この章では、クラスタ用Oracle Grid Infrastructureの標準インストールと拡張インストールの違いについて説明し、さらに標準インストールを完了するために必要な手順について説明します。
この章の内容は次のとおりです。
Oracle Grid Infrastructureのインストールには、2つのインストール・オプションがあります。
標準インストール: 標準インストール・オプションは、手動による構成選択の数が少ない、簡単なインストールです。ほとんどのクラスタ実装に、このインストール・タイプを選択することをお薦めします。
拡張インストール: 拡張インストール・オプションは、より高度なシステム知識を必要とする詳細な手順です。追加の記憶域およびネットワークの選択、ロール・ベースの管理権限のためのオペレーティング・システムのグループ認証の利用、IPMIとの統合、Oracle Automatic Storage Managementロールのより粒度の細かい指定など、詳細に構成を選択できます。
Oracle Clusterware 11gリリース2 (11.2)では、インストール中に、Oracle Universal Installer (OUI)によって修正スクリプト(runfixup.sh
)が生成され、このスクリプトを実行すると、インストール前の必要な手順を完了できます。
修正スクリプトは、インストール中に生成されます。root
として別の端末セッションでスクリプトを実行するように求められます。スクリプトを実行すると、次の構成作業が行われます。
必要に応じて、インストールと実行時に必要とされるカーネル・パラメータに、最低限の値が設定されます。
インストール所有者、必要な場合はOracleインベントリ・ディレクトリ、オペレーティング・システム権限グループの、プライマリおよびセカンダリ・グループ・メンバーシップが再構成されます。
必要に応じて、シェル制限が必要な値に設定されます。
次の手動の構成作業を行います。
関連項目: これらの作業を行う方法について詳細は、第2章「クラスタ用Oracle Grid Infrastructureの拡張インストール前の作業」と第3章「クラスタ用Oracle Grid InfrastructureとOracle RACの記憶域の構成」を参照してください。 |
使用可能なメモリーを確認するには、次のコマンドを入力します。
grep MemTotal /proc/meminfo grep SwapTotal /proc/meminfo
スワップ領域が、次の表に示すインストールに必要な最小サイズ以上であることを確認します。
表1-1 64-bit LinuxおよびLinux on System zで必要なスワップ領域
使用可能なRAM | 必要なスワップ領域 |
---|---|
2.5GBから32GB |
RAMサイズと同等 |
32GBを超える |
32GBのRAM |
スワップ領域とGridホームが同じファイルシステム上にある場合は、それぞれの要件を加算して、合計最小領域要件を求めます。
df -h
このコマンドでは、システムで使用可能な領域を確認します。Oracle Clusterwareファイルに対して標準の冗長性(Oracle Cluster Registry(OCR)用に3つの場所、および投票ディスク用に3つの場所)を使用する場合は、Oracle Grid Infrastructureファイル用に用意されている共有ストレージ・ボリューム上で2GB以上のファイル領域を使用できる必要があります。
注意: OCRまたは投票ディスク・ファイル(Oracle Clusterwareファイル)はRAWパーティション上にインストールできません。Oracle ASM上、またはサポートされている記憶域オプション上にのみインストールできます。RAWデバイスはOracle ASMディスクとしてのみ使用できます。 |
Oracle ASM上にインストールして、Oracle ASMでのOCRまたは投票ディスク・ファイルの高可用性を確保するには、Oracle Clusterwareファイル用として、別々の3つの障害グループ(物理ディスクは3つ以上)に2GB以上が必要です。各ディスクには1GB以上の容量を確保して、容量に余裕を持ってOracle Clusterwareファイルを作成できるようにする必要があります。
クラスタ用Oracle Grid Infrastructureホーム(Gridホーム)には6.5GB以上の領域を確保してください。ここにはOracle ClusterwareおよびOracle Automatic Storage Management(Oracle ASM)のファイルとログ・ファイル、ACFSログ・ファイルおよびクラスタ状態モニター・リポジトリが格納されます。
df -h /tmp
/tmp
に1GB以上の領域があることを確認してください。この領域を確保できない場合は、サイズを大きくするか、または/tmp
内の不要なファイルを削除します。
次のものが利用可能であることを確認します。
標準インストール中に、実行中のノードに関係なくクラスタ内のデータベースに接続するために使用される、デフォルトの単一クライアント・アクセス名(SCAN)を確認するよう求められます。デフォルトでは、SCANとして使用される名前がクラスタ名にもなります。SCANのデフォルト値は、ローカル・ノード名に基づいています。SCANをデフォルトから変更する場合、使用する名前は、社内全体でグローバルに一意である必要があります。
標準インストールでは、SCANはクラスタ名にもなります。SCANおよびクラスタ名は長さ1文字以上15文字以下の英数字である必要があり、ハイフン(-)を含ることはできますが、先頭を数字にすることはできません。
次に例を示します。
NE-Sa89
15文字を超えるSCANが必要な場合は、SCANの最初の15文字がクラスタ名のデフォルトになることに注意してください。
インストールを開始する前に、各ノードにインタフェースが2つ以上構成されている必要があります。1つはプライベートIPアドレス用、もう1つはパブリックIPアドレス用です。
GNSを有効にしない場合、各ノードのパブリックIPアドレスおよび仮想IPアドレスは、静的アドレスであることが必要です。このアドレスは、インストール前に各ノードで構成しておく必要がありますが、現在未使用である必要があります。パブリックIPアドレスと仮想IPアドレスは、同じサブネット内にある必要があります。
インストールのインタビュー時にプライベートとして指定したインタフェース上のプライベート・サブネットに含まれるプライベートIPアドレスが、Oracle Clusterwareによって管理されます。
クラスタには、次のアドレスが構成されている必要があります。
次の特性がある、各ノードのパブリックIPアドレス:
静的IPアドレス
各ノードでインストール前に構成済で、インストール前にそのノードに対して解決可能
他のすべてのパブリックIPアドレス、VIPアドレスおよびSCANアドレスと同じサブネット上にある
次の特性がある、各ノードの仮想IPアドレス:
静的IPアドレス
各ノードでインストール前に構成済だが、現在は使用されていない
他のすべてのパブリックIPアドレス、VIPアドレスおよびSCANアドレスと同じサブネット上にある
次の特性がある、クラスタの単一クライアント・アクセス名(SCAN):
SCANとして指定された名前に3つの静的IPアドレスが関連付けられ、そのすべてのアドレスがランダムな順序でDNSによってリクエスタに返されるように、インストール前にドメイン・ネーム・サーバー(DNS)上で静的IPアドレスが3つ構成されている
現在使用されていないアドレスに解決されるためにDNSでインストール前に構成済
数値以外で始まる名前が指定されている
他のすべてのパブリックIPアドレス、VIPアドレスおよびSCANアドレスと同じサブネット上にある
RFC 952標準に準拠し、英数字とハイフン("-")は使用できるが、アンダースコア("_")は使用できない
次の特性がある、各ノードのプライベートIPアドレス:
静的IPアドレス
インストール前に構成済だが、独自のサブネットを持つ別のプライベート・ネットワーク上では、他のクラスタ・メンバー・ノード以外が解決することはできない
注意: SCAN VIPアドレスの構成は、hostsファイルで行わないことを強くお薦めします。SCAN VIPにはDNS解決を使用します。SCANの解決にhostsファイルを使用すると、1つのIPアドレスへの解決しかできず、SCANアドレスは1つのみになってしまいます。 |
以前のリリースでは、インターコネクトに冗長ネットワークを使用するには、ボンディング、トランキング、チーム化などのテクノロジが必要でした。現在、Oracle Grid InfrastructureおよびOracle RACは冗長ネットワーク・インターコネクトを使用できるようになり、他のネットワーク・テクノロジを使用しなくても、クラスタ内の最適な通信を拡張できるようになりました。この機能は、Oracle Database 11g リリース2(11.2.0.2)以上で使用可能です。
冗長インターコネクトを使用することによって、複数(最大4つ)のプライベート・ネットワーク(インターコネクトとも呼ばれる)におけるロード・バランシングおよび高可用性が実現します。
インストール時に、OUIがクラスタ・ノードで検出するネットワーク・インタフェースごとに計画された使用方法を指定するように求められます。各インタフェースをパブリック、プライベート、または「使用しない」インタフェースとして指定する必要があります。他の目的に使用する予定のインタフェース(ネットワーク・ファイル・システム専用のインタフェースなど)の場合、そのインスタンスがOracle Clusterwareで無視されるように、「使用しない」インタフェースとして指定する必要があります。
冗長インターコネクトを使用しても、パブリックな通信で使用されるインタフェースを保護することはできません。パブリック・インタフェースに高可用性またはロード・バランシングが必要な場合は、サードパーティのソリューションを使用します。通常、これにはボンディング、トランキングなどのテクノロジが使用できます。
プライベート・インタフェースとして使用する複数のインタフェースを選択すると、プライベート・ネットワークで冗長インターコネクトを使用できます。複数のインタフェースをプライベートとして指定する場合は、冗長インターコネクトを使用することで冗長なインターコネクトが作成されます。この機能は、Oracle Grid Infrastructure 11g リリース2(11.2.0.2)以上で使用可能です。
第2.8項「ソフトウェア要件の特定」に示されている表でご使用のオペレーティング・システムに必要なパッケージの一覧を参照するか、第2.1項「Linuxオペレーティング・システムのインストールについて」で説明されているOracle Preinstallation RPMなどのシステム構成スクリプトを使用してください。
デフォルトのグループおよびユーザーを作成するには、次のコマンドを入力します。
オペレーティング・システムで認証されるすべての管理権限(インストールされている場合はOracle RACも含む)のために、システム権限グループを1つ作成します。
# groupadd -g 1000 oinstall # groupadd -g 1031 dba # useradd -u 1101 -g oinstall -G dba oracle # mkdir -p /u01/app/11.2.0/grid # mkdir -p /u01/app/oracle # chown -R oracle:oinstall /u01 # chmod -R 775 /u01/
この一連のコマンドによって、OraInventoryシステム権限(oinstall)、およびOSASM/SYSASMとOSDBA/SYSDBAシステム権限を付与するための必要なシステム権限グループを持った単一のインストール所有者が作成されます。また、Oracle Grid InfrastructureとOracle RAC両方のOracleベース(/u01/app/oracle
)も作成されます。Gridホーム(Oracle Grid Infrastructureバイナリの格納場所)/u01/app/11.2.0/grid
も作成されます。
スタンドアロンまたはOracle Real Application Clustersのデータベースをインストールする場合は、Oracle Clusterwareファイル(投票ディスクとOracle Cluster Registry)用、およびOracle Databaseファイル用として、Oracle ASM上に使用可能な領域が必要です。新しいインストール環境では、Oracle Clusterwareファイルをブロック・デバイスやRAWデバイスに作成することができなくなりました。
Linux ASMLIB RPMをインストールして、ストレージ管理作業を簡略化します。ASMLIBにより、Oracle ASMで使用されるストレージ・デバイスに対して永続的なパスと権限が提供されるため、udev
ファイルやdevlabel
ファイルのストレージ・デバイスのパスや権限を更新する必要がなくなります。
ASMLIB RPMをインストールできない場合、またはストレージ・デバイスを手動で構成する場合は、第3章の関連する項を参照してください。
ASMLIB 2.0は、3つのLinuxパッケージのセットとして配布されます。
oracleasmlib-2.0
: Oracle ASMライブラリ
oracleasm-support-2.0
: ASMLIBの管理に必要なユーティリティ
oracleasm
: Oracle ASMライブラリ用のカーネル・モジュール
各Linuxディストリビューションには、それぞれにASMLIB 2.0パッケージ・セットがあり、ディストリビューションごとに、それぞれのカーネル・バージョンに対応するoracleasm
パッケージがあります。
Oracle Unbreakable Linux Network(ULN)に登録している場合、自動的にシステムへASMLIBパッケージをダウンロードし、インストールすることができます。ULNからASMLIBをインストールするには、次の手順を実行します。
root
としてログインします。
次のコマンドを実行します。
# up2date -i oracleasm-support oracleasmlib oracleasm-'uname -r'
このコマンドにより、ご使用のシステムで実行中のLinuxカーネル・バージョン用のサポート・ツール、ライブラリ、カーネル・ドライバがインストールされます。
ULNのメンバーではない場合、もしくはRed Hat LinuxカーネルまたはSUSE Linuxカーネルを使用している場合は、クラスタのメンバーにする各ノード上で、次の手順を実行します。
root
としてログインし、次のコマンドを実行して、使用しているカーネルを判別します。
uname -rm
次に例を示します。
# uname –rm 2.6.9-5.ELsmp i686
この例では、Intel i686 CPUを使用しているSMP(マルチプロセッサ)サーバー用の2.6.9-5カーネルです。
システムのカーネル・バージョンを判別した後、次のタスクを実行します。
Webブラウザで次のURLを開きます。
http://www.oracle.com/technetwork/server-storage/linux/downloads/index-088143.html
「Linux Drivers for Automatic Storage Management」をクリックして、ご使用のLinuxバージョン用のASMLIBリンクを選択します。
使用しているLinuxバージョンのoracleasmlib
およびoracleasm-support
パッケージをダウンロードします。
使用しているカーネル・バージョンに対応するoracleasm
パッケージをダウンロードします。
root
としてログインし、Oracle ASMパッケージをインストールします。
root
としてログインし、次のコマンドを入力します。
# oracleasm configure -i
指示どおりにシステムの情報を入力します。oracleasm
コマンドは、デフォルトではパス/usr/sbin
にあります。oracleasm configure
コマンドを-i
フラグなしで入力すると、現在の構成が表示されます。
パーティションをOracle ASMディスクの候補としてOUI側で認識させるには、root
としてログインし、Oracle ASMで使用できるディスク・パーティションをマークする必要があります。ディスクをOracle ASMで使用するようマークするには、次のコマンド構文を入力します。ASM_DISK_NAME
はOracle ASMディスク・グループの名前、candidate_disk
はそのディスク・グループに割り当てるディスク・デバイスの名前です。
oracleasm createdisk ASM_DISK_NAME candidate_disk
次に例を示します。
# oracleasm createdisk data1 /dev/sdf
インストール・メディアのルート・レベルからOUIを起動します。次に例を示します。
./runInstaller
「クラスタ用のGrid Infrastructureのインストールおよび構成」を選択し、次に「標準インストール」を選択します。この後のインストール画面で、構成情報を指示どおりに入力します。
修正スクリプトで修正できないインストール検証エラーが発生した場合は、第2章「クラスタ用Oracle Grid Infrastructureの拡張インストールのインストール前作業」でクラスタ・ノードの構成の項を参照してください。修正が完了したら、インストールを最後まで続けます。