フルバックアップを毎日行うのは現実的または効率的でない場合があるので、Backup では、その自動的に実行されるスケジュールされたグループバックアップの際のバックアップ操作のレベルを指定できるようになっています。フルバックアップが行われる回数を制限することで、サーバーの効率を損なわずに、データを保護できます。各種のバックアップレベルを使って、バックアップの完了に必要なボリュームの数および時間と、ディスククラッシュからの復旧に必要なボリュームの数および時間を調整できます。
Backup は、ファイルシステムデータに関して、次の 4 種類のバックアップレベルをサポートしています。
Full (フル) - 変更の有無にかかわらず、すべてのファイルをバックアップする
Level (レベル) 1-9 - より若い番号の最後のバックアップレベル以降に変更があったファイルだけをバックアップする。最後のフルバックアップはレベル 0 と見なされる。たとえば、レベル 1 バックアップでは最後のフルバックアップ (レベル 0 と見なされる) 以降に変更があったすべてのファイルをバックアップする。レベル 3 バックアップでは、最後のレベル 2、レベル 1、またはフルバックアップ以降に変更があったすべてのファイルをバックアップする。レベル 9 バックアップでは、最後のレベルが 8、7、6、5、4、3、2、1 のバックアップまたはフルバックアップ以降に変更があったすべてのファイルをバックアップする
Incremental (差分) - レベルとは無関係に、最後のバックアップ以降に変更があったファイルだけをバックアップする
Skip (スキップ) - スケジュールされたバックアップを省略する。たとえば、休日にボリュームの交換や追加を行う担当者がいない場合には、休日のバックアップを省略できる
バックアップスケジュールによって、バックアップサイクル中の指定した日に、どのレベルのバックアップが行われるかを定義します。これらのバックアップレベルを 1 つ以上組み合わせて、バックアップスケジュールをカスタマイズできます。カスタマイズしたスケジュールの中でバックアップレベルの使用を検討している場合には、次のことに注意して、自分の環境に合ったスケジュールを作ってください。
フルバックアップは、差分バックアップよりも、長い時間がかかる
ストレージデバイスが 1 つしかなく、フルバックアップが 1 つのメディアに収まらない場合は、バックアップを監視し、メディアを交換する必要がある
フルバックアップでは、差分バックアップやレベルバックアップよりも、オンラインインデックスが急速に増大する
レベルバックアップは、数日または数週の間に変更されたすべてのファイルを 1 つのバックアップセッションにまとめるという意味で、スケジュールの中でのチェックポイントの役割を果たす。レベルバックアップを使うことで、復旧処理が容易かつ迅速になる
オンラインクライアントファイルインデックス、サーバーインデックス、およびメディアデータベースは、Backup サーバーがバックアップされるたびにバックアップされます。一般に、これはサーバーのバックアップレベルに準拠します。たとえば、Backup サーバーのバックアップレベルが「フル」ならば、オンラインクライアントファイルインデックス、サーバーインデックス、およびメディアデータベースもフルバックアップが行われます。Backup サーバーのバックアップが「レベル 5」ならば、オンラインクライアントファイルインデックス、サーバーインデックス、およびメディアデータベースのバックアップもレベル 5 です。ただし、サーバーのバックアップレベルが「差分」ならば、オンラインクライアントファイルインデックス、サーバーインデックス、およびメディアデータベースのバックアップはレベル 9 です。
バックアップレベルはクライアントのバックアップスケジュールと関連しています。バックアップレベルの定義は、ディスククラッシュからの復旧に要する時間や、必要となるバックアップボリュームの数などに直接に影響します。
これ以降の説明では、バックアップレベルの動作と、データの損失時の復旧に必要となるデータの量を、図示しています。
10 月 2 日にフルバックアップが行われます。10 月 3 日には、フルバックアップ以降に変更されたすべてのデータが差分バックアップによって保存されます。10 月 4 日には、10 月 3 日以降に変更されたすべてのデータが差分バックアップによって保存されます。10 月 5 日には、レベル 7 バックアップによって、フルバックアップ以降に変更されたすべてのデータが保存されます。10 月 5 日にディスククラッシュから完全に復旧するためには、フルバックアップのボリュームとレベル 7 のボリュームの 2 つのボリュームだけが必要です。10 月 3 日と 4 日のボリュームに入っているデータは、レベル 7 バックアップに含まれているので、これらのボリュームは不要です (図 3-5 を参照)。
10 月 6、7、および 8 日は、レベル 7 バックアップ以降に変更されたすべてのデータが差分バックアップによって保存されます。10 月 9 日には、図 3-6 に示すように、レベル 5 バックアップによって、フルバックアップ以降に変更されたすべてのデータが保存されます。10 月 9 日にディスククラッシュから完全に復旧するためには、フルバックアップのボリュームとレベル 5 のボリュームの 2 つのボリュームだけが必要です。レベル 7 バックアップのボリュームと、それ以降の差分バックアップのボリュームに入っているデータは、レベル 5 のボリュームに含まれているので、これらのボリュームは不要です。
10 月 12 日に、レベル 7 バックアップによって、これよりも若い番号の直前のバックアップ以降に変更されたすべてのデータがバックアップされます。この例では 10 月 9 日のレベル 5 バックアップがこれに該当します。10 月 12 日にディスククラッシュから復旧するためには、フルバックアップのボリューム、レベル 5 のボリューム、および新しいレベル 7 のボリュームの 3 つのボリュームが必要となります (図 3-6 を参照)。
10 月 16 日に、レベル 5 バックアップによって、これよりも若い番号の直前のバックアップ以降に変更されたすべてのデータがバックアップされます。これよりも若い番号 (レベル 1 〜 4) のバックアップは行われていないので、レベル 5 バックアップによって、フルバックアップ以降に変更されたすべてのデータがバックアップされます。10 月 16 日にディスククラッシュから復旧するためには、フルバックアップのボリュームと新しいレベル 5 のボリュームの 2 つのボリュームが必要となります (図 3-7 を参照)。
レベル 1-9 バックアップを使うことで、使用しなければならないボリュームの数を制御できます。バックアップ方法を慎重に計画することで、ボリュームの数を最小限に抑えながら、すべてのデータをディスクに復旧することが可能になります。ディスククラッシュからの復旧に必要なボリュームの数が少ないほど、ディスクの復旧に費やされる時間も削減できます。
また、バックアップのデータを圧縮し、不要なデータを削除するディレクティブを使うことで、データのバックアップに要する容量と時間を制御できます。たとえば、バックアップの実行時に、特定のファイルまたはファイルシステムを省略するよう Backup に指示できます。ディレクティブの詳細は、「ディレクティブとは」を参照してください。