Sun Cluster 3.0 5/02 補足情報

概要

従来のクラスタ化と構内クラスタ化の違いは、クラスタ間の距離にあります。 構内クラスタ化では、クラスタを構成するノード間の距離を数キロメートルにまで拡張できます。 こうしておけば、火災や地震などの災害が発生した場合に、最低限 1 台以上のサーバーとその記憶装置を確保できる可能性が高くなります。

現在 Sun Cluster ソフトウェアは、単一の構内クラスタ構成内で 2 つのノードをサポートします。 しかし、2 から 3 つの空間を使用する構成も可能です。 空間は、機能的に独立したハードウェアのグループ (ノードとその記憶装置、すべてのノードから物理的に隔離された定足数デバイスなど) として、その他の空間から隔離されています。この空間には、事故または障害の発生時にフェイルオーバーや冗長処理を実行しやすくする働きがあります。 表 A-1 に示すとおり、空間の定義は障害の種類によって異なります。

表 A-1 「空間」の定義

障害の種類 

空間の定義例 

電源障害 

隔離され独立した電源装置 

小規模な事故、機器の故障、液漏れなど 

物理空間の個々の部分 

小規模な火災 、散水 (消火) 装置の始動 

個々の物理的な領域 (散水装置の設置領域など) 

建築物の破損 (棟内全域にわたる火災など) 

その他の棟 

大規模な自然災害 (地震、洪水など) 

数キロメートル離れた場所にある企業構内 

すべての構内クラスタは 2 ノードクラスタです。このため、構内クラスタごとに定足数ディスクが必要です。2 空間構成では、定足数ディスクは一方のノードに相当する空間上に設置されます (「2 空間構成の例」 を参照)。 3 空間構成では、定足数ディスクは 3 番目の空間を使用します (「3 空間構成の例」)。

定足数ディスク上では最初に予約を獲得したノードがクラスタサービスを引き継ぎます。その他のノードは、カーネルパニックによって強制的にオフラインになります。 2 空間構成のとき、定足数ディスクは、すべてのクラスタトランスポートおよびディスク接続が失われた場合に備えて、事故や障害への耐性がもっとも高いと予測される空間に配置されるべきです。クラスタトランスポートだけが失われた場合は、定足数ディスクと同じ空間を使用するノードが、この定足数ディスクを最初に予約する空間にならない場合もあります。

3 空間クラスタには、3 つのうちいずれかの空間が失われても自動的にフェイルオーバーが実行されるという利点があります。これに対して 2 空間クラスタでは、どちらかの空間全体が失われてしまった場合、自動的にフェイルオーバーを実行するには、残っている空間に定足数ディスクが含まれていなければなりません。 ある空間全体が完全に失われた場合もシステムの可用性が保証されるのは、3 空間構成のみです (ただし、その他の障害が発生していない場合)。


注 -

従来の構成では、空間が削除された時点で未回復の入出力障害が存在し、この削除された空間に最新のサブミラーが含まれていた場合、データの整合性を維持できません。


構内クラスタ構成では、ノードが使用する 2 つの空間のそれぞれに同数の共有ディスクがあります。 2 空間構成では、一方の空間に独立した定足数ディスクを設けることができるため、2 つの空間それぞれの合計ディスク数が同じにならない場合があります。そのため個々の空間内ではなく、一方の空間ともう一方の空間の間で共有ディスクのミラー化を行う必要があります。 これは、双方向ミラーのサブミラーが、それぞれ別々の空間に存在していなければならないということです。 RAID-5 だけでは複数の空間でデータに冗長性を持たせるには不十分なので、構内クラスタ構成では必ずミラー化を行います。

共有デバイスグループのボリュームマネージャーとして Solstice DiskSuite を使用する場合、複製の配布には細心の注意を払ってください。 2 空間構成では、すべてのディスクセットを、クラスタ定足数ディスクが収容されている空間内の複製を使って構成します。 さらに、すべての Solstice DiskSuite デバイスグループがデフォルトの一次空間として定足数ディスク空間内のノードを使用するように構成します。 3 空間構成では、3 番目の空間に、定足数ディスクだけでなく 1 個以上の追加ディスクを含める必要があります (個々のディスクセットに構成)。 個々のディスクセットには、3 番目の空間のディスクと追加の Solstice DiskSuite 複製を含める必要があります。 定足数ディスクは、メタセット内で metadb 複製として使用できます。 現在、Sun Cluster ソフトウェアでは、3 番目の空間をデータ記憶域として利用することはできません。

Sun Cluster ソフトウェアでは、最大 10km 離れた場所にある空間を使って、構内クラスタ構成を実現することができます。