5.4 ネットワーク・アプリケーション

ネットワークは、アプリケーションで、異なるオブジェクトが相互に接続されている方法を確認するために使用されます。

接続性は、通常、近接性およびパスの関係で表現されます。2つのノードが1つのリンクで接続されている場合、これらのノードは近接しています。多くの場合、任意の2つのノード間には複数のパスが存在し、コストが最低になるパスを検出する必要がある場合があります。

このトピックでは、いくつかの種類のネットワーク・アプリケーションでの一般的な例について説明します。

5.4.1 道路ネットワークの例

通常の道路ネットワークでは、道路の交差点がノードになり、2つの交差点間の道路セグメントがリンクになります。道路の空間表現は、ネットワークのノードおよびリンクとは本質的に無関係です。たとえば、(道路の急カーブを反映する)道路の空間表現の形状点は、この形状点が交差点に関連付けられていない場合、ネットワークのノードにはなりません。また、単一の空間オブジェクトが、ネットワークの複数のリンクを構成する場合があります(横断する3つの道路によって交差点が形成された直線セグメントなど)。道路ネットワークに関する重要な操作は、移動時間または移動距離が最短になる、開始点から終了点までのパスを検索することです。パスの計算には、特定のランドマークの通過や特定の交差点の回避など、追加の制約が課せられる場合があります。

5.4.2 地下鉄(鉄道)ネットワークの例

大都市の地下鉄ネットワークは、停車駅および線路の正確な空間表現が重要でないと想定すると、最適なモデル化が行われた論理ネットワークであるといえます。このネットワークでは、地下鉄のすべての停車駅がネットワークのノードを構成し、列車が2つの停車駅間を直接移動する場合、これらの2つの停車駅間の接続がリンクになります。鉄道ネットワークに関する重要な操作には、指定された駅から到達可能なすべての駅の検索、指定された2つの駅間の停車駅の数の検索、および2つの駅間の移動時間の検索が含まれます。

5.4.3 マルチモーダル・ネットワークと時間の例

マルチモーダル・ネットワークは、複数のモードで構成されるネットワーク(運転ルートと歩行ルートで構成されるネットワークなど)です。マルチモーダル・ネットワークは、通常、(特定のモードの)個別のネットワークとしてモデル化され、集約ネットワークとして処理されるため、単一モードと複数モードのルートを表現して計算することが可能です。一般的に、マルチモーダル・ネットワークは異なるモードのスケジュールによって接続されますが、このような場合、マルチモーダル・ネットワークは時間ネットワークにもなります。例としては、最も近いバス停まで歩き、最速のバス・ルートを選択し、目的地に最も近いバス停で下車し、目的地まで歩く場合の移動工程の計算が挙げられます。また、運転や飛行などのモードの追加を考慮することもできます。

時間のモデリングと分析は、ネットワークのモデリングと分析に時間次元を追加します。時間係数は、静的な(時間以外の)ネットワーク上にコストまたは制約(あるいはその両方)を提供します。例としては、静的な移動時間コストのかわりに、トラフィック・パターン(時間に依存した移動時間コスト)を考慮する場合が挙げられます。

多くの大都市の輸送ネットワークは、バス、地下鉄、通勤路線などの複数のモードで構成され、モード間での乗換え(バスから地下鉄など)が可能です。各輸送モードが、大きな輸送ネットワーク内でのコンポーネント・ネットワークを持ちます。コンポーネント・ネットワークは、ノードとリンクを使用してモデル化することができ、ノード間の乗換えは、乗換え可能な停車駅を接続するリンクとしてモデル化できます。

このようなマルチモーダル輸送ネットワークで重要な機能は、スケジュールベースの操作です。一般的なネットワーク操作(開始点から終了点までの最速ルートの計算など)を実行する場合、スケジュール情報とモード間で可能な乗換えを考慮する必要があります。停車駅のスケジュール情報は、これらの停車駅を表すノードでユーザー定義データとして表現できます。マルチモーダル・ネットワークでスケジュール情報を使用する操作の例としては、(A)指定された開始時間で開始点から終了点までの最速ルートを検出する場合、(B)指定された到着時刻までに終了点に到達できる、開始点での最も遅い出発時刻を検出する場合などが挙げられます。

5.4.4 ライフライン・ネットワークの例

送電線ネットワークやケーブル・ネットワークなどのライフライン・ネットワークは、多くの場合、コストが最低になるように構成する必要があります。ライフライン・ネットワークに関する重要な操作は、最低コスト・スパニング・ツリー・アルゴリズムを使用してノード間の接続を決定し、必要な品質のサービスを最低コストで提供することです。もう1つの重要な操作は、到達可能性の分析です。たとえば、水道ネットワークの給水拠点が停止した場合、影響を受けるエリアがわかります。

5.4.5 生化学ネットワークの例

生化学プロセスは、生体内の反応および調節を表す生化学ネットワークとしてモデル化できます。たとえば、代謝パスウェイは酵素反応に関連するネットワークで、調節パスウェイは蛋白質間の相互作用を表します。この例では、パスウェイがネットワークで、遺伝子、蛋白質および化合物がノードです。また、ノード間の反応がリンクになります。生化学ネットワークに関する重要な操作には、パスおよびノードの度数の計算が含まれます。