この章では、Oracle Enterprise Service Busの機能、概念およびコンポーネントについて説明します。
項目は次のとおりです。
エンタープライズ・サービス・バスにより、企業内および企業外の複数のエンドポイント間でデータを転送できます。 ビジネス・ドキュメント(Extensible Markup Language(XML)メッセージとして)の異種アプリケーション間での結合、変換およびルーティングには、オープン標準が使用されます。 これにより、既存のアプリケーションへの影響を最小限に抑えてビジネス・データを監視および管理できます。 エンタープライズ・サービス・バスは、サービス指向アーキテクチャ(SOA)およびイベント駆動アーキテクチャ(EDA)を配信するための基礎となるインフラストラクチャです。
Oracle Enterprise Service Busは、SOAおよびEDAを使用したサービスの基礎になります。 その核心にあるのは疎結合のアプリケーション・フレームワークで、業界標準を使用する分散化された異機種間のメッセージ指向環境におけるビジネスに、高度な柔軟性、再利用性および全体的な応答性を提供します。
Oracle Enterprise Service Busは、Oracle SOA Suiteのコンポーネントの1つです。 Oracle SOA Suiteは、エンタープライズ・アプリケーションを開発するための統合されたデザインタイム環境と共通アーキテクチャを備えた標準ベースのスイートです。 Oracle SOA Suiteを使用すると、サービスを作成して管理し、複合アプリケーションやビジネス・プロセスに組み込むことができます。
Oracle Enterprise Service Busには、次のコンポーネントが含まれています。
ESBサーバー
ESBサーバーは、ESBメタデータ・サーバーの更新について制御トピックをリスニングし、そのキャッシュを更新するランタイム・サーバーです。
Oracle ESB Control
Oracle ESB Controlは、ESBメタデータ・サーバーに登録したサービスを管理および監視するためのWebベースのインタフェースを提供します。
ESBメタデータ・サーバー
スキーマ、トランスフォーメーション、ルーティング・ルールなどのESBメタデータを保持するデータベースです。 ESBメタデータ・サーバーは、Oracle JDeveloperを使用して設計し、Oracle ESB Controlを使用して構成したESBサービスの登録先のサーバーです。
Oracle JDeveloper
Oracle JDeveloperは、Oracle Enterprise Service Busシステムを構成するサービスをグラフィカルでわかりやすくモデル化、編集および設計するための方法です。
Oracle Enterprise Service Busが提供するアプリケーション統合機能は、次の3つの広範なカテゴリに分類されます。
接続性は、次に説明するように、アダプタ・サービスおよびSimple Object Access Protocol(SOAP)呼出しサービスを介して提供されます。
SOAP呼出しサービスによって、Oracle BPEL Process Manager、Apache Axis、Microsoft .NETなど、外部のSOAPクライアントと接続できます。 これらのクライアントからOracle Enterprise Service Busサービスを呼び出したり、Oracle Enterprise Service Busからこれらの製品を呼び出すことができます。
たとえば、Oracle BPEL Process ManagerからOracle Enterprise Service Busを呼び出して、Oracle Enterprise Service Busが提供する文書ルーティング機能を利用したり、Oracle Enterprise Service BusからMicrosoft .NETを呼び出して、レガシーなMicrosoft .NETインフラストラクチャを統合できます。
Oracle Enterprise Service Busでは、WSDL文書のWSIFバインディングを利用して、外部のJavaインタフェースに対してネイティブのJavaコールを実行します。 WSIFは、JCAフレームワークによって内部でも使用されます。
Oracle Application Serverアダプタによって、企業内のほとんどすべてのデータ・ソースに双方向かつリアルタイムにアクセスできます。
アダプタは、サポートするソース・アプリケーション内のイベントをリスニングまたはポーリングします。 イベントをリスニングする場合、アダプタは、そのアダプタにイベントをプッシュするように構成されたアプリケーションのリスナーとして登録されます。 また、アダプタは、Oracle Enterprise Service Busで必要なイベントについて、データベースやファイルなどのバックエンド・アプリケーションをポーリングできます。
(ウィザードを使用して)アダプタをOracle Enterprise Service Busに登録することによって、外部データ・ソースをOracle Enterprise Service Busに統合し、最終的に相互に統合します。
Oracle Enterprise Service Busサーバーを使用すると、インバウンドおよびアウトバウンドのアダプタ・サービスを定義できます。 インバウンド・アダプタ・サービスは、データを外部データ・ソースから受信し、XMLメッセージに変換します。 アウトバウンド・アダプタ・サービスは、XMLメッセージをターゲット・アプリケーションのネイティブ書式に変換することによって、データをターゲット・アプリケーションに送信します。 Oracle Enterprise Service Busサーバーが現在サポートしているのは、表1-1で説明するOracleアダプタです。
表1-1 Oracleアダプタ・サービス
アダプタ・サービス | 説明 |
---|---|
インバウンド・ファイル/FTPアダプタ・サービスは、ローカルまたはリモート・ファイル・システムに新規のテキスト・ファイルが出現したときに、ローカルまたはリモート・ファイル・システムからデータを読み取り、そのファイル・データをXMLメッセージに変換してOracle Enterprise Service Busに送信します。 アウトバウンド・ファイル/FTPアダプタ・サービスは、XMLメッセージのコンテンツをテキスト・ファイルに変換して、ローカルまたはリモートのファイル・システムに書き込みます。 |
|
インバウンド・データベース・アダプタ・サービスは、データベースに対してSQLの挿入、更新または削除操作が実行されると、XMLメッセージをOracle Enterprise Service Busに送信します。 アウトバウンド・データベース・アダプタは、XMLメッセージのコンテンツを、ターゲット・データベース上でのSQLの挿入、更新または削除操作に変換します。 |
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インバウンドJMSアダプタ・サービスは、Java Message Service(OracleおよびOracle以外)の宛先をリスニングし、受信メッセージをOracle Enterprise Service Busに転送します。 アウトバウンドJMSアダプタ・サービスは、メッセージをOracle Enterprise Service Busから外部のJava Message Serviceに書き込みます。 |
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インバウンド・ネイティブMQSeriesアダプタ・サービスは、キューで新規のXMLメッセージを受信すると、XMLメッセージをOracle Enterprise Service Busに送信します。 アウトバウンド・ネイティブMQSeriesアダプタ・サービスは、メッセージをOracle Enterprise Service Busからメッセージ・キューに書き込みます。 |
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インバウンドAQアダプタ・サービスは、Oracle Advanced Queuingのシングルまたはマルチ・コンシューマ・キューで新規のメッセージを受信すると、XMLメッセージをOracle Enterprise Service Busに送信します。 アウトバウンドAQアダプタ・サービスは、メッセージをOracle Enterprise Service BusからOracle Advanced Queuingのシングルまたはマルチ・コンシューマ・キューに送信します。 |
|
インバウンドOAアダプタは、Oracle E-Business Suiteインタフェースからメッセージを受信すると、XMLメッセージをOracle Enterprise Service Busに送信します。 アウトバウンドOAアダプタは、インタフェース表、APIおよびコンカレント・プログラムを使用して、データをOracle Enterprise Service BusからOracle Applicationsに挿入します。 |
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カスタム・アダプタ・サービス |
サード・パーティのアダプタを構成するためのカスタム・アダプタ・サービスです。 |
アウトバウンド・アダプタ・サービスやルーティング・サービス(「コンテンツ・ベースとヘッダー・ベースのルーティング」を参照)など、Oracle Enterprise Service Busサービスで作成した、インバウンド・アダプタ・サービスを除くすべてのサービスは、SOAPサービスとして自動的に公開され、構成詳細を指定する必要はありません。 Oracle ESB Control(「Oracle Enterprise Service Bus Controlの概要」を参照)の「定義」タブには、これらのサービスの具体的なWSDL URLがリストされます。 この具体的なWSDL URLを使用して、Oracle JDeveloperまたはMicrosoft .NetからHypertext Transfer Protocol(HTTP)を介してSOAPを使用するサービスを呼び出すことができます。 「定義」タブでは、Oracle Enterprise Service Busの外部にあるアプリケーションでサービスを呼び出すことができるかどうかも指定します。
Oracle Enterprise Service Busには、Oracle JDeveloper内から起動する標準ベースのデータ・マッパーが含まれています。 このデータ・マッパーは、XSL
ファイルを指定してデータをXMLスキーマ間で変換します。これにより、異なるスキーマを使用するアプリケーション間でのデータ交換が可能になります。 目的の結果を得るには、複数のトランスフォーメーションが必要になる場合があります。 これらのトランスフォーメーションは、必要に応じて、企業内で再利用できます。
図1-1に、スキーマ間でのデータのマップに使用するデータ・マッパーの例を示します。
XMLメッセージ内に格納されているデータは、ルーティング・サービスを使用して、ソース・アプリケーションからターゲット・アプリケーションに配布されます。 ルーティング・サービスは、その名前が示すように、XMLメッセージに適用されるルーティング・ルールの定義に従って、Oracle Enterprise Service Bus環境内の異なるポイント間でメッセージを送受信する方法を決定します。 メッセージをルーティングするルールはメッセージ・コンテンツに基づいて定義できるため、このルーティングはコンテンツ・ベースのルーティング・サービスと呼ばれます。 ヘッダーのトランスフォーメーションとフィルタリングに基づいたルーティングは、ヘッダー・ベースのルーティングと呼ばれます。
ルーティング・ルールでは、ルーティング・サービスがメッセージを受信するとOracle Enterprise Service Busが呼び出すサービスのセット( ターゲット・サービスと呼ばれます)を指定します。 ルーティング・ルールを構成するときは、次の詳細を指定します。
フィルタ式を適用するかどうか
フィルタ式は、サービスの呼出し前にメッセージのコンテンツ(ペイロード)が分析されるように指定します。 たとえば、「Oracle Enterprise Service Busのサンプル・シナリオ」で説明するシナリオを使用した場合、メッセージに顧客の連絡先情報が含まれている場合のみデータベース・アダプタ・サービスを呼び出すように指定するフィルタ式を適用できます。
トランスフォーメーションについては、「文書トランスフォーメーション」を参照してください。
同期して実行するように指定した場合、Oracle Enterprise Service Busでは、ターゲット・サービスがただちに呼び出され、制御は、処理するターゲット・サービスがメッセージを受信するまで、ルーティング・サービスに戻りません。
非同期で実行するように指定した場合、Oracle Enterprise Service Busでは、JMSを使用してメッセージをターゲット・サービスに配信します。このターゲット・サービスは後で呼び出されます。 制御は、ターゲット・サービスがメッセージを受信する前に、ただちにルーティング・サービスに戻されます。
ルーティング・ルールの順序で決める優先度レベルによって、アウトバウンド・サービスの呼出処理の実行順序が決定されます。
ルーティング・ルールについては、「ルーティング・ルールの指定」を参照してください。 ヘッダーのトランスフォーメーションとフィルタリングについては、「ヘッダー・トランスフォーメーションとフィルタリング」を参照してください。
Oracle Enterprise Service Busを作成、構成および管理するための主要なツールは次の2つです。
Oracle JDeveloper
Oracle JDeveloperは、主に、Enterprise Service Bus全体の作成と構成を指定するために使用します。 次の各操作を実行できます。
インバウンドおよびアウトバウンド・アダプタ・サービスの作成
Oracle JDeveloperには、インバウンドおよびアウトバウンド・アダプタ・サービスの作成を支援するアダプタ構成ウィザードが用意されています。
インバウンド・アダプタ・サービスからのルーティング・サービスの作成
Oracle JDeveloperでは、アダプタ構成ウィザードでインバウンド・アダプタ・サービスを作成し、新規に作成したそのインバウンド・アダプタ・サービスからルーティング・サービスを作成します。
アウトバウンド・サービスにルーティングするルーティング・サービスの選択
Oracle JDeveloperでは、アダプタ構成ウィザードでアウトバウンド・アダプタ・サービスを作成し、新規に作成したアウトバウンド・サービスにルーティングするルーティング・サービスを指定します。
文書トランスフォーメーション・ファイル(XSL
ファイル)の指定または作成
インバウンド・アダプタ・サービスからルーティング・サービスを作成するとき、またはアウトバウンド・アダプタ・サービスへの既存のルーティング・サービスを指定するときは、トランスフォーメーションが必要かどうかを指定できます。
トランスフォーメーションが必要な場合は、既存のトランスフォーメーション・ファイルを使用するか、新規のトランスフォーメーション・ファイルを作成するかを指定できます。 新規のトランスフォーメーション・ファイルを作成するように指定すると、Oracle JDeveloperでは、データ・マッパー・ツールが開き、作成作業を実行できます。
Oracle ESB Control
Oracle ESB Controlは、主に実行時に使用します。 次の各操作を実行できます。
Oracle Enterprise Service Bus構成のグラフィカルな表示
図1-3に示すように、Oracle ESB Controlには、インバウンドおよびアウトバウンド・アダプタ・サービス、ルーティング・サービス、およびそれらの間の接続がグラフィカルに表示されます。
ルーティング・ルールの調整
Oracle ESB Controlには、ルーティング・サービスのルーティング・ルールを指定または調整できるプロパティ・ページが表示されます。 たとえば、書込み権限があるユーザーは、フィルタ式を指定したり、ルーティング操作に関連する文書トランスフォーメーション・ファイルを追加または変更することができます。
ランタイム統計の表示
Oracle ESB Controlを使用すると、様々なサービスで処理されたメッセージに関するランタイム統計を表示できます。
Enterprise Service Bus内でのメッセージ・インスタンスのトラッキング
構成ダイアグラムと同様に、Oracle ESB Controlには、Oracle Enterprise Service Busの複数サービス間におけるメッセージ・フローがグラフィカルに表示されます。
Oracle ESB Controlを使用して、複数のシステムおよびサービス・グループを作成することもできます。 システムおよびサービス・グループの詳細は、「Oracle Enterprise Service Bus Controlの概要」を参照してください。
これらのツールの詳細は、次の各項を参照してください。
Oracle JDeveloperは、Java、XMLおよびSQLの標準を使用して、アプリケーションおよびWebサービスを作成するための統合開発環境(IDE)です。 Oracle JDeveloperは、アプリケーションを設計、コーディング、デバッグ、テスト、プロファイリング、調整および登録するための統合機能によって、開発ライフ・サイクル全体をサポートします。 視覚的かつ宣言的な開発アプローチとOracle Application Development Framework(ADF)をあわせて利用することによって、アプリケーション開発が簡素化され、コーディング作業が軽減されます。
Oracle Enterprise Service Busには、Oracle JDeveloperの次の機能に対するサポートが含まれています。
図1-2に、ESBプロジェクトでのOracle JDeveloperを示します。
「アプリケーション・ナビゲータ」には、作成済のプロジェクト・ファイルが表示されます。 たとえば、図1-2に示す「アプリケーション・ナビゲータ」には「ESBSamples」という名前のアプリケーションが表示され、これには「CustomerData」という名前のプロジェクト・ノードが含まれています。 このCustomerDataノードを開くと、アプリケーションのアダプタ・サービスを定義するWSDLファイル、およびOracle Enterprise Service Bus内でルーティングされるデータの構造を定義するXSDファイルを表示できます。
詳細は、第2章「Enterprise Service Busの開発」を参照してください。
Oracle Enterprise Service Bus構成の監視とランタイム調整には、Oracle ESB Controlを使用します。 Oracle ESB Controlには、「サービス」、「インスタンス」および「マップ」の各ビューがあり、各ビューはページの上部にあるアイコンをクリックして選択します。
「サービス」ビューを使用すると、サービス定義の表示、ルーティング・ルールの更新、トラッキング可能フィールドの定義およびサービスの図式ダイグラムの表示ができます。 詳細は、「Oracle ESB Controlの「サービス」ビュー」を参照してください。
「インスタンス」ビューを使用すると、ESBシステム内のメッセージ処理に関する詳細を表示できます。 詳細は、「Oracle ESB Controlの「インスタンス」ビュー」を参照してください。
「マップ」ビューを使用すると、ドメイン値マップを作成、更新および削除でき、さらに、既存のドメイン値マップを表示、エクスポートおよびインポートできます。 詳細は、「Oracle ESB Controlの「マップ」ビュー」を参照してください。
図1-3は、Oracle ESB Controlの「サービス」ビューの例です。
詳細は、第3章「Enterprise Service Busの監視」を参照してください。
ESBサービスは、Oracle JDeveloperおよびOracle ESB Controlのユーザー・インタフェースを使用して設計および構成します。 サービスが含まれたESBプロジェクトは、ESBサーバーに登録されます。 ESBサーバーは、HTTP/SOAP、JMS、JCA、WSIFおよびJavaを含む複数のプロトコル・バインディングをサポートしており、同期/非同期、リクエスト/リプライまたはパブリッシュ/サブスクライブ・モデルを使用する、保証された信頼度の高いメッセージ配信を提供します。 ただし、ESBサーバーではRemote Method Invocation(RMI)をサポートしていません。
ESBプロジェクトがESBサーバーに登録されると、Oracle JDeveloperまたはOracle ESB Controlで作成したESBファイルがデザインタイム・メタデータ・サーバーにデプロイされます。 制御、監視、再送信および遅延の各JMSトピックは、デザインタイム・メタデータ・サーバーで実行されます。 このメタデータ・サーバーでは、Console、WSIL、デザインタイム、WebDavおよびSOAPプロバイダの各サーブレットも実行されます。
作成または更新されたサービス定義ファイルは変換され、データベース・リポジトリのORAESB
スキーマにリレーショナル形式で取得され、XSD、XSL、WSDLおよびマップ・ファイルは、ファイル・システムに書き込まれます。 サービス定義ファイルには、XSD、XSL、WSDLおよびマップ・ファイルへのポインタがあります。
ESBランタイム・サーバーやクラスタ内の複数のサーバーは、デザイン・メタデータ・サーバー上の制御トピック・ファイルにアクセスして、ESBランタイム・サービスに関する情報をキャッシュします。 ESBランタイム・サーバーは、制御トピックをリスニングして、メタデータ変更の通知を受け取ります。 これらの通知によって、変更されたエンティティについてキャッシュしたメタデータが再ロードされます。 ESBランタイム・サーバーには、サーバーの実行、メモリーのキャッシュ、JMSエラー・トピック、XML/XSLエンジンおよびJCAアダプタ・エージェントが含まれています。
実行時のESBメッセージ・フローは、インバウンド・アダプタによるイベントのポーリングまたはリスニングによって開始されます。このイベントには、インバウンド・ファイル・アダプタ用に指定したディレクトリへのファイルのコピーなどがあります。 このESBフローは、外部のSOAP/HTTPプロセスによってESBルーティング・サービスに関連付けられたWebサービスが呼び出されたときにも開始されます。
図1-4に、シングル・インスタンスで実行されているESBアーキテクチャの図を示します。 クラスタ環境でのESBアーキテクチャの図については、図8-1を参照してください。
多くのビジネス環境では、顧客データは、ビジネス・パートナ、レガシー・アプリケーション、エンタープライズ・アプリケーション、データベースおよびカスタム・アプリケーションなど、複数の異なるソースに存在します。 これらのデータを統合するという難題には、同じデータに共通の関心があるすべてのアプリケーションまたはその内容を更新するすべてのアプリケーションに、Oracle Enterprise Service Busを使用して適切なリアルタイムのデータ・アクセスを提供することで対処できます。
たとえば、Oracle Enterprise Service Busでは、テキスト・ファイルに格納されたデータを受け入れ、顧客リポジトリとして使用するデータベースの更新に適した書式に変換し、変換したデータをそのデータベースにルーティングおよび配信できます。
Oracle Enterprise Service Busでは、次の基本ステップに従って必要なすべてのタスクを実行します。図1-5を参照してください。 これらのステップは、概要的な例を示すことを目的としているため、簡略化されています。
図1-5に、Oracle Enterprise Service Busのシナリオを示します。
CustIn
というインバウンド・ファイル・アダプタ・サービスを介して、ファイル・システムから顧客データをテキスト・ファイルで受信します。 CustIn
アダプタ・サービスは、CustIn_RS
というルーティング・サービスにメッセージを送信します。
CustIn_RS
ルーティング・サービスは、データ書式をファイル・アダプタのスキーマから標準のXMLスキーマに変換し、CustOut_RS
というルーティング・サービスにメッセージを送信します。
CustOut_RS
ルーティング・サービスは、次の処理を実行します。
標準書式のメッセージをCRMOut
ファイル・アダプタ・サービスにルーティングします。
XMLメッセージ・ペイロードにフィルタ式を適用して、メッセージを顧客情報データベースのアウトバウンド・アダプタ・サービスCustDBOut
にルーティングするかどうかを判断します。
(フィルタ式の決定に従って)適切なアダプタ・サービスを呼び出します。 ルーティング・ルールによって、送信先がCustDBOut
サービスのメッセージは同期で送信し、送信先がCRMOut
サービスのメッセージは非同期で送信することが指定されます。
受信アダプタ・サービスがCustDBOut
の場合は、CustDBOut
サービスがただちに呼び出され、CustDBOut
がメッセージを受信するまで、制御はCustOut_RS
サービスに戻りません。
受信アダプタ・サービスがCRMOut
の場合、メッセージはJMSに送信され、制御はただちにCustOut_RS
サービスに戻されます。
アウトバウンド・アダプタ・サービスは、関連する外部アプリケーションにメッセージを配信します。
関連項目: このシナリオの実装手順は、『Oracle Enterprise Service Busクイック・スタート・ガイド』を参照してください。 |
Oracle Enterprise Service Busの主要なコンポーネントは、ESBサーバー、Oracle JDeveloperおよびOracle ESB Controlです。
ここでは、次の項目について説明します。
Oracle Enterprise Service Busのシステム要件とインストールについては、『Oracle Enterprise Service Busインストレーション・ガイド』を参照してください。
Oracle SOA Suiteを備えたOracle Application Server 10g リリース3(10.1.3.1.0)のシステム要件とインストールについては、使用しているシステム用の『Oracle Application Serverインストレーション・ガイド』を参照してください。
Oracle Application Server 10g リリース3(10.1.3.1.0)のOracle SOA Suiteコンポーネントを起動する方法については、『Oracle Application Server管理者ガイド』を参照してください。
この項では、Oracle Enterprise Service Busのスタンドアロン開発者インストール・タイプについて、ESBサーバーを起動および停止する方法を説明します。 Oracle Enterprise Service Busのインストール・タイプについては、『Oracle Enterprise Service Busインストレーション・ガイド』を参照してください。
ESBサーバーの起動と停止のプロセスは、そのESBサーバーが設置されているオペレーティング・システムによって異なります。
WindowsでESBサーバーを起動するには、次のいずれかの方法を使用します。
デスクトップの「スタート」ボタンから、「プログラム」→「Oracle – Oracle_Home
」→「Oracle ESB」→「Start ESB Server」の順に選択します。ここで、Oracle_Home
は、Oracle Enterprise Service BusをインストールしたOracleホームの名前です。
コマンド・ウィンドウからOracle_Home
/opnm/bin/opmnctl startall
を実行します。ここで、Oracle_Home
は、Oracle Enterprise Service BusをインストールしたOracleホームの名前です。
WindowsでESBサーバーを停止するには、次のいずれかの方法を使用します。
デスクトップの「スタート」ボタンから、「プログラム」→「Oracle – Oracle_Home
」→「Oracle ESB」→「Stop ESB Server」の順に選択します。ここで、Oracle_Home
は、Oracle Enterprise Service BusをインストールしたOracleホームの名前です。
コマンド・ウィンドウからOracle_Home
/opnm/bin/opmnctl stopall
を実行します。ここで、Oracle_Home
は、Oracle Enterprise Service BusをインストールしたOracleホームの名前です。
LinuxでESBサーバーを起動する手順は、次のとおりです。
コマンド・プロンプトを起動し、Oracle_Home
/opmn/bin
フォルダに移動します。
オペレーティング・システム・プロンプトから次のコマンドを実行します。
opmnctl
startall
LinuxでESBサーバーを停止する手順は、次のとおりです。
コマンド・プロンプトを起動し、Oracle_Home
/opmn/bin
フォルダに移動します。
オペレーティング・システム・プロンプトから次のコマンドを実行します。
opmnctl
stopall
LinuxでESBサーバーのステータスを確認する手順は、次のとおりです。
コマンド・プロンプトを起動し、Oracle_Home
/opmn/bin
フォルダに移動します。
オペレーティング・システム・プロンプトから次のコマンドを実行します。
opmnctl
status
Oracle JDeveloperを起動するには、JDeveloperのホーム・ディレクトリにあるjdeveloper
実行可能ファイルを実行します。
JDeveloperでは、十分にテストされていない機能にはプレビュー機能のマークが付けられています。 これらの機能は、今後のリリースでサポートされる予定です。 JDeveloperをプレビュー・モードで起動するには、オペレーティング・システム・プロンプトで次のコマンドを実行します。
JDeveloper_Home
/jdev/bin/jdev.exe -J"-Dpreview_mode=true"
図1-6に示すように、Oracle JDeveloperが開きます。
Oracle JDeveloperを閉じるには,「ファイル」メニューの「終了」をクリックします。
Oracle ESB ControlはWebブラウザから起動します。 Oracle ESB Controlには、次のURLを使用してアクセスできます。
http://
host_name
:
port_number
/esb
このURL例にあるhost_name
は、ESBサーバーが実行されているホスト名で、port_number
は、Oracle HTTPサーバーのリスニング・ポート番号です。この番号は、opmnctl
status
-l
コマンドの出力にリストされます。 ポート番号の表示方法の詳細は、「ポート番号の表示」を参照してください。
Windowsでは、「スタート」メニューからOracle ESB Controlを起動できます。 デスクトップの「スタート」ボタンから、「すべてのプログラム」→「Oracle – Oracle_Home
」→「Oracle ESB」→「ESB Control」の順に選択します。ここで、Oracle_Homeは、Oracle Enterprise Service BusをインストールしたOracleホームの名前です。
Oracle ESB Controlを開始するには、その前に、ESBサーバーを「ESBサーバーの起動と停止」の説明に従って起動する必要があります。
図1-7に示すように、Oracle ESB Controlが開きます。
図1-7では、BPELシステムがデフォルトの位置です。ここには、同じSOA SuiteコンテナにあるBPELサービスが表示されます。 default
サービス・グループは、該当するBPELプロセスのBPELドメイン名と一致します。