CPUオーバーヘッドの最小化
ここでのトピック
SQL文のチューニング
PL/SQLプログラムの速度が低下する最も一般的な原因は、速度の遅いSQL文です。PL/SQLプログラムのSQL文をできるだけ効率的にするには:
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適切な索引を使用します。
詳細は、『Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください。
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問合せヒントを使用して、不要な全表スキャンを回避します。
詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
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DBMS_STATS
パッケージのサブプログラムを使用して、すべての表について現在の統計を収集します。詳細は、『Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください。
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次のものを使用して、実行計画およびSQL文のパフォーマンスを分析します。
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EXPLAIN
PLAN
文詳細は、『Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください。
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TKPROF
ユーティリティを持つSQLトレース機能詳細は、『Oracle Databaseパフォーマンス・チューニング・ガイド』を参照してください。
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バルクSQL(PL/SQLとSQL間の通信のパフォーマンス・オーバーヘッドを最小化するPL/SQL機能のセット)を使用します。
詳細は、「バルクSQLおよびバルク・バインド」を参照してください。
問合せにおけるファンクションの起動のチューニング
問合せで起動されるファンクションは、数百万回実行される可能性があります。問合せで不必要にファンクションを起動しないようにして、起動はできるだけ効率的にします。
問合せの表にファンクション索引を作成してください。CREATE
INDEX
文には少し時間がかかる場合もありますが、各行のファンクション値がキャッシュされるため、問合せを非常に高速に実行できます。
問合せによって列をファンクションに渡す場合、問合せではその列でユーザー作成索引を使用できないため、表(非常に大きい可能性がある)の行ごとにファンクションが起動される可能性があります。ファンクションの起動数を最小限に抑えるには、ネストした問合せを使用します。内側の問合せで結果セットが少ない行数になるようにフィルタリングし、外側の問合せでそれらの行のみを対象にファンクションを起動します。
関連項目:
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CREATE
INDEX
文の構文の詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください -
PL/SQLファンクションの結果をキャッシュする方法の詳細は、「PL/SQLファンクション結果キャッシュ」を参照してください
例13-5 ネストした問合せによるパフォーマンスの改善
この例では、2つの問合せで同じ結果セットを生成しますが、2番目の問合せは1番目の問合せより効率的です。(この例では、EMPLOYEES
表が非常に小さいため、回数および時間の違いはごくわずかです。非常に大きい表では、これらの違いが顕著になります。)
DECLARE starting_time TIMESTAMP WITH TIME ZONE; ending_time TIMESTAMP WITH TIME ZONE; BEGIN -- Invokes SQRT for every row of employees table: SELECT SYSTIMESTAMP INTO starting_time FROM DUAL; FOR item IN ( SELECT DISTINCT(SQRT(department_id)) col_alias FROM employees ORDER BY col_alias ) LOOP DBMS_OUTPUT.PUT_LINE('Square root of dept. ID = ' || item.col_alias); END LOOP; SELECT SYSTIMESTAMP INTO ending_time FROM DUAL; DBMS_OUTPUT.PUT_LINE('Time = ' || TO_CHAR(ending_time - starting_time)); -- Invokes SQRT for every distinct department_id of employees table: SELECT SYSTIMESTAMP INTO starting_time FROM DUAL; FOR item IN ( SELECT SQRT(department_id) col_alias FROM (SELECT DISTINCT department_id FROM employees) ORDER BY col_alias ) LOOP IF item.col_alias IS NOT NULL THEN DBMS_OUTPUT.PUT_LINE('Square root of dept. ID = ' || item.col_alias); END IF; END LOOP; SELECT SYSTIMESTAMP INTO ending_time FROM DUAL; DBMS_OUTPUT.PUT_LINE('Time = ' || TO_CHAR(ending_time - starting_time)); END; /
結果は次のようになります。
Square root of dept. ID = 3.16227766016837933199889354443271853372 Square root of dept. ID = 4.47213595499957939281834733746255247088 Square root of dept. ID = 5.47722557505166113456969782800802133953 Square root of dept. ID = 6.32455532033675866399778708886543706744 Square root of dept. ID = 7.07106781186547524400844362104849039285 Square root of dept. ID = 7.74596669241483377035853079956479922167 Square root of dept. ID = 8.36660026534075547978172025785187489393 Square root of dept. ID = 8.94427190999915878563669467492510494176 Square root of dept. ID = 9.48683298050513799599668063329815560116 Square root of dept. ID = 10 Square root of dept. ID = 10.48808848170151546991453513679937598475 Time = +000000000 00:00:00.046000000 Square root of dept. ID = 3.16227766016837933199889354443271853372 Square root of dept. ID = 4.47213595499957939281834733746255247088 Square root of dept. ID = 5.47722557505166113456969782800802133953 Square root of dept. ID = 6.32455532033675866399778708886543706744 Square root of dept. ID = 7.07106781186547524400844362104849039285 Square root of dept. ID = 7.74596669241483377035853079956479922167 Square root of dept. ID = 8.36660026534075547978172025785187489393 Square root of dept. ID = 8.94427190999915878563669467492510494176 Square root of dept. ID = 9.48683298050513799599668063329815560116 Square root of dept. ID = 10 Square root of dept. ID = 10.48808848170151546991453513679937598475 Time = +000000000 00:00:00.000000000
サブプログラムの起動のチューニング
サブプログラムにOUT
またはIN
OUT
パラメータがある場合、NOCOPY
ヒントを使用してこれらのパラメータを宣言することによって、起動のオーバーヘッドを減らすことができます。
OUT
パラメータまたはIN
OUT
パラメータが、コレクション、レコード、ADTのインスタンスなどの大規模なデータ構造を表す場合、それらのコピーによって実行速度が低下し、(特にADTのインスタンスで)メモリー使用量が増大します。
ADTメソッドが起動されるたびに、PL/SQLによってそのADTのすべての属性がコピーされます。メソッドが正常に終了すると、そのメソッドが属性に対して行った変更が、PL/SQLによって適用されます。メソッドが未処理例外を戻して終了すると、PL/SQLは、属性を変更しません。
プログラムで、サブプログラムが未処理例外を戻して終了したときにOUT
パラメータまたはIN
OUT
パラメータに起動前の値を保持する必要がない場合、パラメータ宣言にNOCOPY
ヒントを含めます。NOCOPY
ヒントは、コンパイラが対応する実パラメータを値ではなく参照によって渡すように要求しますが、その保証はしません。
注意:
サブプログラムが未処理例外を戻して終了したときに実パラメータまたはADT属性で起動前の値を確実に保持するためには、NOCOPY
に依存しないでください(特定の起動について、コンパイラはこのヒントに従う場合と従わない場合があります)。かわりに、サブプログラムですべての例外が処理されるようにします。
関連項目:
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NOCOPY
ヒントの詳細は、「NOCOPY」を参照してください -
ADTのメンバー・メソッドとともに
NOCOPY
を使用する方法は、『Oracle Databaseオブジェクト・リレーショナル開発者ガイド』を参照してください
例13-6 NOCOPYサブプログラム・パラメータ
この例では、コンパイラがdo_nothing2
の起動に関してNOCOPY
ヒントに従うと、do_nothing2
の起動がdo_nothing1
の起動より高速に実行されます。
DECLARE TYPE EmpTabTyp IS TABLE OF employees%ROWTYPE; emp_tab EmpTabTyp := EmpTabTyp(NULL); -- initialize t1 NUMBER; t2 NUMBER; t3 NUMBER; PROCEDURE get_time (t OUT NUMBER) IS BEGIN t := DBMS_UTILITY.get_time; END; PROCEDURE do_nothing1 (tab IN OUT EmpTabTyp) IS BEGIN NULL; END; PROCEDURE do_nothing2 (tab IN OUT NOCOPY EmpTabTyp) IS BEGIN NULL; END; BEGIN SELECT * INTO emp_tab(1) FROM employees WHERE employee_id = 100; emp_tab.EXTEND(49999, 1); -- Copy element 1 into 2..50000 get_time(t1); do_nothing1(emp_tab); -- Pass IN OUT parameter get_time(t2); do_nothing2(emp_tab); -- Pass IN OUT NOCOPY parameter get_time(t3); DBMS_OUTPUT.PUT_LINE ('Call Duration (secs)'); DBMS_OUTPUT.PUT_LINE ('--------------------'); DBMS_OUTPUT.PUT_LINE ('Just IN OUT: ' || TO_CHAR((t2 - t1)/100.0)); DBMS_OUTPUT.PUT_LINE ('With NOCOPY: ' || TO_CHAR((t3 - t2))/100.0); END; /
ループのチューニング
PL/SQLアプリケーションはループの周囲に構築されることが多いため、ループ自体とループ内のコードの両方を最適化することが重要です。
結果セットを2回以上ループしたり、結果セットのループ時に他の問合せを発行する必要がある場合、元の問合せを変更して、目的の結果を正確に取得することが可能な場合があります。複数の問合せを結合できるSQLの集合演算子を調査してください(『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照)。
副問合せを使用して、複数の段階でフィルタリングおよびソートを行うこともできます(「副問合せによる問合せ結果セットの処理」を参照)。
関連項目:
計算集中型PL/SQLコードのチューニング
ここでの推奨事項は、特に計算集中型PL/SQLコードに適用されます(ただし、それらのコードに限定されません)。
ここでのトピック
ハードウェア算術を使用するデータ型の使用
NUMBER
データ型ファミリ(「NUMBERデータ型ファミリ」を参照)のデータ型を使用することは避けてください。これらのデータ型の内部的な表現形式は、パフォーマンスよりも移植性および任意の位取りと精度に重点を置いて設計されています。これらの型のデータに対する操作では、ライブラリ算術計算が使用されますが、PLS_INTEGER
型、BINARY_FLOAT
型およびBINARY_DOUBLE
型のデータに対する操作では、ハードウェア算術計算が使用されます。
ローカル整変数には、PLS_INTEGER
を使用します(「PLS_INTEGERおよびBINARY_INTEGERデータ型」を参照)。パフォーマンスを重視するコードで使用する変数(NULL
値を持つことがなく、オーバーフロー・チェックを必要としないもの)には、SIMPLE_INTEGER
を使用します(PLS_INTEGERのSIMPLE_INTEGERサブタイプを参照)。
浮動小数点変数には、BINARY_FLOAT
またはBINARY_DOUBLE
を使用します(『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照)。パフォーマンスを重視するコードで使用する変数(NULL
値を持つことがなく、オーバーフロー・チェックを必要としないもの)には、SIMPLE_FLOAT
またはSIMPLE_DOUBLE
を使用します(「BINARY_FLOATおよびBINARY_DOUBLEの追加のPL/SQLサブタイプ」を参照)。
ノート:
BINARY_FLOAT
およびBINARY_DOUBLE
とそれらのサブタイプは、正確さが非常に重要な財務処理コードにはあまり適していません。これらの型は、常に正確に小数値を表すわけではなく、NUMBER
型とは異なり四捨五入処理が行われるためです。
多くのSQL数値ファンクション(『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照)は、BINARY_FLOAT
パラメータおよびBINARY_DOUBLE
パラメータを受け入れるバージョンでオーバーロードされます。これらのデータ型の変数をこのようなファンクションに渡したり、このようなファンクションに式を渡すときに変換ファンクションのTO_BINARY_FLOAT
(『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照)およびTO_BINARY_DOUBLE
(『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照)を起動することによって、計算集中型コードをスピードアップできます。
パフォーマンスを重視するコードでの制約付きサブタイプの回避
パフォーマンスを重視するコードでは、制約付きサブタイプ(「制約付きサブタイプ」を参照)を使用することは避けてください。制約付きサブタイプの変数またはパラメータに代入を行うたびに、代入される値が制約に違反していないことを保証するために実行時に余分なチェックが必要になります。
関連項目:
「PL/SQLの事前定義のデータ型」(事前定義の制約付きサブタイプを含む)
暗黙的なデータ型変換の最少化
PL/SQLは実行時に、必要に応じて異なるデータ型を暗黙的(自動的)に変換します。たとえば、PLS_INTEGER
変数をNUMBER
変数に代入すると、PL/SQLによって、PLS_INTEGER
値がNUMBER
値に変換されます(各値の内部表現は異なるため)。
可能であれば、暗黙的な変換は常に最小限に抑えてください。たとえば:
-
表の列に変数を挿入する場合、または表の列から変数に値を代入する場合、その変数に表の列と同じデータ型を指定します。
ヒント:
%TYPE
属性を使用して変数を宣言します(「%TYPE属性」を参照)。 -
各リテラルが、割当て先の変数または記述対象の式と同じデータ型になるようにします。
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SQLデータ型からPL/SQLデータ型に値を変換し、変換した値を式で使用します。
たとえば、
NUMBER
値をPLS_INTEGER
値に変換し、そのPLS_INTEGER
値を式で使用します。PLS_INTEGER
演算はハードウェア算術計算を使用するため、ライブラリ算術計算を使用するNUMBER
演算より処理速度が速くなります。PLS_INTEGER
データ型の詳細は、「PLS_INTEGERおよびBINARY_INTEGERデータ型」を参照してください。 -
あるSQLデータ型の値を別のSQLデータ型の変数に代入する前に、SQL変換ファンクションを使用してソース値をターゲット・データ型に明示的に変換します(SQL変換ファンクションの詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください)。
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異なるデータ型のパラメータを受け入れるバージョンでサブプログラムをオーバーロードし、そのパラメータ型の各バージョンを最適化します。オーバーロードされたサブプログラムの詳細は、「オーバーロードされたサブプログラム」を参照してください。
関連項目:
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SQLデータ型(PL/SQLデータ型にも相当)の暗黙的な変換の詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
SQL文字関数の使用
SQLには、PL/SQLコードよりも効率的な低レベルのコードを使用する高度に最適化された文字ファンクションが多くあります。PL/SQLコードを記述するかわりにこれらのファンクションを使用することで、同じ処理を実行できます。
参照:
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文字値を戻すSQL文字関数の詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
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NLS文字値を戻すSQL文字関数の詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
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数値を戻すSQL文字関数の詳細は、『Oracle Database SQL言語リファレンス』を参照してください。
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SQL文字ファンクション
REGEXP_LIKE
を使用するPL/SQLコードの例は、例7-6を参照してください