3 システムのアップグレード

この章では、評価フェーズおよびアップグレード・フェーズである、システム・アップグレードの各段階について説明します。これらの段階で使用する主なコマンドは、leapp preupgradeleapp upgradeであり、その後にコマンド引数が続きます。これらの引数のリストについては、-hまたは--help引数を使用してください。次に例を示します:

sudo leapp preupgrade --help

アップグレードのためのシステムの機能の評価

アップグレード前フェーズでは、アップグレードのためにシステムの準備ができているかどうかが確認されます。

重要:

Leappでのアップグレードのためにシステムをより適切に準備できるように、「既知の問題」も参照してください。

アップグレード前処理の実行

アップグレード前フェーズでは、アップグレードのためにシステムの準備ができているかどうかを確認できます。

アップグレードを妨げる可能性のある問題がシステムから排除されるように、アップグレード前フェーズを実行することをお薦めします。このフェーズでは、アップグレードのリスクを特定する評価レポートを生成します。レポートには、それらのリスクを解決するための推奨事項も記載されます。

  1. プロキシ・サーバーを使用する場合は、/etc/yum.repos.d/leapp-upgrade-repos-ol10.repoを編集して、リポジトリ・エントリごとにプロキシ設定を追加します。

    1回の操作で設定を追加するには、次のコマンドを実行します。

    sudo sed -i '/^enabled=0.*/a proxy=http://proxy-host:proxy-port' /etc/yum.repos.d/leapp-upgrade-repos-ol10.repo 
  2. preupgradeコマンドを実行します。

    システムに対して適切なコマンド引数を使用します。

    • システムの場合:

      sudo leapp preupgrade --oraclelinux [--enablerepo repository]

    引数の詳細は、コマンド引数を使用したリポジトリの有効化を参照してください。

    このプロセスでは、プロセス・ログ、レポートおよびanswerfileファイルが生成されます。

Leappレポートの分析

/var/log/leapp/leapp-report.txtは、アップグレードに対する潜在的なリスクを特定します。リスクは高、中、低に分類されます。アップグレードを妨げる可能性が高いリスクは、さらに阻害要因として分類されます。このレポートには、特定されたリスクの背後にある問題が要約され、必要に応じて修正も提案されます。

推奨される処置を完了して、高とラベル付けされた、アップグレード・プロセスを妨げる可能性があるリスクを排除してください。

レポートされたリスクに対処した後、preupgradeコマンドを再度実行します。再生成されたレポートで、すべての重大なリスクが排除されていることを確認します。

レポートの内容をわかりやすく説明するために、次の項で例を考えてみます:

レガシー・ネットワーク構成の問題

レガシーのifcfg形式を使用したネットワーク構成ファイルについて、レポートに警告が表示される場合があります。

Risk Factor: high (inhibitor)
Title: Legacy network configuration found
Summary: Network configuration files in legacy "ifcfg" format are present.In Oracle Linux 10, support for these files is no longer enabled and the configuration will be ignored. The following files were found:
    - /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-ens3
Related links:
    - nmcli(1) manual, describes "connection migrate" sub-command.: https://networkmanager.dev/docs/api/latest/nmcli.html
    - nm-settings-ifcfg-rh(5), description of the "ifcfg" format: https://networkmanager.dev/docs/api/latest/nm-settings-ifcfg-rh.html
    - nm-settings-keyfile(5), description of the "keyfile" format: https://networkmanager.dev/docs/api/latest/nm-settings-keyfile.html

この問題を解決するには、次の手順および推奨事項を確認してください:

Remediation: [hint] Convert the configuration into NetworkManager native "keyfile" format.
[command] nmcli connection migrate /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-ens3
IdMが構成されずにipa-serverパッケージがインストールされている問題

free-ipaパッケージに関する警告がレポートに表示される場合があります。

Risk Factor: medium 
Title: ipa-server package is installed but no IdM is configured
Summary: The ipa-server package is installed but neither IdM server nor client is configured on this system.
Related links:
    - IdM migration guide: https://docs.oracle.com/en/operating-systems/oracle-linux/10/leapp

この問題を解決するには、次の手順および推奨事項を確認してください:

Remediation: [hint] Remove ipa-server package and install it after in-place upgrade, if you need ipa-server functionality on upgraded system

 Leapp Answerfileへの情報の提供

/var/log/leapp/leapp-report.txtの推奨事項を実施するのみでなく、/var/log/leapp/answerfile内のすべての項目に回答を提供する必要もあります。

阻害要因は/var/log/leapp/answerfile/var/log/leapp/leapp-report.txtの両方で報告される可能性があり、後者のファイルは代替処置を提供します。内容が重複している場合でも、アップグレードが正常に行われるように、常に両方のファイルを調べてください。

/var/log/leapp/answerfileファイルは、Leappがシステムで実行する特定の検証チェックで構成されます。検証チェックにはシステムに関する情報が含まれており、実行するアクションの確認を求めるプロンプトも表示されます。このファイルには、必要な対応のガイドとなるコンテキストと情報が記載されています。

ノート:

answerfileにリストされているすべての検証チェックに回答する必要があります。未回答の項目があると、アップグレード・プロセスが停止します。

answerfileに回答を提供するには、次のいずれかの方法を選択します。

  • leapp Answerコマンドを使用します。

    このコマンドは、修正が必要な特定のセクションで実行します。たとえば、PAMモジュールの検証を確認するには、次のように入力します。

    sudo leapp answer --section remove_pam_pkcs11_module_check.confirm=True
  • /var/log/leapp/answerfileの内容を編集します。

    確認する特定のセクション([remove_pam_pkcs11_module_check]など)に移動し、そのconfirm =行のコメントを解除し、回答を指定します。次に例を示します。

    confirm = True

アップグレードの実行

/var/log/leapp/answerfileを完了し、/var/log/leapp/leapp-report.txtでリスクが報告されなくなったことを確認したら、次のようにシステムをアップグレードします:

  1. コンソールを使用して、アップグレードするシステムに接続します。

    • VNCサーバーを使用して構成されたリモート・システムをアップグレードする場合は、VNCクライアントを使用してそのシステムに接続します。

  2. アップグレードするシステムまたはインスタンスの別の端末ウィンドウで、適切なコマンド引数を指定してupgradeコマンドを実行します。

    • システムの場合:

      sudo leapp upgrade --oraclelinux [--enablerepo repository]

    コマンド引数の詳細は、コマンド引数を使用したリポジトリの有効化を参照してください。

  3. レポート・サマリーでエラーまたは阻害要因が返されないことを確認します。たとえば、次のレポートにはエラーや阻害要因は表示されていません:
    ============================================================
                          REPORT OVERVIEW                       
    ============================================================
    
    HIGH and MEDIUM severity reports:
        1. Packages not signed by Oracle found on the system
        2. Default Boot Kernel
        3. Berkeley DB (libdb) has been detected on your system
        4. PostgreSQL (postgresql-server) has been detected on your system
        5. Manual migration of data from MySQL database might be needed
    
    Reports summary:
        Errors:                      0
        Inhibitors:                  0
        HIGH severity reports:       1
        MEDIUM severity reports:     4
        LOW severity reports:        1
        INFO severity reports:       2
    
    Before continuing, review the full report below for details about discovered problems and possible remediation instructions:
        A report has been generated at /var/log/leapp/leapp-report.txt
        A report has been generated at /var/log/leapp/leapp-report.json
    
    ============================================================
                       END OF REPORT OVERVIEW                   
    ============================================================

    エラーまたは阻害要因が表示された場合は、解決してからシステムを再起動して、Leappのアップグレードを再実行してください。

  4. システムを再起動します。

    sudo reboot
  5. システムの再起動中に、コンソールで進行状況をモニターします。

    起動プロセスが完了すると、ユーティリティによって、自動的にパッケージのアップグレードが続行されます。この操作は完了までにしばらく時間がかかり、複数回、自動で再起動されます。

    注意:

    この段階で進行中のプロセスを中断しないでください。ログイン画面が表示されるまで待ちます。この画面には、アップグレード・プロセス全体が完了したことが示されます。その後に初めて、システムの使用を開始できるようになります。

  6. コンソールにログイン画面が表示されたら、適切な資格証明を使用してログインします。

重要:

Oracle Linux 10の新機能、変更点および非推奨項目については、Oracle Linux 10のドキュメントを参照してください。それにより、実行が必要な可能性がある、アップグレード後タスクを特定できます。

アップグレードの確認

アップグレード・プロセスが完了すると、アップグレード前のフェーズと同じファイル(プロセス・ログ、レポートおよび/var/log/leapp/answerfile)が生成されます。ターミナルで、次のステップを実行します:

  1. /var/log/leapp/leapp-report.txtを調べ、アップグレード・プロセス後に完了する必要がある重要な推奨事項をすべて実行します。

  2. 次の検証を実行します。

    システムの新しいOSバージョンを確認するには、次のように入力します。

    cat /etc/oracle-release

    システムのカーネル・バージョンを確認するには、次のコマンドを入力して、カーネルにel10部分文字列が含まれていることを確認します:

    uname -r

    次のコマンドを使用して、システムのデフォルトのカーネルを識別することもできます。

    sudo grubby --default-kernel