電子メールサービスの設定と維持管理には、ネットワークの日常の運用にとって不可欠な、複雑な作業が伴います。ネットワーク管理者は、既存のメールサービスを拡張しなければならない場合があります。または、新しいネットワークまたはサブネット上でメールサービスを設定しなければならないこともあります。メールサービスに関する各章では、ネットワークでメールサービスを計画したり設定したりするために必要な情報を提供します。この章では、sendmail の新機能の説明へのリンクを用意し、参考資料を紹介します。この章ではまた、メールサービスを確立するために必要なソフトウェアおよびハードウェアコンポーネントの概要を説明します。
第 13 章メールサービス (手順)では、メールサービスの設定および管理方法の手順を説明します。詳細は、「メールサービス (作業マップ)」を参照してください。
メールサービスのコンポーネントについての詳細は、第 14 章メールサービス (リファレンス)を参照してください。この章では、メールサービスのプログラムとファイル、メールルーティング処理、ネームサービスを使った sendmail の対話型操作、sendmail version 8.13 の機能についても説明します。「sendmail の version 8.13 での変更点」を参照してください。
この節では、さまざまな Solaris リリースの新機能について説明します。
Solaris 10 7/10 リリース リリースでは、次の変更点が加えられました。
sendmail のデフォルトバージョンが 8.14 に更新されました。
従来のデーモン (svc:/network/smtp:sendmail) およびクライアントキューランナー (svc:/network/smtp:sendmail-client) の管理を改善するため、sendmail インスタンスが 2 つのインスタンスに分割されました。
sendmail.cf および submit.mc 構成ファイルが自動的に再構築されるように、システムを構成可能になりました。必要な手順については、「構成ファイルを自動的に再構築する方法」を参照してください。
デフォルトでは、sendmail デーモンは新しいローカルデーモンモードで動作します。ローカル専用モードでは、ローカルホストやループバック SMTP 接続からの着信メールだけを受信します。たとえば、cron ジョブからのメールやローカルユーザー間のメールを受信します。発信メールの経路は変更されず、着信メールだけが変更されます。ローカル専用モードを選択する場合には、-bl (Become Local モードの略) オプションを使用します。このモードの詳細は、sendmail(1M) のマニュアルページを参照してください。-bd (Become Daemon モード) に戻す方法については、「オープンモードで sendmail を使用する方法」を参照してください。
Solaris 10 1/06 以降のリリースでは、sendmail は Transport Layer Security (TLS) を使用した SMTP をサポートしています。詳細については、次を参照してください。
Solaris 06 10/9 リリースに含まれる新機能の完全な一覧については、『Oracle Solaris 10 9/10 の新機能』を参照してください。
Solaris 10 以降のリリースでは、sendmail version 8.13 がデフォルトになっています。version 8.13 に関する情報とほかの変更点については、次を参照してください。
さらに、メールサービスは、サービス管理機能によって管理されています。このサービスに関する有効化、無効化、再起動などの管理アクションは svcadm コマンドを使用して実行できます。サービスの状態は、svcs コマンドを使用して照会できます。サービス管理機能の詳細は、smf(5) のマニュアルページおよび『Solaris のシステム管理 (基本編)』の第 18 章「サービスの管理 (概要)」を参照してください。
次に、上記以外の sendmail 関連の参考資料を示します。
Costales、Bryan 著、『sendmail, Third Edition』、O'Reilly & Associates, Inc.、2002
sendmail 関連のホームページ – http://www.sendmail.org
sendmail 関連の FAQ – http://www.sendmail.org/faq
新しい sendmail 構成ファイルの README – http://www.sendmail.org/m4/readme.html
sendmail の最新 Sun バージョンへの移行ガイド – http://www.sendmail.org/vendor/sun/
メールサービスを確立するためには、多くのソフトウェアコンポーネントおよびハードウェアコンポーネントが必要になります。次では、これらのコンポーネントについて簡単に紹介します。コンポーネントの説明で使用する用語についても紹介します。
最初の節 「ソフトウェアコンポーネントの概要」では、メール配信システムのソフトウェア部分を説明するのに使用する用語を定義します。その次の節 「ハードウェアコンポーネントの概要」では、メール構成におけるハードウェアシステムの機能について取り上げます。
次の表にメールシステムのソフトウェアコンポーネントを示します。ソフトウェアコンポーネントすべてに関する詳細については、「ソフトウェアコンポーネント」を参照してください。
コンポーネント |
説明 |
---|---|
.forward ファイル |
ユーザーのホームディレクトリ内で設定して、メールを自動的にリダイレクトしたり、プログラムに送ったりすることができるファイル |
メールボックス |
メールサーバー上にあり、電子メールメッセージの最終受信先であるファイル |
メールアドレス |
メールメッセージが配信される受信者とシステムの名称を含むアドレス |
メール別名 |
メールアドレス内で使用されている代替名 |
メールキュー |
メールサーバーによる処理を必要とするメールメッセージの集まり |
ポストマスター |
メールサービスについての問題を報告し質問を出すために使用される特別なメール別名 |
sendmail 構成ファイル |
メールのルーティングに必要なすべての情報の入ったファイル |
メール構成では次の 3 つの要素が必要ですが、これらは同じシステムで組み合わせることも、別のシステムで提供することもできます。
メールホスト – 解釈処理が困難なメールアドレスを扱うように構成されたシステム
少なくとも 1 台のメールサーバー – 1 つまたは複数のメールボックスを保持するように構成されたシステム
メールクライアント – メールサーバーからメールにアクセスするシステム
ユーザーがドメイン外のネットワークと通信をするためには、4 番目の要素であるメールゲートウェイを追加する必要があります。
図 12–1 には、一般的な電子メール構成を示しますが、ここでは基本的な 3 つのメール要素とメールゲートウェイが使用されています。
各要素については、「ハードウェアコンポーネント」を参照してください。