5.3 ネットワーク・データ・モデルの概念
ネットワークは、接続性を使用してオブジェクト間の関係を表す数学的なグラフです。
接続性は、空間の近接性に基づく場合と、基づかない場合があります。たとえば、2つの町が湖の対岸に位置するとき、1つの町からもう1つの町まで車で移動する場合には、空間の近接性に基づく最短パス(湖の中心を通る直線)は適切ではありません。かわりに、最短の運転距離を検出するには、道路と交差点、および個別のリンクのコストに関する接続性情報が必要です。
ネットワークは一連のノードおよびリンクで構成されています。各リンク(エッジまたはセグメントともいう)は、2つのノードを指定します。
ネットワークは、有向(デフォルトでは、リンクの方向は開始ノードと終了ノードによって決まる)または無向(リンクのどちらの方向にも進むことができる)にすることができます。
ネットワーク・データ・モデル機能に関連するいくつかの重要な用語を次に示します。
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ノード(頂点とも呼ばれます)は、リンクを相互に結合できる点です。孤立ノードとは、どのリンクにも含まれていないノードのことです。(連結ノードは、そのノードを含むすべてのリンクが削除されると、孤立ノードになります。)
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リンクは、2つのノード間の関係を表します。有向ネットワーク内のリンクは、無向(開始ノードから終了ノード、終了ノードから開始ノードのどちらの向きにも進むことが可能)または有向(開始ノードから終了ノードの向きにのみ進むことが可能)に設定できます。無向ネットワーク内のリンクは、すべて無向です。
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ネットワーク要素は、ノードまたはリンクです。
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パスは、ノードおよびリンクを交互につなげたもので、ノードで開始および終了します。通常、同じノードおよびリンクが複数回現れることはありません。(1つのパス内でノードおよびリンクを繰返し使用することもできますが、ほとんどのネットワーク・アプリケーションでは、通常、同じノードおよびリンクが繰返し使用されることはありません。)
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サブパスは、パスに沿った部分的なパスであり、ネットワーク分析操作の結果として作成されたり、ユーザーによって明示的に作成されます。サブパスについては、「サブパス」を参照してください。
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論理ネットワークには接続性情報が含まれますが、ジオメトリ情報は含まれません。これは、ネットワーク分析に使用されるモデルです。論理ネットワークは、アプリケーションに応じて、有向グラフまたは無向グラフとして処理できます。
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空間ネットワークには、接続性情報とジオメトリ情報の両方が含まれます。空間ネットワークでは、ノードおよびリンクは、LRS情報が含まれないSDO_GEOMETRYジオメトリ・オブジェクト(SDOネットワーク)、LRS情報が含まれるSDO_GEOMETRYジオメトリ・オブジェクト(LRSネットワーク)、またはSDO_TOPO_GEOMETRYオブジェクト(トポロジ・ジオメトリ・ネットワーク)になります。
LRSネットワークでは、各ノードにジオメトリID値およびメジャー値が含まれ、各リンクにジオメトリID値および開始メジャー値と終了メジャー値が含まれます。いずれの場合にも、ジオメトリID値は、LRS情報が含まれるSDO_GEOMETRYオブジェクトを参照します。空間ネットワークは、アプリケーションに応じて、有向または無向にすることができます。
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フィーチャは、ノードまたはリンクに関連付けられた、ネットワーク・アプリケーションの対象オブジェクトです。フィーチャおよびフィーチャ・レイヤー・タイプについては、「フィーチャおよびフィーチャ・レイヤー」を参照してください
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コストは、最低コスト・パスを計算するための、リンクまたはノードに関連付け可能な負でない数値の属性です。最低コスト・パスとは、開始ノードから終了ノードまでの合計コストが最低になるパスです。ネットワーク・メタデータで、リンクの運転時間や運転距離など、単一のコスト因子を指定し、コストを調べるネットワーク分析ファンクションで使用できます。
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継続時間は、リンクまたはノードに関連付ける負でない数値の属性で、リンクまたはノードの継続時間の値を指定できます。継続時間の値は、時間(分)や他のユーザー定義項目を示すことができます。ネットワーク・メタデータで、リンクの運転時間など、単一の継続時間因子を指定できます。ただし、コストのかわりに継続時間を使用して経過時間を示す場合、指定した継続時間は、コストを調査するネットワーク分析ファンクションの検討対象になりません。
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状態は、リンクまたはノードに関連付ける
ACTIVE
またはINACTIVE
の文字列属性で、リンクまたはノードをネットワーク分析ファンクションの検討対象にするかどうかを指定します。たとえば、ノードの状態がINACTIVE
の場合、そのノードが起点または終点のリンクは、2ノード間の最短パスの計算時に無視されます。リンクやノードを作成した時点では、状態はデフォルトでACTIVE
ですが、INACTIVE
に設定できます。 -
タイプは、リンクまたはノードに関連付けることのできる文字列属性で、リンクまたはノードのタイプに対するユーザー定義値を指定します。
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一時的なリンク、ノードおよびパスは、ネットワーク・メモリー・オブジェクト内にのみ存在し、ネットワーク・メモリー・オブジェクトをデータベースに書き込むときもデータベースには書き込まれません。たとえば、ネットワークの分析時や編集セッション時には、一時ノードを作成して住所を表し、最短パスの計算で使用することがありますが、編集操作の結果を保存するときは、これらの一時ノードは保存されません。
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到達可能ノードは、任意のノードから到達可能なすべてのノードです。到達ノードは、任意のノードに到達可能なすべてのノードです。
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ノードの度数は、そのノードへのリンク(ノードに対するインシデント)の数です。イン度数はインバウンド・リンクの数で、アウト度数はアウトバウンド・リンクの数です。
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接続されているコンポーネントとは、直接または間接的に接続されたネットワーク・ノードのグループのことです。ノードAがノードBに到達可能な場合、これらのノードは同じ接続されているコンポーネントに属している必要があります。2つのノードが接続されていない場合、これらのノード間で使用可能なパスがないということがわかります。この情報は、不要なパスの計算を避けるためのフィルタとして使用されます。
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接続されたグラフのスパニング・ツリーとは、グラフのすべてのノードを接続するツリー(サイクルが含まれないグラフ)です。(スパニング・ツリーでは、リンクの方向は無視されます。)最低コスト・スパニング・ツリーは、すべてのノードを接続し、合計コストが最低になるスパニング・ツリーです。
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パーティション化されたネットワークとは、複数のパーティションを含むネットワークのことです。大規模なネットワークをパーティション化すると、必要なパーティションのみをオンデマンドでメモリーにロードできるため、全体的なパフォーマンスが向上します。
ネットワーク・パーティションとは、サブネットワークのことです。各パーティションには、ネットワーク全体のノードとリンクのサブセットが含まれます。ネットワーク・パーティションは、ロード・オンデマンド分析を行うための基本的な処理単位です。ネットワーク・パーティションを作成するには、ネットワーク内のすべてのノードを1つのパーティションIDのみに割り当てます。ネットワーク・パーティションの情報は、パーティション表に格納されます。
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ロード・オンデマンド(ロード・オンデマンド分析)は、大規模なネットワークを管理可能なパーティションに分割し、分析中に必要なパーティションのみをロードすることによって、考慮事項となっているメモリー制限を排除し、全体的なパフォーマンスを向上させる方法です。
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パーティションBLOBは、ネットワーク・パーティションをバイナリで表現したものです。これを使用すると、パーティションのロード時間を短縮できます。パーティションBLOBは、パーティションBLOB表に格納されます。
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ロード・オンデマンドのパーティション・キャッシュは、ネットワーク分析中にメモリーにロードされるネットワーク・パーティションに対するインメモリー・プレースホルダです。パーティション・キャッシュは、構成することができます。
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ユーザー定義データは、ユーザーがネットワーク表現に関連付ける(接続性とは関係のない)情報です。ユーザー定義データは、ノード、リンク、パスおよびサブパスの各レベルで定義することができ、ノード表、リンク表、パス表およびサブパス表の列に格納されます。
5.3.1 サブパス
サブパスは、パスに沿った部分的なパスであり、ネットワーク分析操作の結果として作成されたり、ユーザーによって明示的に作成されます。サブパスの開始点および終了点は、図5-2に示すように、リンクの索引と、パスにおける1つ前のノードからの距離の割合として定義されます。
サブパスは、次のパラメータを使用して、既存のパス(参照パス)を参照します。
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参照パスID: 参照パスのパスID。
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開始リンクの索引: 参照パス上の開始リンクの索引。(リンク索引0は、パス上の最初のノードと2番目のノード間のリンクを示します。)図5-2ではリンク索引0が開始リンクの索引です。
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開始の割合: サブパスの開始ノードに対する、開始リンクに沿った距離の割合。図5-2では、サブパスは、リンク索引0の開始から終了までの距離の65%の位置で開始しています。
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終了リンクの索引: 参照パス上の終了リンクの索引。図5-2ではリンク索引6が終了リンクの索引です。
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終了の割合: サブパスの終了ノードに対する、終了リンクに沿った距離の割合。図5-2では、サブパスは、リンク索引6の開始から終了までの距離の50%の位置で終了しています。
親トピック: ネットワーク・データ・モデルの概念
5.3.2 フィーチャおよびフィーチャ・レイヤー
フィーチャは、ノードまたはリンクに関連付けられた、ネットワーク・アプリケーションの対象オブジェクトです。たとえば、輸送ネットワークでは、(ノードにマップされた)出口と交差点、および(リンクにマップされた)高速道路と通りがフィーチャになります。
フィーチャは1つ以上のフィーチャ要素で構成されます。フィーチャ要素は、ネットワークに沿った点または線です。フィーチャ要素が点である場合、要素はノード上または線に沿って存在し、フィーチャ要素が線である場合、要素は完全リンクまたは部分リンクとなります。
フィーチャのフィーチャ要素のタイプに応じて、フィーチャのフィーチャ・タイプは、表5-1に示すタイプのいずれかになります。
表5-1 フィーチャ・タイプ
タイプ番号 | タイプ名 | フィーチャ要素の構成 |
---|---|---|
1 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_PON |
ノード上の単一の点 |
2 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_POL |
リンク上の単一の点 |
3 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_POINT |
単一の点(ただし、点がノード上またはリンク上のいずれにあるのかは不明です) |
4 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_LINE |
単一の線 |
5 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_MPON |
1つ以上のノード上にある1つ以上の点 |
6 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_MPOL |
1つ以上のリンク上にある1つ以上の点 |
7 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_MPOINT |
1つ以上の点(ただし、点はノード上またはリンク上あるいは両方の組合せ上にあります) |
8 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_MLINE |
1つ以上の線 |
9 |
SDO_NET.FEAT_TYPE_COLL |
点と線両方の集合、またはフィーチャ要素のタイプが不明 |
フィーチャ・レイヤーは、同じ属性セットを持つフィーチャを含む表に対応します。たとえば、道路ネットワークでは、レストランとホテルに対して異なるフィーチャ・レイヤー(および旅行者が興味を示すその他の対象のフィーチャ・レイヤー)が存在する可能性があります。
フィーチャ・レイヤー内にあるフィーチャのタイプに応じて、フィーチャ・レイヤーのフィーチャ・レイヤー・タイプは、表5-2に示すタイプのいずれかになります(表5-2では、各フィーチャ・レイヤー・タイプを、表5-1の関連するフィーチャ・タイプにマップしています)。
表5-2 フィーチャ・レイヤー・タイプ
レイヤー・タイプ番号 | レイヤー内のフィーチャのタイプ |
---|---|
1 |
タイプ1 (SDO_NET.FEAT_TYPE_PON) |
2 |
タイプ2 (SDO_NET.FEAT_TYPE_POL) |
3 |
タイプ3 (SDO_NET.FEAT_TYPE_POINT) |
4 |
タイプ4 (SDO_NET.FEAT_TYPE_LINE) |
5 |
タイプ5 (SDO_NET.FEAT_TYPE_MPON)または1 (SDO_NET.FEAT_TYPE_PON) |
6 |
タイプ6 (SDO_NET.FEAT_TYPE_MPOL)または2 (SDO_NET.FEAT_TYPE_POL) |
7 |
タイプ1、2、3、5、6または7 |
8 |
タイプ8 (SDO_NET.FEAT_TYPE_MLINE)または4 (SDO_NET.FEAT_TYPE_LINE) |
9 |
任意の数のフィーチャ・タイプが混在する可能性あり |
親フィーチャは、1つ以上のフィーチャ・レイヤーのフィーチャで構成されます。たとえば、電気ネットワークでは、サブステーションは、その関連部分(接合部、スイッチ、ケーブルなど)すべてのフィーチャ・レイヤーに対する親フィーチャです。
フィーチャおよびフィーチャ・レイヤーは、NFE APIを使用して編集および表示できます。このAPIにより、特定のタイプのネットワーク(電気、ガス、水道など)のモデル化が容易になります。
親トピック: ネットワーク・データ・モデルの概念