Sun Cluster 3.0 5/02 補足情報

付録 A Sun Cluster 3.0 による構内クラスタ化の概念

この付録では、構内クラスタ化の基本概念について説明し、いくつかの構成および設定例を紹介します。クラスタ化やクラスタ化管理に関する詳細情報、ハードウェアのインストールおよび構成方法については取り上げません。 これらについては、本文中で取り上げる参考マニュアルとその他の Sun Cluster マニュアル (特に『Sun Cluster 3.0 12/01 の概念』、『Sun Cluster 3.0 12/01 のシステム管理』、『Sun Cluster 3.0 12/01 Hardware Guide』の 3 冊) を参照してください。

概要

従来のクラスタ化と構内クラスタ化の違いは、クラスタ間の距離にあります。 構内クラスタ化では、クラスタを構成するノード間の距離を数キロメートルにまで拡張できます。 こうしておけば、火災や地震などの災害が発生した場合に、最低限 1 台以上のサーバーとその記憶装置を確保できる可能性が高くなります。

現在 Sun Cluster ソフトウェアは、単一の構内クラスタ構成内で 2 つのノードをサポートします。 しかし、2 から 3 つの空間を使用する構成も可能です。 空間は、機能的に独立したハードウェアのグループ (ノードとその記憶装置、すべてのノードから物理的に隔離された定足数デバイスなど) として、その他の空間から隔離されています。この空間には、事故または障害の発生時にフェイルオーバーや冗長処理を実行しやすくする働きがあります。 表 A-1 に示すとおり、空間の定義は障害の種類によって異なります。

表 A-1 「空間」の定義

障害の種類 

空間の定義例 

電源障害 

隔離され独立した電源装置 

小規模な事故、機器の故障、液漏れなど 

物理空間の個々の部分 

小規模な火災 、散水 (消火) 装置の始動 

個々の物理的な領域 (散水装置の設置領域など) 

建築物の破損 (棟内全域にわたる火災など) 

その他の棟 

大規模な自然災害 (地震、洪水など) 

数キロメートル離れた場所にある企業構内 

すべての構内クラスタは 2 ノードクラスタです。このため、構内クラスタごとに定足数ディスクが必要です。2 空間構成では、定足数ディスクは一方のノードに相当する空間上に設置されます (「2 空間構成の例」 を参照)。 3 空間構成では、定足数ディスクは 3 番目の空間を使用します (「3 空間構成の例」)。

定足数ディスク上では最初に予約を獲得したノードがクラスタサービスを引き継ぎます。その他のノードは、カーネルパニックによって強制的にオフラインになります。 2 空間構成のとき、定足数ディスクは、すべてのクラスタトランスポートおよびディスク接続が失われた場合に備えて、事故や障害への耐性がもっとも高いと予測される空間に配置されるべきです。クラスタトランスポートだけが失われた場合は、定足数ディスクと同じ空間を使用するノードが、この定足数ディスクを最初に予約する空間にならない場合もあります。

3 空間クラスタには、3 つのうちいずれかの空間が失われても自動的にフェイルオーバーが実行されるという利点があります。これに対して 2 空間クラスタでは、どちらかの空間全体が失われてしまった場合、自動的にフェイルオーバーを実行するには、残っている空間に定足数ディスクが含まれていなければなりません。 ある空間全体が完全に失われた場合もシステムの可用性が保証されるのは、3 空間構成のみです (ただし、その他の障害が発生していない場合)。


注 -

従来の構成では、空間が削除された時点で未回復の入出力障害が存在し、この削除された空間に最新のサブミラーが含まれていた場合、データの整合性を維持できません。


構内クラスタ構成では、ノードが使用する 2 つの空間のそれぞれに同数の共有ディスクがあります。 2 空間構成では、一方の空間に独立した定足数ディスクを設けることができるため、2 つの空間それぞれの合計ディスク数が同じにならない場合があります。そのため個々の空間内ではなく、一方の空間ともう一方の空間の間で共有ディスクのミラー化を行う必要があります。 これは、双方向ミラーのサブミラーが、それぞれ別々の空間に存在していなければならないということです。 RAID-5 だけでは複数の空間でデータに冗長性を持たせるには不十分なので、構内クラスタ構成では必ずミラー化を行います。

共有デバイスグループのボリュームマネージャーとして Solstice DiskSuite を使用する場合、複製の配布には細心の注意を払ってください。 2 空間構成では、すべてのディスクセットを、クラスタ定足数ディスクが収容されている空間内の複製を使って構成します。 さらに、すべての Solstice DiskSuite デバイスグループがデフォルトの一次空間として定足数ディスク空間内のノードを使用するように構成します。 3 空間構成では、3 番目の空間に、定足数ディスクだけでなく 1 個以上の追加ディスクを含める必要があります (個々のディスクセットに構成)。 個々のディスクセットには、3 番目の空間のディスクと追加の Solstice DiskSuite 複製を含める必要があります。 定足数ディスクは、メタセット内で metadb 複製として使用できます。 現在、Sun Cluster ソフトウェアでは、3 番目の空間をデータ記憶域として利用することはできません。

Sun Cluster ソフトウェアでは、最大 10km 離れた場所にある空間を使って、構内クラスタ構成を実現することができます。

構内クラスタ構成の例

この節では、2 空間および 3 空間の構内クラスタ構成の例を紹介します。


注 -

ここでは一般的な構成例を紹介します。これらは必須または推奨構成ではありません。 たとえば、ここで紹介する記憶装置は単なる実例にすぎません。 便宜上、図表および解説では構内クラスタ化について理解する上で欠かせない機能のみを取り上げます。したがって、公開ネットワークの Ethernet 接続などについては触れていません。


その他の構成例については、「その他の構内クラスタ構成の例」を参照してください。

2 空間構成の例

以下は 2 空間構成の定義です。

定足数ディスクが配置されている空間が失われた場合、システムを自動的に回復することはできません。ユーザーが手動で回復する必要があります。

図 A-1 は、各空間で Sun StorEdge T3/T3+ ディスクアレイのパートナーグループを使用する 2 空間構成の例です。

図 A-1 2 空間構内クラスタの例

Graphic

図 A-1 は従来の標準的なクラスタ構成とほぼ同じです。ただし、マルチモードからシングルモードファイバに切り替えるため、ファイバスイッチが追加されています。

ここでは特に触れていませんが、構内クラスタ化は複数の記憶装置アレイを使用する構成にも適しています。 大容量の記憶領域が必要な環境では、Sun StorEdge T3/T3+ アレイの SAN スイッチを追加しなければならないことがあります。

3 空間構成の例

以下は 3 空間構成の定義です。

図 A-2 は、Sun StorEdge A5x00 ディスクアレイを使用する 3 空間構成です。 この構成では、Sun StorEdge A5x00 ディスクアレイに接続するためにファイバチャネルスイッチを使用しません。これは、Sun StorEdge T3 ディスクトレイを使用する 図 A-1 とは対照的です。 A5x00 (とサーバーのホストバスアダプタ) には長波 GBIC があるので、スイッチは不要です。

図 A-2 3 空間構成の例

Graphic

この構成では、2 つ以上の空間が有効かつ通信中であるかぎり自動的に回復処理を実行できます。 この構成以外では、いずれかの空間が失われると自動的に回復できなくなります。 2 つの空間が失われた場合は、一方の空間を交換するか再構築する必要があります。通常、この処理には SunService の介入が必要です。

要件

この節では、構内クラスタ化の要件の概要を示します。 サポート対象または推奨のソフトウェアおよびハードウェアの詳細については、『Sun Cluster 3.0 5/02 ご使用にあたって』を参照の上、Sun のご購入先までお問い合わせください。

ソフトウェア

構内クラスタには、以下のソフトウェアが必要です。

サーバー

Sun Cluster 向け認定サーバーについては『Sun Cluster 3.0 5/02 ご使用にあたって』を参照してください。または、Sun のご購入先にお問い合わせください。

ファイバチャネルスイッチ、ファイバ、ホストアダプタ

ファイバチャネルスイッチ。Sun StorEdge T3/T3+ ディスクアレイをシングルモードファイバに直接接続することはできません。これらのデバイスを使用するクラスタで、シングルモードファイバをディスクアレイ、ホスト、ホストバスアダプタのマルチモードファイバに接続するには、長波 GBIC がインストールされたファイバチャネルスイッチが必要です。 図 A-1 を参照してください。

記憶装置ファイバ接続。空間と空間の長距離接続 (10km まで) には、9/125 ミクロンのシングルモードファイバを使用します。

Sun StorEdge T3/T3+ ディスクトレイをファイバチャネルスイッチに接続するには、50/125 ミクロンのマルチモードファイバを使用します (接続距離は 500m 以内)。

ホストアダプタ。. SOC+ ベースの SBus ホストアダプタを使って Sun StorEdge A5x00 ディスクアレイを接続します。

Sun StorEdge T3/T3+ ディスクトレイでは、SAN 準拠のホストアダプタを使用します。 構成例では、Sun StorEdge SBus Dual Fibre Channel Network Adapter、Sun StorEdge PCI Single Fibre Channel Network Adapter、Sun StorEdge PCI Dual Fibre Channel Network Adapter+、Sun StorEdge cPCI Dual Fibre Channel Network Adapter を使用します。

記憶装置

Sun Cluster 3.0 は、Sun StorEdge A5x00 ディスクアレイまたは Sun StorEdge T3/T3+ ディスクトレイにより構内クラスタ化構成をサポートします。 Sun StorEdge T3/T3+ は単独 (「シングルコントローラ」。図 A-5 を参照) またはペア (「パートナーグループ」。図 A-1 を参照) で構成可能です。

StorEdge A5x00 および Sun StorEdge T3/T3+ では、長波ギガビットインタフェースコンバータ (LWGBIC) を使用して 500m 以上 10km 以内の長距離接続を実現します。 500m より短い距離では短波 GBIC を使用します。長波 GBIC の実装方法については、Sun プロフェッショナルサービスまでお問い合わせください。

構内クラスタ構成には、記憶装置向けに 2 個以上の SAN が必要です。ここでは、一方のサブミラーを形成する記憶装置が一方の空間に配置され、もう一方の空間のサブミラーにミラー化されます。こうして、空間が物理的に区分されます。 ミラーのサブミラーは、異なったホストバスアダプタ上に配置してください。 SAN の詳しい構成方法については、『Sun StorEdge Network FC Switch-8 and Switch-16 Installation and Configuration Guide, Sun SAN 3.0』を参照してください。

定足数ディスクは独立したデバイスまたは専用記憶装置 (Sun StorEdge T3/T3+ または A5x00) のいずれかになります。


注 -

スイッチの連結に関連する潜在的な制約により、現時点では 3 番目の定足数空間で Sun StorEdge T3 を使用することはできません。


クラスタインターコネクト

以下は、構内クラスタインターコネクトハードウェア構成で使用されるコンポーネントです。

図 A-3 にクラスタインターコネクトの設定方法を示します。

図 A-3 100BASE-FX の設定

Graphic

インターコネクトには、記憶装置ファイバ接続距離に見合った転送機能が必要です。 2km までの接続には、マルチモードファイバを使用できます。 この場合、メディアコンバータではなくその他のトランシーバが必要になることがあります。 詳細については、お近くの販売代理店までお問い合わせください。

インターコネクト、記憶装置、ファイバチャネルハードウェアのインストールと構成

インターコネクト、記憶装置、ファイバチャネルハードウェアを使った構内クラスタ構成は、従来のクラスタ構成とほとんど変わりません。

その他の構内クラスタ構成の例

「構内クラスタ構成の例」に、2 つの構内クラスタ構成例を示します。1 つは Sun StorEdge T3 パートナーグループを使用する 2 空間構成、もう 1 つは Sun StorEdge A5x00 アレイを使用する 3 空間構成です。 ここで紹介する例は、有効な構内クラスタ構成のほんの一部にすぎません。以下の図には、以前に紹介した設定のバリエーションを示します。

以下は 2 空間構成の例です。

以下は 3 空間構成の例です。

2 空間構成の例

図 A-1 は、Sun StorEdge T3 パートナーグループと 4 つのファイバチャネルスイッチを使用する 2 空間構内クラスタの例です。 図 A-4 は、さらに 4 つのスイッチを追加して、冗長性と入出力スループットを向上させた例です。

図 A-4 2 空間構内クラスタ (T3 パートナーグループ、8 スイッチ)

Graphic

図 A-5図 A-1 とほぼ同じですが、パートナーグループではなく、シングルコントローラ構成で Sun StorEdge T3/T3+ アレイを使用しています。

図 A-5 2 空間構内クラスタ (Sun StorEdge T3、シングルコントローラ)

Graphic

図 A-6 は Sun StorEdge A5x00 を使用する 2 空間構内クラスタの例です。 スイッチを使用していない点に注意してください。

図 A-6 2 空間構成 (Sun StorEdge A5x00)

Graphic

3 空間構成の例

以下に示すのは、いずれも 3 空間構内クラスタ構成の例です。

「記憶装置」 で触れたとおり、スイッチの接続に関連した潜在的な制約のため、現時点では Sun StorEdge T3/T3+ アレイを 3 番目の定足数空間で使用することはできません。 したがって、図 A-7図 A-8 の定足数空間には Sun StorEdge A5x00 ディスクアレイが配置されています。

図 A-7図 A-1 とほぼ同じですが、定足数ディスクが分割され、3 番目の空間に配置されています。

図 A-7 3 空間構内クラスタ (Sun StorEdge T3 パートナーグループ)

Graphic

図 A-5 と同様に、図 A-8 では、シングルコントローラ編成で Sun StorEdge T3/T3+ アレイを使用しています。 ただし、定足数ディスクは分割され、3 番目の空間に配置されています。

図 A-7図 A-8 は、種類の異なる記憶装置 (Sun StorEdge T3/T3+ と Sun StorEdge A5x00 アレイ) を混在させた設定です。したがって、複数種のホストバスアダプタを使用します。 Sun StorEdge A5x00 は SOC+ ベースの SBus ホストアダプタを使ってサーバーに接続するので、サーバーは必ず SBus ベースです。また、T3/T3+ への接続も SBus ベースになります。 したがって、T3 接続は、必ず Sun StorEdge SBus Dual Fibre Channel Network Adapter を介して行われます。

図 A-8 3 空間構内クラスタ (Sun StorEdge T3 シングルコントローラ)

Graphic

図 A-6 と同じく、図 A-9 は、Sun StorEdge A5x00 アレイを使用する構内クラスタの例です。 ただし、定足数ディスクは分割され、固有の空間に配置されています。

図 A-9 3 空間構内クラスタ (Sun StorEdge A5x00)

Graphic