サイロは複数のソフトウェアアプリケーションから使用できるので、ほかのプログラムが使っているボリュームが Backup によって上書きされるのを防ぐため、サイロ内のメディア管理には特別な操作が必要です。
この節では、Backup 用にボリュームを指定する方法、ボリュームをデバイスにマウントする方法、サイロ内でボリュームを識別しカウントする方法について説明します。
オートチェンジャでは、Backup は 1 つのスロット番号を使ってさまざまな機能を指定しますが、サイロでも同じです。オートチェンジャではスロット数が決まっていて、スロット番号はボリュームの物理的位置を指すのに使われます。一方サイロでは、スロット数は一定ではなく、最初に構成した時点で 0 番から始まり、上限はユーザーが購入したサイロライセンスによって決まります。サイロボリュームの基本的な識別子はバーコードであり、サイロのマニュアルではよく「volser」と呼ばれています。この volser は、特定のボリュームが存続する間は変わりません。
nsrjb コマンドを使ってサイロの内容を一覧表示すると、同時にスロット番号も表示されます。このスロット番号によってどのボリュームをマウント、マウント解除、ラベル付けし、インベントリを作成するかを指定します。サイロ内では、ボリュームにいつも同じスロット番号が割り当てられるとは限りません。サイロ内のスロット番号は、すでに割り当てられているバーコードのソート順に基づいて、動的に割り当てられます。ソートの順序の前の部分にバーコードをさらに割り当てると、ソート順序のあとの部分にあるすべてのボリュームのスロット番号が変わってきます。
スロット番号ではサイロボリュームを完全に識別することはできないので、スロット番号を変更する可能性のある操作では、スロット番号を引き数として使うことはできません。たとえば、スロット番号を指定してボリュームの割り当てを解除することはできません。これは、割り当て解除によって、そのボリュームのスロット番号が変わるからです。
カートリッジアクセスポート (Cartridge Access Port, CAP) を使うと、サイロのドアを開けなくても、サイロ内のボリュームを格納し、取り外すことができます。CAP を使うと、サイロ全体のインベントリを作り直さなくても、サイロ内でボリュームの追加 (格納) と取り出し (取り外し) ができるので便利です。CAP を使ってボリュームを追加したり取り出したりしても、Backup が自動的にインベントリを作成し、バーコードラベルを読み取り、サイロ内の空きスロットを探すわけではありません。これらのタスクには、サイロのインベントリ作成機能と「Jukeboxes」リソースを使う必要があります。
現在サポートされているサイロ上では、CAP を制御してサイロ内のボリュームを格納し、取り外すには、Backup コマンドまたはサイロ管理ソフトウェアを使用します。通常は、特に大量のボリュームを格納し取り外す場合は、サイロ管理ソフトウェアを使用するほうが効率よく処理できます。
ボリュームの割り当てと格納には、次の Backup コマンドを使用します。
# nsrjb -a -Txxxx -d |
ボリュームの割り当て解除と取り外しには、次の Backup コマンドを使用します。
# nsrjb -x -Txxxx -w |
格納と取り外しの機能は、Backup 管理プログラムの GUI では使用できません。
CAP が自動モードに設定されている IBM 3494 サイロと StorageTek サイロでは、サイロ管理ソフトウェアが自動的にボリュームを挿入します。ユーザーが Backup を使ってボリュームを挿入することはできません。
Backup の内部動作と StorageTek のサイロ管理ソフトウェアの内部動作は異なるので、StorageTek サイロでは、Backup で 1 回に 1 つのボリュームしか取り外せず、ほかのボリュームを取り外すには、その前にボリュームをサイロの CAP から取り出さなければなりません。EMASS/Grau のサイロでは、Backup によって格納と取り外しの両機能を制御できます。
ボリュームを割り当てる場合は、使用できるボリュームを Backup に知らせます。サイロは複数のアプリケーションソフトウェアから使用できるので、Backup 用のボリュームを別のアプリケーションが読み取り、書き込む可能性があります。これを防ぐため、ほとんどのサイロ管理プログラムには、Backup と Backup 以外のプログラムが実行されているマシンのホスト名に基づいて、ボリュームへのアクセスを制限する機能が組み込まれています。Backup にはこの種のアクセス制限は組み込まれていないので、サイロ管理プログラムを使ってこれを構成しなければなりません。
ボリュームを割り当てる場合は、Backup がサイロ管理ソフトウェアに問い合わせて、ユーザーが要求するボリュームが実際にあるかどうかを確認します。ボリュームがあれば、それが Backup 用に割り当てられます。ボリュームがなければ、次のメッセージが表示されます。
barcode xxxxxx is not present in the silo and was not added |
複数のボリュームを範囲を指定して割り当てると、このメッセージの表示後に割り当て処理が続行されますが、この場合のメッセージは参考情報であって、Backup のエラーを示すものではありません。
サイロボリュームを割り当てるには、次のどちらかを使います。
Backup 管理プログラムの「Add Library Volumes」ダイアログボックス - 手順は、オンラインヘルプを参照してください。
nsrjb -a -T barcode コマンド - nsrjb コマンドの詳細は nsrjb のマニュアルページを、バーコードテンプレートの正しい形式については stli のマニュアルページを参照してください。-T オプションの次に指定できるバーコード識別子またはテンプレートは 1 つだけですが、1 つの nsrjb コマンドには -T オプションをいくつ使ってもかまいません。
EMASS /Grau サイロのような手動で格納しなければならないサイロにボリュームを格納し、割り当てるには、ボリュームを挿入部分に置いてから次のコマンドを入力します。
# nsrjb -a -Txxxx -d |
StorageTek サイロ、IBM サイロでは、サイロ管理ソフトウェアが自動的にボリュームを格納します。
ボリュームのデータを読み書きする前に、ボリュームをマウントしなければなりません。ボリュームは、サイロ内のデバイスに自動でマウントされます。
サイロデバイスにボリュームをマウントするには、Backup 管理プログラムか、nsrjb -l コマンドを使用します。ボリュームをマウントする場合は、ボリュームとスロット、およびバーコードを指定しなければなりません。
サイロ内のボリュームのインベントリを作成する場合、あるいは Backup サイロのボリュームを割り当て解除する場合は、その前にボリュームのマウントを解除しなければなりません。マウントを解除するには、Backup 管理プログラムか、nsrjb -u コマンドを使用します。
ボリュームのバーコード識別子またはテンプレートを指定するには、nsrjb コマンドに -T オプションを指定します。
ボリュームが属しているプールと、ボリュームに入っているデータのタイプは、ラベルによって Backup に伝えられます (ボリュームラベルの詳細は、「ストレージボリュームのラベル付け」を参照)。Backup がボリュームにデータが書き込めるのは、ボリュームにラベルが付けられたあとです。
サイロ内のボリュームにラベルを付けるには、Backup 管理プログラムか、nsrjb -L コマンドを使います。
サイロ内のボリュームに付ける Backup ラベルには、標準の Backup ボリュームラベル (ボリュームのメディア上に書き込まれる) と、サイロバーコード識別子があります。ボリュームラベルは、通常、ボリュームプールのラベルテンプレートに基づいて作成されます。バーコード識別子は、ボリュームの外側に貼るラベルに書き込まれ、インベントリ作成時にサイロ内のバーコードリーダーによって読み取られます。
サイロでは、デフォルトで、バーコードの使用と、バーコードラベルと Backup ボリュームラベルの一致が有効になっています。「Match Barcode Labels」属性は変更できますが、「Barcode Reader」属性で「No」を選択しないでください。「Match Barcode Labels」属性と「Barcode Reader」属性の両方を「Yes」にすると、Backup によって各ボリュームのメディアに書かれる内部ボリュームラベルが、ボリュームの外側に貼るバーコードラベルと同じになります。両方のラベルが一致していればボリュームの追跡は容易になりますが、Backup にとっては、内部ラベルと外部ラベルは必ずしも一致する必要はありません。
ほとんどのサイロ管理ソフトウェアでは、ラベルなしのボリュームを使用できます。管理ソフトウェアは、ラベルなしのボリュームに「仮想の」バーコードラベルを付けます。バーコードがなくてもボリュームは使えますが、一貫性のある管理が非常に難しくなります。つまり、サイロからバーコードのないボリュームを削除すると、その仮想バーコードについての情報がなくなり、バーコードのないボリュームが Backup または Backup 以外のアプリケーションによって一部のデータに関連付けている仮想バーコードの付いたサイロに挿入される可能性があるからです。
Backup 用のサイロに不要なボリュームができたときは、そのボリュームの割り当てを解除できます。割り当て解除の操作は、基本的にはオートチェンジャからボリュームを削除する操作と同じです。機械的な機構によってボリュームを自動でロードすることはできませんが、Backup のメディアデータベース内のエントリはそのまま残っています。あとでそのボリュームをもう一度割り当てれば、Backup によってボリュームからデータを取り出すことができます。
使えるスロットの数がサイロのライセンスによって制限されている場合、あるいはさらに安全に保管するためにデータをオフサイトに移す場合は、割り当てを解除します。ライセンスによって使用スロット数が制限されている場合は、ボリュームをサイロに残しておくと、そのボリューム内のデータを使う必要が起こったときに、すぐにそのボリュームを割り当て直すことができます。
割り当て直すための操作は、自動ではできません。ユーザーが手動でもう一度ボリュームを割り当てて、データを Backup によってアクセスできるように、インベントリを作り直さなければなりません。ボリュームをサイロから取り外してオフサイトの保管場所に移す場合は、Backup によってボリュームの割り当てを解除してから、サイロ管理ソフトウェアによってサイロからボリュームを取り出すか、あるいはコマンド行で nsrjb -x -Txxxx -w コマンドを使って、ボリュームの割り当て解除と取り出しを同時に行います。
現在、StorageTek のサイロで一度に取り出せるボリュームは、1 つだけです。サイロのオペレータは、続けて nsrjb -x -w コマンドを出す前に、必ず各ボリュームを取り外さなければなりません。複数のボリュームを指定して割り当て解除と取り出しをしようとすると、ボリュームはすべて割り当て解除されますが、取り出されるのは先頭の 1 つだけです。このような制限は、EMASS/Grau、IBM 3494 のサイロにはありません。
デバイスからボリュームをマウント解除します。
Backup 管理プログラム、または nsrjb -x -T バーコードコマンドを使ってボリュームの割り当てを解除します。
Backup 管理プログラムを使ってサイロボリュームの割り当てを解除する方法は、オンラインヘルプを参照してください。nsrjb コマンドの使用法は、nsrjb のマニュアルページを参照してください。バーコードテンプレートの正しい形式は、stli のマニュアルページを参照してください。
サイロ内のボリュームのインベントリを作成することによって、スロット番号とボリューム名が正しく対応付けられているかどうかを確認できます。あるいは、サイロ内のボリュームを、Backup のメディアデータベースにあるボリュームの一覧に一致するように調整できます。
サイロボリュームのスロット番号は、オートチェンジャ内のスロット番号と違って、サイロ内部で付けられているスロット番号とは異なります。サイロボリュームのスロット番号は、サイロ内のいくつかのボリュームを並べたもので、そのボリュームの位置に付けられた番号です。各サイロボリュームのスロット番号は、Backup 管理プログラムか、「Jukebox Mounting」ダイアログボックスで参照できます。
サイロのインベントリを作るには、Backup 管理プログラム、または nsrjb -I コマンドを使います。Backup によってサイロ内のすべてのボリュームが調べられ、新しく作成されたインベントリが Backup のメディアデータベース内の一覧と比較されます。次に、サイロにはあってメディアデータベースにはないボリュームがある場合には、そのメッセージと一覧が表示されます。
Backup によってサイロのインベントリが作成される際に、サイロのバーコードラベルリーダーが、各ボリュームの外側に貼ってあるバーコードラベルを読み取ります。ボリュームのバーコードが Backup メディアデータベース内のエントリと一致していれば、そのボリュームをデバイスにロードする必要はなく、読み取りとインベントリ作成が非常に速くなります。しかし、あるボリュームでメディアデータベース内のどのエントリとも一致しないバーコードが読み取られた場合は、そのボリュームをマウントして読み取り、正しいインベントリを作成しなければなりません。
時間が逼迫していて、サイロ内の全ボリュームのインベントリを作成できない場合は、一連のスロットまたはバーコードを指定してインベントリを作成することもできます。