この章の内容は次のとおりです。
Microsoft Officeは、知識労働者を中心に広く使用されている製品ですが、エンタープライズ・アプリケーションとの組合せでは、必ずしも効率よく使用されているわけではありません。Microsoft Officeとエンタープライズ・アプリケーションのユーザーについては、多くの場合、処理労働者と知識労働者という2つのカテゴリで考えることができます。処理労働者は、ヘルプ・デスク、カスタマ・サービス、受注、在庫などの1つ以上の固定処理アプリケーションを使用して業務を行います。知識労働者は、情報を検索、整理、保存、および分析して、獲得した知識を適切に使用するといった業務に従事します。どちらの労働者の業務にもMicrosoft Officeとエンタープライズ・アプリケーションが必要ですが、図1-1に示すように、その使用方法は異なります。
図1-1 異なるタイプのユーザーによってアクセスされるMicrosoft Officeドキュメント
処理労働者は、大半の業務をエンタープライズ・アプリケーション環境で行い、Microsoft Officeを補助的に使用します。ただし、処理労働者も、頻繁に、Microsoft Office環境で作成された情報をエンタープライズ・アプリケーションに取り込んだり、Microsoft Office形式での情報を希望または要求する提供先に、情報、フォーム、レポートなどを送信したりする必要があります。
一方、知識労働者は、大半の業務にMicrosoft Officeを使用し、エンタープライズ・アプリケーションを補助的に使用します。または、エンタープライズ・アプリケーションに常時接続できるわけではないモバイル・ユーザーである場合もあります。知識労働者にとっては、エンタープライズ・アプリケーションでデータをコピーしたり作業を繰り返したりする必要がある状況よりも、その大半をMicrosoft Office環境のコンテキストで行えるほうが、作業方法にも慣れており、快適です。
これらの異なるユーザーの様々なニーズを考慮すると、Microsoft Officeとエンタープライズ・アプリケーションの統合性を向上させ、全体にシームレスな操作が可能になったときに多くのメリットが得られます。たとえば、次の点があげられます。
処理労働者は、Microsoft Officeのより高度な機能を学習する必要がなくなり、慣れた環境で業務を続けながら、提供先の希望する形式でドキュメントを提供することができます。
知識労働者は、慣れたMicrosoft Office環境を使用し続けることができ、知識労働者に固有の作業方法に適していない独自仕様の新しい複雑なエンタープライズ・アプリケーションの習得に時間をかける必要がありません。
モバイル・ワーカーは、必要に応じて、Microsoft Officeを使用してオフラインで作業し、その後で接続可能なときにエンタープライズ・アプリケーションを更新することができます。
Oracle Application Serverは、ユーザーが使い慣れたツールで適切な情報を適切な時に提示することにより、生産性を向上させる機会を提供します。
Oracle Application Serverにより、図1-2に示すように、開発者は、トランザクション処理を自動化し、ビジネス・プロセスを合理化して、企業内の情報へのアクセス/情報の提供を実行するエンタープライズ・アプリケーションを構築することができます。
図1-2 Oracle Application ServerのMicrosoft Officeとの相互運用性
Microsoft Office製品スイートとOracle Application Serverコンポーネント・セットの間の相互運用性を実現することには、次の利点があります。
エンタープライズ・アプリケーションの対話に関するユーザー・エクスペリエンスを簡素化および改善することは重要です。具体的には、今日のほとんどのエンタープライズ・アプリケーションがWebベースのユーザー・インタフェースを備えていますが、多くの場合、これらのユーザー対話モデルは知識労働者にとって使いづらく、Microsoft Officeでの日常作業とも干渉しあいます。
Oracle Application Serverを使用すると、開発者は、エンタープライズ情報を操作するMicrosoft Officeソリューションを作成することができます。これにより、使い慣れたMicrosoft Officeインタフェースと、基礎となっているエンタープライズ・アプリケーションの性能が組み合されます。詳細は、このマニュアルの次の章を参照してください。
エンタープライズ・ビジネス・プロセスの合理化および自動化には、次の2つの要件があります。
エンタープライズ・ビジネス・プロセスのコンテキストに含まれるタスクがユーザーによる作業を必要とする場合、ユーザーは、これらの作業をMicrosoft Officeアプリケーション・スイートで行うことを希望します。これらの作業には、電子メールで受信するワークフロー・アラートおよび通知の処理などがあります。
Oracle Application Serverがこれを実現する方法の詳細は、第7章「Microsoft OutlookへのBusiness Activity Monitoringのアラートおよびレポートの配信」を参照してください。
エンタープライズ・ビジネス・プロセスのコンテキストに含まれるタスクがMicrosoft Officeドキュメントの使用を必要とする場合、ユーザーは、Microsoft Office環境自体からエンタープライズ・ビジネス・プロセスを指示する機能を希望します。これらの機能には、Microsoft WordまたはMicrosoft Excelでの出張許可願いや欠勤定型書式の管理などがあります。
Oracle Application Serverは、この機能を提供します。その方法の詳細は、第4章「セルフサービス・ビジネス・プロセスと相互作用するスマート・ドキュメントの作成」を参照してください。
識別情報が常に最新のものであり、すべてのエンタープライズ・ユーザーおよびアプリケーションが同期化されていることは、非常に重要です。ただし、多くのエンタープライズ環境では、これが機能するように多数のシステムを構成する必要があります。さらに、開発者は、Oracle Application Serverコンポーネントを使用して、識別情報の変更に関する通知をMicrosoft Outlookに直接送信するようにシステムを構成することができます。
その方法の詳細は、第10章「ユーザー識別情報のプロビジョニングとMicrosoft Outlook連絡先のアラート」を参照してください。
このマニュアルで説明する拡張性および相互運用性タスクのためにMicrosoft Officeを使用するうえでの前提条件は、次のとおりです。
Microsoft Office。必要なMicrosoft Officeのバージョンは、章ごとに異なる場合があります。
このマニュアルでは、主に、Microsoft Officeバージョン2003を取り上げています。これは、拡張性および相互運用性のためにMicrosoft Office 2003が提供する異なるテクノロジを活用するためです。詳細は、第2章「Microsoft Office 2003の拡張性テクノロジについて」を参照してください。
Microsoft OfficeおよびMicrosoft Exchangeの構成方法に関する情報
Microsoft Officeの一般的なセットアップは簡単です。これは、複雑な分散エンタープライズ・デプロイではなく、単純なデスクトップ・インストールであるためです。
注意:
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前述のように、このガイドでは、主に、Microsoft Office 2003でサポートされている拡張性テクノロジを取り上げています。
Microsoft Officeには、Office Professional Edition、Office Small Business Edition、Office Student and Teacher Edition、Office Standard Editionなどの各種エディションがあります。すべてのエディションに、次のアプリケーションが含まれています。
Microsoft Word
Microsoft Excel
Microsoft PowerPoint
Microsoft Outlook
このマニュアルで説明する拡張性テクノロジを使用するソリューションは、ほとんどの場合、実行時にMicrosoft Office Professional Edition 2003が必要です。たとえば、Microsoft AccessやMicrosoft InfoPathなどのいくつかのアプリケーションは、Microsoft Office Professional Edition 2003でのみ提供されています。
次のMicrosoft Office製品スイートは、Oracle Application Serverコンポーネント・セットと相互運用できます。
Microsoft Word
Microsoft Wordは、スマート・ドキュメントをサポートしています。このドキュメントは、異なる種類のデータソースにアクセスしたり、Webサービスと通信したりすることのできるインタラクティブ・ドキュメントの構築に役立ちます。これにより、ブラウザとアプリケーションを切り替える必要性が最小限に抑えられます。
Microsoft Excel
Oracle Application Serverの様々なレポート・ツールからの出力は、Microsoft Excel形式で保存できます。
Microsoft PowerPoint
Microsoft PowerPointは、スマート・タグの使用をサポートしています。このタグにより、Microsoft PowerPointプレゼンテーションからエンタープライズ・アプリケーションを起動することができます。また、他のOracle MessengerユーザーとのチャットやMicrosoft PowerPointアプリケーションからのインスタントWeb会議の開始をサポートするOracle Real-Time Collaboration Add-in for Microsoft Officeのサポートも提供します。
Microsoft Outlook
Microsoft Outlookで使用可能な拡張性および相互運用性オプションには、Oracle Real-Time Collaboration Add-in for Microsoft Officeのサポート、Oracle Internet DirectoryからのMicrosoft Outlookのユーザー識別情報のプロビジョニングなどがあります。
Microsoft Infopath
Oracle JDeveloperに組み込まれているWebサービスは、Microsoft InfoPathで起動できます。
このマニュアルで説明しているタスクを実行するためにMicrosoftの次のソフトウェア開発キット、ツールキット、およびユーティリティをインストールする必要がある場合があります。
ソフトウェアのダウンロード
MicrosoftのWebサイトから必要なソフトウェアをダウンロードするには、次のタスクを実行します。
次の場所にあるMicrosoftのダウンロード・ページにアクセスします。
検索条件フィールドにソフトウェア開発キット、ツールキット、ユーティリティ、または参照ドキュメントの名前を入力して、「GO」をクリックします。
ソフトウェアの適切なバージョンを選択します。
ページの指示に従い、「Download」をクリックします。
Microsoft Office 2003 .NET Frameworkソフトウェア開発キット
.NET Frameworkプログラミング・モデルは、開発やデプロイを簡素化し、異なるプログラミング言語との統合を可能にします。
このキットをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件として.NET Framework Software Development Kitと入力してください。
注意: Microsoft Officeをインストールする前に.NET Frameworkをインストールする必要があります。すでにMicrosoft Officeをインストール済の場合は、必ず、http://msdn.microsoft.com/library/default.asp?url=/library/en-us/dno2k3ta/html/OfficePrimaryInteropAssembliesFAQ.asp にある『Installing and Using the Office 2003 Primary Interop Assemblies』という記事の「Getting the Office 2003 PIAs When Installing .NET Framework 1.1 After Installing Office 2003」という項を参照してください。 |
Microsoft Office 2003 VBAランゲージ・リファレンス
Visual Basic Editorを使用するMicrosoft Officeアプリケーションに基づいて、適切なVBAランゲージ・リファレンスをダウンロードする必要があります。これには、プログラミング参照、技術文書などが含まれています。また、他のアプリケーションとの相互運用性を実現するためにMicrosoft Officeアプリケーションをカスタマイズおよび拡張する際に役立つツールやサンプル・コードが含まれている場合もあります。
これをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてVBA Language Referenceと入力してください。使用しているMicrosoft Officeアプリケーションに基づいて適切なリンクをクリックし、「Download」をクリックします。
Microsoft Office 2003 XMLリファレンス・スキーマ
XMLリファレンス・スキーマは、Microsoft Wordドキュメント、Microsoft Excelスプレッドシート、およびMicrosoft InfoPathフォーム・テンプレートの構造を表します。Microsoft Office 2003 Edition XMLスキーマ・リファレンスおよび関連ドキュメントは、このダウンロードに含まれています。
これをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてXML Schemasと入力してください。「Office 2003: XML Schemas」をクリックして、「Download」をクリックします。
Web Services Enhancementsを使用すると、開発者は、最新のWebサービス・プロトコル仕様を活用して、セキュアなWebサービスを開発することができます。Web Services Enhancements 3.0 for Microsoft .NETは、Microsoft Visual Studio 2005およびMicrosoft .NET Framework 2.0へのアドオンです。
これをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてWeb Services Enhancementsと入力してください。「Web Services Enhancements (WSE) 3.0 for Microsoft .NET」をクリックして、「Download」をクリックします。
Microsoft Office 2003 Webサービス・ツールキット
Microsoft Office 2003 Webサービス・ツールキットは、Microsoft Office 2003アプリケーションにXML Webサービス機能を提供するために使用されます。
このキットをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてMicrosoft Office 2003 Web Services Toolkitと入力してください。「Microsoft Office 2003 Web Services Toolkit 2.01」をクリックして、「Download」をクリックします。
makecert.exe
(証明書作成ツール)はテスト用にX.509証明書を生成するために使用され、cert2spc.exe
(ソフトウェア・パブリッシャ証明書テスト・ツール)はデジタル・コード署名に使用され、pvkimprt.exe
ユーティリティはデジタル証明書ファイルをインポートするために使用されます。
makecert.exe
とcert2spc.exe
は、Microsoft .NET Frameworkソフトウェア開発キット(SDK)のインストール時に入手できます。
これをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてPVK Digital Certificate Files Importerと入力してください。「Office 2000 Tool: PVK Digital Certificate Files Importer」をクリックして、「Download」をクリックします。
Office 2003 Update: Redistributable Primary Interop Assemblies
これをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてRedistributable Primary Interop Assembliesと入力してください。「Office 2003 Update: Redistributable Primary Interop Assemblies」をクリックして、「Download」をクリックします。
Microsoft Officeスマート・タグ・リスト(MOSTL)を使用するとスマート・タグをXMLファイルとして作成することができます。
これをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてXML Schema for Smart Tag Listsと入力してください。「Office XP: XML Schema for Smart Tag Lists」をクリックして、「Download」をクリックします。
Microsoft Office WordprocessingML Transform Inference Tool
このツール(XSLT Inferenceツールとも呼ばれる)を使用すると、XSL Transformations(XSLT)を作成することにより、XMLファイルをWordprocessingMLに変換することができます。
このツールをダウンロードするには、「ソフトウェアのダウンロード」に示されている手順を実行します。その際、Microsoftのダウンロード・ページで検索条件としてWordprocessingML Transform Inference Toolと入力してください。「Office 2003 Tool: WordprocessingML Transform Inference Tool」をクリックして、「Download」をクリックします。
このマニュアルで概要が示されているタスクを実行する際、次の言語を使用してMicrosoft Officeアプリケーションでコードを開発することができます。
Microsoft Visual Basic for Applications
Microsoft Visual Basic for Applicationsは、高度なクライアント・アプリケーションを開発して、それらを既存のデータおよびシステムに統合するために使用できる統合開発環境を提供します。Microsoft Visual Basic for Applicationsは、要素やプログラミング・ツールがMicrosoft Visual Basic開発システムに基づいているため、Microsoft Visual Basicと似ています。
Microsoft Visual Basic for Applications開発環境は、Microsoft Officeアプリケーションに組み込まれており、簡単に起動することができます。たとえば、Microsoft Wordで[Alt]を押しながら[F11]を押すとMicrosoft Visual Basic for Applicationsが起動します。ただし、Microsoft Visual Basic for Applicationsには一定の制限があります。たとえば、6.3.3項「スマート・ドキュメントDLLの作成」で作成されるようなDLLを作成することはできません。これには、次の項で説明するMicrosoft Visual Studioを使用する必要があります。
Microsoft Visual Studioを使用すると、より高度で、より優れた対話性を持つアプリケーションを効率的に構築することができます。Microsoft Visual Studioは、すべての開発タスクに対応する単一の統合開発環境を提供します。これには、Microsoft Visual BasicやMicrosoft Visual C# .NETなどのプログラミング言語が含まれます。
これらのプログラミング言語により、スマート・ドキュメントやその他のMicrosoft Office相互運用性タスクをより容易に作成することができます。たとえば、スマート・ドキュメント用のDLLの作成やセキュリティ保護は、Microsoft Visual C# .NETで行うと非常に容易になります。
関連項目:
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