3.8 空間エクステントの生成と設定

GeoRasterオブジェクトが作成される際、その空間エクステント(spatialExtentに示すspatialExtent属性)は、モデル空間の座標系の中では囲まれたジオメトリである必要はありません。空間エクステント(フットプリント)・ジオメトリは、最初はNULLであるか、またはセル空間の座標系や他の座標系を表すことがあります。空間エクステントを生成および設定する機能は、世界的な規模の範囲や広い地域の範囲の大容量のGeoRasterデータベースを作成する場合に便利です。この場合、空間エクステントは世界的な規模の1つの測地座標系の中にあり、GeoRasterオブジェクト(イメージ、DEMなど)は異なる投影座標系の中にあります。このような場合には、空間エクステント上に空間(Rツリー)索引を作成できますが、すべての空間エクステント・ジオメトリは同じSRID値を持つ必要があります。

表内の各GeoRasterオブジェクトの空間エクステント・ジオメトリがモデル空間の座標系(または使用する他の座標系)に対して正しくなるようにするには、空間エクステントを設定する必要があります。また、空間エクステント・ジオメトリで空間索引を使用する(「GeoRasterオブジェクトの索引付け」を参照)には、索引付けされたすべてのジオメトリが同じ座標系に基づいている(つまり同じSRID値を持つ)必要があります。

空間エクステントは、次のいずれかの方法で設定できます。GeoRasterクライアント側ローダー(GeoRasterツール: ローダー、ビューア、エクスポータを参照)に対して記憶域パラメータとしてspatialExtent=TRUEを指定するか、SQL UPDATE文を使用するか、GDALを使用したロード中に空間エクステントを設定します。ローダーを使用する場合、SRIDはNULLまたは0(ゼロ)にはできません。また、GeoRasterの空間エクステントにRツリー索引が存在する場合は、空間エクステントのSRIDが既存の空間索引のSRIDと一致する必要があります。そうでない場合、空間エクステントはNULL値に設定されます。

さらに、空間エクステント・ジオメトリがない場合は、SDO_GEOR.generateSpatialExtentファンクションを使用して作成し、そのジオメトリを使用してGeoRasterオブジェクトを更新できます。次の例では、(「GeoRaster表の作成」例3-1で作成した)CITY_IMAGES表のGeoRasterオブジェクトの空間エクステント・ジオメトリを更新し、そのオブジェクトの空間エクステント(モデル座標系を反映しているもの)を生成します。

UPDATE city_images c
  SET c.image.spatialExtent = sdo_geor.generateSpatialExtent(image)
    WHERE c.image_id = 100;
COMMIT;

次の例では、CITY_IMAGES表のすべてのGeoRasterオブジェクトの空間エクステント・ジオメトリを更新し、そのオブジェクトの空間エクステント(モデル座標系を反映しているもの)を生成します。

UPDATE city_images c
  SET c.image.spatialExtent = sdo_geor.generateSpatialExtent(image)
    WHERE c.image.spatialExtent is null;
COMMIT;

GeoRasterオブジェクトの空間エクステント・ジオメトリがわかっている場合、または空間エクステント・ジオメトリをモデル空間以外の座標系に基づくようにする場合は、SDO_GEOMETRYオブジェクトを作成するか、または表から選択します。その後、次の例に示すように、GeoRasterオブジェクトを更新して、その空間エクステント属性が対象のジオメトリに設定されるようにします。

DECLARE
 geom sdo_geometry;
BEGIN
-- Set geom to an SDO_GEOMETRY object that covers the spatial extent
-- of the desired GeoRaster object. If necessary, perform coordinate
-- system transformation before setting geom.
-- geom := sdo_geometry(...);
  UPDATE city_images c
    SET c.image.spatialExtent = geom WHERE c.image_id = 100;
  COMMIT;
END;

3.8.1 GeoRaster表に空間索引が含まれる場合の特別な考慮事項

GeoRaster空間エクステントに空間Rツリー索引を作成する場合(「GeoRasterオブジェクトの索引付け」を参照)、すべての空間エクステント・ジオメトリは同じSRID値を持つ必要があります。ただし、GeoRasterオブジェクトは異なるモデルSRIDを持つ場合があり、ほとんどのGeoRaster操作では、1つ以上のソースGeoRasterオブジェクトのモデルSRIDに基づいて、出力GeoRasterオブジェクトに空間エクステントが自動的に生成されます。これは、空間エクステントを持つ結果のGeoRasterオブジェクトがGeoRaster表に更新される場合、その表ではspatialExtent属性に基づいて作成された空間索引がすでに存在し、異なるSRIDが使用されている可能性があるため、問題となることがあります。

このような場合には、挿入または更新操作を行う前に、空間索引と同じSRIDに空間エクステントを変換する必要があります。次の例では、モザイク処理を実行しますが、結果のGeoRasterオブジェクトの空間エクステントをSRID 4326に変換してから、そのオブジェクトでGeoRaster表を更新しています。

DECLARE
  gr sdo_georaster;
BEGIN
  SELECT georaster INTO gr FROM mosaic_test WHERE georid=1 FOR UPDATE;
  sdo_geor.mosaic('mosaic_data', 'georaster', gr, 'blocking=OPTIMALPADDING,
blocksize=(512,512)');
  -- Transform the spatial extent geometry, if ncessary.
  -- In this example example, the modelSRID of the mosaic is 27302,
  -- but the SRID of the spatial index on mosaic_test is 4326.
  gr.spatialExtent := sdo_cs.transform(gr.spatialExtent, 4326);
  UPDATE mosaic_test SET georaster=gr WHERE georid=1;
END;
/

空間Rツリー索引が存在する場合、挿入または更新操作の後にコミット操作を行うと、挿入または更新されたGeoRasterオブジェクトに空間エクステント・ジオメトリが含まれている場合には、その索引は更新されます。これにより、各操作(特にイメージのバッチ・ロードなどのバッチ・ジョブ)の後にコミットを実行すると、一部の操作の処理速度が低下する可能性があります。通常、索引更新のパフォーマンスとGeoRaster操作とのバランスを取り、操作の後に一括してコミットする方がより効率的です。