Oracle Database 2日でReal Application Clustersガイド 11g リリース1(11.1) E05737-03 |
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この章では、Oracle Real Application Clusters(Oracle RAC)環境の概要について説明します。この章の内容は次のとおりです。
これは、Oracle RACデータベース管理に関するタスク指向のマニュアルであり、Oracle ClusterwareおよびOracle RACの環境を構成および管理する方法を示します。このマニュアルではまた、Oracle RACデータベースの作成方法、および日常的なOracle RACデータベース管理タスクの実行方法も説明します。
このマニュアルは、基本的なトラブルシューティング、パフォーマンスの監視、バックアップおよびリカバリ作業の実行など、Oracle RAC環境のインストールおよび保守に必要な基本的な手順の理解を目的としています。このマニュアルでは、Red Hat Linuxをベースに説明しますが、このマニュアルの使用にあたっては、Linuxを熟知している必要はありません。
このマニュアルでは、Oracle RACの包括的な説明は行っていません。特定のタスクの実行に必要な概要についてのみ説明しています。
このマニュアルは、Oracle Databaseの管理に関する一連の総合的な学習教材の一部です。これらの教材には、WebおよびOracle University講師による研修コースで利用できる、2日でデータベース管理者のOracle By Example(OBE)シリーズも含まれます。
このマニュアルの一部の章には、関連するOBEのレッスンがあります。OBEレッスンでは、マニュアル内の一部のタスクや関連するタスクを扱い、注釈付きスクリーンショットを提供します。一部の例では、タスクの完了に役立つ追加情報が紹介されています。
項の最後に、その章の関連OBEレッスンへのリンクが表示されている場合があります。Oracle Database 2日でReal Application ClustersのOracle By Exampleシリーズのホームページは次のURLにあります。
http://www.oracle.com/technology/obe/admin/db10gr2.html
このマニュアルでは、Oracle RACおよびOracle Clusterwareのインストール、構成および管理について説明し、Red Hat Linuxオペレーティング・システムを使用してこのような作業を2ノードのクラスタで実行するための例を紹介します。このマニュアルは、単一インスタンスのOracle環境の経験があり、『Oracle Database 2日でデータベース管理者』をすでに読んでいるDBAを対象としています。
他にも、次のOracle RACドキュメントまたは関連ドキュメントが役に立ちます。
Oracle RACは、Oracle Databaseを拡張することで、異なるサーバー上の複数のデータベース・インスタンスを使用してデータを同時に格納、更新および効果的に取得できるようにします。Oracle RACは、複数のサーバーのいわゆるクラスタ動作を可能にするソフトウェアを提供します。データベースを構成するデータファイルは、クラスタに含まれるすべてのサーバーからアクセス可能な共有記憶域に存在する必要があります。クラスタ内の各サーバーでOracle RACソフトウェアが実行されます。
Oracle Databaseではデータファイルとインスタンスが1対1の関係にあるのに対し、Oracle RAC環境ではデータファイルとインスタンスは1対多の関係にあります。Oracle RAC環境では、複数のインスタンスによって単一のデータベース・ファイルにアクセスできます。インスタンスは、異なる複数のサーバー(ホストまたはノードと呼ばれる)上に存在できます。複数のサーバーの処理能力を結合することで、単一サーバーより優れた可用性、スループットおよびスケーラビリティを実現します。
Oracle RACデータベース内の各データベース・インスタンスは、独自のメモリー構造およびバックグラウンド・プロセスを使用します。Oracle RACは、キャッシュ・フュージョンを使用して、各データベース・インスタンスのバッファ・キャッシュに格納されたデータを同期化します。キャッシュ・フュージョンでは、あるデータベース・インスタンスがデータ・ブロックをディスクへ書き込むようにし、さらに別のデータベース・インスタンスにデータ・ブロックをディスクから再読込みするよう要求するのではなく、現在のデータ・ブロック(メモリーに常駐)をデータベース・インスタンス間で移動します。あるインスタンスのバッファ・キャッシュに存在するデータ・ブロックが別のインスタンスで必要になると、キャッシュ・フュージョンはインターコネクトを使用してそのデータ・ブロックをインスタンス間で直接転送します。このため、Oracle RACデータベースでは、データへのアクセスやデータの変更を、データが単一のバッファ・キャッシュに存在するかのように行うことができます。
Oracle RACは、Oracleのエンタープライズ・グリッド・コンピューティング・アーキテクチャを実装する上で重要なコンポーネントでもあります。複数のデータベース・インスタンスを単一のデータファイルにアクセスさせることで、サーバーがシングル・ポイント障害となることを阻止します。Oracleデータベースで正常に動作するパッケージ・アプリケーションまたはカスタム・アプリケーションは、コードの変更を行わなくてもOracle RACで正常に動作します。
クラスタ内のOracle RACデータベースの動作、クラスタの構築方法およびOracle RACデータベースの構造の詳細は、このマニュアルの他の項を参照してください。
Oracle RACでは、各インスタンスにOracle RACデータベースのデータファイルおよびリカバリ・ファイルへのアクセス権がある必要があります。自動ストレージ管理(ASM)を使用すると、この要件を簡単に満たすことができます。
ASMは、統合型で高パフォーマンスのデータベース・ファイル・システムおよびディスク・マネージャです。ASMでは、記憶域の管理を管理者に要求せずにデータベースが行うことを原則としています。ASMにより、場合によっては数千もの数になるOracleデータベース・ファイルを直接管理することが不要になります。
ASMは、ストレージ・システムにある複数のディスクを1つ以上のディスク・グループにグループ化します。ユーザーはわずかな数のディスク・グループ・セットを管理し、ASMはこれらのディスク・グループ内でのデータベース・ファイルの配置を自動化します。
ASMを使用すると、次のメリットがあります。
ASMは、独自のシステム・グローバル領域とバックグラウンド・プロセスを備えた、特殊なOracleインスタンスとして実装されます。ASMインスタンスは、データベース・インスタンスと密接に統合されています。記憶域にASMを使用する、1つ以上のデータベース・インスタンスを実行するすべてのサーバーには、ASMインスタンスがあります。Oracle RAC環境では、各ノードに1つのASMインスタンスがあり、ASMインスタンスが、ピアツーピア・ベースで相互に通信します。各ノードには、そのノードのデータベース・インスタンスの数に関係なく、1つのASMインスタンスのみが必要です。
データベース・ファイル記憶域には、RAWデバイスまたはオペレーティング・システムのファイル・システムではなく、ASMを使用することをお薦めします。ただし、データベースには、ASMファイルと非ASMファイルを混在させることができます。
次に、Oracle RACデータベースをインストール、構成および管理するために使用するツールについて説明します。
Oracle RACをRed Hat Linux以外のオペレーティング・システムにインストールして構成する場合にも、このマニュアルでOracle RACのデプロイ方法に関する一般的な情報を得られます。このマニュアルは、Oracle RACを3つ以上のノードを持つクラスタにデプロイする場合にも使用できます。このマニュアルで説明する環境に一致しない環境の場合は、その環境に応じて用例を読み替えてください。
Oracle RACをRed Hat Linux以外の異なるプラットフォームや異なるバージョンのオペレーティング・システムにインストールする場合は、そのプラットフォームのインストールおよび構成に関するマニュアルを参照する必要があります。たとえば、Oracle RACをSolarisオペレーティング・システムにインストールする場合は、次のマニュアルを使用します。
Oracle ClusterwareおよびOracle RACは同じクラスタ内の異機種プラットフォームをサポートしていません。たとえばRed Hat Linuxを実行しているクラスタ内のノードとSolaris UNIXを実行している同じクラスタ内の他のノードを同時に持つことはできません。すべてのノードが同じオペレーティング・システムを実行する必要があり、つまりバイナリ互換である必要があります。Oracle RACは、同じクラスタ内で異なるチップアーキテクチャを持つマシンをサポートしていません。ただし、同じクラスタ内でスピードとサイズが異なるマシンは持つことができます。
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