examples ビューアが表示されます。

Code Examples ビューアの左ペインで、次のいずれかを実行します。

[Avitek Medical Records Sample Application｜Features｜JMX] を展開します。[Monitoring an Application with JMX] トピックを選択します。
[Avitek Medical Records Sample Application｜Features｜Security] を展開します。[Extending a Realm Using JMX] トピックを選択します。

このリリースでの新機能と変更点

WebLogic Server のこのリリースに追加された新機能の一覧については、『リリースノート』の「WebLogic Server の新機能」を参照してください。