情報ライフサイクル管理(ILM)の理解

情報ライフサイクル管理(ILM)は、同じ名前のOracleデータベース機能と連携する、Oracle Utilities Meter Data Managementの個別にライセンス可能なコンポーネントです。

ILM処理全体の背景の詳細は、『Oracle Utilities Application Framework管理ユーザー・ガイド』の「情報ライフサイクル管理」の章を参照してください。

この項では、次を含む、情報ライフサイクル管理機能によって使用されるコンポーネントの概要を示します。

  • ILMが有効化されたメンテナンス・オブジェクト: 単一の保持期間
  • ILMが有効化されたメンテナンス・オブジェクト: 複数の保持期間
  • 非最終のトランザクションの適格性の調整
  • アーカイブの適用の階層
  • 複数の保持期間の適格性クロール戦略

ILMとOUAFアプリケーションの連携の全般情報は、『Oracle Utilities Application Framework管理ユーザー・ガイド』の「情報ライフサイクル管理」の章を参照してください。

ILMが有効化されたメンテナンス・オブジェクト: 単一の保持期間

大部分のメンテナンス・オブジェクトは、単一の保持期間をサポートします。これらは、「ILM構成」マスター構成で構成されたシステム全体の保持日数を継承することも、メンテナンス・オブジェクトのオプション「ILM保持期間日数」で指定された保持期間を指定することもできます。

これらのオブジェクトでは、メンテナンス・オブジェクト固有の保持期間とシステム全体の保持期間のいずれかがすべてのトランザクションに適用されます。

ILMが有効化されたメンテナンス・オブジェクト: 複数の保持期間

いくつかのメンテナンス・オブジェクトでは、トランザクションのタイプに基づいて保持期間が異なる場合があります。たとえば、電圧などの請求外単位のIMDは、請求決定要因の生成に寄与する測定よりも、かなり迅速にアーカイブできます。

これらのメンテナンス・オブジェクトは、いくつかの面で単一の保持期間のメンテナンス・オブジェクトとは区別されます。

  • エンティティの主表には、各トランザクションの保持期間日数を取得する追加の列「保持期間」(RETENTION_​PERIOD)があります。この値は、「ILM構成 - MDM」マスター構成に基づいて移入されます。
  • 「ILM構成 - MDM」マスター構成には、メンテナンス・オブジェクト固有の基準によって複数の保持期間を定義するために使用できる追加の構成があります
  • IMD: 初期測定データのタイプ(インターバルとスカラー)と計量コンポーネントの主単位によって保持期間を指定できます
  • 設備イベント: 設備イベント・タイプ・カテゴリによって保持期間を指定できます
  • 活動: 活動タイプ・カテゴリによって保持期間を指定できます
  • 特定の保持期間によるクロール・トランザクションをサポートする特殊なILMクローラ・バッチがあります
  • 適格性を評価するレコードを識別するときにILM日付と保持期間が考慮される、各トランザクションの組合せ。詳細は、バッチ管理「ILMクローラ - 設備イベント」(D1-DECRL)、「ILMクローラ - IMD」(D1-IMDCL)または「ILMクローラ - 活動」(D1-ACTCR)を参照してください。
  • パーティションのすべてのレコードが適格になるまで処理が遅延されるようにILMクローラ・バッチに寄与する、追加のメンテナンス・オブジェクトのオプション「ILM日付パーティションの月」があります。これは、この項の「複数の保持期間の適格性クロール戦略」で後述します。

非最終のトランザクションの適格性の調整

Oracle Utilities Meter Data ManagementおよびCustomer to Meterのメンテナンス・オブジェクトは、提供時点で、非最終のトランザクションをアーカイブに対して適格化できます。これは、トランザクション・データの保持期間が非常に長い場合の合理的な方法です(たとえば、3年前の非最終のIMDには関連性がある可能性は低く、多くの場合最終処理されません)。

非最終のトランザクションをアーカイブに対して適格化しない場合は、メンテナンス・オブジェクト(MO)レベルまたはビジネス・オブジェクト(BO)レベルでこれを制御できます。

  • MO - ステータスによるILM制限(Y/N): これを「Y」に設定すると、ステータスによってアーカイブを制限する機能にオプトインされます。これは、MOレベルまたはBOレベルの制限を考慮する場合に設定する必要があります。ステータスを強制するには、「BO最終ステータスによるILM制限(Y/N)」オプションと「ILM最終ステータス・フィールド値」オプションのいずれかを構成する必要もあります。
  • MO - BO最終ステータスによるILM制限(Y/N): これを「Y」に設定することは、MOのトランザクションがILM適格となるためには、最終ステータスである必要があることを意味します。ステータスは、BOライフサイクルの構成に基づいて最終であるとみなされます。これは、BOオプション「アーカイブに最終ステータスが必須(Y/N)」によって上書きできます。これは、ビジネス・オブジェクトによって管理されるMOにのみ適用できます。
  • BO - アーカイブに最終ステータスが必須(Y/N): これを「Y」に設定することは、この特定のBOのトランザクションが最終ステータスである必要があることを意味します。この設定によって、MOレベルの「BO最終ステータスによるILM制限(Y/N)」が上書きされます。

次の表は、特定のトランザクションが最終ステータスである必要があるかどうかに対して、これらの3つの設定がどのように影響するかを理解するのに役立ちます。

  • MO: ステータスによるILM制限
  • MO: BO最終ステータスによるILM制限
  • BO: アーカイブに最終ステータスが必須
  • 適格化には最終ステータスが必須
  • N
  • Y
  • Y
  • N
  • N
  • Y
  • N
  • N
  • N
  • N
  • Y
  • N
  • Y
  • N
  • N
  • N
  • Y
  • Y
  • N
  • N
  • Y
  • Y
  • Y
  • Y
  • Y
  • N
  • Y
  • Y
  • Y
  • Y
  • 指定なし
  • Y
  • Y
  • N
  • 指定なし
  • N
注意: BOレベルの設定をサポートしないMOがいくつか存在します。MOでこれらのフィールドがどのように解釈されるかについて詳細に把握するために、MOのILM適用システム・イベントにプラグインされたアルゴリズムの詳細な説明を参照してください。たとえば、汎用のアルゴリズムである「ステータスに基づくILM適用」(F1-ILMELIG)は、BOレベルの上書きオプションをサポートしていません。

アーカイブの適用の階層

次の表は、ILMでサポートされる各メンテナンス・オブジェクトの適用アルゴリズムの詳細の要約を示しています。この表の情報は、次のとおりです。

  • カスケード方法: メンテナンス・オブジェクトのトランザクションのアーカイブが開始される方法を示します。たとえば、設備イベントは、それ自体または関連する活動の一部としてアーカイブできます。
  • ILM日付の計算: メンテナンス・オブジェクトのトランザクションのILM日付の計算に影響するトランザクションのタイプを示します。それ自体は、ILM日付が他のトランザクションの影響を受けないことを示します。
  • 特定の適格性の考慮事項: 適用アルゴリズムで使用される特定の考慮事項を示します。
  • カスケードされるトランザクション: メンテナンス・オブジェクトのトランザクションがアーカイブされるときにアーカイブされる他のトランザクションを示します。たとえば、VEE例外は初期測定でアーカイブされます。

メンテナンス・オブジェクト

カスケード方法

ILM日付の計算

特定の適格性の考慮事項

カスケードされるトランザクション

初期測定

作成日

VEE例外は適格である必要があります

関連付けられた関連計量コンポーネント同期活動が完了している必要があります

VEE例外

VEE例外

初期測定

関連する初期測定とVEE例外の作成日の早いほう

関連するサービス問題モニターが完了している必要があります

使用トランザクション

すべての関連使用トランザクションの最新の作成日

すべての関連使用トランザクションはアーカイブに対して適格である必要があります

関連使用トランザクション

設備イベント

活動

作成日

ペア・イベントの作成日のほうが早い場合はペア・イベントの作成日が優先されます(該当する場合)

関連するペア・イベントは適格である必要があります

関連するサービス問題モニターが完了している必要があります

関連する活動が完了している必要があります

活動

親活動

作成日

設備イベント、子活動または完了イベントの作成日が優先されます(該当する場合)

カスケードされるトランザクションは適格である必要があります

コマンド要求は、非最終のサービス問題モニターに関連付けられていない必要があります

コマンド要求は、開閉履歴のエントリの取付イベントに関連付けられていない必要があります

子活動

設備イベント

アウトバウンド通信

インバウンド通信

完了イベント

アウトバウンド通信

活動

作成日

開始活動の作成日が優先されます(該当する場合)

インバウンド通信

インバウンド通信

アウトバウンド通信

作成日

開始アウトバウンド通信の作成日が優先されます(該当する場合)

設備イベント

トランザクション・データの事前のアーカイブの適用

設備イベント、IMD、使用トランザクションなどの一部のタイプのトランザクション・データは、保持期間が終了するのを待たずに受信するため、アーカイブの適用について分析できます。つまり、これらのレコードは作成時にアーカイブできると判断され、ILMクロール処理中の読取り、分析および更新が必要ありません。これにより、保持期間の終了時にクロールされるレコードの数が大幅に減るため、ILMクロールに必要な時間が短縮されます。この項では、初期の処理の一部として、これらのタイプのレコードのILMアーカイブ・スイッチ(ILM_​ARCH_​SW)が「Y」(Yes)に設定される方法の概要を示します。

  • 設備イベント:

    • 次の基準を満たす設備イベントのILMアーカイブ・スイッチは「Y」に設定されます。

      • 設備イベントに対してサービス問題モニターが作成されていません

      • 設備イベントがペア設備イベントではありません

    • 次のアルゴリズムを使用すると、設備イベントのILMアーカイブ・スイッチは「Y」に設定されます。

      • 設備イベントからのサービス問題モニターの作成(D1-DVCEVTSIM)

      • ペア・イベントの設備イベントからのサービス問題モニターの作成(D1-PRDVEVSIM)

  • IMD:

    • デフォルトでは、初期測定のILMアーカイブ・スイッチは「Y」に設定されます(これは、他のレコード・タイプとは異なるアプローチです)。

    • 次の基準を満たす初期測定のILMアーカイブ・スイッチは「N」に設定されます。

      • 初期測定に、消費量同期活動が作成されました

      • 初期測定に関連するVEE例外からサービス問題モニターが開始されました

    • 次のアルゴリズムを使用して前述の基準を満たす初期測定のILMアーカイブ・スイッチは「N」に設定されます。

      • 消費量同期を伴うスカラー計量コンポーネントでの最新測定日時の更新(D1-UDTSCMCRE)

      • 消費量同期を伴う計量コンポーネントでの最新測定日時の更新(D1-UPD-DTMC)

      • VEE例外からのサービス問題モニターの作成(D2-VEEEXCSIM)

  • 使用トランザクション:

    • 次のアルゴリズムを使用して使用トランザクションが「送信済」状態または「破棄済」状態(あるいはサブ使用トランザクションが「計算済」状態または「破棄済」状態)になると、ILMアーカイブ・スイッチは「Y」に設定されます。

      • 使用の送信(D2–SEND-USG)

      • 情報ライフサイクル管理スイッチをYに設定(D1-SETILMSWY)

複数の保持期間の適格性クロール戦略

メンテナンス・オブジェクトに複数の保持期間が定義された場合、各レコードの保持期間は、レコードの作成時にデータベースに書き込まれます。その後、この保持期間は、レコードの適用評価(クロールとも呼ばれる)の準備が整うタイミングを識別するのに使用されます。

注意: 『Oracle Utilities Meter Data Management Database Administrator's Guide』に記載されているように、メンテナンス・オブジェクトの固有の保持期間は、それぞれ特定のILM日付パーティションのサブパーティションとなります。

システムでは、そのための2つの方法がサポートされています。

  • 個々のレコードの評価:
  • これはデフォルトのアプローチです
  • これは、単一の保持期間のすべてのメンテナンス・オブジェクトのILM保持を評価する標準的なアプローチです
  • 各レコードのILM日付が、そのタイプのレコードの保持期間を差し引いて、現在の日付と比較されます。つまり、保持期間よりも古いすべてのレコードの適格性が評価されます。
  • このオプションでは、毎日一部のパーティションを処理し、パーティション全体を処理したことがある場合にのみ、データベース管理者はパーティションでアーカイブ処理を実行できます
  • この場合、適格性の判別のために、パーティションへの多数のアクセスが発生します
  • 次のイメージは、個々のレコードの評価の方法によって、パーティションの最終日の保持期間が終了するまで、パーティションおよびサブパーティションのレコードの1日が毎日クロールされる方法を示しています。その後、パーティションの最終日が適格とマークされたときに、すべてのレコードがともにアーカイブされます。この場合、少量のレコードが毎日処理されますが、パーティションへのアクセスは頻繁になります。

    個々のレコードの評価の方法

  • パーティション全体の評価
  • このオプションは、メンテナンス・オブジェクトのオプションの「ILM日付パーティションの月」を構成すると、有効になります
  • このオプションでは、ILM日付パーティションの保持期間のサブパーティションのすべてのレコードが同時に評価されます。
  • たとえば、月単位のパーティション化戦略では、1月に、1月31日の保持期間の終了時になるまで、1月のパーティションのレコードは評価されません。
  • つまり、1日から31日まですべて同時に評価されます
  • このオプションでは、通常、適格性の判別のためのパーティションへのアクセスは1回です
  • 次のイメージは、パーティション全体の評価の方法によって、特定のパーティションのすべてのレコードを評価できるときにのみ、そのパーティションおよびサブパーティションのレコードがクロールされる方法を示しています。したがって、パーティションの最終日が評価可能になると、パーティション全体が評価されます。この場合、定期的な処理になり、多くの場合、ILM目的のパーティションに1回アクセスします。