AutoUpgradeおよびOracle Databaseの構成オプション

AutoUpgradeを実行すると、データベースのタイプ(Oracle Database、Oracle ASMを備えたOracle DatabaseスタンドアロンまたはOracle RAC)が判別され、そのタイプのデータベースのアップグレードが実行されます

AutoUpgradeを使用したアップグレードのためのOracle RACの要件

AutoUpgradeがOracle Real Application Clusters (Oracle RAC)データベースをアップグレードできるかどうかを判断するには、ユース・ケースの要件を確認します。

Oracle RACデータベースでAutoUpgradeを使用するための要件

Oracle Database 20c以降、AutoUpgradeを使用してOracle RACシステムのアップグレードを実行できます。ただし、システムが次の要件のすべてを満たしている必要があります。

  • LinuxおよびUnixベースのシステムであること。Microsoft Windowsシステムはサポートされていません。
  • Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)をストレージ管理システムとして使用し、SPFILEの場所がOracle ASMに配置されていること。
  • 新しいOracle Databaseリリースにアップグレードするためのアップグレード要件を満たしていること。

注意:

このリリースの時点で、AutoUpgradeを使用したOracle RACの非CDBデプロイメントからのOracle RACデータベースのアップグレードはサポートされていません。

Oracle Grid Infrastructure構成のAutoUpgradeプロセス・フロー

AutoUpgradeがOracle RAC、Oracle RAC One NodeまたはOracle Restartを検出すると、すべてのOracle RACインスタンスに必要なアップグレード・ステップの実行に進みます。

AutoUpgradeを起動すると、OracleデータベースがOracle Grid Infrastructureで構成されるときに、Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)のクラスタ・メンバー・ノードのメンバー、Oracle RAC One Node構成、またはスタンドアロン・サーバー(Oracle Restart)構成のためのOracle Grid Infrastructureのいずれかとして検出されます。AutoUpgradeがOracle Grid Infrastructureを検出すると、次のステップを順番に実行します。

  1. Oracle RAC、Oracle RAC One NodeまたはOracle Restartの各サービスを無効にします。
  2. Oracle RACの場合は、Oracle Clusterware内のすべてのOracle RACデータベース・クラスタ・メンバー・ノードのクラスタ・メンバーシップを無効にします。
  3. データベース、またはOracle RACデータベースのすべてのインスタンスを停止します。
  4. Oracle RACの場合は、クラスタ・パラメータをTRUEに設定してローカルのOracle Databaseインスタンスを起動します。スタンドアロン・サーバー用のOracle RAC One NodeまたはOracle Grid Infrastructureの場合は、ローカル・データベース・インスタンスを起動します。
  5. ローカル・インスタンスを、新しいOracle Databaseリリースのバイナリに更新します。
  6. ローカルのOracle Databaseインスタンス・ホームからsrvctl upgrade databaseを起動し、Oracle Grid Infrastructureサービスの構成を新しいリリースにアップグレードします。
  7. srvctl enable databaseを使用して、データベースのOracle Grid Infrastructureサービスを有効にします。Oracle RACの場合は、アップグレードされたOracle RACデータベースをクラスタ・メンバー・ノードとしてOracle RACクラスタに追加します。
  8. 更新されたパラメータと、リリース更新の影響を受けないOracle Grid Infrastructure環境に対して以前に設定したパラメータ・オプションを使用して、サーバー・パラメータ・ファイル(SPFILE)を再作成します。
  9. Oracle Databaseを起動します。Oracle RACの場合は、クラスタ上のOracle Real Application Clustersのすべてのインスタンスを起動します。

注意:

スタンドアロン・サーバー(Oracle Restart、Oracle RAC One NodeまたはOracle RAC Database)のOracle Grid InfrastructureでAutoUpgradeを起動する前に、アップグレード先のOracle Databaseリリースと同じリリースまたはそれより新しいリリースにOracle Grid Infrastructureをアップグレードする必要があります。

AutoUpgradeを使用したOracle RACのアップグレードの準備

アップグレード前に収集する必要がある情報およびその他のアップグレード準備のガイドラインを確認します。

Oracle Real Application Clusters (Oracle RAC)のアップグレードにAutoUpgradeを使用するには、Oracle Automatic Storage Management (Oracle ASM)もアップグレードされるため、アップグレードの前に必要な情報を収集し、アップグレード中に情報を指定する準備が整っていることを確認します。

AutoUpgradeおよびOracle RACのスコープ制限

  • SPFILEがローカルに管理されているOracle RACデータベースは、このリリースの範囲外です。
  • AutoUpgradeは、Oracle Grid InfrastructureのOracle Clusterwareコンポーネントのアップグレードを実行しません。AutoUpgradeを起動してOracle RACデータベースをアップグレードする前に、新しいリリースへのOracle Grid Infrastructureのアップグレードを正常に完了する必要があります。

AutoUpgradeを使用したアップグレード前のファイル・システムの準備

AutoUpgradeは、Oracle ASMで共有されるPFILEファイルおよびSPFILEファイルを識別できます。AutoUpgradeは、SPFILEをアップグレードの一部として再作成します。Oracle ASMを使用してクラスタ上でファイルを共有する場合、この手順を完了する必要はありません。

Oracle ASMを使用してクラスタ内のPFILEファイルとSPFILEファイルを共有していないOracle RACデータベースの場合、AutoUpgradeはファイル・システムに存在するパラメータ・ファイル(バイナリおよびテキスト・ファイル)を識別できません。

ネットワーク・ファイル(listener.oratnsnames.ora sqlnet.oraoranfstabldap.oraifileなど)、ウォレット、およびOracle RACクラスタに必要なファイル・システムにあるその他のファイルのすべてをコピーします。

非CDBからPDBへのアップグレードのガイドラインおよび例

変換前に、データファイルおよびデータベースをバックアップし、ソースのOracle Databaseリリースに関するガイドラインに従います。

変換中にデータが失われないようにするために、AutoUpgradeを使用して非CDBのアップグレードおよび変換を実行する前に、アップグレード計画に時間をかけてバックアップ戦略を実装することをお薦めします

アップグレード計画のガイドライン

非CDBからPDBへの変換とアップグレードのプロセスはリカバリできません。適切なアップグレードと変換、および予期しない停止時間を減らすために、分析フェーズ中に見つかったエラー状態に対処することをお薦めします。

AutoUpgrade構成ファイルのtarget_pdb_copy_optionを設定していない場合、データベース変換は、既存のデータベース・ファイルで使用されているファイルの場所およびファイル名と同じものを使用します。潜在的なデータ損失を防ぐには、データをバックアップし、AutoUpgradeを起動する前にファイル配置計画を検討するようにします。

非CDBからマルチテナント・アーキテクチャへのGRPとアップグレード

  • アップグレード中に、AutoUpgradeは、AutoUpgradeデプロイ・ワークフローのアップグレード・ステージのコンテキストでのみ使用可能な保証付きリストア・ポイント(GRP)を作成します。潜在的なデータ損失に備えて、AutoUpgradeを起動する前にバックアップ計画を実装する必要があります。
  • 非CDBからマルチテナント・アーキテクチャへのデータベース変換は、AutoUpgradeの排出ステージで実行されます。このステージが完了した後、AutoUpgradeによって作成されたGRPは削除され、AutoUpgradeのrestoreコマンドを使用してデータベースをリストアすることはできません。以前の非CDBのOracleデータベース・リリースへのリカバリが必要な場合は、データベースを手動でリカバリする準備が必要です。

例3-3 マルチテナント・アーキテクチャを使用した非CDBからOracle Database 19cへのアップグレードおよび変換

デプロイ変換およびアップグレード・ワークフロー中に、AutoUpgradeはGRPを作成し、事前修正スクリプト、アップグレード・スクリプト、事後チェックおよび事後修正の各ステージを実行します。排出ステージ自体を含めて、排出ステージが完了する前のデプロイ・ワークフローのいずれかの部分が失敗した場合、AutoUpgradeはデプロイメントの開始時に作成されたGRPにデータベースをリストアできます

ただし、PDBを新しいOracle Database 19cリリースのCDBに接続すると、GRPは削除され、リストアは実行できなくなります。アップグレードされたデータベースは、Oracle Database 19cコンテナ・データベースに接続されて変換を完了します。非CDBがコンテナ・データベース(CDB)に接続されるとすぐに、GRPは有効でなくなり削除されます。

アップグレードされたデータベースがCDBに接続された時点で、GRPは削除されます。その後、問題が発生した場合、AutoUpgradeはデータベースをリカバリおよびリストアできません。データベースは手動でリストアする必要があります。

例3-4 マルチテナント・アーキテクチャを使用した非CDBからOracle Database 20cへのアップグレードおよび変換

デプロイ変換およびアップグレード・ワークフロー中に、AutoUpgradeはGRPを作成し、事前修正ステージを実行します。事前修正ステージ完了までのデプロイ・ワークフローのいずれかの部分が失敗した場合、AutoUpgradeはデプロイメントの開始時に作成されたGRPにデータベースをリストアできます

ただし、事前修正ステージが完了すると、アップグレードされたデータベースはターゲット・リリースのOracle Databaseコンテナ・データベース(CDB)に接続されて変換が完了します。非CDBがCDBに接続されるとすぐに、GRPは有効でなくなり削除されます。

接続中になんらかの問題が発生した場合、AutoUpgradeはデータベースをリカバリおよびリストアできません。データベースは手動でリストアする必要があります。